584ページ目

垣根が復活?

NYでは株式が3日間で500ドル超の下げとなり、日経平均も本日は一時10,500円割れとなるなど引続き世界的な株安の流れが継続、この辺は周知の通り先週にオバマ新政権が新たな金融規制案を発表したものに因るところが大きいが、取り敢えずは消化不良で一旦巻き戻しておこうというところか。

この規制案、1930年代の「グラス・スティーガル法」の復活かといわれ、銀行・証券の垣根を高くする派の元FRB議長のボルカー氏や国際競争力の観点から難色を示すガイトナー氏やらと取り沙汰されているが、夫々の立場もあれば素材も大きすぎるということもあり、ハードランディングしないよう均衡を探るのは容易であはるまい。

また、成長著しい中国経済に絡んでチャイナマネーへの影響も懸念される。ここ最近のGM傘下のサーブを一部買収した北京汽車や、フォード傘下のボルボ等を買収した吉利汽車等を取ってみてもその背景には米投資銀行の影がチラついているし、これから双方にカネが落ちる青写真を描いていた彼らに取って可也厄介な話だろう。

今後は詳細を巡って議会との調整もあろうが、何れにしても思惑で株式、商品その他マーケットが揺れる機会が増える可能性もあるだけにその成り行きには注目しておきたい。


お上も投資家も右往左往

やはりどうしても素材が大きいのでJALネタに傾斜してしまうが、本日の日経紙で目に留まったのは企業総合面、「日航 法的整理-再生はできるか」欄か。冒頭では、TV番組にて2社体制の堅持を唱えてきた国交相の一転した軌道修正発言に対して波紋が広がっている旨の事が載っていたが、これに限らず整理に至るまで折に触れ彼のブレ具合は時系列で追われても仕方無いところだろうと思う。

昨日コメントしたようにこの手の事前予告型などは尚更自己責任を論ずるまでも無いが、中には素直に彼の数ヶ月前の発言である法的整理は考えていないとか、自主再建は十二分に可能とかの発言を頼りに右往左往した投資家も居よう。自己責任の範疇で株主責任を問われるのは当たり前だが、問題はリップサービスが多ければブレも多いその言動か。

一寸この辺の指摘が出るとまた庇う役目もしっかり徹底されていて、日証協の会長などはこれら一連について「発言や報道が交錯しても株価の動きに誰かが責任を持つという事はありえない」とし政府に責任はないとの弁、加えて06年の大型ファイナンスの件でも「当時の情報開示や、引き受けた証券会社に問題があったとは考えていない」とのオマケも付けている。先週もコメントしたように、こんなインチキ増資直前の株主総会で一言もこれに触れず突如として敢行する情報開示に問題は無いのであろうか?

末端レベルでこうした経緯があれば、それこそ間違いなく風説の流布やら開示義務違反やらで応分の処分という方向へ持っていかれるだろうが、上がやる分にはお咎めなしか。しかし市場もそうだが、もう一つ日経紙の春秋に出ていたように空港等に見られる政と官の有形無形の圧力でまともな規律が働いて来なかったという航空政策も本当に罪深い。世界から遠ざかってしまった日本が何処まで地盤沈下を回復出来るか、この際だからこの辺にもメスを入れるいい機会だと思うが。


経営も相場も?

さて、事前予告型という異例措置にもかかわらず会社更生法申請当日も数円のところで厚い買い板が並んでいる様を見るにつけ「腐ってもやはりJAL?」などと妙な感心を覚えたものだがこのJAL、これら申請に伴いリスクヘッジの為に行っている燃料の先物取引について解約を迫られる見通しであると各紙で伝えられている。

主にブレント燃油やシンガポール・ジェット燃油の先物取引ということになるが、これによって現況でJALの支払い義務のうち数百億円(これも日が経つにつれその額がどんどん膨らんでいる)が、債権カットによって取引相手が請求権を失う見通しであるというなんとも後味の悪い強制手仕舞いである。

ちなみにこの先物取引での支払い義務は原油価格高騰時に執行した引かれ玉があってのものだが、もう一つJALといえば記憶にあるのが80年代のドル先物予約だろうか。当時150円以上していたドルであったが10年以上もの先物予約をした結果、長年に亘ってとんでもない相場で機材を購入するハメになったわけだが、こんな案件がよく通ったなと別な意味で感心するが総じて相場モノはボロボロだなと。

知人のJALキャビンアテンダントも相場は上手くはないがまあそれはともかくとして、こうした燃料価格も今後の動向によってはノンヘッジのままでは再建下その影響もさすがに懸念される。この辺のデリバティブ事情も今後どういった形で調整してゆくのか関心が向くところである。


夫々のモラル

本日の株式市場は円が強含んだこともあって続落となっていたが、業種別では金融系が弱く年明けからスルスルと上昇してきた銀行株も三井住友F始めとして軟調を余儀なくされていた。

さてこの三井住友F、今週中には公募売り出し価格が決定する見込みということで引き受け筋からの売り物も云われているが、まあ原理としては値決め日よりも下鞘確実なわけで、これをターゲットとしてショートする裁定はもうお約束だろうか。

しかし当欄で昨年、大手一角の連中とプライマリービジネスはやはり旨みがあると書いた事があるが、昨年12月までに証券会社が得た引受手数料は1,500億円以上にも上っているという。年末の日経紙では「黒子役、市場を圧迫」として無謀な増資を進めれば、企業は株価下落のシッペ返しに遭う、それ以上に憂き目をみるのは個人を含む投資家だ。としているが当の本体もロックアップ期間を過ぎた途端に一転して従前とは違ったファイナンス見解を述べ始める等、投資家を欺くような言動にも問題が残る。

こんな時世で受け側も本音では受けたくない?向きのところも少なくないと思うが、そう考えると少しでも値下がりリスクを回避しようとする上記一連の行動も一概に避難するのは何やら酷な気がしないでもないが、そうなるとやはり掟破り的な大型増資を敢行した発行体に矛先が向くのはやはり仕方の無いことなのかもしれない。


選択肢多様化によるスイッチ

先に野村アセットマネジメントが実施した第五回の「投資信託に対する意識調査」によると貯蓄から投資へという国の方針について、およそ6割が見聞きした事があるとしている一方で、6割近くが投資は必要ないとの考え方を示していた模様だ。

さて、そうした投資は必要ない向きは兎も角として実際に取り組んでいる向きについては、週末の日経紙にて投資信託協会が15日に発表した09年の投信概況が載っていた。それによれば、新興国の株式などに投資するタイプに資金が集まる一方、分散投資でリスクを抑えたバランス型投信への資金流入は急減と、世界的な金融危機で損失を抱えた個人が市場の回復を狙ってリスクの高い商品に資金を移す動きが広がっている模様。

そんな折に週末に報じられたのがFUTURES PRESSでも既報の通り、国内市場の商品に直接投資する初めての投信となるTOCOMの金先物を対象とする投資信託を来月から販売する旨。

同投信が高リスク物にあたるや否やはともかく、日経紙では09年の投信販売額を金融機関別に見れば比較的リスクを取れる顧客を多く抱えた証券会社の販売額が全体の7割を超えているという。さてこの初モノ投信についてはまた後述するとして、現場レベルでも着実にこうして融合ムードが始動してきたなという感があるが、これもスイッチへの序曲となるや否やまた注目である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

7

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31