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花見マーケット

さて、全国トップをきって桜の開花を宣言した東京だが気象庁は昨日満開になったと発表、これまた全国で最も早くの満開ということになる。桜といえば定番の上野公園では今年は4年ぶりに先週から「うえの桜まつり」がスタートし、同公園では一部エリアで飲食を伴う宴会が解禁となった。4年ぶりといえば、秋に建て替えを控える国立劇場もさくらまつりが4年ぶりに復活している。

街でも各所でイベントが復活、近所の日本橋では先週から「SAKURA FES NIHONBASHI2023」がスタートし江戸通りのライトアップなど街全体が桜色に染まっている。またホテル勢も日本庭園を擁しているところは挙って桜絡みのイベントをスタート、ホテルニューオータニではお花見宿泊プランを展開、ホテル椿山荘東京では1000灯のLEDでライトアップした夜桜雲海を展開、グランドプリンスホテル高輪も100灯のRGBライトや提灯で桜をライトアップし桜桟敷席を設けた。

冒頭の上野では近所の多慶屋が花見グッズの特設コーナーを設け、もう一つの名所でもある目黒ではドンキも特設コーナーを設け花見支援も喧しいが、上記のホテル勢もホテルニューオータニではお節料理のような「桜・お花見重 三段、59,400円」を用意し、グランドプリンスホテル高輪では桜桟敷席でいただける「八重コース、45,000円」を用意、いずれもなかなか強気?な価格設定となっている。

それもこれもお花見市場の急回復を見込んでのものだがそうなると気になるのはその経済効果、市場調査のインテージ調べでは今年の花見予算のアンケートは6935円と回答、花見の宴会が自粛となっていた去年と比べて約1.8倍という結果になったという。関西大学の推定では今年の花見の経済効果はインバウンドも乗って約6,158億円と去年の約3倍になるとの試算もある。はたしてコト消費もこれを皮切りに急速に動いてくるかどうか注目されるところだ。


スイス発大型再編

先週はスイスの金融機関最大手UBSが、同2位のクレディ・スイス・グループをにわかに30億スイスフラン相当となる株式交換で買収する運びとなった。近年はアルケゴスとの取引で信用問題が不安視されていたが、直近の米銀2行の破綻が追い打ちをかけ預金や預かり資産の流出が加速、筆頭株主も匙を投げ株価も急落するなか危機封じ込めをスイス金融当局が主導した格好だ。

クレディスイスの時価総額は直近で1兆円を超えていたことを見るにその買収額が半分以下となったあたり不透明感を内包している感もあるが、それだけにスイス国立銀は両行に最大1000億スイスフランの資金枠を提供、スイス政府は買収に伴い今後発生する損失に関しても90億スイスフランの政府保証を与えるなど異例の後押しをしている。

しかし斯様な主要金融機関の大型再編はリーマン・ショック以来の事と思うが、それにしては一連の処理は異例の早さだった。日銀を含む6中銀も協調して市場へのドル供給を拡充するなど鎮静化を図り、週明けのマーケットが始まる前に金融危機が世界的に伝播するリスクを出来得る限り遮断したかった意図がうかがえる。

斯様な処理が奏功し今週は日米の主要株価も一先ずは切り返しに入っているが、今回の買収ではUBS株の割り当てでクレディスイス株の価値こそゼロになる事は免れた一方で同社の2兆円を超える劣後債は無価値となった。斯様にAT1債が一瞬で紙屑になった事もあり実物資産に改めて資金が向かい先週書いた金相場はとうとう一時2000ドル大台を突破しているが、この辺の処理の副産物が後々マーケットに影響してくるか否かしばらく注意しておきたい。


精養軒スクイーズアウト

さて、今週は欧米の金融不安台頭から週明けから今日までの4営業日で日経平均は1,100円以上も下落の憂き目にあったが、そんな中で連日のストップ高を交え株価約7割高を演じて一際目を惹いたのが東証スタンダードの精養軒。周知の通り上野恩賜公園に鎮座するフレンチの老舗で、日本にフランス料理を広めた草分けとして一世紀半の歴史を誇っている。

この急騰の背景にあるのが、同社に関係する特定法人・個人等のみを株主とするために株式併合を実施、併合によって端株となる株式を併合前の一株につき1200円で買い取りを実施するというものでこの価格にサヤ寄せした格好。来月に開催予定の定時株主総会で議案を付議するが、5月には上場廃止のはこびとなる予定だ。

