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守れるかブランドイメージ

最近目立つようになったものには震災以降、各所のアンテナショップやネット販売などで、原発事故に絡む風評被害に苦しむ福島県を始めとした被災地を応援しようとそれらの県を中心とした産物を扱う向きの急増がある。

しかし立場変われば解るような気もするが、各国ではこの辺の扱いがやはりナーバス。本日も日経紙国際面には「日本の食品、警戒強まる」として載っていたように輸入規制が特に厳しくなってきているのは「食」で、当初は中国が5県からの乳製品と野菜とその加工品、果物、水産品の輸入を禁止、これ以外の産地についても全ての食品と農水産品に対して放射線検査を実施していたが、直近では25カ国・地域が輸入規制を布き一部に至っては日本産全ての食費輸入を停止にしている向きもある。

汚染一色という日本のイメージが、実態以上に独り歩きし不当な風評被害や禁輸措置に発展する事態は可也問題であるが、そうした背景を作り出している一因として政府のディスクロ体制が先ず問題か。現在の危機がどの段階なのか、正しい情報を素早く日本から発信すれば風評被害や過剰反応は減らせる筈だが、米国の最新鋭無人偵察機が撮った原発の写真も公表を控えさせ、気象庁の放射性物質拡散予測も政府側は公開を控えさせていた。自分の国の放射性物質拡散予測を知るのがドイツなど海外のHPが頼りというのも異常な光景だったが、先ず徹底すべきことは、的確且つ十分な情報公開だろう。

今週の日経紙にも書いてあったが、「安心・安全」というのは日本が長年かけて築いた一種の「ブランド」である。上記の中国などは特にこれを好み高価な食品や化粧品等には大金を叩いてきたものだが、大地震を堺に今や売り場は「原産国は日本ではない」とのアピールに必死という様変わりである。

輸出がここで滞れば経済の要だけに復興を遅らせるのは必至、世界各国が今日本を応援している中、この連携の枠組みをうまく使い各国と密に連絡し合い、包み隠さず情報公開しながら情報不足が招いた不安の解消に努めるべきだろう。


世論と解釈

さて、政府は先に東日本大震災の復旧・復興に向けて検討している基本法案の素案を明らかにしているが、5年間を「集中復旧復興期間」と位置付け、集中して人、物、カネを投入と。復興財源を確保するために復旧復興特別税の創設や未定ながら震災国債の発行などを打ち出している。

さてこの復興財源としての「震災国債」だが、これについては日銀引き受けの検討についても言及していた。一般的に国債を中央銀行が引き受けるというのは財政法で禁じられているが、「特別の事由がある場合において国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りではない」とも定められており、これを巡って目下のところ賛否両論である。


しかし上記の財政法の一文に絡んでは、国有化論が出ている東電絡みで原発事故に適用される原子力損害賠償法の一文「異常に巨大な天災や社会的動乱時には電力業者の賠償責任を免責」との規定も同時に思い浮かぶ。国民感情を考慮して政府側はこれに関しては否定的な発言をしているが、これは日銀とて同じだろうか。

こうして考えると今回の震災ではあらゆるものにモラルハザードが付き纏う。実施するか否かは未定ながらいずれも万人の理解が得られる結論を探らなければならないだろう。


幻となる限日取引

さて、先週にはTOCOMで銀先物が1984年の上場以来初めて1グラム100円を超えたのに続いて、金先物も連日の高値更新から28年ぶりの高値にまで躍り出て、地金の方でも買い取りが遂に4,000円の大台に乗った。

連れてETF関係の方も、純銀上場信託、SPDRゴールド・シェア、純金上場信託、金価格連動型などが上場来高値を更新となっている。原資産周辺がそんな感じであるから日経・東工取商品指数の方も昨日には2008年9月のリーマン・ショック直後以来の水準を更新となっている。

ところでこの日経・東工取商品指数だが、約一年前に鳴り物入りで上場したものの値洗いにおいて理論価格との乖離が著しくなる設計ミスによってリクイディティーが著しく低下してしまっているのが現状。昨日もこんな高値更新の活況下とはいえ僅か65枚の出来高であったが、こんな状況から5月の新甫発会から限月取引を導入することを発表している。

業界活性化論上にはかねてから一部限月取引のデメリットが上がってきた経緯があり、そんな折の限日取引の登場だっただけに期待していたものだが、約1年で限月回帰の動きとなった。こうしている間にも指数系もETFが力をつけそうな気がするが、やはり要は設計である。


バリューを見出す

さて、日曜日付けの日経紙一面には、東日本大震災の影響で日本企業の投資戦略が急減速している旨が載っていた。特に企業のM&A件数は先月の状況を見てみれば震災発生前までは64件と前年同期とほぼ同じペースであったが、震災後から期末までは66件と前年同期の141件から急減となっている模様。

このM&Aといえば先月に当欄でも、政府が企業のM&Aを促す為の産業活力再生法改正案を閣議決定し企業のM&Aを促進させる方向で進んでいる旨を書いたばかりだが、国同様各社共に新年度予算に苦慮している状況下で買収案件も一旦棚上げになってしまっている格好と状況が一変してしまっている。

またファイナンス関係も、先週当欄でコメントしたように今月にIPOを予定していた向きが震災の影響で続々と上場を延期。社債市場からの調達も震災後から月末まで条件決定したのは1社のみで、調達額は前年同期から9割近く減少しているという。

ところで今迄成長産業を築いてきた著名経営者はかねがね「不況であるが故にM&A等においてもチャンスが巡ってくる」との発言をしている。同じ日曜版の「けいざい解読」にはさわかみ投信で額面を下回った住金株を1株41円で買った話が出ていたが、体力のある向きにはこうした自粛ムードの状況下においてバリューを見出してゆくのが商機ではないかと思う。


有終の美を飾る赤プリ

本日は期末、さまざまな思いを込め大方の事業年度が終るが、もう一つ本日をもって営業を終了することとなったのがあの「赤プリ」ことグランドプリンスホテル赤坂である。前にも少し触れたがバブル期の象徴の一つで私も昔はよくお世話になったものだが、それも55年の歴史に幕を下ろすこととなった。

閉館を決めた当初はこんなロケーションで何故?と寝耳に水であったが、この赤プリ跡地の再開発概要として西武HDは、2棟の高層ビルを建設し現在の半分以下の客室数の高級ホテルを核とする複合施設と100〜200戸の住宅専用施設にする予定で着工は2012年春、完成が15年の予定とか。老朽化が理由の一つとなっていたが、同じグランドプリンスでは高輪なんぞもどうなのだろう?と思うが西武HDの対株主政策色も濃いとも一部ではいわれている。

思えば、昨年末には「赤プリ ラストクリスマス」と題した案内が届いていたが、あの11月末からスタートする赤プリのクリスマスイルミネーションももう見られなくなるし、絶品だったフォワグラサンドも此処ではもう食べられなくなると思うとやはり寂しい。

さて、そんな赤プリも周知の通り来月からその取り壊しが始まるまで原発避難者に全客室を避難所として提供することが決まっている。震災当日も帰宅難民の為に建物を開放した経緯があったが、まさに有終の美を飾るとはこのことだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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