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貸株事情

週明けの日経平均は欧州債務問題が再度深刻化するとの警戒感から幅広い銘柄が売られ、先週末にかけての上げがほぼ帳消しになる往って来いとなった。こうした不安が再度台頭するとなると全体の貸借構図にもまた変化が出そうだが、この辺に絡んでは先週末の日経紙夕刊に「空売り増加、投資家は弱気?」として空売り比率が4ヵ月半ぶりの高水準になった旨が書いてあった。

ところで空売りといえば、米投資信託界でも人気のIPO銘柄を貸し出すことで第1・四半期に思わぬ利益を上げた旨も最近のロイター記事で見かけた。株式が公開されて間もなくのリクイディティ乏しいなかで、需要の多いものにはプレミアムが付くワケで跳ね上がる貸し株料率が旨みという。

しかしタイトな環境といえば今は市場から無きライブドアの前身、オン・ザ・エッジの分割劇で新株発行までのタイムラグ絡めて暴騰したのがいまだ記憶に新しく、寧ろスクイズが連想されてしまうが裁定含めこの手はいろいろ需要もあるのだろう。まあ本邦の場合は比較的ガラス張に近く小口が集まったショートは最近スクイズされ易くなってきたし、付随的にまた逆日歩も一寸前に比べれば一日天下で無くなってきたあたりが以前と地合いの変化を感じるともいえる。


なんでもデリバティブ

さて、昨日の日経紙国際面にはオバマ大統領による「バフェット・ルール」等に絡めた大統領選票の行方の話が出ていたが、4日付けの同紙にも「米大統領選 株価を左右」との特集があり大統領選が取り上げられる機会が増えてきた。ところで大統領選といえば、今月初旬にはCFTCが米デリバティブ電子取引会社ノースアメリカン・デリバティブ・エクスチェンジが申請した米大統領選を予想するデリバティブ取引を却下した旨も報じられていた。

この「大統領選先物」なるものについては、既に5年前の当欄で触れたことがあったが、CFTCの言うところの「政治イベントを証券取引の対象にするのはギャンブル性が高く、公共の利益にかなわない」との見方があるものの、この手は世論調査よりも更に実際の結果との乖離が少なくそういった面ではなかなか使える。この手の申請は監督側のさじ加減ひとつだがそれでも海外ははるかに品揃え多彩でなんでもデリバティブである。

変わったところでは生命保険証の売買まで可能で実際それなりにリクイディティもあるようだが、契約も解約より換金率が高いことから契約者との成約もし易く、その契約者の生死で運用利回りが決まるので外的なファンダメンタルズとの相関性がほとんど無いというのがウリなようだ。

この日本で変り種といえば今はせいぜい天候デリバティブくらいのレベルだろうが、上記のようなものが日本で解禁にならないものだろうか?まあ、そうなればそうなったで闇のビジネスもまた横行しそうだが、作ろうと思えば作れる商品ばかりで少しずつでもこの辺の枝葉が広がってゆくことを期待したいものである。


ゴールドの功績

本日の日経紙マネー&インベストメントには「商品先物で分散投資」と出ており、商品を資産運用の一部に組み入れる人も出始めている折その仕組みや注意点などが載っていた。紙面には例として金・ガソリン等やはりTOCOMモノが挙がっていたが、やはり一般へのコモデイティ浸透に貢献したのはここ数年の金の値動きが奏功したのは認めざるを得ないだろう。

この金も証券界などからもネット証券大手中心に過去数社が金関連に参入してきたものの、そのタイミングが早過ぎたのか何れも志なかばで撤退を余技無くされたものだが、今月は楽天が投資資金を金などの貴金属に振り向けることができるサービスを始める等の動きが再度出てきた。

この辺もそうだが一昔前では考えられなかったこんな紙面を割いての商品先物紹介が漸く一般的になってきた裏で、胴元の取引所といえば東穀が解散を視野に最後の足掻きというか根回しが醜い。ただ一方でそんな胴元の最後の大型上場ともいえるコメのワラントなどが新規で出てきているのが現況で、並行してソースだけ抜かれてゆく動きが粛々と進行している。


需給バランスの変遷

さて、今年話題の金環日食をテーマにしたジュエリーの案内等を田中貴金属がしていたが、そういえば直近では同社が家電用のコネクターに使うメッキを金からパラジウムに置き換えたメッキ液を開発したと先週の日経紙商品欄で報じられていた。

過去数年で価格が跳ね上がっている金からの一部切り替えで金の使用量を5分の1に抑えられる模様で、他にも同様に価格が高騰している銅に関してはダイキン工業が冷媒が通る熱交換器内のパイプをアルミに替えたり、古河電気工業では今年より銅からアルミに替えた自動車用電線の量産を始めた模様だ。

前出の田中貴金属工業など昨年には上場しているフルヤ金属とシナジー効果を期待して資本業務提携契約締結を行っているが、同社の強みとするPGM系レアメタルも価格の高騰から回収技術の確立が急務となっている。この辺はクラレや日本化薬、森下仁丹など上場企業組の活躍を以前も書いたことがあったがこれらの確立と共に構造も価格もまた変わってゆくのだろうか。


円安は国益?

昨日の日経紙一面の「社長100人&地域500アンケート」の見出しには国内景気「改善」58%と出ていたが、国内景気が改善に向かう要因として円高修正の指摘が63.2%で最も多かった。ここ最近の一面には例えば04/02付けもそうで一面には景気復調、内需が支えとして円高の一服で輸出も好転との見出しが出ている。

公というか一般的には何処から見ても円安大歓迎といったところなのは否めない。恩恵を受ける電気や自動車の主力産業は諸手を挙げての歓迎だし、市場は市場で225銘柄にはこれらの主力がズラリと並んでいる構造上からこれらが復活すれば指数も自動的に上がることになり相乗効果抜群といったところ。

しかし今まである程度は小売に反映されるまでのタイムラグがあったり、震災以降の円高でさしたる影響というか実感もないままここまで来たが、例えばガソリンなど従前の1ドル100円台の為替水準だったらどうだろう?円安は着実に輸入物価を押し上げ当然インフレも意識されてこようし当然短期債等への影響もさけられないだろう。

どこも彼処も円安歓迎でこれを讃えるのもいいが、発電ひとつ取っても原発にナーバスになっているいま恒常的な円安下では更なるコストアップになるのは目に見えているし、上記の通り円安歓迎産業界も利益は増えど空洞化の動きはとまらないのは想像に難くは無い。右往左往の政府を横目にしぶしぶと本意でない追加金融緩和に動いた日銀であるが国益という観点で見ればあまり手放しで喜べるとはいえなそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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