総裁就任1週間の暗雲

ちょうど1週間前に当欄で「高市トレードの賞味期限」と書いた際に末尾では今後連立の行方など課題は山積みなだけに暫くは目が離せそうもないと書いていたが、周知のように先週末に公明党が自民党に連立政権から離脱する方針を伝えている。企業・団体献金の規制強化について折り合えなかったということだが、総裁選から政権運営の安定化のために連立拡大を訴えて来た新総裁もこれは誤算だったか。

というわけで本日のマーケットもこれを受け日経平均は1241.48円安と大幅続落となったが、昨日の「体育の日」が緩衝材的なものになったか週末の先物12月限の45200円引けなど見るに本日は中途半端にマイルドな下げに終始した感が強い。オプション市場も板が薄いなか商いもそこそこで個別の仕込みやデリバティブなどで一回転狙っていた向きにはなんとも今年の祝日は邪魔になってしまったか。

一方で個別では“高市トレード”で本命とされ直近で上場来高値を更新した三菱重工は本日の寄りがわずかに7円安でスタート、またIHIに至っては8.5円高と反発スタートとなるなどしており引けでは弱含んだもののこの辺を見るにまだ新総裁が総理大臣に選出される期待感は消えていないのか?確かに公明も総理指名選挙では野党側に協力するかどうか微妙な部分もあり今日のこの辺の動きに繋がっている可能性もあったか。

いずれにせよ今後矢継ぎ早に現れる関門として先ずはこの来週早々にも予定されている臨時国会での総理大臣指名選挙ではたして新総裁が次の総理に選出されるか否か、野党側も上記の通り一枚岩にはなれていない現状でこちらも一本化出来るか否かといった状況だが、離脱した公明党の身の振り方も気になる。そうこうしているうちに来週末にはASEAN関連会議、その翌日にはトランプ大統領の来日予定など重要日程が容赦なく迫っており、政局もマーケットも暫くは要注目である。


指数回復に寄与するか?

先週は経団連から東証プライム市場に上場している企業1625社の女性役員比率が今年の7月1日時点で18.4%だったことが発表されている。政府が掲げるところでは今年の中間目標が19%、経団連の会員企業712社は2.2ポイント上昇の19%とちょうどこの数値目標に届いてはいたものの、全体では去年より2.3ポイント上昇したとはいえこれには今一歩届かずという現状だった。

また政府は今年までにプライム上場企業の女性役員を1人以上にすることも目標としているが、39社は女性役員の登用はいまだゼロである。海外を見てみると米S&P500や英FTSE350指数構成銘柄は女性取締役の居ない企業はなく、いずれも取締役総数の3割を女性が占めているのが現状で、ノルウェーなど女性役員の数値目標を達成出来なかった企業には裁判所からペナルティーを課される政策を取った例もある。

ところで今年の日本の「ジェンダーギャップ指数」は昨年と変らずの118位であったが、調査対象148か国中で万年低位に位置している。うちこうした女性役員数などが影響する経済分野は112位であった。一方で政治分野は石破内閣で女性閣僚が2人にとどまった事で昨年の113位から125位に後退していたが、周知のように自民党立党70年で初の女性総裁が誕生し景色は少し変わったか。

加えて当の女性新総裁もその党と閣僚の人事では刷新感をアピールする意味でも女性の起用を過去最多にする方向で検討している事が一部で報じられている。こちらの政治分野ではランキング対象国の昨年の国会議員における男女平等所比率は過去最高となる33%に達している。今回の閣僚人事でこの辺が少しでも嵩上げされるのかどうか次回の結果と併せ注目しておきたい。


免税品にも転売ヤー

さて、今月は「国慶節」で1日から中国では延べ23億人以上が移動すると予測されている。先の土日も街では多くの中国人観光客を見かけたが、政府観光局によれば円安なども背景に旅行需要が高まっており8月の訪日外国人客数は342万8000人(前年同期比でプラス16.9%)と8月として初の300万人超えとなり、中国は5か月連続の増加で8月の100万人突破はコロナ禍後で初の事という。

