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第1の力再浮上?

先週末に米ワシントンで講演した日銀の植田総裁だが、「基礎的な物価の上昇が続けば金利を引き上げる可能性が非常に高くなる」と具体的な時期は明らかにしなかったものの自身の考えを改めて示していた。折しも外国為替市場では日米金利差が意識され記録的な円安が進行中、3月CPIも発表されたがここからは日銀が理想とする所謂第2の力が足踏みする間に円安による輸入物価の上昇など第1の力が再浮上する構図が浮かび上がる。

日銀が言うところのこの第1の力といえば、電気・ガス等の補助金が来月で終了するが、イスラエルとイランは対立激化の真っ最中でエネルギー価格の先行きも予断を許さない状況が続いておりコストプッシュ型インフレが再燃する可能性がある。そういった方向に傾斜しそうな中ではたして追加利上げを敢行するのか否かだが、目先の会合では現行の金利政策を据え置く公算が大きいとのコンセンサスで一致している。

そういえば冒頭の日銀総裁講演より少し前の財務相会合では、同じく自国通貨安に喘ぐお隣韓国と最近の急速な円安・ウォン安への深刻な懸念を認識するとの共同声明もまとめていたが、こうした一連の動きを見るにインフレ以上に通貨動向も無視できない状況になってきているようにも見える。追加利上げを巡る発言に市場の関心が高まっているが、いずれにせよ先ずは今週の日銀金融政策決定会合に注目としたい。


最近の金

さて、昨日は「銀」を取り上げたが本日は「金」である。今週アマタまで日本橋高島屋で開催されていた「大黄金展」で先週に販売価格約1040万円の純金製茶碗が盗まれた事件が話題になっていたが、高島屋といえば昨年のクリスマスにはネット販売したケーキが800個以上も崩壊し大騒ぎになったものの原因が謎のままだったり、京都店の限定商品が1人に全て買い占められたり、羽生結弦展で販売された限定グッズがネットで40倍以上の高値で転売されたりと何かと話題を提供する百貨店だなと。

その辺は兎も角もこの「大黄金展」では確か昨年も窃盗被害が報じられていた記憶があるが、近年の市況高も喧伝されており自ずとその注目度も高くなるというものだ。当の金価格は直近でも国際指標となるNY先物価格やロンドン現物価格が初めて1トロイオンス2400ドルの節目を突破しており、国内価格も指標の田中貴金属工業の販売価格は今週に入って1g13000円の大台を超え史上最高値を更新してきている。

ところで冒頭の盗まれた黄金茶碗は江東区の買い取り店にてたったの180万円で売却したと供述しているというが、盗まれた約1040万円の24金製の黄金茶碗は380gのシロモノ。18金製でもなく単純計算でもモノの価値としては当日相場で490万円以上ある。という事は金工作家等のプレミアムが倍以上も乗っている計算になるが、それを実勢の約4割弱で買い叩いたこの店もさぞやニンマリだっただろう。しかしそれを売る方も売る方で単にリテラシーが無かったのか?はたまたワケありの両者合意だったのかこの辺は当事者にしか分からないか。

しかし金価格も一寸遡ってコロナ禍前からでも当時の1g5000円台からはや2倍以上の化け具合だ。そういえば思い出すのがまだ1g1000円台だったバブル期の金装飾品を数年前にGINZA TANAKAへ売りに行った際に、当日のたいへんな混み具合を嫌気し売却を諦めた事か。そのまま金製品は再び家で眠ることになったが、今ではその時に手放さずに良かったとつくづく。昨今の斯様なゴールドラッシュでは家庭内で眠る金製品がいつの間にかそこそこの資産価値を持っている可能性もあるだけに、思い当たる向きは探してみてはどうだろう。


貧者の金

本日の日経紙グローバル面には「金に続き銀にもマネー」と題し、金価格の高騰を受け金より割安な銀へのマネー流入が加速し、銀の国際価格の指標となるニューヨーク先物が約3年3か月ぶりの高値圏に上昇している旨の記事があった。これまで地政学リスクのプレミアムが付いてきた金とは逆に銀は産業用需要の側面から景気減速懸念で長らく日の目を見なかったものだ。