株式市場への上場はこの上野本店の建て替え後ほどなくしてだったが、グリルフクシマの伝統の純フレンチは勿論のこと本店レストランでも昔ながらのビーフシチューやハヤシライスなどが気軽に頂けたものだ。飲食業ながら株主優待も無い企業であったが、コロナ禍の中ここまで辛抱強く付き合ってくれた株主には最後はささやかなプレゼント?となったか。

しかしこの精養軒、当欄でもパンダ関連株としてこれまで東証スタンダード上場の中華の東天紅と共にオメデタの兆候の度に何度となく取り上げてきた経緯がある。先日はシャンシャンが惜しまれつつ日本から居なくなってしまったが、奇しくもこの精養軒もそれを追うかのように株式市場からはその姿が消えることとなる。


オルタナティブの金

さて、今週は国内の金現物小売価格が初めて9000円の大台に乗せてきた。周知の通り相次ぐ米銀の経営破綻を受け金融市場の不安定化に対する警戒感が広がるなか、安全資産とされる金にリスク回避の投資マネーが集まった格好となりニューヨーク先物は一昨日には1900ドルの大台を回復、JPXの大阪取引所上場の先物も連日の最高値更新となっている。

こうなるとまたぞろ判で押したように買い取り業者の煽り広告が急増しそうな雰囲気だが、それに釣られ売りに来る顧客が目立つ日本に対し欧米ではリーマンショック以降、金利の上昇やドル高など教科書通りなら金にとっての逆風環境下においても地金や金貨への現物投資意欲が安定的に強く、昨年のそれは400トンを超えてきている。

斯様な個人もさることながら中央銀行の金買いも安定的に継続しており、昨年の中央銀行による金準備の積み増し量は約1136トンと過去最大を記録している。米と対立するロシアや中国などが主役とみられているが、今回のウクライナ侵攻では経済制裁における米ドル凍結等のケースを目の当たりにし西側経済圏資産の保有はリスクが高いと印象付けたのが色濃く表れているか。


満額回答ラッシュ

さて、世の物価高のなかこれに対応した賃上げが焦点となっている今年の春闘だが、先月は自動車業界からトヨタ自動車と本田が労働組合の賃上げ要求に満額回答し早くも春季労使交渉が決着する異例?の展開となった。これに続くように昨日は全日空が過去30年で最も高水準の6000円のベースアップを実施すると労組に回答、本日は三菱電機が労組要求に満額回答したが電気連合は前年下限の3倍超水準で回答する方向が報じられている。

斯様に例年とは光景を異にするが、これらが持続可能なものになるか否かはやはり労働生産性を如何に上げてゆくかどうかがポイントになってくるワケだが、金融政策もしくは財政政策でもってこの生産性を上げてゆくことには限界があるということを認識しつつ経済政策の方は進めてゆく必要があるか。

以前にも書いた通り、日本の労働生産性はG7の中においても最下位という状況。とりわけ日本の輸入依存度から見るに昨年のような資源高や円安等の市況は実質賃金の伸びの重しになり易い構造になっており、G7の諸外国以上にこの労働生産性の引き上げの重要性がポイントになってくるだけに早急の浮上が望まれるところ。


あれから12年

先週末で2万2千人以上が犠牲となった東日本大震災から12年を迎えた。東北の各地では追悼の催しが開かれ、都内でも日比谷公園で追悼の催しが開かれ献花台に花を手向けて手を合わせる人の姿が見られた。十三回忌ということで一つの区切りと捉える向きもあるが、食品なども台湾では10年以上にわたる食品輸入禁止措置が昨年緩和され食品輸出促進の機運も高まっている。

ところで昨年は福島の帰宅困難地域に若干の進展が見られたものの、除染、廃炉、その先の核ゴミの問題含め道筋がついているとは言い難いと書いていたが、1年経ってもこの状況は変わらず昨年末時点で累計4兆円を超えた除染費用は23年度以降更に兆円単位で増加する可能性があるなど処理費用は膨張を続けている。春か夏に処理水の海洋放出が始まり今年後半には溶融燃料の取り出しも始まるが負担の跳ね返りは不透明だ。

またロシアの暴挙が改めて原発問題と向き合わざるを得ない状況を作り出しているとも書いたが、年末には唐突に原発政策の大転換が決まり原発の運転延長や新増設を進める方向と政府は原発回帰の動きへ舵を切っている。原発関連株が不気味な物色をされるなかこの一連の動きに専門家の一部からは疑問視する声も上がっているが、いずれにせよ今後の議論と丁寧な説明は不可欠だろうか。


