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逆行相場

さて、2018年にコインチェックから580億円もの暗号資産が流出した事件がいまだ記憶に新しいが、直近では分散型金融関連サービスを手掛けるポリ・ネットワークからこれを上回る過去最大規模の約6億ドルの暗号資産が流出した事件が世間を騒がせていたが、この半分以上が返還された件が先週報じられていた。

斯様に依然として暗号資産を取り巻く脆弱性を突く報が絶えないが暗号資産といえばもう一つ、米議会で審議が進むインフラ投資法案では財源として暗号資産取引の課税を強化する案が浮上しこの米インフラ投資法案は10日に米上院を通過したが、暗号資産はこれらネガティブな報にも抵抗力を見せ逆に堅調地合いを継続させている。

主力のビットコインは5月中旬以来の高値を付けて5万ドルの大台を舐めに行く勢いで、これ以外のドージコインまで一様に堅調相場を展開させており暗号資産市場の時価総額は再度2兆ドルを上回って来ている。ネガティブな報に逆行する相場は逆にいえば業界が議会に認知され政府による課税対象として取り上げられるまでに成長した証左とも捉える事が出来、疑心暗鬼な投資家にも一定の安心感を与えたのは想像に難くないか。


不毛の寄付か

本日の日経紙・底流には「勝者なき財源争奪戦」と題してふるさと納税を取り上げ、同制度も地方の総体としてみると制度の恩恵より負担が大きい状況となっておりならしてみると全体のパイが縮小するマイナスサムの競争は不毛でしかないとの意見が書かれていたが、依然として個人の人気は高く先月末に総務省が纏めた昨年の寄付総額は約6725億円となっていた。

実に寄付総額は前年度の1.4倍に増加し過去最高を記録、その寄付件数も制度開始以来12年連続で最多を更新とこちらも記録を伸ばしている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり需要」を背景に各地の返礼品を楽しむ寄付者が増えた結果だが、其の内容も寄付形態も日進月歩の多様化で選択肢が飛躍的に広がった影響は大きいだろうか。

一方で冒頭に関わって来る事だが、21年度の住民税控除額は都市部住民が返戻品目当てに地方に寄付するケースが多く前年度比1.2倍の約4311億円とこちらも過去最高となっていた。賛否両論喧しいが医療従事者支援や被災地支援などの返戻品で寄付総額を押し上げた部分もあり新常態へと少しずつ変化している中身にも引き続き注目してゆきたい。


輸出額目標の足枷

ちょうど今頃が最盛期を迎えるシャインマスカットだが、昨日の日経紙総合面には「中韓の生産、日本上回る」と題し、日本発のブランド品種である高級ブドウ「シャインマスカット」が流出先のお隣の韓国などで輸出額が日本の5倍超に膨らむなど輸出の主力となり、またこの栽培面積が日本は1200ヘクタールなのに対し韓国はこれをも上回り中国に至っては5万3000ヘクタールと桁違いになるなど海外流出が深刻さを増している旨の記事があった。

韓国といえばこのシャインマスカットに限らず、糖度60度を誇るブランドさつま芋「紅はるか」もまた正式に輸入されたものでないにもかかわらず陳腐なネーミングを施された上に生産者量の4割を占めるまでになってしまっている。他にも平昌オリンピックでカーリング女子が食べていた事から有名になってしまったイチゴもまた流出した日本のブランド苺であった。

当欄では6月にも改正種苗法が施行されて以降初の逮捕者が出た報を取り上げたが、暗号資産よろしく一度流出するとその追跡は難しく今なお中国のネット通販サイトなどではブランド林檎の苗木など多数が出品されているのが現状。上記以外にも標的になっている日本発ブランドが多数リストに挙がっており、その実効性には課題が多く残されているか。

日本政府の農林水産物輸出額については19年の当初目標は未達であったが昨年は9217億円、今年については米など経済回復国中心に日本の農産物需要の高まりで1~6月期で5773億円と昨年比で約32%の増加を見せているが内訳はホタテ貝の前年比2倍や牛肉の同2.2倍などが貢献した結果。折角のこうした環境が背景にあるだけに冒頭のような流出モノが蔓延る状況がこれらの足を引っ張る事の無いよう一層の監視強化は喫緊の課題でもあるか。


東京2020オリンピック

さて、昨日の続きで賛否両論あった東京五輪もメダルラッシュで終りどの競技も何れ劣らぬ感動を堪能したが、やはり個人的には自身が青春時に代打ち込んでいた体操競技など観戦するにとりわけ格別な思いが湧いた。初出場の五輪で37年ぶりに個人2冠に輝いた橋本選手にスポットが当てられていたが、第一人者からの主役交代を一際強く印象付ける場であった。

