mNAV急低下

さて、QUICKは22日からビットコインのリアルタイムの価格指数の算出・公表を開始する模様だが、ビットコインといえば先に高値を付けたあと先月から下落が著しい。サイバー攻撃による資金流出疑い、世界最大のビットコイン保有企業であるストラテジー社による売却懸念、中国が再度暗号資産規制の強化に出る等々次々と悪材料が取りざたされる中、今月に入るや否や85000ドル台まで急落し、先の史上最高値から約3割安の水準まで一時沈んだ。

こうなると所謂“ビットコイン・トレジャリー・カンパニー”の類も急落の憂き目は避けられない。上記の米ストラテジー社は同日12%急落し今年の高値から6割以上下落しほぼ1年ぶりの大幅安を記録している。これらの企業に使われるところの企業の時価総額をその企業が保有する仮想通貨の価値で割って算出する「mNAV」は同日には1.1倍に低下、投資対象としてのリスクが懸念される1倍割れの懸念も指摘され始めている。

では国内勢はどうだろうか?度々取り上げた指標格の東証スタンダード市場のメタプラネットは6月高値1930円から今週は350円台まで実に80%以上の急落を演じmNAVは1倍を切った。また同じくスタンダード市場のANAPホールディングスも7月高値1835円から今週は410円台まで急落しこちらも約78%の急落、リミックスポイントも2月の高値848円から今週は243円と年初来安値を更新し約70%の急落と、どれも米ストラテジー社を上回る暴落を演じている。

これらはまたビットコインの代替投資先にもなってきたが、上記に見られる通りその下落率やビットコインをはるかに上回りオルタナティブとして飛び付いた投資家は厳しい現実に直面している。新株予約券を駆使した“錬金”の事業モデルは「mNAV」が低下した局面では当然ながら分が悪く逆回転に注視しなければならないが、既にmNAVが1倍を割ってきている企業がNAVの維持をどう図ってゆくのか、ビットコイン価格と共に引き続き注視してゆきたい。


完全養殖が急務

さて、今年の「丑の日」あたりから懸念されていたEU(欧州連合)などが提案していたところのニホンウナギを含むウナギ全種の国際取引の規制強化案が先週のワシントン条約締結国会議で否決されている。明後日の本会議で正式に決めるが、賛成が35、反対が100、棄権が8ということで反対が大きく上回りひとまずほっと一安心という感じか。

国内のウナギの供給の約7割を輸入に頼っているが現状の日本では、輸出に際して許可証の発行が必要になるということになるとこれまでより国際取引に時間がかかる可能性も浮上し供給量減少のケースでは価格高騰の恐れがあった。というわけで目先の急騰リスクは一先ず回避となったが、とはいえ国際社会から向けられる厳しい視線に変わりはなく、乱獲の疑義がかかる中国はじめ東アジアでの資源管理の強化は欠かせない。

この辺に絡んでは完全養殖の商業化もキーになってくるが、東洋水産は独自に完全養殖に成功し、ゼンショーHDも養殖の生産性向上の技術開発に着手、また前回も書いたが水産研究・教育機構は完全養殖のウナギを量産するのに必要な基幹技術の特許を取得し大手民間企業や大学も協力し連携を図っている。資源保護と食文化の両立を図るべく官民挙げて完全養殖の高い壁を乗り越えようとする動きに今後も期待したいところだ。


再編スケールメリット

今年の定時株主総会で可決されていた通り、昨日はイオン傘下のウエルシアホールディングスとツルハホールディングスとが経営統合を果たしている。今後はイオンがツルハHDに対してTOBを実施し、持ち分比率を高めて同社を連結子会社化する運びとなるがこの話、もともとは2027年メドにした統合を目指しての協議であったものの当初計画を約2年前倒しての実現となった。

これまでのドラッグストア業界といえば売り上げベスト3がいずれも1兆円規模で横並びという印象であったが、この度の統合で実に2兆円規模のドラッグストアが誕生することになる。同業界では今から4年前に経営統合した3番手に位置するマツキヨココカラ&カンパニーが統合後の飛躍的な経営効率上昇で話題になった経緯があるが、今回の統合ではイオンのインフラも活用し3年間で500億円のシナジー効果を見込むという。

