修正される本源的価値

本日の日経紙ビジネス面では「豊田織機 非公開化へ前進」と題し、昨日にトヨタ陣営がTOB価格を引き上げる意向を示したことで米の投資ファンド、エリオット・インベストメント・マネジメントの応募合意を取り付けた旨の記事があった。これまでトヨタ陣営側はTOB価格を引き上げない意向を公表していたものだったが、市場では先月から2万円大台での推移が定着し結局再度の修正に追い込まれた格好ともいえるか。

この豊田自動織機は昨年に何度か取り上げた事があったが、当初の16300円という数字が出た時に当欄では「現在のEPS実績が約16300円であるからちょうどPBR1倍水準といったところだが、これが本源的な企業価値なのかどうか~」と書いていたが、その後にエリオットが株を大量保有が判明しTOB価格を18800円へ引き上げた際にもトヨタ陣営は「本源的価値を反映した価格」として変更はないとの方針を発表していた。

これまでエリオットは豊田自動織機の価値の過小評価を訴えており株式価値は1株あたり26134円と言っていたが、こうしたアクティビストらによる株式取得の後に買い付け価格の引き上げを要請するパターンが近年は多い。この豊田自動織機の場合は2度の引き上げを余儀なくされたが、今年に入ってTOBが成立した太平洋工業も約半年を要し豊田自動織機と同じく2度のTOB価格引き上げを余儀なくされている。

また先月にTOBが成立したマンダムに至っては3回の引き上げを余儀なくされそのTOB価格の引き上げ率は実に60%に迫る勢いとなった。この豊田自動織機もわずか1か月でTOB価格の修正に追い込まれたわけだが、TOB価格が引き上げられればこの分のコスト増はMBO完了後に重くのしかかる。MBOを計画する企業はこれらと市場の対話との均衡点を測るのも課題となってくるか。


タンカーの銀座通り封鎖?

周知のように米国とイスラエルがイランへの軍事攻勢に踏み切り、イランの方も即日報復攻撃に出た。この情勢下で最初に開く東京市場が注目されたが、日経平均は前場に1500円ほど下げたもののあと下げ渋りを見せ793.03円安で引けている。アジアでは上海総合指数など続伸し2015年6月30日以来、約10年8か月ぶりの高値となるなど、警戒されたほどの惨状にはならなかった感じだ。

そんななか個別ではホルムズ海峡の封鎖がいわれ海運大手は揃って上昇し、商船三井などザラバ6080円と2007年11月以来、約18年3か月ぶりの高値を付けコロナ禍でコンテナ船運賃が大幅上昇した時を彷彿させる。ホルムズ海峡といえば原油だが、WTI原油価格連動型上場投信は寄り天となり、WisdomTreeWTI原油上場投信はストップ高で寄り付くもあと急速にダレる場面を見せるなど共にストップ高に張り付くような展開にはならなかった。

他のコモディティではWisdomTree天然ガス上場投信が約5%の上昇、ゴールド関連ではだが、純金上場信託は1月の年初来高値に迫るもこれを更新ならず、他にSPDRゴールド・シェアやWisdomTree金上場投信も同様に年初来高値は更新してこなかった。パンドラの箱を開けてしまったかと思う割にはこの程度かという感もするが、現時点ではここからどの程度戦火が拡大してくるのかはかりかねているという感じだろうか。

トランプ大統領は全目標達成までは作戦を継続するといっているが、さてイランはどう出るか?ホルムズ海峡が完全封鎖に至るというのはこれまで記憶に無いが、原油以上に在庫で抱えるのが難しいLNGもホルムズ海峡を通って供給されているだけに心配だ。万が一にでも完全封鎖となり、それが短期収束とならないということになると世界経済のスタグフレーション懸念も現実味を帯びてくるだけにしばらくはこの戦況から目が離せない。


各社が上方修正

先週末の日経紙一面には「上場企業5年連続最高益」と題し、2026年3月期の上場企業の純利益はAI投資などの需要に加え非中核事業の売却など資本効率改革により5年連続で過去最高を更新する見通しとの記事が一面を飾っていたが、斯様な企業業績や高市政権の政策期待による海外投資家の資金流入も継続することが予想され証券各社や運用各社などが年末の日経平均株価の見通しを相次いで引き上げている。