そのバトンを渡した絶対王者の内村選手だが、個人総合から鉄棒一本に絞って臨んだもののまさかの予選敗退に終わる。「ブレットシュナイダー」から「カッシーナ」そして「コールマン」と高難度を順調に繋ぐも、オリンピック選手にとってはどうということもないフィニッシュ前のシュタルダーから繋ぐ1回半捻りでまさかの落下となった衝撃映像は改めてオリンピックに魔物が潜むというのを再認識させられた。

もう一つ今大会が感慨深かったのは今大会を最後と公言していたレジェンドクラスの存在か。女子からは何といって体操界で史上最多8度目の出場を果たしたウズベキスタンのオクサナ・チュソビチナ選手で、46歳でなお自身の名が付いた大技「チュソビチナ」を今大会でも跳ぶなどその身体能力は本当に信じられない。去りゆくレジェンドにその体操界への貢献を称えた場内アナウンスが印象的であった。

そして男子からは今大会で6回目の出場を果たしたレジェンド、ルーマニアのマリアン・ドラグレスク選手で、彼もまた今大会40歳で自身の名が付いた跳馬の大技「ドラグレスク」を跳ぶなど最後まで驚異的な身体能力を見せつけた。ところで私事だが先月所用で成田空港に行った際に何とこのドラグレスク氏に遭遇し話す機会を得た。帰国前の僅かな時間であったがそれはもう夢のようなひと時で、スマホに残されたレジェンドとの記念写真は私にとって今夏の忘れられない思い出となった。


おもてなしの17日間

さて、東京で開催されていたオリンピック大会が8日閉幕した。1年延期された挙げ句に開催期間中も爆発的な新型コロナウイルス感染者数拡大が止まらず殆どが無観客となった賛否両論の異例の大会であったが、日本選手の獲得メダル数は事前に日経新聞とFTが予測モデルを用いて予想したメダル獲得数56個とほぼ一致する計58個の獲得となった。

メダル予想といえばスポーツデータ分析・提供の米グレースノートなど民間機関も日本は金メダル26個を獲得し全体では60個のメダルを手にすると予測していたが、これまた金が27個、全体では58個とこちらも概ね予測通りというところだろう。過去最多のアスリート数であったがいずれにせよこの58個の獲得で史上最多を記録することとなった。

コロナ禍の下で制約だらけの大会とはなったものの、約700種の料理を提供した選手村のメインダイニングでは冷凍餃子や果汁グミが思わぬ大人気となり冷凍餃子はその提供数が60万個に及んだという。他にも住環境など選手のSNSを通じ反響が大きくTOPスポンサーやゴールドパートナー以外のオフィシャルパートナー企業でも金メダル級のPR効果を得られた企業も少なくなかった。

冒頭の通り無観客でチケット収入や観客宿泊費などの経済効果が失われたとはいえ今大会の経済効果は1兆6771億円に上るとの大手シンクタンクの試算もあるが、上記の通りのメダルラッシュでチケット収入や観客宿泊費などの失われた経済効果を上回る新たな消費が喚起されるとの予測も出ておりこちらの動向にも注目しておきたいところ。


コメのガラパゴス化

さて、今から10年前に試験上場が始まりこれまで2年ごとの期限延長を続けてきたコメの先物取引だが、先週末には大阪堂島商品取引所から本上場への移行が農林水産省に認可されなかったとの発表が為されている。試験上場として72年ぶりの復活であったが、4回にわたる延期も取引所として市場継続性を担保したいとの判断もあっただろうがこれ以上はメドもつかないと完全撤退を判断した格好か。

当欄でもこれまで約10年この経緯を追ってきたが、予てより上場企業大手の会員資格取得に続きSBIとも提携して売買システムの提供を受けいろいろ紆余曲折もあったものの、今年に入ってからはこのSBIHDが主要株主となり株式会社化を実現、取引量など各所では改善傾向にあったのも虚しく本上場申請の度に認可条件が変えられるなど守旧派の壁を崩すには至らずであった。

上記の通り認可基準も曖昧で生産者側も農水省の納得のゆく説明も無いと批判する声も多いが、言わずもがなJAグループや自民党の農林族には守旧反対派が幅を利かせており次期衆院選が近いなかJAなどへアピールを狙った動きとも取れなくもない。いずれにせよこれでまたコメ産業の競争力向上どころか、市場競争を避ける旧態依然の形態が継続される事となるか。


退屈消費の勝者

さて連日見どころ満載な熱戦の東京オリンピック、昨日のスケートボード女子パーク決勝ではNHKオリンピック放送アスリートナビゲーターを務める北島康介氏が派手なルイ・ヴィトンのモノグラムマルチウォーターカラーシャツで登場し話題になっていたが、この仏LVMHモエヘネシー・ルイ・ヴィトンといえば先週発表した決算もまた話題になっていた。

