海外企業も“同意なき買収”成功

今年4月に当欄で一度触れた温度センサー最大手の芝浦電子が台湾の電子部品大手ヤゲオから“同意なき買収提案”を受けていた件だが、その後紆余曲折を経て一昨日には芝浦電子へのTOBが成立している。ホワイトナイトとして登場した国内大手企業が敗れた?のも衝撃だったが、これで海外の事業会社が日本国内のプライム上場企業に対して“同意なき買収”を成立させた初めてのケースとなる。

かれこれ2月から始まったこの争奪戦?、ホワイトナイトとして名乗りを上げたミネベアミツミと数度にわたる価格競争を繰り広げ長期に及んだ外為法の審査手続きをもクリアしての悲願のTOB成立となった。4月の当欄でこのTOB合戦を取り上げた時の芝浦電子株の終値は5550円だったが、結局最終的には株式応募は約87%にのぼり価格は1株あたり7130円、買収額は当初予定から1.6倍超にも膨らんだ計算だ。

前にも書いたが経産省は一昨年に企業が買収提案を受けた際に企業価値向上に繋がる真摯な提案を理由なく拒んではならない旨の「企業買収における行動指針」を策定しており、買収に関する潮目の変化から今回の買収劇はその辺を象徴しているともいえる。とはいえ今回の件ではミネベアミツミも一連の過程でヤゲオを上回る価格提示で対抗し戦いを挑んでいたものの、経済合理性で説明のつかない価格で競り負けた点を含め経済安全保障に絡む官民の役割の在り方など今後も課題となってこようか。


続く円安と転落

さて先週にIMF(国際通貨基金)が発表した最新の推計によれば、日本の名目GDPは為替が円安傾向にありドル建てて目減りしている影響もあり来年は4兆4636億ドルと世界4位から5位に後退する模様だ。そういったことで26年はインドにも逆転される模様だが日本は一昨年にドイツに抜かれて以降、昨年のそれも4兆193億ドルと米国、中国、そしてこのドイツに次いで4位であった。

上記のインドだが自動車販売台数は22に日本を抜いており、人口もまた中国のそれを抜いていると推定されており中間層の急増が経済成長に寄与しているわけで高成長も頷けるというものだ。こうした猛迫してきた国と比較するに日本の成長率は見劣りし、何と言ってももはや金利差では説明がつかなくなってきている近年の円安でこうした成長率自体も吹き飛んでいる格好となっている。

日本のみがインフレ下にあってなお低金利状態にあるわけだが、日銀も政府も円安弊害の自覚があるのか無いのか直近の“高市トレード”で円安にも一段と弾みがついている。新興国に抜かれ経済的な存在感自体が小さくなる可能性が高いわけだが、この位置でインドと共に数年のあいだ競り合ってきた英国もジリジリと接近しつつあり、円安含めた構図に変化がない限り日本の転落もまだ途上ということか。


自維連立

週明け本日の日経平均は1603.35円高と急反発し49000円の大台を初めて超えてきた。これは言わずもがな政局不安が後退したのが背景にあるが、日本維新の会は自民党との連立で合意する方針を明らかにし、明日にも実施される首相指名選挙で自民の高市総裁が首相に選ばれるのが確実な情勢となっている。この両党に加え無所属層を取り込めるなら衆参両院の過半数確保が視野に入り、自公時代より政策遂行力が高まるとの楽観論も出ている感じだ。

そうしたことでマーケットではAI関連の再物色から個別ではソフトバンクGが急反発し上場来の高値を大きく更新、同じく上場来高値更新組みでは高市銘柄のセキュリティーものでグローバルセキュリティエキスパートも急反発し上場来高値を更新していた。また“維新銘柄”として物色の矛先が向かったものとしては、副首都構想関連でイトーヨーギョーがストップ高の引けとなり、同じく桜島埠頭もストップ高で大引け、また南海辰村建設もザラ場ストップ高まで買い進まれるなどスタンダード市場も大賑わいの一日になった。

