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敢行組と延期組

配当落ち後の動向が注目された日経平均であるが殊の外強く、本日は円安や欧米化部高も背景に3日ぶりに急反発となった。この間には震災の影響で操業停止していた工場などが再開のメドが立ったとの発表が好感されて一気に値を戻す銘柄群もその貢献度は高かった。

そんな中には、奇しくもあの東日本大地震当日が新規上場日となったカルビーも含まれているが、一昨日には新規上場来の高値を更新しまずまずの足取りとなっている。さて、近いところでカルビーに続くIPOとしては島根銀行、そして創薬ベンチャーのラクオリア創薬が予定されていたが、これは上場延期を決定。

この他来月まで見てみると、液晶ディスプレー用ガラス基板のAvanStrateが4/12の上場予定を延期、温度センサー会社のSEMITECも4/13の上場予定日が延期となっている。いずれも株式市況等の影響を勘案してと説明しているが、ここPOインデックス自体は底堅かったもののやはり数社はこうして震災による影響が重く見られたということになる。

昨年の新規上場は22社。直近のピークが2006年の188社であったから、これからすると実に約9割減少ということになる。東証は昨年第一生命と大塚HDという2件の大型案件があったものの、世界のそれと比較すれば存在感は薄い。ただでさえIPOが減少しているところに今回の震災は泣きっ面に蜂だが、ここは先行組の成功がひとつの試金石となろうか。


火事場泥棒?

本日の日経紙経済面には東日本大震災を受け、震災後も日本でのビジネスを継続してゆくことをアピールする狙いもあって、米ゴールドマン・サックス始め米モルガン・スタンレー、米JPモルガン・チェースなど欧米の大手金融機関の間で経営幹部が日本を訪問する事例が相次いでいる旨が載っていた。

しかし外資系といえば今回の震災では行動の早さが目立った。自動車、家具、アパレル、ソフトウェア、たばこ、ヘルスケア、ジュエリー等々本社機能を関西に移転したり大半を出国させたりで、上記の金融系など一頃は幹部含めた人員引き揚げの用でプライベートジェット需要が増しているとの話も浮上したことがあった。

漸く戻ってくる動きも見られるが外資系金融といえば、震災後のパニックに陥ったマーケットにおいて、これを抑える為に一時的に市場を閉鎖するよう東京証券取引所に要請する動きがあった事も表面化したが、そんな中でもゴールドマン・サックスは市場流動性を提供し、顧客投資家ニーズに答え続けるのが責務と一貫して主張してきたという。

15日の市場ではサーキットブレーカーが2回も発動となったが、その間に個人は売りたくも無いものまで已む無く吐き出され、いざ敗戦処理が一服してみれば外資系はこの混乱の一週間で約1兆円近くも買い越しが膨らんだことが明らかになっている。なんでも物は言いようだが、これも当局の協力?無しには実行出来ない事もあり猜疑心も出て来るのは自然なところか。


権利付き最終日

週明けの本日は配当権利付き最終売買日、これによって明日の日経平均株価の配当落ち分は約86.24円と試算(TOPIXで9.21ポイント)されているが、この落ち分が現況の環境下で妥当か否か一部では減配リスクが懸念される中を、全般ではこの落ち後に改めて資金流入がどの程度あるかが今後の焦点となろうか。

さて今回も高配当モノや定番人気の株主優待モノなどは、やはりツナギが入っている様子が見受けられたが、今年の場合は状況が状況だけに配当落ち後に想定外の変更があってもなんら不思議ではないところが実に微妙、早々に未定を打ち出したところもあるが別な意味で高くついた等となるケースも出るか。

だいたい定時株主総会にしても、毎事業年度の終了後一定の時期に召集しなければならないと会社法では規定しているものの、通例の通り数ヶ月以内に召集されるかどうか今回の震災によって全て予定通り開催されるか否かこちらの方も不透明である。

もう一つ、先週末には市場デリバティブ取引に係る注意として各社重ねての注意喚起が為されている。先週始めに少し触れたが、各社大幅な証拠金引き上げ措置により本日の夕方に実施される値洗い処理によって、既存建玉を保有している向きでも追証が発生する可能性が当然出て来るケースも想定される。各々周知徹底しているだろうが、日中相場のみでイブニングを見なかったゆえに一晩で値洗いが一変していた等の冗談のような話も実際にあったワケで、こんな再来でまた一寸した混乱が生じないのを願うばかりである。


2002年の再来?

さて日銀が連日大量の資金供給をする中で、金融系では週末から問題になっていた件でみずほ銀行の大規模のシステム障害が今週も続いた。公共・公益性のある銀行業務で数日間に亘って障害が続くのは忌々しき事態だが、昨日も滞っていた振込み関係は処理を終えたとの発表後に未処理報告が続々と出ている。

よりによってこんな重要な時期にライフラインの役目を円滑で実行できない様はとんだ失態だったが、ここ一連の頭取の説明を見ていても上記の如く復旧に関するディスクロが二転三転し、さながら東京電力の原発事故や計画停電発表について関係者が右往左往している状況に酷似している。

しかし、これで思い出すのはこのメガバンク統合時の初日である。折しも新年度から大規模なシステム障害が発生し、たしか数週間程度預金者の混乱を引き起こした記憶があるが、こんな洗礼を受けているはずの同行がまたしても同じ事を繰り返しすなど、はたしてその教訓を生かせなかったのか?

金融インフラが脅かされた例としては、ライブドアショック時に大量の注文を処理しきれず全銘柄が取引停止になってしまった2006年の東証があったが、この震災下で頑なに取引続行を謳う取引所とて投資家側から言わせればまだまだオペレーションに疑問符が付く部分もある。風評被害が相次いでいるが、こと金融システムへの信頼が揺らいでしまうようなこれら事例もまた恐く避けなければいけないものである。


個別も仕手化

さて、週末からデリバティブ市場での異常値のさまに触れてきたが、今回のマーケット直撃では個別でもなかなか普段見られない動きが起きた。復興関連のゼネコン系が買われるのは阪神の時同様であったが、対極にあったのが原発関連で各々好業績や年明け早々に出た個別の好材料を囃して食い付いていただけにガチガチに売られた。

東電も然り、インフラ産業の特異性ということやこれまでのJALや破綻銀行の連想で彼方此方から「国有化説」がやはり実しやかに出たが、当然株価も3日連続のストップ安から1,000円の大台割れは分割等も考慮して実に27年ぶりであった。震災前の相場ではこの時期柄、配当狙いの観点で見直されこれまた食い付きがあっただけに、インカム狙いで買ったつもりがその配当も急遽未定、逆にとんでもない仕手株に化けたパターンか。

毛色の違うところでは、TOBを実施中の銘柄まで異常値が出ている。当欄でも最近触れた、エノテカやCCC、それにアートコーポもTOB価格を下回るなど、合理性云々で説明のつかない株価出現で裁定云々を超越した現象なのだろうと改めて実感。

他にも通常は逃避資金の逃げ込み先になるディフェンシブ物まで全滅したものの、原発復旧の進展状況や大量の外人買いが好感されてほぼ戻るものは戻っているがこの一巡後が正念場、ダメージや今後の影響が未知数なだけに今の復興関連総買いの様相が一段と不気味に映り個別でもまた取組内容が変わってくるのは想像に難くない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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