実感なき6万円超え

1週間前の当欄で「6万円は一旦お預けとなった」と書いていた日経平均だが、先週のザラバ超えに続き週明けの本日は終値で初めて6万円の大台を超えてきた。とはいえ「NT倍率」は過去見たことがない16倍台で連日推移し、体感でも連日にわたりダラダラと陰線を引いている優等生的な大型株を尻目に買いの矛先が一部半導体・AI関連株に集中し物色の偏りは否めない。

ともあれ1か月前の年度末の51000円そこそこから実感が無いまま急ピッチな上げを演じているが、大台更新ごとのスピードが毎回早くなってきているのだけは実感する。コロナ禍が明けようかという21年の3万円超えから一昨年の4万円超えまでは約3年ほど要したが、そこから昨年の5万円超えまでがこの約半分ほどの1年7か月、そして今回の6万円超えまではそこから半年ほどで達成と史上最速となっている。

いずれにせよAI投資の回収懸念から一旦終焉を迎えた昨年秋の光景が嘘のような再燃具合だが、主力の上昇も相俟ってバリエーションの方も既に日経平均PERで20倍に乗ってきた。昨今の原油価格高騰を加味しても価格転嫁などで2桁増益は可能との一部試算などが成長ストーリーを維持しているのが背景になっているが、これが米国株をもアウトパフォームする原動力になっている。

とはいえ今月に内閣府が公表した3月の消費者態度指数はトランプ政権の相互関税発表後の昨年5月以来の低水準となっており、3月の景気ウォッチャー調査も中東情勢の緊迫化を背景に景況感は現状、先行きともに大幅悪化している。斯様に消費者心理が冷え込む中で日経平均だけ粛々と史上最高値更新している“乖離感”に違和感を覚える向きが少なくないのは当然だが、この乖離感とNT倍率が低下する局面が訪れるのか否か今後も注視しておきたい。


“最強”エルメスにも暗雲?

さて先週末の日経紙グローバル市場面には「フランス株に三重苦」と題し、中核をなすところの高級ブランド株の失速でフランス株の低迷が長期化している旨の記事があった。欧州主要600社の株価指数であるストックス600は23年末比で約3割ほど上昇しているが、フランスの代表的な株価指数であるCAC40は1割にとどまり苦戦が際立つという。

ラグジュアリーブランド勢は先週始めに発表された時価総額首位のLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの26年1~3月期の売上高が、今月の中東地域の売り上げが急減し前年同期比6%減となっていたほか、最強といわれていたあのエルメス・インターナショナルもアナリスト予想を下回る結果に終わり先週は同社株が日中ベースで同社としては最大の下げを演じる場面があった。

そういった事で上記のエルメス・インターナショナルの株価は年初来で23%安、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの株価も年初来で25%安の水準に甘んじている。両者共に度重なる値上げを敢行してきたが、一部の値上げに動じない富裕層が売り上げを牽引している構図の中で、これまでなんとか値上げに堪えて付いてきた主要店の中間購買層が順次脱落してゆく景色になってきたか。

こういったラグジュアリー勢、昨今の円安で本国で買うよりも日本で購入した方が安く手に入る逆転現象から日本では依然好調だが、反面このユーロ高が全体での足枷にもなる。今後のラグジュアリーブランドを占う上で粛々と揺るぎない富裕層には今後も期待したいが、好条件が揃っていた中東の販売拠点に暗雲漂い、中東発の今後の旅行コスト上昇やインフレ、株式市場の動向含め諸々と目が離せない。


浸透してきたコモディティー系

本日の日経紙グローバル市場面では「オルカン買い意欲衰えず」と題し、新NISAを起点に投資の波が広がり25・26年の純流入額で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、所謂“オルカン”が不動の首位となっている旨が出ていた。これに続くのが「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」であったが、4位には「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」のコモディティー系が顔を出している。

特に貴金属系は近年稀に見る驚異の上昇率を昨年に演じたことで俄然注目度が高まった模様だが、そのパフォーマンスも昨年末から先週までで首位のオルカンの6.6%の倍近く上回る12.3%を叩き出している。ゴールドものでは9位にも「三菱UFJ純金ファンド」がランクインしていたが、先週末の日経紙でも世界のETFが直近1週間で21億ドルの純流入を記録し前週から2週連続で買い越しになった旨の記事があった。

この金ETFも相場が異常な高騰を演じた昨年には、受益権1口あたりの市場価格が純資産額にあたる基準価格と比べ異常乖離するなどの場面が何度かありその都度注意喚起がなされたのを思い出す。直近で今年の日本の第一四半期のETF資金フローが報じられているが、資産クラス別での金関連は継続的な需要がみられるという。地政学的な不確実性が払拭されないなか引き続き投資家のポートフォリオ分散の姿勢が継続されるか。


春の丑の日

本日は春の「土用の丑の日」、“一の丑”である。夏の丑の日はよく知られるところだが、この夏にあやかって春も商機とする向きも最近では増加傾向にある。ところでこのウナギだが今春は前年同期比でところによっては約2割前後安くなっているのも散見され、この物価高に追い打ちがかかっているなか消費者にとってちょっとした朗報でもあるか。

日本は言わずもがな世界最大のウナギ消費国だが、この消費量のうち約7~8割を中国からの輸入が占めている。この安価傾向になってきた背景の一つとして言われているのが豊漁で飽和状態にあった屋内養殖場の買い付け絞り込みと併せ、この中国が昨年の春に上限を3倍近く超える数の稚魚を捕るなどしたことで供給過剰状態となり輸出価格が急落しているという構図だ

昨年末だったか当欄でEUが提案していたウナギの国際取引の規制強化案を取り上げた先に、「乱獲の疑義かかかる中国はじめ資源管理の強化は欠かせない」と書いた事があったが自業自得だろう。それはさておき今月から新年度、そして新生活を送る中ではや疲れが出ている向きもいるとは思うが、斯様な事情でお手頃になったウナギでスタミナを付けるのも良いかもしれない。


FOMOが作る強気

さて、イランがホルムズ海峡の開放を表明したことで週末の米株式相場は大幅上昇しダウ工業株30種平均は米国がイランを攻撃する直前の水準を回復し、ナスダックに至っては13連騰で最高値を付けている。週末のシカゴ日経平均先物も一時6万円の大台超えを演じていたが、米、イラン共にこの報道を額面通り受け取れない続報もあり週明けの東証は反発こそしたものの6万円は一旦お預けとなった。

まあそれでもMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスも最高値を付けてきており世界的な株価の回復が鮮明だ。取り巻く環境は双方の食い違う報道合戦もあり実際のところ何も変わってはいないどころか悪化している感さえあるが、マーケットはFOMO(FearOfMissingOut)の動きもありもうほぼイラン情勢の解決を先取りしたような格好になっている。

好感材料として確かに諸々の報道で原油価格も大幅下落となっているが、それでもこちらは攻撃前水準の60ドル台まで降りてきていない。現在の米EIA見通しでは今年の原油平均価格は前年から3割程度の上昇を見込んでいるが、2月の当欄でも書いたように今年10~15%増益がコンセンサスとなっているTOPIXのEPSにどの程度この辺が影響するのかどうかが焦点だろうか。

この辺はそれなりにバッファーがあるためにこの原油高が足枷とはなってもある程度の増益は確保出来るとの一部指摘があるが、この辺はフタを開けてみるまでわからないだろう。それにしても今回は今までの“TACO相場”とは違うという警戒論にも耳を貸さずに“TACO投資”に賭けた向きはまたも正解だったということになるが、FOMOが蔓延するTACO相場は何時まで続くのやら正常化の道はまだ遠いか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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