春に発表された同社の1-3月の売上高はこのルイ・ヴィトンの販売が伸び市場予想を上回る前年同期比32%の増加を見せここでは利益を明らかにはしていなかったものの、果たして2021年1-6月期決算では純利益が前年同期比で実に10倍と驚異的な数字を叩き出していた。コロナ禍前の19年1-6月期比でも6割増加しており、コロナ禍で行動が制限されるなか富裕層の消費が高級ブランドへ向かった様子が鮮明化している。

当然ながらこうした事を背景にしてその株価も綺麗な右肩上がりを描いており、市場最高値を更新した欧州の主要株価指数「ストックス600」をこのLVMHやエルメスは更に大きく上方乖離している。旬なモノに指標の割高感を説いても耳を傾ける向きは少数派だろうが、既にそのPERはLVMHが37倍、エルメスに至っては60倍を超えてきており鯨化している米アップルやフェイスブックの20倍台をもしのいでいる。

先に発表された世界の富裕層でも所謂ミリオネアは20年末から1割増加し金額ベースでも46%を占めている事で富の集中が進行している旨を先月の日経紙で見たが、高級ブランドや高級ブランド株に資金が群がり富裕層が更に消費を謳歌する裏で冒頭の20万円近くするアロハシャツなど到底手が出せない中低所得層との経済格差が自ずと浮き彫りになっている。上記の高PERや買い物客の裾野の広がり等という理想論も置いてけぼりで、偏った消費が更に熱を帯びるさまは正に世の縮図を表しているともいえようか。


個人の指南書

欧米株に比べ日本株の出遅れが彼方此方で指摘されている昨今だが、昨日の日経紙投資情報面にはその要因として需給面で日銀がETF購入額を減らした影響も出ている旨が書いてあった。言わずもがな株式市場では二大鯨となっている日銀とGPIFだが、規模が規模だけにうち一つの投資スタイルの変更も少なからず各所に影響があろうか。

ところでもう一つのGPIFだが、先月に書いたように2020年の運用実績は37兆7986円の黒字となりその黒字幅、収益率共に過去最高を記録しており同紙の大機小機では「個人の運用、公的年金に学ぼう」と題し、プロ向けと思われがちな世界最大の機関投資家も長期の投資スタンス、最適配分、インデックス運用等々個人投資家が参考にすべき内容が多く含まれる旨が書かれていた。

確かにこう見ると最も有利なモノを追求し奇をてらった旬な商品やアクティブ多用に走りがちな向きは逆に新鮮さを感じるのではないか?今なお先が見えないコロナ禍だがコロナ後の世界経済回復を見据えた個人の資産運用の組み立てなど課題の一つでもあるだけに、オーソドックスな投資戦略を貫く原点回帰のスタンスは学ぶべき点が多いのはその実績が物語っているか。


世論の顔色

さて東京五輪も酣だが、日本選手が金メダルラッシュで沸くなかで先にも書いたようにスケートボードの表彰式で東証一部の水産物竜会社ホウスイが度々映り込んだ事で、五輪のスポンサーでもない同社のホームページにアクセスが殺到し、株価も急騰し年初来高値を更新するなど俄かに話題になってしまった一件があった。

こんな珍事があった一方で、正式スポンサーの最高位とそれに次ぐ「ゴールドパートナー」といわれる錚々たる面子はこの度の五輪開会の是非を巡る世論が割れた挙げ句に無観客開催という事もあり、トヨタ筆頭としたトップが開会式への出席を欠席するなど世論にも配慮し自ずとPRも影を潜めざるを得ない旨が先週の日経紙に出ていた。

対照的に表面感覚では全アスリートに贈呈されたサムスンのスマホなどは選手が挙ってSNSにアップし国際規模でPRが奏功している感もあるが、費用対効果どころかすっかりアテが外れてしまったとの指摘喧しい国内勢も、例えば聖火や燃料電池車へは再生可能エネルギー由来の水素をENEOSが提供、またその車はトヨタが提供などSDGsのテーマにも乗り五輪を通じた発信に工夫を凝らしており軸足を変えた戦略もまた注目すべきであろう。


大阪取引所、2021/9/21にCME原油等指数先物(略称:CME原油先物)を新規上場


大阪取引所は、2021年9月21日に新たに「CME原油等指数先物(略称:CME原油先物)」を新規上場。

●CME原油等指数先物(略称:CME原油先物)とは
CMEグループの中核をなすニューヨーク・マーカンタイル取引所市場において取引されている3つのエネルギー先物(WTI先物(原油)、RBOB先物(ガソリン)、ULSD先物(ヒーティングオイル))から構成される指数であるCME原油等指数を対象とする先物取引です。