そんなワケで今年の1月には金銀比価が1時90倍を超えていたものだが、さすがにこの倍率は行き過ぎとの自律反発なのかどうか2月に入ってから水準訂正が始まり、3月に入ってからは好調・不調の境目である50を昨年末から連続で下回っていた中国のPMIもこの50を半年ぶりに上回るなど経済停滞からの回復期待も一段の上昇の原動力となった。

しかし銀といえば思い出すのが、数年前にミーム株などを次々と物色していたロビンフッダーなる米のイナゴ集団がこの銀までターゲットにしてNY先物が8年ぶりの高値まで急騰したのが記憶に新しい。当時はインフレ調整後の銀価格は1000ドルが妥当とか無茶苦茶な煽りがあったものだが、出遅れ感のあった「貧者の金」の「金」への連動は今回どこまで持続性があるのか見ておきたい。


円下落どこまで

いやはや円の下落が一向に止まる気配を見せず、本日の東京外国為替市場で円相場は一時、約34年ぶりの円安ドル高水準となる1ドル154円台半ばまで値下がりした。昨晩に発表された先月の米小売売上高が市場予想を上回り、米経済は堅調だという受け止めが広がったことでFRBの早期利下げ観測が後退し改めて日米の金利差が意識されたことなどが背景となっている。

加えて現在の円安には投機筋の存在も大きいとされている。本日の日経紙マーケット面でもCFTC(米商品先物取引委員会)の直近データではヘッジファンドなど投機筋の売買動向を示す「非商業部門」の米ドルに対する円の売り越し額が2007年6月以来およそ17年ぶりの高水準となり、円売り建玉も同時期以来の高水準となっている旨の記事があった。

金利差や経済指標を使って測った円の実力は10円以上高いとも一部で報じられていたが、ここに投機筋の参戦などでそう理論通りに相場は動かないのは世の常。ともあれ政府・日銀の介入を試すかのような円安だが、日銀が早急に金利を引き上げるなどかなうべくもなく米利下げの助け舟が出るまで為替介入或いは牽制ポーズで時間稼ぎをするしか方策が無いようにも見える。取り敢えず目先は明日未明のFRB議長発言で利下げについてどこまで触れるのかこの辺に注目か。


開示の増加と課題

先月上旬の日経紙で「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示企業一覧」を掲載した全面広告が載っていたが、そこで「本紙面では東証から公表された開示企業一覧表の内容をはじめ関連トピックについて今後も継続的にアップデートとともに掲載する。」と謳っていた通り、先月に続いてちょうど一週間前の日経紙全面広告にて再度開示企業一覧が載っていた。

ちなみに昨年からの開示状況を辿ってみると、先ずプライム市場では2023年12月末は815社で49%、2024年1月末は899社で54%、2024年2月末で検討中も含め969社で59%となっている。またスタンダード市場では2023年12月末は300社で19%、2024年1月末は325社で20%、2024年2月末で検討中も含め348社で22%と月を経るごとに上昇している状況となっている。

各社その資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応として挙げられているのは配当の増額や自社株買いの実施が比較的多く、他には海外IR(投資家向け広報)の強化や国内IRの強化も次に多いが、この辺は先月末の日経紙にも2023年のIRに関わる人材の求人数が6年前に比べて4倍近くになった旨が報じられていたあたりでも見て取れる。

この同じ日の日経紙では「企業と投資家ともに変化を」と題した別の全面広告も見かけたが、このIRは情報開示だけでなく投資家との対話も担っている。今後は東証の動きに合わせて物言う投資家の動きも活発化してくる可能性があり益々その重要性は増すともいえるが、一方で課題はこれら人材の不足。東証はIR活動を支援する専門部署を立ち上げ企業の負担軽減に動き始めているが、並行してこうしたバックアップ体制も今後益々求められようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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