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プライマリーの旨み

さて、ギリシャのデフォルト懸念に加えて下げ止まりを見せない中国株に対する懸念も強まり日経平均は週明けに急落、この反動から昨日は急反発し本日は再度急落しあっさりと3週間ぶりの2万円割れとなった。こんな乱高下のなかにおいても昨日まで順調に上げ年初来高値更新となった銘柄に野村HDがある。

特に先週末に上げが顕著となったが、これは当欄で約2週間前に取り上げたトヨタ自動車の「AA型種類株式」の発行・販売に伴う引受手数料収入に注目が集まり海外投資家の買いが広がった事によるもの。

さてこのAA型種類株式、蓋を開けてみれば決定した発行価格は決定前日の同社株の終値を3割上回る10,598円と想定していた仮条件の上限となり、その購入希望額も発行額の4〜5倍に達しているという人気ぶりとなっている。

当の野村はホクホク顔で、眠っているお金を資本市場に呼び込む受け皿になるとしているが、欧米機関投資家はこの株式の性格上株主間の不公平につながるとの声明を公表する動きを見せておりこの辺はまだまだ行方を見守る必要がありそうだ。


増益の裏で

さて、昨日の日経紙には「運用10社、3割増益」と題して、公募株式投信の市場全体の残高がこの1年で21%増えるなど運用環境が良好で資産の時価が膨らみ、この結果として運用会社の手数料収入が増えて主要運用10社の純利益合計が前期比で28%増加した旨の記事があった。

やはり株高効果のこうした部分への影響が顕著に出た事例だが、運用成績自体は昨年末までに設定された日本株を対象とする公募投信580本のうち、今年の運用成績がTOPIXの値動きを上回ったのは170本強に過ぎない実に7割の投信が市場平均を下回るという側面が一方ではある旨が本日の同紙に出ている。

投資の環境が一昔前とは様変わりしてその選択肢自体は増えたものの、一方では従前の手法が通用しなくなってきている部分も既に出ており、特に近年はこの辺が優劣を左右している部分も多い。緩和マネーが今後どういった流れになってゆくのか先行きを見通すに各社思案のしどころである。


仮需崩壊とPKO?

ちょうど2週間前の06/22の当欄では「想定内のクラッシュ」として、一週間の下落率が約13%と2008年以来約7年ぶりの大きさとなった上海総合指数を書いたが、先週末も前日比5.77%安の3,686.915と続急落、その週末までの3日続落では約14%も急落するなどまさに「山高ければ谷深し」といった状況になっている。

また末尾では、政府が株高維持を重要政策としているだけにこれ以上過度の株安を容認するのかどうかにも今後の関心が向かうとしたが、やはりというか需給悪化防止の為にIPO承認の当面停止を決定、こうした制限に加え大手証券21社も総額約2.4兆円以上を株式投資に充てることを柱とする下支え策を発表してきた。

しかし需給悪化防止策はいいが、ブルームバーグによれば現状で上海と深圳両取引所での信用買い残の時価総額に対する比率は2日時点で4.4%と急落が始まる前の12日の3.6%から更に上昇、規制対象となっていない信用買い入れを含めればその比率は実に9%を超えるといい、対してショートは0.03%未満というからこれはもう需給悪化進行の典型だろう。

いずれ近々訪れるのは確定していたこの崩壊、こんな国を挙げてのPKOも懐かしいが発展途上市場では結局自国なりのやり方で試行錯誤しながらしばらく学習してゆく以外に方策はなさそうだ。


コーポレート・ガバナンス元年

さて、東証に上場する3月決算企業の41%が総会を開いた今年の株主総会のピークから約1週間が経過したが、ピークといっても同一日に95%以上もの企業が総会を開いていた一昔前と比べるに随分と分散が進んできたものだと今更ながら感じる。

ちょうど二年前の当欄では「株主総会変遷」と題して、末尾に「株主総会も時世其の時々のカラーが色濃く出て面白い。何れにせよ今週月曜日に書いた長期投資家誘致も株主との対話がキーになってくるだけに総会も益々重要性が増してこようか。」と書いた事があったが、この対話と言えば今年は企業と株主の双方に対話を促す指針が適用された初の総会となった。

3月に当欄で対話型に転換として取り上げたファナックは例年の約2倍の時間を割くなどかつてのIR消極姿勢から大転換、他企業も株主還元や成長戦略等具体的な発言が相次いだがやはり総じてROEが役員選任等も含めてあらゆるものの物差しになってきている傾向が顕著であった。今年のコーポレート・ガバナンス元年が、双方の距離を縮め好循環の起点となるのかどうか大いに期待したいところである。


政策株圧縮期待

さて月替りの本日も証券各社のレーティングが各銘柄で上がってきたが、これまでTOPIXを牽引してきたメガバンク系ではCSがみずほFGを投資評価ニュートラル継続ながらも目標価格を引き上げていたのが目に付いた。

同行といえばちょうど1か月前に他のメガバンクに先駆けてコーポレートガバナンス報告書を発表するなどしており、保有意義が認められる場合を除き政策株は保有しないと明記、政策保有売却を通じ資本効率が高まるとの先取りもあり数量もこなせる事で大商いを演じてきたのがこれまでであった。

当欄では新年度入りした4月あたまに「持ち合い解消促進」と題し上記のような銀行以外で百貨店を挙げ、末尾で今後は持ち合い株の最後のあぶり出しが促進される可能性が高くなるかと書いたが、斯様に政策保有株は囃された銀行だけの課題ではなく他業種にもわたり企業全体の課題、今後も呪縛の解放に注目したいところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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