とはいえ日経紙ではこの統合する両社の営業利益率が上記のマツキヨココカラ&カンパニーに見劣りする旨の指摘があったが、なるほどマツキヨのそれは直近で7.4%、対してツルハHDは同5%台、ウエルシアHDは同3%台となっている。郊外立地や食品に強みを持つ4位のコスモス薬品も数年前から関東圏に進出著しく侮れない存在となろうが、さて思惑通りにスケールメリットが生かせるかどうか統合後のガリバードラッグストアに注目である。


クリスマス前の高騰

週が明けてみればもう師走だが、月初め恒例の帝国データバンクによる今月の値上げ動向は食品メーカー195社でチョコレート菓子や大豆加工品、調味料など217品目を数えている。単月の値上げ品目数としては2か月連続で1千品目を下回り2025年内では先月に次いで2番目の低水準と値上げラッシュ一服とはなってはいるが、今年値上げされた食品数は結局のところ2年ぶりに2万品目超えとなっている。

師走はホリデーシーズン入りで値上げによる買い控えが警戒されることで各社それなりに抑える動きもあると思われるが、先に総務省が発表した10月の全国消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数が112.1と前年比で3.0%上昇し伸び率は2か月連続で拡大、生鮮食品を除く食料は7.2%上昇するなど秋口までの値上げが多くとても一服感という状況にはない。

斯様に秋は価格を改定する動きが相次ぎ幅広い食料品が値上がりしていて、特にコーヒー豆が53.4%、コメ類が40.2%と大幅に上昇した。また11月の東京23区消費者物価指数も然り、クリスマスを前にケーキ素材関連が高騰しチョコレートなど32.5%アップと鎮静化の兆しも見えない。ダラダラとした円安も長期化の様相を呈しており、包装材や容器など今冬以降も順次値上げされる見通しから再値上げの可能性も十分にあり今後も物価高の行方が注視される。


IPの伸びしろ

先に当欄で取り上げていた日経トレンディが発表した「今年のヒット商品」で2位にランクインしたのは映画「国宝」であったが、今週に東宝が発表したところによると同映画の国内興行収入が今週アタマ時点で173億7千万円を超え、2003年公開の「踊る大捜査線THEMOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!」の興行収入を抜いて22年ぶりに実写邦画の歴代首位が交代することとなった。

東宝といえば今から70年以上も前の1954年から看板シリーズの「ゴジラ」を抱えているが、昨年には米映画界最大の祭典であるアカデミー賞において視覚効果賞を受賞している。かつては米市場にリメーク権や商品化権を渡していたがこれらも買い戻し布石を打ってきているが、こうしたIPモノの映画も任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」も世界興行収入がアナ雪を抜くなどゲームを実写にしてもほとんど差がないという世界も出来つつある。

冒頭の「国宝」はそれとして国内興行収入で1位と2位を独占しているのはいわずもがな「鬼滅の刃」シリーズだが、これを擁しているがソニーGで洋画では「スパイダーマン」や「ヴェノム」を擁する。以前にも書いたが、今や国内上場企業の時価総額ランキングでもIPビジネスで躍進する企業がどんどん順位を上げてきておりこのソニーGなどは2位の三菱UFJFGに次ぐ3位までに浮上してきている。

IPといえばほかにカルビーも自社スナック菓子のキャラクターなどをIPとして活用するマーケティングに取り組んでおり、菓子メーカーでは他に「たべっ子どうぶつ」のギンビスもこれを活用した映画などを展開している。飲食料系ではアサヒ飲料の「カルピス」など上記のゴジラの70年をも抜く106年のロンングセラーコンテンツだが、政府は33年までにこれらコンテンツの海外市場規模を現在の約3倍規模に高める目標を掲げており、新たな基幹産業の地位を固めつつあるIPモノは今後も要注目だ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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