●構成要素
2021年5月14日現在、CME原油等指数の各構成銘柄のウエイトは以下のように設定されています。
・NYMEX WTI 原油 72%
・NYMEX RBOB ガソリン 13%
・NYMEX NY Harbor ULSD ヒーティングオイル 15%

●商品の特徴
・WTI先物価格との相関が高い
・円建てで取引
・現物の受渡しリスクなし

▼CME原油等指数先物(略称:CME原油先物)商品概要ページ

会社名内容
北辰物産CME原油等指数先物の新規上場につきまして
岡地新商品の追加及び取引に関わる変更点について
コムテックスCME原油等指数先物

JPX、9/21新デリバティブ売買システム「J-GATE3.0」稼働に伴う取引制度の見直し等 

日本取引所グループ(OSE、TOCOM)は、投資家や取引参加者をはじめとした市場利用者にとっての信頼性・利便性をより向上し、流動性の向上を図る観点から、次期デリバティブ売買システム(J-GATE3.0)を2021年9月21日(火)(予定)に稼働。本稼働に伴い大阪取引所及び東京商品取引所の取引制度の見直し等を以下の様に実施。
▼J-GATE3.0稼働に伴う取引制度の見直し等

●取引時間の拡大
<大阪取引所>
・ナイトセッションを翌6時まで延長
・指数オプション取引の日中立会の開始時刻を8時45分に前倒し
<東京商品取引所>
・ナイトセッションを翌6時まで延長

●即時約定可能値幅制度(DCB制度)等の見直し
<大阪取引所>
・オープニング・オークション等における即時約定可能値幅制度の導入
・クロージング・オークションにおける約定可能値幅の拡大(指数先物、指数オプション、商品先物及び商品先物オプションに限る)
<東京商品取引所>
・寄付板合わせ等における即時約定可能値幅制度の導入
・引板合わせにおける即時約定可能値幅の拡大

●サーキット・ブレーカー制度(SCB制度)の見直し
<大阪取引所>
・各商品の中心限月取引において、呼値の値幅制限の上限の値段又は下限の値段で取引等が行われた場合、直ちにSCBを発動
・株価指数先物取引の制限値幅算定基準を当該取引日の呼値の制限値幅の基準値段とし取引日単位で設定
<東京商品取引所>
・原油について、中心限月取引においてサーキット・ブレーカー幅の上限の値段又は下限の値段で取引等が行われた場合、直ちにSCBを発動

●その他
<大阪取引所>
・フレックス先物取引の導入
・新商品の導入(CME原油等指数先物取引の開始)
<東京商品取引所>
・原油の取引期限を、新甫発会日の属する月から起算した 15 月以内の各月である15 限月制に変更(現在は6限月制)
企業名詳細
北辰物産「J-GATE3.0」稼働に伴う制度の見直しにつきまして

金融民主化の騰勢

さて、昨年から個人投資家中心にして様々な話題を振り撒いて米市場を席巻してきた証券アプリを提供する米スマートフォン証券専業ロビンフッドが、創業8年ではれて先週末にナスダック市場への上場を果たした。注目の初値は38ドルと公開価格と同値であったが、終値は同価格比8%安で初日の取引を終えている。

同社といえば言わずもがなSNS等で連携したイナゴ勢の共闘買いでわずか1ヵ月そこそこの間に株価が約20倍まで大化けしたゲームストップ株から果てはシルバーETFまで大化けさせるなどコモディティーに至るまでこれまで何度も話題を提供してきたが、その裏では誤解を招く情報提供など投資家保護の不備も指摘され1回の罰金として過去最高額の約7000万ドルの制裁金を支払うなどこちらの話題でも事欠かない。

コロナ禍による巣ごもり生活に投資ブームを後押ししその稼働口座数もコロナ感染拡大前から4倍錠になり業績も順調に拡大しているが、その収益源についても例えば1-3月期の売上高のうち実に8割以上がマーケットメーカーからユーザーの売買注文を回送した報酬体系所謂PFOFで得るなどこの辺にも賛否が分かれるところだ。

いずれにしてもこのIPOでその時価総額は3兆1,700億円と、アルケゴス問題で火傷を負った老舗の野村證券の実に2倍近い価値が生まれた。投資の民主化を謳い今回も最大3割以上の株式を自社アプリユーザーに割り当てたが、上記の通り諸々の規制強化の懸念があるなかでも彼らの支持を継続させられるかこのIPOは色々な意味で試金石となろうか。