消える選択残る選択

さて、先週は日経平均が調整色を強める中でも2日連続ストップ高の後も続騰していたのが東証プライム上場のアルビスであったが、これは周知のようにスーパー大手のライフコーポレーションがTOBを実施すると発表しその買い付け価格の3780円にサヤ寄せしたもの。当のアルビス側は賛同意見を表明しており、このTOB成立後に上場廃止となる見込みだ。

このスーパー業界では春先にスタンダード市場上場のオリンピックもドンキが買収し上場廃止の道を辿ったが、TOBといえば先月もハウス食品工業が子会社の壱番屋の売却検討の報があり、組み込みソフト開発のイーソルのMBOも報じられておりいずれも株式の非公開化を検討する。斯様に非公開化の選択が増加しているが、ちょうど1週間前の日経紙一面でも東証への上場を廃止する企業が3年連続で過去最多を更新する旨を報じている。

非公開化に向かうケースでは上記のようなパターンもあれば、市場改革により上場維持基準を満たせなくなったパターンもある。昨年末には要請期間内に条件クリアする方策として所謂ロールアップなどの動きや、ファンドが絡んでファイナンスを駆使した時価総額拡大計画の動きなども予測されると書いていたが、ふるいにかける経過措置もいよいよ終了し条件のクリアが難しい10社が来月に上場廃止となる予定だ。

しかしこんなグロース市場やスタンダード市場でなくとも、東証一部からプライム市場に長らく君臨してきたところの「大正製薬」や「久光製薬」など誰もが知る“定番企業”まで非公開化を選択するのを見るに上場を前提としない新たな形が垣間見える。今後もこうした“前向きな退出”が中心になってくることが予測されるだけに、引き続きポスト別に注視しておきたい。


夢の国の試金石

先週末の日経紙夕刊ビジネス面で東京商工リサーチまとめの2025年度のテーマパーク・遊園地などの運営企業の売上高合計が、インバウンド消費や国内訪問客増加などの寄与により1兆931億円と24年比3%増となり4期連続で増収だった旨の記事を見た。ちなみに売上高首位は東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドで5881億7100万円と2.9%増となっている。

さてこの東京ディズニーリゾートといえば「東京ディズニーシー」が先週に開業25周年を迎えている。はや25年かと開業当時を思い起こせば何とも時の流れの早さを感じるものだが、この辺は料金にも表れている。当時6000円もしなかった1デーパスポートは今やほぼ2倍に、既に年パスやファストパスも消え、更にこれが来月から新たに高価格帯も追加導入されて大人の1デーパスポートは最大12400円が登場する予定だ。

思えばシーのエリア内に「ファンタジースプリングス」がオープンしたあたりから高額化政策が顕著になってきたようにも感じる。同施設を楽しむ迄のハードルの高さもさることながら、新エリアにオープンした直営ホテルも最上位のラグジュアリーの位置づけで開業している。このホテル事業も直営の稼働率は26年3月期で実に95%を叩き出しており、おの売上高と営業利益も揃って過去最高をはじき出している。

高単価路線が業績には奏功しているかというところだが、株価の報はこのファンタジースプリングス開業の年をピークに翌年には半値以下にまで沈む憂き目に遭っている。いろいろ挙げればきりがないが、要は“成長に対する天井感”を反映しているか。パーク拡張の土地の限界も見据え数年後にはクルーズ事業を開始する予定の同社だが、どこまで脱落しないファンを誘致し続けられるか今後の戦略の一つ一つが試金石になるか。


ドクターカッパーの捉え方

本日の日経紙グローバル市場面では「銅、7か月ぶり高値」と題し、銅価格の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物が7日に1トン14533ドルまで上昇し、1月に記録した過去最高値の14527.5ドルの最高値を上回った旨の記事があった。依然として供給懸念が継続しているうえ、米の関税発動に対する警戒感も強いことが背景となっている模様だ。