この連立、冒頭のように期待感がある一方で維新の経験不足を懸念する声もある。与党政権を経験した議員が少なく、自民としても公明以外と組んだ経験が20年以上もなく維新との与党でさまざまな政策決定が今後スムーズに出来るか否か不透明感も漂う。米市場では先週「VIX」が25台まで上昇、また国内市場も「日経平均VI」が先週末に35台まで上昇してきておりまだボラタイルな展開は続きそうだ。


プアマンズゴールド

今週は連休明けに金の小売価格が初めて22,000円を突破している。金といえば前回「初の20000円大台」と取り上げたのが先月末であったが、そこから2週間そこそこで10%高であるから上昇ピッチの速さがうかがえる。思わぬ高騰の余波か直近では10金製の都議会議員バッジがネットオークションサイトに出品され落札されていたとの報があったが、ちなみに今年6月に当選議員に配られたバッジの単価は47,355円と前回配布時の約3.6倍になっているという。

こんな話題の金の裏で同じく急騰しているのが「銀」か。米が銀にも関税を課すとの警戒感から米向けの輸出が急増しこれがロンドンでの品薄に拍車をかけた格好となり、先週には国際価格の指標となるロンドン現物1トロイオンスが1980年以来、45年ぶりに節目の50ドルを超え連休明けには53ドル超まで値を飛ばしている。銀といえば“ハント兄弟の買い占め”が有名だがそれをも塗り替えたことになるか。

そういえば数年前には米の“イナゴ集団”ロビンフッダー達がこの銀ETFを集中的に買い煽った事もあったが国内ETFも物色の矛先が向かい急騰している。代表格の三菱UFJの純銀上場投信は昨日にザラバ高値25465円まで大幅続伸し上場来の高値を更新、またETFSECのWisdomTree銀上場投信も連休明け日経平均が急落するなか初めて7000円の大台を超え、こちらも本日は3日大幅続伸し上場来高値を更新している。

金と比較し小粒な時価総額の銀はその規模から並行的に物色されるにしてもその上昇率は金を軽く上回る。そういった事で投機買いも少なくないだろうが、国内大手地金商では金同様にインフレヘッジや資産保全を目的とした購入が顕著化し現物の地金を発売すると数日で完売する現象が毎週続いているという。金地金も小サイズのインゴットの生産が追いつかず品薄状態になっているというのを見るに、購入層が末端まで拡大してきたさまがうがかえる。


データセンター銘柄乱舞

本日の日経紙一面には「日立、送配電1.5万人採用」と題し、電力を大量消費するAI(人工知能)向けデータセンター増加により世界的に送配電能力が不足していることで電力インフラの増強を支えAI普及を後押しする旨の記事があった。この報道を受けて本日の日立製作所の株価は3日ぶりに急反発していたが、こうしたマンパワーもさることながらデータセンター向けに需要好調で供給不足が鮮明となっているのが銅か。

銅の国際指標となるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物は先週段階で1トン1万820.5ドルと昨年に付けた史上最高値に迫っている旨も同じく日経紙のグローバル市場面にも出ていたが、これら関連株も暴騰している。三井金属は昨年の関税ショックで付けた安値3255円から昨日は14290円の上場来高値を付けているが実に株価は約4.4倍に大化けしており、住友金属鉱山も同じく昨年4月の安値から昨日の年初来高値まで約2.3倍に化けている。

こうなってくるとまた懸念されるが各所でのあらゆる銅製品の盗難事件か。私の知人も太陽光パネルの発電所で銅線ケーブル盗難の被害に遭い、会社ではエアコンの室外機も狙われた話をついこの間聞いたが、警察庁によれば昨年1~11月の金属盗難件数は暫定値で約2万件にものぼり既に20年以降で年間最高件数を記録しているという。需要急増に加え世界最大級の銅鉱山で事故も起きた事で投機筋も建玉を増加させており最高値更新を視野に各所対策が求められそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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