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値上げラッシュ第二波

弥生月になってすぐ本日はもう桃の節句であるが、数年前にも書いたように近年では人形を飾らない向きが軽く半数を超えているのが恒常化している模様。とはいえ毎年この時期になるとリヤドロ等の商品案内が必ず舞い込み、街の小洒落た店の特設コーナーには所謂自分用にと芸術的な品が鎮座する光景など目にする機会が多くなる。

ところでこのリヤドロといえば今年1月から日本代理店価格が値上がりしている。この辺を扱っている向きを一寸調べてみたらこれに少し遅れ来月からはクリスタルの巨匠といわれるバカラ、ハンガリーのヘレンドからアメリカのレノックスまでも、日本代理店価格が値上がりする予定となっている。

そういえば驚いたのがアールデコ期を代表するフランスのラリックだ。一昨年に以前より欲しかった花瓶を購入したのだが、それから1年もしないうちにその価格はいきなり50%もの値上げになっていた。

高級ブランドなど円安に株価上昇傾向が明確化し何れ値上げ必至と一頃駆け込み購入現象が起こったものだったが、ヴィトンなどの段階的値上げは止まらず、宝飾系では先月のハリー・ウィンストン、今月はダミアーニやブシュロンの値上げも予定されている。一見便乗をも超えたヤリ過ぎとも思える値上げ攻勢との意見もあるが、強気一貫を通せるところはやはり圧倒的に不変な購買層を抱えているところ。ステージは違うがディズニーリゾートもそのパターンだろうか。


北風政策だったハゲタカ

先週末の当欄で「消えたトラウマ」と題して書いた中でアクティビストとして挙げたのは「村上ファンド」、「スティール・パートナーズ」であったが、先週末の日経紙マーケット面には「元スティール銘柄開花」と題し、過去にこのファンドに狙われた銘柄の上昇が際立っている旨が書いてあった。

そこには一覧表のトップに出ていた名村造船の4倍化や記事の冒頭にあったハイレックスコーポレーションのここ2年での株価3倍増が挙げられていたが、一覧表に見られるアベノミクス期間の上昇以前にもここが目を付けた銘柄は度々取り上げられていた経緯がある。

例えばこの日経紙タイトルで思い出したのだが、今から数年前にもこのスティール・パートナーズが投資した約40銘柄が何れもすこぶる好調な旨の記事を見た記憶があり、その内容は同ファンドが銘柄選定後にこの約40銘柄全てに投資した結果、シミュレーション期間中のTOPIXが約10%下落した一方でこちらは配当を控除しても約25%の利益となったというもの。

最後は東京高裁から濫用的買収者のレッテルを張られヤレヤレの持ち株売却をさせられたスティール・パートナーズであったが、常々どう見ても割安なものに投資するからヘッジは要らないと言うのが彼らの弁だった。アプローチこそ結果的に間違えたものの、基本の選択眼は間違いのない物であったといえ軌跡があるだけにまだ投資のヒントが隠れているかもしれない。


消えゆくトラウマ

ちょうど一週間前の当欄で「投資と配分」としてファナック株式を取得した米投資会社サードポイントの事を挙げたが、その週末の日経紙スクランブルでも「物言う株主株高誘う」と題して、このサードポイントがアクティビストとして登場していた。

アクティビストといえば一昔前の東京スタイルやニッポン放送はじめ多くの企業の株集めが有名だった村上ファンドや、ソトーやユシロ化学に敵対的TOBを仕掛け内部留保を吐き出させるのに成功したスティールパートナーズ等が直ぐに思い浮かぶが、結局最後は村上氏が証取法違反容疑で逮捕され、スティールは東京高裁から濫用的買収者と認定されるなど、後味の悪い結果からそのイメージもあまりいい物ではなかった感がある。

ただ最近は「日本版スチュワードシップ・コード」なる行動指針が導入され、三井信託銀行は経営改革を促すファンドに出資表明し、みずほ信託銀行も年内に同様のファンド創設に動くなど信託大手にまで物言う株主にシフトする動きも出ており、昨今の報道もアクティビストに対し以前とは一寸イメージが違ってきているように見える。

