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積極型シフト

本日の日経平均は小反発で引けたが個別ではまたぞろ中小型物色も旺盛で、前日に18年3月期の決算は売上高にあたる営業収益を前期比48.5%増、営業利益を同2.1倍と急拡大させた事を背景に大幅高したジャスダック市場の独立系資産運用会社スパークスグループなど連日の続伸となっていた。

このスパークスGは中小型株に強みを持つのが特色の資産運用会社だが、業界を見ると米資産運用会社などもこうした運用者の裁量で有望な投資先を選ぶアクティブ型に回帰しつつあり、株価指数連動型への資金流入は減りつつある模様との旨が連休中の日経紙で書かれていた。

今年に入ってからVIXが大荒れとなり、尻尾が振り回す格好でダウ工業株30種平均やS&P500種株価指数の乱高下で指数連動型もこれまでの利回りを確保し辛い状況となった事が流出に繋がっているとみられるが、運用業界も斯様な積極型への資金シフトの状況から優勝劣敗が今後鮮明化してきそうだ。


社会貢献優待

さて、昨日の日経紙総合面では「株主優待 ESGの波」と題して、自社製品や金券の配布以外に相当額を寄付する選択肢を加える例が目立つなど、日本的慣行とされる株主優待を利用し環境や社会、企業統治の観点から企業を評価する「ESG投資」の波が株主優待にも及んできている旨が載っていた。

株主優待といえばここ近年は持ち合い解消後の受け皿としての個人株主の存在の大きさを考慮し企業側が優待に力を入れ始めている動きが目立ってきたが、配当重視の機関投資家など優待先行の状況に弊害を指摘する向きも出ていた昨今、ガバナンスのGに見られる通りこうした向きにも理解を貰える受け皿を見つけたという感じ。

当欄では3月に「運用と世論」と題し、銃の製造・販売企業への投資自粛やその前には毛皮の使用を廃止したハイブランド群のアニマルフリーの波など社会的責任投資、所謂SRI投資について書いたが、このESG投資もこの10年くらい前から俄かに謳われてきたSRIを広義で捉え基本的には同じ取り組みといえる。

冒頭にはヤマハ発動機の優待項目の盲導犬協会への寄付が例に挙げられていたが、例えば近年はふるさと納税でも最近では盲導犬訓練支援、犬の殺処分ゼロなど動物愛護の類も非常に多く、ESGは投資企業や優待に限らずふるさと納税など幅広い間口で投資家や納税者のニーズに応えられる選択肢となろうか。


ミッドタウン日比谷など

さて、ゴールデンウィーク真っ只中で首都圏の商業施設に出向く向きも多いと思うが、GINNZA SIXなどはや開業1周年でそれを記念し開業当時の草間彌生氏の次の新作アートプログラムを吹き抜けに展開させているが、最近新たに開業した商業施設といえば此処の近所の日比谷にオープンした「東京ミッドタウン日比谷」がある。

こちらも開業してはや1ヵ月が経過、ミッドタウンといえば11年前に開業した六本木が直ぐ頭に浮かぶが、衣食住全てに対応したショップ・レストランを展開する六本木に対しこちらは所謂「コト消費」を軸にした広い世代の来館を促すという。私も所用で近所に出向いたのでオープン翌日に顔を出したがコト消費を謳うだけにイセタンミラーなどがトータルな美容体験の出来るテナントを誘致している。

いつも乍ら新たな商業施設が出来ると途端にその前に鎮座していたビルなど記憶が薄れてしまうものだが、此処も三井ビルや三信ビルなどがあった面影が微塵もないほど様変わりに聳え立つものの地下へ降りるとそのレトロモダンなデザインが三信ビルを彷彿させるテイストに仕上げられている辺りが粋で懐かしい。

このエリアもマキシム・ド・パリが入っていたソニービル銀座が51年の歴史に幕を閉じ、プランタン銀座も32年の営業を終え再出発している一方で、冒頭のGINNZA SIX、このミッドタウン日比谷、そしてこの両者の間に位置する東急プラザ銀座が近年相次いでオープンの運びとなり大人の銀ブラを誘致するべく変貌を遂げつつある。


IPO史上初

さて、今週の株式市場で話題となったのは、やはり今年これまでで最大の注目IPOとされた人工知能開発のHEROZの初値形成だったか。上場したのは先週末であったがそれから2日間気配値のみで値が付かず、上場3日目の後場にして漸く寄ったが驚きだったのはその初値倍率で、実に公開価格の10.9倍とIPO史上初の出来事となった。

同社が開発した将棋ソフトAIの(ポナンザ)が昨年電王戦で対局、それが世界で初めて名人に勝利した事から個人の注目度合も抜群に高かった事で、これまでの初値倍率で最高だったちょうどバブル期だった99年の10月に上場したエムティーアイの9.09倍という最高記録を19年ぶりに更新する事になった。

こんな幻の初値形成のあとは実に200倍を超えるPBR や、PERに至っては700倍超えと見た事も無いような過熱感や、ロックアップ解除も意識され2日連続のストップ安から本日もストップ寸前まで暴落となり、初値形成からわずか3日であわや半値という水準まで沈んだもののそれでもなお公開価格の6倍以上であるから凄まじい。

AIに対する未曾有の期待感がかつてのドットコムバブルを超えるパフォーマンスを演出したとも言えるが、ここまでの派手さは例外としても今年は新年度を挟んで初値が公開価格の2倍以上になるIPOが連続しておりその投資家層にも変化の兆しがいわれている。投資家層の広がりで初値天井傾向等も含めこの辺も変化がみられるのかどうか今後のIPOと併せ注目してゆきたい。


誘致合戦

昨日の日経紙には「上場誘致で米中攻防」と題して、有望な企業の上場誘致を巡り米国では企業の開示負担や訴訟リスクを軽減する強制仲裁などの新たな措置の検討が進み、中国では議決権の異なる種類株を容認しハイテク企業の取り組みを急ぐなど米中双方の攻防が激しさを増してきた旨が書かれていた。

先月の当欄でも書いたが世界的なカネ余りで上場の選択をしなくとも容易な資金調達が可能になったことから、企業の立場が優位となって来た事などを背景に新規上場の停滞が顕著になってきているが、そういった傾向が資本市場の活力を削ぐと先進国では危機感を募らせている。

斯様な構図から近年では企業も有利な条件をちらつかせて主導権を握るようになり、一方で取引所側はルールの更なる緩和を模索するなどその力関係も随分と変ってきている。冒頭の記事の末尾にも書いてあったが、骨抜き誘致とならぬよう投資家保護と企業誘致のバランスをどう保ってゆくかが今後の課題か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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