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御家芸の技術力

さて、昨日は日経紙でもモノトーンの全面広告が出ていたように、帝国ホテルが開業120周年を迎えているが、そういえば此処では先週第12回日経フォーラム「世界経営者会議」が開催されていたのを思い出した。ところでこの会議の討論の中では先の日経紙一面にも出ていたようにサンディスクのCEOは「日本は先端的なものづくりを国内にとどめなければいけない」と強調し、ノウハウなどが流出した場合「取り戻すのは容易ではない」と指摘している。

技術流出といえば日本が世界に誇る金型技術では、昨年国内最大手のオギハラがタイ自動車部品大手の傘下に入り、一部工場は中国企業が買収したが、そんな折先月だったか自動車用金型で国内2位の富士テクニカが同3位の宮津製作所の事業を買収し、富士テクニカは企業再生支援機構から出資を受けて経営基盤を強化する報道があったばかり。

またも御家芸流出の懸念となるところだったが、既に優秀な人材、頭脳の海外流出から、日本が培ってきたさまざまなノウハウが他国に流れ出る動きは彼方此方に見られる。不況が主因なのはもとより技術者レベルも他国の優遇を求めて日本を離れる裏にはその評価というか地位の低さが起因している部分もあるのではないか?

上場企業で見ても先週など株式市場ではこの円高下においてもソニー株が、米アップルによる買収対象の一つになるかもしれないと思惑を呼んで上昇した経緯があったが、他の一部ハイテクでも異様な強さを見せていた物も多い。結局これら企業は独自の技術力を持っているところばかりでその技術水準の高さには定評がある。スポーツ界の誇らしい流出と違ってこと産業界では大いに懸念すべき事だろう。


何処まで暴けるか

さて、週末の日経紙経済面には「公募増資企業、株価に不信な動き」として、東京証券取引所と証券取引等監視委員会が、インサイダー取引に基づいた不正な取引が実施されているかどうか国内外のヘッジファンド等について調査を進めていることを明らかにしている。

当欄では7月に国際帝石の巨額増資で株価が急落した際、「〜確信犯的なショートが直近で入っているあたりがなんとも怪しい」とコメントしておいたが、この銘柄以外にも今まで怪しいものについては殆どその都度触れてきたつもりである。

こと今迄規模の大きな、例えば225採用銘柄などは当然リクイディティーも申し分なく魑魅魍魎の筋が紛れ込むのにはうってつけの素材である。出来高一つ取っても露骨な事例が存在するのに当局が思い腰を上げずに何時の間にか風化してしまうのが長年疑問であったが、
はたして今回の調査で何処まで暴けるのか注目。

斯様に公にされる摘発では雑魚しか挙がって来なかった裏には政治的な事情があるのか、はたまたその沿革から前例踏襲主義の産物で財源の問題がネックになっているのかその辺は定かでないが、今回の件でも従前通り雑魚挙げ程度でお茶を濁す程度に止まったらこうした部分でも国際標準の道はまた遠のくということになる。


世界に伍する日は来るか

さて、当欄のカテゴリーリストの「商品先物」でちょうど300番目となる今回は、今週の日経紙上で週明けの「日本の商品先物取引 グローバル市場へテークオフ」という見出しの元、久し振りに全面広告の特集が三頁に亘って組まれていたあたりに触れてみる。

今や渦中の東穀取の「2011年1月4日 東京穀物商品取引所は生まれ変わります」という広告は、はて「輪廻」を意味するのかどうかその去就を見守りたいが、それはさておき同文中ではインフラ的にはこのように整いつつありますといった話が羅列してあったが、中でもスパン証拠金などはもっと早くから整えるべきであると思いは常にあった。株式先物などやっている向きにはスパン証拠金は常識で、これが未だ非導入と解った段階でもう参加意欲をなくしてしまうのは当然なところだろう。

商品的には「商品指数」登場や、「損失限定取引」など委託者保護を謳ったものも予定されているが、「ETF」などへの資金の集まりの相違が明白でエッセンスだけ証券系へ流れ始めている感も強い。

また、業界でも急ピッチで対応作業が進んでいるとあったが、先に書いたシンガポール取引所のオーストラリア証取買収は城外からの資金流入に対応したものだが、逆に資金流出が続いている事情から国内ではワンストップ型がそう性急な課題ではないとの負の認識も一部台頭してきてしまっているのも憂慮すべきところか。

見出しには「〜商品先物取引はますますその影響力を高め、世界経済にとって不可欠な存在になってきた。日本でもシステムの高速化、ETFの登場で信頼性、利便性が増し、世界に伍しようとしている。」とあったが、こんな言葉とは裏腹に直近では取引所国内二位の東穀取の存亡がいわれ、取引員もまだまだ淘汰途上の様相、はたして世界に伍する日が来るのは何時の事になるのだろう?


単純代替論

昨日の日経紙経済面には「法人税率下げ 財源で応報」とあり、2011年度税制改正の目玉である法人実効税率の引き下げのための財源探しが熱を帯びてきたと出ている。政府税制調査会は法人の税負担の付け替えによる財源確保の検討に着手し、これに対し産業界は純粋な減税を求めている。

日本の法人実効税率は各国と比べて高いとの認識は何処でも共通で、例えばデフレ下の悪環境とも相俟ってここ近年ではそこそこ高級なブランドなど外資系がオフィスや店舗を続々と閉鎖し、日本拠点を他の国に移している一因もここに一部あるともいわれている。

しかしながら費用対効果が特に重視される外資系においては経済成長率著しい新興国などに投資をシフトしてゆくというのは自然な流れで、こうした国内空洞化を鑑みての論に対して消費税引き上げ等含めた新税創設論などあるが、欧州などを見てみるに基本的な生活費等殆ど消費税がかけられていない部分もあり、この辺を一括りにしてしまうような構想は危うさも残る。

首相は、週明けの集中審議で実効税率については「近隣国との比較でまた高いと指摘されている」としていたが、上記の件や低いとされる欧州などとでは社会保険料などが可也違うという部分も把握しているのだろうか?景気で左右される法人税より確実に取れる路線に傾斜というところなのだろうが、最低この辺の事情は把握しておいてもらいたいもの。


世界8位の時価総額

昨日は、シンガポール取引所がオーストラリア証券取引所の買収に向けてTOBを実施すると各紙で報じられている。高成長が続くアジア太平洋地域に城外から資金流入が加速する中、この増大する取引に対応し競争力を高めるのが狙いという。

オーストラリア証券取引所といえば、ちょうど一週間前に取り上げた資源大手の豪英BHPビリトンや英豪リオ・ティントなどが上場しており、この買収が実現すれば両証取で上場企業の時価総額は約一兆9,159ドルとなる。これでカナダのTSXグループを抜いて世界の株式市場ランキングで8位に躍り出ることになるという構図だ。

しかし、同じアジアでこうして証券、デリバティブ取引所の国際的合併が進展しようかという動きがある一方で、日本ではいまだ株主の理解が得られない懸念などとして「総合取引所」に慎重な向きも一部あり遅々として進まずといった光景はなんとも歯痒い感がないわけではない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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