ガレ&ドーム展2023

さて、先月末まで三越本店では北澤美術館の開館40周年記念特別展として「エミール・ガレとドーム兄弟」展が開催されていた。東証プライム市場に上場するキッツの創業者が収集を始めるきっかけになったのが40年ほど前に三越本店で開催されたアール・ヌーヴォー展であったというから何とも縁深い展だが、ガレ好きな私は一度では足りず開催期間中何度も足を運んでしまった。

この手のモノでは今から5年ほど前だっただろうか、岡田美術館が秘蔵するエミール・ガレやドーム兄弟を展示した「ガレとドームの世界展」を観たのを思い出すが、此処同様になかなか気軽に足を運べない諏訪湖の美術館の秘蔵コレクション90余点あまりの逸品を観る機会が得られたのが嬉しい。

前回の「ガレとドームの世界展」ではガレの大型作品「藤文ランプ」や金彩やエナメルの美しさが際立つ「花独活文花器」が印象的であったが、今回の展もガレの名作「脚付杯・フランスの薔薇」やドームの名作「花瓶・蜘蛛に刺草」などのレアな逸品が全方向から鑑賞可能で、更には写真撮影も自由ということもありゆったりと贅沢な時間が過ごすことが出来た。

また併設の展示即売会も美術館級の希少品が販売されており当然ながら値札も1億円を超えるものだったが、こちらも超希少な逸品を全方向から自由に観ることが出来るのが素晴らしい。このコロナ禍でお気に入りの展もここ数年は規模の縮小やオンラインへのシフトなどでなかなか満足のゆくものが少なくなっていたが、漸くコロナ禍前の規模に戻るものが出てきたのはなにより喜ばしい限りだ。


ミモザの日

本日は国際女性デーである。世界中の女性の権利を守り女性の活躍を支援する為の行動を呼びかけるべく1977年に国連によって制定された日で、今日の新聞でもこれに因んだ特集や広告が多く目についたが、昨年のジェンダーギャップ指数は146か国中で日本は116位と下位に甘んじ前回同様にG7の中では最下位となんとも恥ずかしい順位となっているのが現状だ。

特に経済では女性管理職の少なさや収入格差が足を引っ張り、121位と下から26番目となり足を引っ張っている。直近では厚労省の「女性の活躍推進企業データベース」で男女の賃金差を公表している企業約1129社について毎日紙が分析した結果では、正社員のうち女性の賃金が男性より高い国内企業はわずか2%にとどまっている現状が明らかになっている。

また女性管理職の絡みでは、昨年EUは域内の上場企業を対象に全取締役の3分の1以上など一定比率の女性を登用するよう求める法案で大筋合意している。ナスダックも上場企業に1人以上の女性と別に1人以上の人種・性的少数派の取締役を選任するよう義務付けるなど、斯様にESGマネーを呼び込もうと欧米が女性登用基準導入で先行するのに対し日本の出遅れは鮮明だ。

以前にも書いたが組織の成長には多様性が欠かせないのは今やコンセンサスとなっており、投資家の目も女性登用の遅れに対しては厳しさを増してきている。世界基準に日本が近づくのは何時の日になるかだが、日本は多様性の確保は盛り込まれたものの数値目標導入も見送られるなど欧米との隔たりは大きく、ジェンダーギャップG7最下位の汚名返上は難しそうだが項目別に改善がみられているか否か先ずはこの辺に注目してみたい。


政策の限界

先週末の国内債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが上昇し、一時0.505%と日銀が現在の金融政策で上限としている0.5%を上回った。前回この上限を超えた先月22日以来のことで次期総裁候補が所信聴取で発言してから初めての事である。海外金利の上昇圧力が波及したほか、総務省発表の東京都区部の2月消費者物価指数の総合指数が市場予想を上回った事などが背景。

斯様に依然として物価上昇を抑制するために日銀が緩和修正に踏み切るとの思惑が根強く金利上昇の圧力は衰えないが、残存8~9年の利回りが指標の10年債利回りを上回るという歪みが続く市場では今の経済実態に照らすと長期金利上限は1%くらいが適切ではないかとの試算もあり0.5%では低すぎるという思惑先行から更なる歪みが生じてしまっている構図。

斯様な歪みから国債を基準に金利が決まる社債市場などいろいろなところに悪影響が及んでおり、新総裁が先ず着手するのは変動幅拡大含めたYCCの改革ではとの思惑が喧しいが、国債を買い占めたり共担オペにより本来は市場が決めるべき金利を人為的な需給調整で封じ込めている不自然な政策自体がもう限界にきておりその大義が失われてきているのは間違いのないところだろう。