事実冒頭のサードポイントに対しカネにモノいわせ会社を揺さぶり資金を吐き出させる投資家という表現や、批判の声も上がっていないあたりは昔のアクティビストのトラウマが薄れた感さえあるが、今はスチュワードを定めるなど政府側もこれをアベノミクスの柱の一つにしようとしている姿勢あたりで決定的に違うのだろう。

そういえば今から4年前に上記アクティビストが司法に裁かれた時の事を書いた当欄では末尾に「〜裁く側からすれば水が清くなったのだろうが、外から見れば特異な非常識を日本に感じている業界関係者は多数。彼らがいい意味での緊張感をもたらしていた当時から比べるに、現在の株式市場は売買代金ひとつ取ってもその凋落ぶりが著しい。株主の変遷を見るにつけそんなことが頭に浮かぶが、水清ければ魚住まずもまた市場か。」と書いていたが、さて最近の水は少し変わりつつあるか?


爆買い

さて昨日まで中華圏の旧正月「春節」休暇であったが、巷で報道されている通り全国各地に中国人が大挙して訪れ所謂「爆買い」が彼方此方で見られた。判明しているところで百貨店など三越銀座では期間中5日間の免税売上げが前年比で3.3倍に達し、高島屋主要店も3倍、大丸松坂屋主要店が同4倍、松屋銀座は2.5倍になったという。

爆買いといえば今から5年前の当欄にて、三越一階のコスメフロアにて資生堂コーナーを占拠した中国人観光客団体が在庫品までほとんどカラになるほど買い漁りをしていた光景を書いたことがあったが、今回は昨今の円安による割安感が更に購買意欲を刺激してか一段とその勢いに拍車がかかっている。

自国の模倣品ではやはり満足がいかないのか、これら化粧品をはじめステンレスボトルや家電では定番の炊飯器に加え温水便座も爆買い人気が急上昇という。こんな直接の現場でなくともその恩恵は早くから株式市場でも見られ、上記の百貨店含めて春節前から家電量販店やドラッグストアなど所謂インバウンド関連は地合いに関係なく結構な値上がりを演じたものだ。

国内の個人消費が振るわないなか、わざわざ大挙来日して便座など大量にお買い上げいただき一角の株高にも貢献してくれたのだからお約束のマナーの悪さもクローズアップされるものの、今回はそれに目を瞑る程度は消費低迷を埋めるのに一役買ってくれたか。


温泉からキノコまで

本日の日経紙企業面には「脱・創業家へ奥の手」と題して、東証二部上場の雪国まいたけに米投資ファンドのベインキャピタルが全株取得を目指して最大約88億円でTOBを実施する旨が出ていた。

最近では大塚家具で創業家のゴタゴタが続いているが、此処も長年創業家と外部招聘組との間のゴタゴタが絶えなかったという事が背景になっている。既に昨日の寄り前にTOB話が報じられていた事でここ数日新安値近辺をウロウロしていた同社株は買い気配スタートとなったが、意外だったのは寄り後にストップ高まで買い上げられ引け値もほぼその近辺で終わった事か。

とはいえ果たしてTOB価格に寄せる格好で本日は急反落となったが、最近この手のTOB話では予定価格以上まで買うパターンが多い。かつて幻冬舎がMBOを表明した時のような突如としてのファンド出現というパターンとは違うにしろ、今回の場合すかいらーくの立て直しで再上場を成功させ最近では大江戸温泉も買収表明したベインのネームバリューにプレミアムが乗った格好となったか。


15年の変遷

周知の通り先週は日経平均がほぼ15年ぶりの高値にまで上昇してきた。第一次安倍内閣当時の最高値をも上回った事から日経紙などでも一面で取り上げてあったが、15年前といえばITバブルピークでもありこれを奪回してきた今、当時からのさまざまな市場の悲哀こもごもも同時に蘇る。

この間は世界を震撼させた米同時テロもあったが、東京市場にとってまさに三重苦だったのはリーマンショック、民主党政権、それに東日本大震災だったろうか。この間の豪雨で地を固めた筆頭がやはりトヨタだろうが、この辺の地道な構造改革というのはある意味日本のお家芸ともいえるだろうか。