こうした国際相場の伸びは加工した素材製品である伸銅品の国内価格にも波及し、伸銅品のうち最も生産の多い「銅条」の今月の価格は昨年末時点に比較して31%高の水準となっている旨も先週の日経紙で見かけた。これら伸銅品の価格はJX金属発表の銅建値の動きに連動するというが、その建値も先月に最高値更新し5年で2倍強にまで水準を切り上げている。

この建値が最高値更新したあたりで東証の「WisdomTree ETF」も年初来高値を付けているが、当のJX金属の株価は5月に付けた上場来高値から現在は約3割安の水準で推移している。さて今後どうなる銅価格だが、上昇が続けば広範囲なインフレ誘発の懸念も出てくる。経済動向をいち早く映すとして多用されてきた「ドクターカッパー」の公式も、近年のAI投資の集中等で従前との温度差は否めずその捉え方もまた変わってくるだろうか。


睡眠市場の伸びしろ

さて、気温の変化が急で睡眠のリズムも狂いがちな日々だが、先週3日は「睡眠の日」であった。OECD(経済協力開発機構)で昔からいわれていることだが日本人の睡眠時間は主要国の間でも最も短時間らしく、大谷翔平選手が一日約10時間の睡眠を確保している旨などを聞くにそこまで寝るのは不可能とも思えるが、実際に欧州の知人などと話すとこの程度の睡眠時間がみんな普通らしい。

そういった事で健康の為に費やす平均金額の伸びと共に東京ビッグサイトなどで「健康博覧会」や「SPORTEC」等の開催を見るが、睡眠というところではリカバリー服の“BAKUNE”シリーズを展開するTENTIALは昨年に東証グロース市場への上場を果たしている。こうしたリカバリー服の市場規模は一昨年の189億円から今年は500億円を超える見込みといい、更には2030年には1700億円規模にまで成長が予測されている模様だ。

十分な睡眠は業務の効率性からも重要なのは間違いないが、冒頭のOECDでは睡眠不足による損失が約20兆円にものぼるという。こうなってくると企業にとって労働者の睡眠の確保などもまた経営課題にもなりそうだが、既に仮眠環境を整える企業など大手中心に増加しつつあり今後の市場の伸びしろには注目しておきたい。


K字型で二極化鮮明に

周知のように先週は日本の長期金利の指標である新発10年物国債利回りが19996年9月以来、30年ぶりに3%の大台に乗せてきた。3%の長期金利は日本国内の企業はもとより家計にも影響が及ぶ。預貯金等は金利収入増加となる反面、住宅ローン等は固定型・変動型共にメガバンク中心に相次いで引き上げの発表が為されているが、この辺一つとってもまた格差が広がる二面性が出てくるか。

最近ではこの金利上昇でやむを得ず50年もの超長期ローンやペアローン等を組む向きも急増している模様だが、潤沢な預貯金や銀行株、国債等を保有し住宅購入も一括で支払える向きはこうしたローン組が落とすカネ等でますます肥える。最近はよく「K字型経済」なる言葉を見聞きするが、上記以外の部分でもこうしたところを上手く掬い取ろうと試みる動きが各所で見られる。

例えば昨年に当欄で「くら寿司」を取り上げた際に「~外食産業では高級路線とコスパとの二極化がいわれている~」と書いたが、この「くら寿司」はこれまでの店舗形態に加えて高級路線の「無添蔵」を関東にも展開させる一方で、これよりも前に年始のマグロ初競りですっかり有名になった高級路線を展開する「銀座おのでら」は比較的低価格の立ち食い寿司や廻転寿司(タブレット注文)を展開している。

寿司以外でも外食では他に牛丼の「松屋フーズ」がどこまで洒落なのか「銀座松屋」の中に神戸牛を使った高級路線の「松屋PREMIUM」を展開している。斯様に従前路線ではこのK字型経済の需要を取り切れないことで企業がこれまでの業態の価格イメージの“枠”を超え、これら取りこぼし無きよう次の一手を模索する動きからまたイメージを覆す新たな業態が表れるかもしれない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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