いずれも先週から今週にかけて従来予想からの引き上げが為されているが、この辺は昨日の日経紙にも出ておりザッと国内大手では野村が従来予想から4000円の引き上げ、外資系ではBofA証券が同5500円の引き上げ、UBSは更に大きく同8000円の引き上げ、また国内運用大手では大和アセットが7000円の引き上げ、三井住友DSアセットも7000円の引き上げといった具合だ。

これでこれら挙げた各社は全て6万円の大台に乗った格好だが、本日も日経平均は3日続伸し早くも6万円大台が指呼の間となっている。これらの基準にもなる「EPS」だが、TOPIXの26年度のそれは各社共に10~15%の増益を見込んでおりざっくり3090円台~3200円台というところだが、後は年明けの当欄でも書いたようにこれらから「バリュエーション」をどこまで許容できるかだ。

PERで試算すれば長年壁と言われていた20倍の場合10%増益で約61900円、15%増益なら約64700円となり冒頭各社の新予想の水準になってくるが、足元でPERはコロナ禍の異常値を除きアベノミクス相場序盤を超えてきている。ここから一段の上方修正を目指すにはROEの向上など併せて不可欠となってくるだけに期待値が実勢となってくるかどうか今後の各種指標に注目である。


指数に見る日本の位置

本日から日本マクドナルドは、原材料費や人件費などの高騰が長期化していることなどを背景におよそ6割の商品で値上げを実施している。ザッと挙げると標準価格の店舗の場合、みんな大好きビッグマックが480円から500円に、続いてチーズバーガーが220円から240円に、そしてマックフライポテトのMが330円から350円などなどだが、この値上げは昨年の3月以来およそ1年ぶりとなる。

ところでこのビッグマックといえば異なる国や地域の間でコスト差の少ないこの価格を比較する事で各通貨の実質的な価値や各国・地域の総合的な経済力の目安で多用される「ビッグマック指数」が有名だが、今年の日本のそれは48位。円の価値も凋落していることで昨年からさらに順位を下げ、もはやランキング対象国の下から数えた方が早いがいずれにせよ随分と落ちぶれたものだ。

ちなみに今回の値上げでビッグマックが500円の大台に乗ったとしても、ランキングで日本のすぐ上に位置するウクライナにもまだ及ばない。こんな状況だからインバウンドが大挙して日本に押し寄せ円が二桁台だった時の日本人の海外買い物ツアーを今度は日本人以外が満喫し、この海外マネーが数多の価格水準を大きく引き上げているのも納得だが、この指数の順位が今後浮上する日がはたして来るや否や複雑な思いは続く。


じわりと影響“悪魔の金属”

先週末の日経紙グローバル面では「中国の銀ファンド混乱」と題し、中国深圳市場に上場する国投瑞銀基金が運用する銀ファンド「国投白銀LOF」の基準価格が銀価格暴落劇のさなか突如としてSHFE(上海期貨交易所)からCOMEX(ニューヨーク商品取引所)に切替わったのもつかの間、早くも翌日にはその基準価格の参照先を再度SHFEに戻すという措置が物議を醸し出している旨の記事があった。

東証に上場している貴金属系のETFも時に乖離が生じるケースがあるが、このLOFという商品の構造そのものが我々のイメージするETF等とは似て異なるために斯様なケースも起こり得るわけだがなんともスリル?のある商品だ。こんなケースもあり“悪魔の金属”という銀の異名もよりしっくりくるというものだが、こうした金融商品以外でも価格乱高下は生活の身近な部分にも影響を与え始めている。

今月アタマに当欄で五輪メダルに言及した際にこの銀価格高騰で歯科医院の保険対象治療の「銀歯」が利益を圧迫している旨に少し触れたが、その配合がパラジウムの約2割に対して銀の比率は“銀歯”という名の通りで約5割の構成比となっていることで、同様の問題がパラジウムの急騰でいわれていた5年ほど前から今回はさらに利益が圧迫されているのは想像に難くないか。

逆に患者側からすれば急騰前価格の3割負担でお得?治療が出来るという構図だが、この銀歯も以前は買い取りを扱わなかった業者も最近では積極的に高額買い取りをアピールしている。また他にも行事写真で学校等と契約している業者は値上げを検討し、銀製の管楽器を販売する業者の一部は時価販売に変更するなど、投資家以外の向きにも影響がじわじわと出てきているだけに今後の相場動向にも引き続き注意しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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