トレンド反転の解は

さて、厚生労働省が先週に発表した去年1年間の出生率速報値は前年比で約4万3000人減少の79万9728人と7年連続で減少し、この統計開始以来初めて80万人を切ることとなった。ちなみに国立社会保障・人口問題研究所の推計では出生数が79万人台になるのは2033年と予測されており、実際は想定よりも11年早く少子化が進んだということになる。

これらを受け首相は少子化のトレンドを反転させるため金銭的な支援に重点を置いて今の社会に求められる政策を進めてゆくことが重要と発言していたが、先月BIGLOBEが行った子育てに対するZ世代の意識調査では結婚もしたくないし子供も欲しくないが36.1%、結婚はしたいが子供は欲しくないが9.6%と実に45.7%が子供は欲しくないと回答しておりその理由は金銭面以外が42.1%と半数近くに及んでいる。

その内訳として多かったのが育てる自信がない・子どもが好きではない・子どもが苦手・自分の時間を制約されたくない等などなかなかショッキングな内容だ。金銭的な問題が最大の理由ではなくなってきているというのを、金銭的支援に重点を置いて進めている政府・与党はこの政策に対し世論が付いてきているワケではないのを今一度認識すべきか。

以前には内閣府が公表した男女共同参画白書などで結婚や恋愛に対する新たな価値観やら若年層の消極化云々を背景に少子化が進んでいるような話があったが、厚生省が1980年代に行った調査でも20代のおよそ7割が配偶者や恋人がいないという結果だったという。そこから何が見えるのかといえばこの数十年間やってきた少子化対策がほとんど効果が無かったということだろう。はたしてこの難問の解が見つかる日は来るのか?喫緊の課題だ。


PBRにもメス

さて、最近は日本のバリュー株のパフォーマンスが欧米を引き離すなど一人気を吐いている旨が話題になっている。バリュー株といえば当欄では今から4年ほど前にバリュー株は受難の時代でPBR格差は過去15年で最大を記録した旨を書いた事があったが、昨年末段階でも東証プライム上場企業1837社のうち実に50%にあたる922社のPBRが1倍を割っている状況であった。

この辺に目を付けられ近年では東証がアクティビストの格好の獲物?になってきたワケだが、ここ数年行われてきたTOBやMBOの中にはその価格がPBR1倍を切っているというモノも少なくなかっただけにさもありなんという感じだ。上記の通りPBR1倍割れが半分を占めているワケだが、このうち更にこの半分0.5倍未満が15%もあるというから東証も危機感からこれに改善要請のメスを入れるというのも頷ける。

万年低PBRからの離脱の鍵の一つとなるのはROEを上げてゆくことにほかならないが、このROEもアベノミクス時代に欧米と比較するに著しくその低さがいわれ改善努力が叫ばれた時期があったのを思い出すが、これを上げるべく流行った自社株買いも当時はリキャップCBなどを使った見せかけの実績も目立ったものだ。

そういえばプライム市場基準を満たさない「経過措置企業」の中でも上場維持基準適合に向けた計画書の内容を着実に実行している企業の株価上昇が顕著になった時期があったが、斯様にこの手の改善要請の類が出る度にそれらは期待感から物色の矛先が向けられるもので、今の低PBR物色もそれとダブって見えなくもないが小手先の改善策でなく本質的なものに踏み込む施策が望まれるところ。


弥生の値上げ

本日から3月入り、今月は先月より値上げ食品の品目は下がるとはいえ値上げラッシュは止まらず、帝国データバンクによれば前年同月比では約2倍近い数の3442品目にのぼる。去年より数十年ぶりに値上げする商品が続出しているが、ここまで33年にわたって価格を据え置いていたミツカンの味ポンも本日出荷分からとうとう値上げとなる。

3月の値上げで最も多い食品分野はニッスイや伊藤ハムが値上げするちくわやかまぼこ、ニップンや日清食品冷凍が値上げする冷凍食品などの加工食品で単月全体の半分を占める。次いで多いのが菓子で、ロッテの雪見だいふくや森永乳業や森永製菓のピノやチョコモナカジャンボなどアイス系など中心に菓子における値上げ品目数は単月としては最多を更新する。

来月は来月で牛乳やバター、ヨーグルトなど乳製品の一斉の値上げが予定されている。飼料高等で生乳取引価格が上昇しているのが背景だが、生乳といえば需要低迷が長期化しその裏では日々廃棄処分を強いられている向きもあるなど何とも複雑な構図だ。こちらは国の早急な支援が望まれるが、いずれにしろ輸入小麦の価格改定も控えているだけにこの辺の動向にも注視しておきたい。