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債券以上株未満?

さて、先週は東証プライム市場に上場している日本酸素ホールディングスが2019年1月に発行した劣後特約付き社債を財務の改善進行を背景に繰り上げ償還するとの発表があったが、社債といえば先月はソフトバンク(株)第1回社債型種類株式が東証プライム市場に上場している。ところでこの社債型種類株式、日本では初めてとなるシロモノだが会社法上では株式となる。

一部議決権や普通株式への転換権利があるこれまでの種類株で代表的であった優先株とは違いそれらの権利は持たないものの配当請求権が優遇される株より債券寄りな商品で、発行日から5年間年率2.5%の固定配当を得ることが出来、それ以降は発行体が買い戻せる権利が生じその際は発行価格相当で買い取る可能性もある。今回調達した資金は1200億円で購入申し込みの実に92%が個人投資家であったという。

初めて東証に上場したといえば9月にはETFのアクティブ型も計6本が初めて上昇している。パッシブ型のラインナップに新風を吹き込んだ形だが、この度の社債という絡みでは8月には三菱UFJ信託銀行とNTTデータが年度内に1万円単位で社債を売買出来るインフラ整備の旨が報じられている。

従来では100万円単位の取引が主体であった社債に個人も投資し易くなることで個人の投資と企業の資金調達の手段の幅も広がってくる。こうした新しいデジタル技術が与えるメリットとして効率性に加えて上記の通り投資家の選択肢の広がりなどがあるが、新NISAを前に今後も新たな枝葉の広がりに期待したいところ。


価格転嫁継続

大手百貨店ではクリスマスケーキの申し込みが今週あたりで締め切りになると思うが、本日の日経紙商品面には「甘くない原材料高」として、飼料高で値上げに動いた生乳の影響を受けた生クリームや物流事情の影響を受けた砂糖、猛暑の影響を受けたフルーツなどクリスマスケーキの原材料価格が軒並み値上がりし不二家では1割ほど値上げした旨が出ていた。

当欄で「甘くない今年のケーキ」と題してクリスマスケーキの値上げに触れたのが一昨年だったが、この時はコロナの影響でケーキと共にクリスマスには欠かせないチキンなども輸入モノは絶望的な状況であった旨を書いていた。この年は価格転嫁が間に合わず何処も泣く泣く耐えたが、これが適った去年は大手百貨店で約半数が5~10%の程度の値上げ、コンビニ大手3社では10%程度の値上げとなっていた。

今年は冒頭の通り不二家が定番商品を値上げしているほか、ザッと見たところ昨年比では5~10%の値上げが多いという感じだ。調べていた中には昨年買おうと思ったものの別の商品に目移りし結局買わなかったケーキが今年は一気に価格を5割も値上げしていて驚いたものもある。いずれにせよほろ苦い値上げを天秤にかける難しい舵取りが今後も暫くは求められるか。


繰り返されるブーム 

昨日の日経紙夕刊のルーツ調査隊の記事ではカプセル自動販売機、所謂ガチャガチャが取り上げられていたがこれもここ数年で空きスペースなどで急激に増殖した感がある。それもそのはずで昨年の市場規模は610億円とここ数十年で約3倍にも膨らんでいるというが、もともとの出始めの頃はキャラクター消しゴム等から始まりバブル期には大人向けの商品展開が盛んになってきたのが記憶に新しい。

そういえば10年くらい前には「コップのフチ子」なるキャラもヒットしこの時の累計出荷は2500万個にものぼったとかの報も思い出すが、こういったキャラモノから近年ではエモいモノがトレンドで学校の廊下にあった水道周りや、かき氷機に個人商店の店先にあった赤電話まで昭和レトロ風のモノがウケている模様。

また最近見たのだが食品系も再現度が高い。ファミレスのメニュー等から銀座コージーコーナーにしっかりレモンスライスが再現されているサクレアイスまであるが、テレビ業界では定番の喜山飯店の中華弁当や金兵衛の西京漬け弁当、サイドのポテトまで忠実に再現されたオーベルジーヌのカレーなどその再現度合いはもはやマニアックな域である。

また最近ではインバウンド客を巻き込んだ第4次ブームが到来ともいわれており、お寺でもお賽銭を入れるとガチャガチャが回せるところまで出てきた。というワケで既に昨年の市場規模は610億円とここ数十年で約3倍にも膨らんでいるというが、魅力的な商品を入れれば人気を呼び売り上げに繋がってゆく点では同じく再ブームのクレーンゲームも同じか。タピオカもそうだったがこの手はある一定のサイクルでブームが繰り返されるポテンシャルを持っている。


買収たけなわ 

当欄では先月だけでベネッセホールディングスや大正製薬など3件のMBOを取り上げたが、今月に入ってもこの流れが止まらない。先週末はプライム市場に上場している人材派遣のアウトソーシングの創業者が投資ファンドのベインキャピタルと共にTOBを実施した後に株式非公開化の方針との旨が報じられている。

さてTOBといえばもう一つ、直近では人材派遣業界3位のパソナグループの子会社ベネフィット・ワンに対し第一生命ホールディングスがTOBを実施する旨もまた報じられている。とはいえ同社に対しては既に医療情報サイト大手のエムスリー社がTOBを実施中でパソナも賛同を表明しており、買収対象の同意を前提とするとしている第一生命に対してのパソナ側の対応が注目される。

ところで10月に当欄では京成電鉄が保有するオリエンタルランド株の方が親会社である京成電鉄よりも時価総額が上回っている親子逆転現象について書いた事があったが、このベネフィット・ワンもまた親会社のパソナより一時期は5倍以上の時価総額を誇っていた“超親子逆転”株で有名であった。近年ではこの差も随分と縮まったが、それでも先週7日時点で子会社の方が約2.5倍と10年以上続く親子逆転は解消されないままであった。

それは兎も角も、つい最近では日本生命が介護大手のニチイホールディングスの買収を明らかにしているほか、住友生命も医療データ解析のPREVENTを8日までに買収と大手生保の異業種買収がこのところ目立つ。国内の少子高齢化・人口減少で市場が縮むなか、収益多様化を図る動きの活発化でこうした買収により活路を見出す動きが今後も増加してくるか。


決着でココロも満タンに?

さて、株主総会シーズンから当欄では度々取り上げてきたコスモエネルギーHDだが、岩谷産業が投資会社シティインデックスイレブンズなど旧村上ファンド側から保有する同社株のほぼ全てを取得したことが先週に報じられた。これまで更なる買い増し意向を示していた旧村上ファンドだが、今回の件に伴いこれが取り下げられる事となった。

同ファンド関係はコスモ株を1000万株超まで集めた昨年の段階で投入コストが300億円超といわれ、直近ではそこから更に8割弱まで買い進めていることを考慮すれば約600億円弱の投入で雑な胸算用だが今回の売却では約500億円前後の利益というところか。いずれにせよ百戦錬磨のファンドだけに買い増しの構えを見せつつもイグジットの期を虎視眈々と狙っていたというところだろう。

これで昨年の春から続いた両社の戦い?は1年半での幕引きとなった。MOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)まで持ち出し対立してきた両社だが、はれて水素分野で協業する岩谷産業が安定株主となり脱炭素時代に打って出られる体制が一歩進んだ。これも一つの再編劇といえるかというところだが、今後も再編絡みでこうしたケースが出てくるのは想像に難くないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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