522ページ目

幻となる限日取引

さて、先週にはTOCOMで銀先物が1984年の上場以来初めて1グラム100円を超えたのに続いて、金先物も連日の高値更新から28年ぶりの高値にまで躍り出て、地金の方でも買い取りが遂に4,000円の大台に乗った。

連れてETF関係の方も、純銀上場信託、SPDRゴールド・シェア、純金上場信託、金価格連動型などが上場来高値を更新となっている。原資産周辺がそんな感じであるから日経・東工取商品指数の方も昨日には2008年9月のリーマン・ショック直後以来の水準を更新となっている。

ところでこの日経・東工取商品指数だが、約一年前に鳴り物入りで上場したものの値洗いにおいて理論価格との乖離が著しくなる設計ミスによってリクイディティーが著しく低下してしまっているのが現状。昨日もこんな高値更新の活況下とはいえ僅か65枚の出来高であったが、こんな状況から5月の新甫発会から限月取引を導入することを発表している。

業界活性化論上にはかねてから一部限月取引のデメリットが上がってきた経緯があり、そんな折の限日取引の登場だっただけに期待していたものだが、約1年で限月回帰の動きとなった。こうしている間にも指数系もETFが力をつけそうな気がするが、やはり要は設計である。


バリューを見出す

さて、日曜日付けの日経紙一面には、東日本大震災の影響で日本企業の投資戦略が急減速している旨が載っていた。特に企業のM&A件数は先月の状況を見てみれば震災発生前までは64件と前年同期とほぼ同じペースであったが、震災後から期末までは66件と前年同期の141件から急減となっている模様。

このM&Aといえば先月に当欄でも、政府が企業のM&Aを促す為の産業活力再生法改正案を閣議決定し企業のM&Aを促進させる方向で進んでいる旨を書いたばかりだが、国同様各社共に新年度予算に苦慮している状況下で買収案件も一旦棚上げになってしまっている格好と状況が一変してしまっている。

またファイナンス関係も、先週当欄でコメントしたように今月にIPOを予定していた向きが震災の影響で続々と上場を延期。社債市場からの調達も震災後から月末まで条件決定したのは1社のみで、調達額は前年同期から9割近く減少しているという。

ところで今迄成長産業を築いてきた著名経営者はかねがね「不況であるが故にM&A等においてもチャンスが巡ってくる」との発言をしている。同じ日曜版の「けいざい解読」にはさわかみ投信で額面を下回った住金株を1株41円で買った話が出ていたが、体力のある向きにはこうした自粛ムードの状況下においてバリューを見出してゆくのが商機ではないかと思う。


有終の美を飾る赤プリ

本日は期末、さまざまな思いを込め大方の事業年度が終るが、もう一つ本日をもって営業を終了することとなったのがあの「赤プリ」ことグランドプリンスホテル赤坂である。前にも少し触れたがバブル期の象徴の一つで私も昔はよくお世話になったものだが、それも55年の歴史に幕を下ろすこととなった。

閉館を決めた当初はこんなロケーションで何故?と寝耳に水であったが、この赤プリ跡地の再開発概要として西武HDは、2棟の高層ビルを建設し現在の半分以下の客室数の高級ホテルを核とする複合施設と100〜200戸の住宅専用施設にする予定で着工は2012年春、完成が15年の予定とか。老朽化が理由の一つとなっていたが、同じグランドプリンスでは高輪なんぞもどうなのだろう?と思うが西武HDの対株主政策色も濃いとも一部ではいわれている。

思えば、昨年末には「赤プリ ラストクリスマス」と題した案内が届いていたが、あの11月末からスタートする赤プリのクリスマスイルミネーションももう見られなくなるし、絶品だったフォワグラサンドも此処ではもう食べられなくなると思うとやはり寂しい。

さて、そんな赤プリも周知の通り来月からその取り壊しが始まるまで原発避難者に全客室を避難所として提供することが決まっている。震災当日も帰宅難民の為に建物を開放した経緯があったが、まさに有終の美を飾るとはこのことだろうか。


敢行組と延期組

配当落ち後の動向が注目された日経平均であるが殊の外強く、本日は円安や欧米化部高も背景に3日ぶりに急反発となった。この間には震災の影響で操業停止していた工場などが再開のメドが立ったとの発表が好感されて一気に値を戻す銘柄群もその貢献度は高かった。

そんな中には、奇しくもあの東日本大地震当日が新規上場日となったカルビーも含まれているが、一昨日には新規上場来の高値を更新しまずまずの足取りとなっている。さて、近いところでカルビーに続くIPOとしては島根銀行、そして創薬ベンチャーのラクオリア創薬が予定されていたが、これは上場延期を決定。

この他来月まで見てみると、液晶ディスプレー用ガラス基板のAvanStrateが4/12の上場予定を延期、温度センサー会社のSEMITECも4/13の上場予定日が延期となっている。いずれも株式市況等の影響を勘案してと説明しているが、ここPOインデックス自体は底堅かったもののやはり数社はこうして震災による影響が重く見られたということになる。

昨年の新規上場は22社。直近のピークが2006年の188社であったから、これからすると実に約9割減少ということになる。東証は昨年第一生命と大塚HDという2件の大型案件があったものの、世界のそれと比較すれば存在感は薄い。ただでさえIPOが減少しているところに今回の震災は泣きっ面に蜂だが、ここは先行組の成功がひとつの試金石となろうか。


火事場泥棒?

本日の日経紙経済面には東日本大震災を受け、震災後も日本でのビジネスを継続してゆくことをアピールする狙いもあって、米ゴールドマン・サックス始め米モルガン・スタンレー、米JPモルガン・チェースなど欧米の大手金融機関の間で経営幹部が日本を訪問する事例が相次いでいる旨が載っていた。

しかし外資系といえば今回の震災では行動の早さが目立った。自動車、家具、アパレル、ソフトウェア、たばこ、ヘルスケア、ジュエリー等々本社機能を関西に移転したり大半を出国させたりで、上記の金融系など一頃は幹部含めた人員引き揚げの用でプライベートジェット需要が増しているとの話も浮上したことがあった。

漸く戻ってくる動きも見られるが外資系金融といえば、震災後のパニックに陥ったマーケットにおいて、これを抑える為に一時的に市場を閉鎖するよう東京証券取引所に要請する動きがあった事も表面化したが、そんな中でもゴールドマン・サックスは市場流動性を提供し、顧客投資家ニーズに答え続けるのが責務と一貫して主張してきたという。

15日の市場ではサーキットブレーカーが2回も発動となったが、その間に個人は売りたくも無いものまで已む無く吐き出され、いざ敗戦処理が一服してみれば外資系はこの混乱の一週間で約1兆円近くも買い越しが膨らんだことが明らかになっている。なんでも物は言いようだが、これも当局の協力?無しには実行出来ない事もあり猜疑心も出て来るのは自然なところか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

1

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31