金利収益の旨味

本日の日経紙グローバル市場面には「信用買い個人、金利高の影」と題し、直近で東証から公表された投資家の信用取引の買い残高の約6.4兆円などが信用取引のコスト上昇などで重荷になる可能性が出てきた旨の記事があった。複数の大手証券では日銀の利上げで短期市場からの資金調達コストが膨らんでおり、これに伴い信用買いの買い方金利の引き上げに動いている模様だ。

同紙では上記の買い残の約6.4兆円をもとに足元の買い方金利の水準を年間約3%と仮定しての計算では、個人投資家全体の金利負担が約1900億円にのぼるという。もちろんこのマル信の性質上ダラダラと期日まで引っ張るパターンは誰もがエントリー当初は想定していないだろうが、先に書いた信用評価損益率のプラス浮上などに惑わされ気が付けば塩漬けの罠にはまっている向きも少なくないか。

さて張る側は泣き笑いの明暗があっても、こうした対で証券会社は恩恵を被る。先の大手ネット証券の2026年4~6月期の合計純利益は前年同期比で2.3倍に膨らんだが、背景には各社共に信用取引の金融収支が貢献し収益全体に占める割合も大きく伸びてきている。日銀利上げのペース以上に貢献している間は良いが、今後の利上げに何処まで付き合えるのかこの辺にも注視しておきたい。


背徳と健康

今でもそうなのか少し前まで「ギルティフード」がやたらと流行っていた感じがしていた?が、スーパーに買い物に行った際にサントリーのNOPEギルティがいまだギチギチに棚に並んでいたのを見た。こういった一方で昨日の日経MJでは米のプロテイン人気の流れなども背景にして森永乳業が高タンパク質の商品を身近な商品を中心に拡大している旨の記事を見かけた。

ところで森乳といえば海外の子会社だったか、ホエイの精製に強みを持つ企業だけにこういった部分に商機を見つけるのは自然な流れだったか。同社といえば営業利益の構成でも海外の比率が高いだけに今後はこうした部分の舵取りにも注目しておきたいが、その辺は兎も角も同社のたんぱく質を打ち出した商品の今年3月の売上高は20年3月期比で約2倍にも拡大しているという。

厚労省の方でも日本人の食事摂取基準で1日当たりのたんぱく質接種の推奨量など設けているが、森乳の調査でもこれが十分に取れていないと回答している向きは約7割にも上るという。“ギルティ”人気で増殖した?GLP―1受容体作動薬常用者増加などもあるだけに、そうした向きの対策とも相まって“対”の部分への商機を各社まだ模索する展開が続くだろうか。


宝探し再び

本日の日経紙・インサイドアウトの頁では「金高騰、産金国目覚める」と題し、ゴールドを産出する新興国の間で近年の金価格高騰を自国経済の発展につなげようとする動きが活発化している旨の記事があった。またこうして広がり始めたところの金をめぐる資源ナショナリズムは、今後長い目で見れば金価格の新たな上昇要因となる可能性が十分にあるという。

ここでは膨大な埋蔵量を誇るラオス政府による国内貴金属市場インフラの急ピッチな立ち上げや、インドネシアが金輸出に対し最大15%課税し国外流出を抑えようとする姿勢、また中銀の金購入を進める中国やマダガスカルなどの動きが挙げられていたが、日本でも金価格高騰を背景に海外企業や国内企業が新たな金鉱脈を調査したり金属回収の動きを活発化させている。

2年ほど前だったか当欄では、北海道でかつて栄えた静狩金山周辺で豪州のキンギンエクスポレーションの子会社であるジャペックスが金鉱脈を見つけようと採掘調査計画が持ち上がっている旨を書いたことがあるが、同じく北海道の雄武町ではプライム市場上場のJX金属はカナダの鉱物探査会社アービング・リソーシズが金鉱脈の調査を継続している動きがある。