インバウンドといえば“爆買い”が最近はトーンダウンしているとの報道が一部為されてはいるものの、街では依然としてハイブランドの大きな袋を幾つも携えている向きを多く見かける。観光庁発表によれば訪日客消費はここ10年で4倍に増えて昨年のそれは8兆円強に上っており拡大を後押ししてきたものに免税の存在もあるというが、この免税を巡っては近年免税で購入した商品の国内転売が少なくないという。

帰国時に詳細の確認が出来ないままに出国するケースが横行していることもあり、財務省の方では来年からリファンド方式を採用するとしている。消費税分を後から還付する方式だが、最近の転売ヤーは組織化しているケースも多く免税店とグルになったらこれまた“いたちごっこ”になるか。百貨店等はこの国慶節で売り上げの波を期待しているが、インバウンド頼りの施策も再考の時期に来ているか。


ノーベル賞ウィーク2025

今年もやってきたなという感じのノーベル賞ウィークだが、初日の「生理学・医学賞」は免疫反応を抑えるブレーキ役となる「制御性T細胞」を発見した大阪大学の坂口志文特任教授ら3人に授与されることとなった。この坂口氏、昨年のノーベル賞でも当欄では受賞候補として小胞体ストレス応答を解明した京大高等研究院の森和俊特別教授と共に名前を挙げていたのを思い出すが1年遅れで見事受賞となった。

ノーベル賞といえば関連株だが、今回の生理学・医学賞では中外製薬が挙がるか。同社と坂口氏が所属する大阪大学免疫学フロンティア研究センターとは10年間にわたる包括連携契約を2016年に締結しており、免疫抑制機能を高めた細胞を作る仕組みを解明したという。とはいえ既に同社は受賞思惑を囃して本日前場まで大きく7日続伸していただけに材料出尽くし感もあって引けではさすがに一服となっていた。

いずれにせよ日本人のノーベル賞受賞は去年の平和賞に続いて2年連続となり、この生理学・医学賞では免疫チェックポイント阻害因子の発見をした2018年の本庶氏以来7年ぶり6人目となる。今後のスケジュールは本日の物理学賞、明日が化学賞、明後日が文学賞、金曜日が平和賞、来週月曜日には経済学賞と続くが、さてまだ坂口氏の後に日本人の受賞が続くかどうか関連銘柄の動向とも併せ注目しておきたい。


高市トレードの賞味期限

周知のように一昨日の総裁選において高市前経済安全保障相が自民党第29代総裁に選ばれた。15日にも召集する臨時国会で第104代首相に氏名される公算が大きいという事で、「アベノミクス」のような金融緩和や機動的な財政政策路線を継承するとされる「サナエノミクス」思惑から本日の日経平均は2175.26円高と大幅に3日続伸し過去最高値を更新、またドル円も8月上旬以来、約2か月ぶりに150円台の節目を付けることとなった。

個別銘柄では先月の石破首相が辞任表明した際の二番煎じと左程期待していなかったが、それでも改めて三菱重工やIHIが買われ揃って上場来高値を更新、逆にネガティブに働いたのが高市氏の前向きな原発再稼働の対であるレノバなどの再エネ関連で先週末の高値引けから一転して今日は急反落、失望売りといえば小泉関連として地盤を買われ前回ストップ高を付けたさいか屋が本日は一転してストップ安に、またライドシェア推進派だっただけに大和自動車も同じくストップ安と急落の憂き目に遭っていた。

こうした個別銘柄のストップ安続出を見るにある意味で小泉氏の敗北はサプライズな部分もあったというところだが、浮かれる株式市場の裏では財政悪化リスクを懸念し超長期債は海外勢を中心に売られ、新発30年物の利回りは過去最高水準に、20年物も約26年ぶりの高水準を付けている。こうしたことを背景に日銀の早期利上げ観測も後退、今後はこの日銀との関係性、またコンサバ色が強いといわれるなかで人事や連立の行方など課題は山積みなだけに暫くは目が離せそうにない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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