株主構造もまた同時に変化、持ち合い合戦の呪縛から解放され今や筆頭株主といえば外国人に変わった。もともと先週書いたように長期にわたるデフレ傾向と銀行の貸し渋りから守り経営を順守した結果、空前の貯め込み型になっていたところにこうした株主変遷があり、これに呼応するかのようにJPX400などの新指数が登場し企業もそれに即する如くROEに指針を見出してきた。

何年ぶり何十年ぶりというと指数や為替など単純に当時との指標比較に終始してしまいがちだが、内部に起こっている構造変化などを読み解くにROE一つ挙げてもまだまだ伸びしろがあり、そうした視点も含めて欧米との乖離はさまざまなところでまだ可也あるという感だ。


賛否両論

さて、昨日の日経紙一面(春秋)では、東京都渋谷区が同性カップルを結婚に相当する関係と認めて証明書を発行する条例を作るとした報道を挙げLGBTへの差別を問うてきた人々にとっては大きな一歩で、同性カップルの社会進出が著しい欧米に比べて周回遅れの対応にとどまっている日本社会に議論を促す施策である旨が書いてあった。

この手の件は派手な報道はないものの、これに関連した同性カップルの件では数年前に東京ディズニーシーで元宝塚劇団出身の女性が同性結婚式を挙げた事が話題になった時があったが、夢の国を謳うディズニーも紆余曲折を経ての英断だったであろう。

ほか一部外資系企業でもこうした向きに手を差しのべる動きがある。肉食系?のイメージがあるゴールドマン・サックスは、LGBT団体が開く同学生向けキャリア相談会に昨年から社員がボランティアとして参加し相談相手になる活動を続けており、またモルガン・スタンレーも昨年に初めてLGBT学生向けセミナーを開いている。

とはいえ冒頭にも書いた通り、現実にはまだまだ多様な性に関しては寛容とは言えない日本社会なのは否めない現実。欧米と乖離した土壌故にで極めて優秀な逸材獲得の機会を逃してしまう現実は勿体無い限りでそうした部分の発展途上を物語っているか。


投資と配分

本日の日経紙(一目均衡)には、今月にファナック株式を取得した米投資会社サードポイントと1兆円の資金を抱える同社が株式市場で攻防を繰り広げている旨が載っていた。かねてより豊富な資金を自社株買いに充てるよう要求していたようだが、同社は今週に国内の工場や研究所を新設することへの資金投入を発表している。

文中にはこの投資計画を差し引いても8,000億円以上の資金がさして利益も生まずに眠る旨も書いてあったが、こうした企業はなにも同社だけではない。こうした所謂貯め込み型の企業が続出した背景には長期にわたるデフレ傾向と銀行の貸し渋りがこれらを創造したのは想像に難くないだろう。

上記のファナックは本日も続伸し連日で上場来高値を更新してきているが、インカム期待だけでもアナウンス効果は高く短期でもそれによるキャピタルゲイン効果も高いのではないだろうか?勿論株主配分と成長投資の両取りを実施する優等生も居るが、JPX400創設でこれら双方に無関心であった向きが格段に少なくなってきているのは潮流の変化だろう。


内需の存在感

本日の日経紙マーケット面には「銀行株に資金流入」と題し、昨日の業種別日経平均株価「銀行」が前週末比3%上昇し、売買代金ランキングでも上位にメガバンクが並ぶなど出遅れ感のあった銀行株への資金流入が目立ってきた旨が書いてあった。

日経平均も昨日は18,000円大台を回復してきたが、こんな銀行株の堅調からTOPIXも先週は祭日前に日経平均が往って来いの反落となったものの、それを横目にTOPIXは3日続伸するなどそれ以上に強い動きさえ感じた。昨日は全36業種でこのセクターの上昇率が首位であったが、同指数の強さの背景にはこれらの堅調が大きく寄与している感もある。

長期金利が上昇し債券市場では金利低下の流れに変化が出てきている事が支援材料視されているが、当欄で先月中旬に「24年ぶりゼロ」と題して書いた通り昨年パンクした企業は8年ぶりに1万件を割り込み、その負債総額も前年比で32%減少し1990年以来24年ぶりに2兆円を割り込むなど金利同様にこちらにも変化が。昨年1年分の下落を取り戻せるかどうかこれらと併せ見ていきたい。