また東京オリンピックの時の「都市鉱山から作るみんなのメダルプロジェクト」で見られた通りこうしたお家芸の技術もさることながら、最近では新日本電工が焼却灰からの回収設備を拡張したりIHIは海水から金を採取する技術の実用化を目指したりしているという。金価格の動向が世界で資源ナショナリズムを刺激し、カンフル剤の一部となってゆくのかどうか今後も注目である。


基準地価2026

先週はこの時期恒例で国土交通省から2026年の基準地価が公表されている。大型再開発やインバウンドの増加などにより住宅地、商業地、全用途共に上昇していずれも5年連続での上昇となっていたが、全体をけん引したのは三大都市圏で全国最高地価地点は不動の21年連続トップで明治屋銀座ビルの1平方メートル当たり5250万円、一昨年の4210万から実に1000万円以上も上昇している。

この東京だが商業地地価の平均は1平方メートルあたり平均がピークのバブル期1993年以来、33年ぶりの高水準になっているという。コロナ禍後の出社回帰などを背景に旺盛なオフィス需要から需給バランスが取れた適正な空室率の目安である5%を下回り、日経紙では都心の5区では大規模オフィスの平均空室率は6月末時点で0.8%と出ていた。

今後の5年間の供給ペースは低水準で空室率の低下基調は27年まで続き、これにより受給バランスは一層逼迫しオフィス賃料相場の上昇は続くとも書かれていたが、それにしてはREITの弱さが際立っている。東証REIT指数は年初来で13%安に沈みREITのNAV倍率(株式でいうところのPBR)に至っては上昇している全銘柄が1倍未満の水準に甘んじている。

もっとも足元での金利上昇傾向を背景に利益成長の側面から上記の低迷は致し方なく、高品質オフィスの利回りは2%台半ばぐらいになってきている一方で新発10年物国債の利回りはこれを上回ってきており、であればわざわざという構図も否めない。“陰極まれば~”という相場格言もあるが、今後は金利上昇やインフレを当該不動産が生み出すキャッシュフローがどの程度上回ってくるかも焦点となって来ようか。


あの店のあの味

昨日の伝統工芸展に行った際に三越本店近辺を歩いていて思い出したのが、先月の日経紙ヒットのクスリの頁で「名店の味、MA&で承継」と題し、名店の味がなくならないようにレシピや屋号などを継承するミニM&Aを手掛ける企業を取り上げた記事。この冒頭では、東京・日本橋にツタが絡まった建物でスープ状のカレーを出す店があったが閉店しもう食べられなくなり“ロス”になった旨の書き出しであったが、これを読んで懐かしい想いが蘇った。

今のマンダリンオリエンタル東京とコレド室町テラスとに挟まれたとんでもない一等地にあったこの店は近所で私も何度か行ったことがあったが、同紙でも“ツタのカレー店”と「通称」で書いている通り建物の内外に店名が無く、外看板には「珈琲」と書かれていたものの店内でコーヒーを呑む客を一度も見たこともなく、店内は座ると否応なし?にカレーが出される一択のなかなか癖のある店だった。

斯様に日本橋には無くなってしまった名店が幾つもあるが、ここ数年でも幾つも思い浮かぶ。近所にあった「都寿司」は軽く創業100年を超える老舗であったものの5代目婿養子が起こした不祥事で突然閉店、鮪は言わずもがなランチの“にもの丼”も忘れられない味だった。TCATにあった唯一無二の味の担々麺が人気だった「龍鳳」も人手不足に苦しんでいたが力尽き、住宅街のクラシックな佇まいの中で海軍ゆかりのフレンチを堪能出来た老舗の「スコット」も消えた。

他にも創業家の内部分裂で本家の味の継承者が独立してしまったパターンや、名前は残っているが同業に買収され移転した例など日本橋には数多ある。これらは辛うじて同じ味を味わうことが出来るが、確かに上記の“消えた名店”の味の再現店がこの先現れるのか未知数だ。こうした無形資産だけを継承対象とする手法はこれまでにない新手といえようが、普及すれば“ロス”の寂しさも半減することになろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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