広がる選別色

昨日の日経経紙一面には「上場企業の3割増配」と題して2015年3月期の株式配当が2連連続で最高を更新する見通しとなり、増配または復配する企業が全体の3割に達した旨が出ていた。この辺の背景には近年のROE重視姿勢からの資本効率を高める狙いもあり、利益を配当として支払えばROEの分母に当たる自己資本の増加を抑えられる効果も見据えてのもの。

さてそんな感じで囃されている高ROE銘柄でも、当初はしりの頃の万遍なく物色する光景から最近は明暗が分かれてきている。この辺は先週末の日経紙にも載っていた通り、1年余りで株価が2倍になる銘柄がある一方で、3分の1に下がった銘柄も出てきており期待先行モノほどこの辺がより顕著に株価に反映され易くなっている。

下位にはゲーム関連も幾つか顔を出していたが、これまで度々下剋上の時価総額逆転劇で老舗企業をしのいだこの課金系もそろそろ息切れが目立つ。昨年に当欄でも「結果としての時価総額」としてゲーム系を取り上げた時に、ピーク時から半分以下まで急減したガンホー等も睨みながら市場は先行きを占っているようだと書いたことがあるが、このポストも期待先行で囃す相場は終わった感がある。


青天井期

さて、先週日曜の日経紙(日曜に考える)で取り上げてあったのは1980年代後半から90年代にかけて株式市場を席巻した光進事件であった。蛇の目を所謂「箱」にしたトンビこと飛島建設のシナリオに加担して一部政界までをも巻き込んだ一件であったが、関連銘柄は連日賑わい街の投資顧問会社の煽りにも一層拍車がかかったものであった。

携帯端末で株価照会など想像も出来なかった当時は、証券会社の店頭に置いてある小さなクイックが頼りでこの手の銘柄が出ると投資家は奪い合うようにこの端末にかじりついていた光景が懐かしい。同紙に出ていたこの蛇の目や藤田観光もそうだが、今の株価からすると想像も出来ないような青天井を形成した銘柄も多く、一つ一つを思い出す毎に背後に絡んだストーリーもまた同時に浮かんでくる。

そうして市場を席巻した仕手絡みでは、その後遺症で今や市場からまさかの撤退を余儀なくされた企業群も多いが、敗戦処理を経て上場を維持した銘柄でも仕手戦当時の乱高下から30年近くを経てもなお仕手戦前の健全体質には程遠くなってしまったものは少なくなく食い散らかしの代償は大きい。

しかし思えば昔ながらのカラを誘いつつ全員参加型の息の長い相場形成が特徴だった所謂本来の仕手の歴史は、現在と違ってはるかにユルかった規制や証取法を背景にあまりにも有名な誠備グループを中心として活動していたこの頃がピークだったなとつくづく感慨深い。


嗜好の賞味期限

さて、先週に気なった決算の一つに日本マクドナルドHDがあったが、2014年12月期決算は11年ぶりの最終赤字に転落となり、営業赤字は実に上場以来初の出来事となっていた。最近では昨年の期限切れ鶏肉問題やそれが冷めやらぬうちに今度は異物混入問題が追い打ちをかけまさに泣きっ面に蜂状態であった事からこの辺も致し方ないところか。

ところが本家の米も近年は顧客である若年層達の健康志向の強まりを背景として、個々の注文に応じる競合店等にシェアを奪われる苦戦が続いている模様。先月末にはCEOの引責辞任発表と併せての社長交代で、この客離れが進む米国再建の報道もなされている。

この健康志向といえば先週の日経紙夕刊でも「健康志向の打算」と題して、米コカ・コーラ社が取り上げてあったが、マックCEO引責辞任の2日後にはこの競合店の新興勢の一つであるシェイク・シャックがニューヨーク証券取引所に上場、公開価格の2倍以上の値を付ける人気を集めたが、この背景には具材のこだわりを強調しフライポテト一つ取ってもトランス脂肪酸不使用などを明記し上記の健康志向にもマッチしているという点がある。

以前に当欄ではアパレルも世界同一基準を謳いつつも現地の嗜好性を取り入れたラインナップを展開するのが普通になってきたと書いたことがあるが、昨今のファストフード業界もまた然りか。全世界に同一商品を投入するというマック創業以来のビジネスモデルが、消費嗜好変化に対応出来なくなったというのはある意味時代の自然な流れなのだろう。