K字型で二極化鮮明に

周知のように先週は日本の長期金利の指標である新発10年物国債利回りが19996年9月以来、30年ぶりに3%の大台に乗せてきた。3%の長期金利は日本国内の企業はもとより家計にも影響が及ぶ。預貯金等は金利収入増加となる反面、住宅ローン等は固定型・変動型共にメガバンク中心に相次いで引き上げの発表が為されているが、この辺一つとってもまた格差が広がる二面性が出てくるか。

最近ではこの金利上昇でやむを得ず50年もの超長期ローンやペアローン等を組む向きも急増している模様だが、潤沢な預貯金や銀行株、国債等を保有し住宅購入も一括で支払える向きはこうしたローン組が落とすカネ等でますます肥える。最近はよく「K字型経済」なる言葉を見聞きするが、上記以外の部分でもこうしたところを上手く掬い取ろうと試みる動きが各所で見られる。

例えば昨年に当欄で「くら寿司」を取り上げた際に「~外食産業では高級路線とコスパとの二極化がいわれている~」と書いたが、この「くら寿司」はこれまでの店舗形態に加えて高級路線の「無添蔵」を関東にも展開させる一方で、これよりも前に年始のマグロ初競りですっかり有名になった高級路線を展開する「銀座おのでら」は比較的低価格の立ち食い寿司や廻転寿司(タブレット注文)を展開している。

寿司以外でも外食では他に牛丼の「松屋フーズ」がどこまで洒落なのか「銀座松屋」の中に神戸牛を使った高級路線の「松屋PREMIUM」を展開している。斯様に従前路線ではこのK字型経済の需要を取り切れないことで企業がこれまでの業態の価格イメージの“枠”を超え、これら取りこぼし無きよう次の一手を模索する動きからまたイメージを覆す新たな業態が表れるかもしれない。


TOPIX見直し第2段階

さて、TOPIX(東証株価指数)の初回定期入れ替えの算定基準日が今週過ぎた。TOPIXといえば市場区分再編前は東証一部全銘柄であったが、それが市場区分再編後に第一弾の見直しが行われ、この度の第2弾ともなる見直しではプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の全ての市場から選別されその構成銘柄は現状より更に絞られることになる。

この辺に関しては一昨日の日経紙投資面でも触れていたが、ハイテク系の大型株の上昇とも相まって年間売買代金回転率や浮動株時価総額などでふるいにかけられ構成銘柄数は1000の大台を下回った可能性が高い旨が書かれていた。教科書通りなら新規採用銘柄にはインデックスファンドのマネー流入がポジティブに影響し、除外銘柄にはこの逆でマネー流出からネガティブな影響が想定される。

実際に今週のマーケットでは新規採用が見込まれている銘柄群の中から上場来高値を更新してきている銘柄が見られたが、一方で今回のドラスチックな見直しで約700銘柄が除外の憂き目に遭う予定となる。そういった意味では総指数の質が変わる大きな改革になるとも思われるが、「敗者復活」ではないが来年のこの時期にも再評価があることで“逆風”のなか時価総額を睨んだ戦いを今後目の当たりにすることになるか。


各々の軸

久し振りにマツキヨで買い物をしたが、マツキヨといえばここは先週にオーガニック化粧品のジョンマスターHDを買収すると発表している。もともとNY創業の企業だがリーマンショック前に日本には上陸、22年からPEファンドのアスパラントグループ傘下となっているが、この買収で同社はラインナップを拡充するほか製造コストの抑制にも繋げたい意向だ。

これまでも他企業とのコラボで共同開発するなどPBに力を入れているマツキヨだが、そういえばこのジョンマスター買収の前にも同社はアサヒGとも提携し新たなPBを展開する旨も発表している。アサヒGといえばサプリなどで圧倒的な研究開発の実績を持っているが、消費者の場偉大なデータを持っているマツキヨとしては同社と組む事で消費者が欲しがっているものをいち早く作成出来るというわけだ。

M&Aに大手との提携と精力的な動きを見せているが、ドラッグストア業界では大手イオンなど強力な対抗軸が構築されている。そういった中で各社は食品構成比を高める向きありこのマツキヨのように美容・ヘルスケア構成比を高める向きありと各々が舵を切っている。昨年末に当欄では「マツキヨは統合後の飛躍的な経営効率上昇で話題になった経緯がある」と書いていたが、今回もM&A成功例として語られるかどうか注目しておきたい。


ダイエット熱で価格は肥満化

先週末の日経紙夕刊グローバルウォッチでは「プロテイン人気、チーズに商機」と題し、世界的なプロテイン人気でチーズの生産が増えこれが世界市場に駆り立てている旨の記事があった。プロテインの原料になるホエイ(乳清)がチーズの製造過程で生まれるためにチーズの生産が増えていることが背景というが、チーズは兎も角このプロテイン人気で製品の値上がりが近年著しい。

昨日は帝国データバンク調査の9月の食料品値上げ動向を書いたが、大手の明治も今月から主力のザバスで価格は据え置きながら容量を減らす“ステルス値上げ”を実施する。此処に限らずプロテイン製品は他のブランドも含めて数年で約2倍近くに化けている感覚だが、もともと健康志向の高まりからジワジワ来ていたこれらの上昇のピッチに弾みがついたのはやはり糖尿病治療薬が世界的にダイエット目的で横行し始めたあたりか。

米金融大手ではこの手の“GLP―1受容体作動薬”などを含むインクレチン関連薬の世界市場規模が2030年までに2000億ドル(約32兆円)に達するとの予測を出しているが、これら常用者の栄養不足等の副作用対策でまだこの傾向が続くとすれば価格の一服は暫く望めず、以前より真摯にボディメイクに取り組んでいる向きにはとんだとばっちりだろうか。


タイムラグの波

総務省が先週に発表した8月の東京23区消費者物価指数は生鮮食品を除く総合が前年同月比1.8%の上昇となり、3か月連続で上げ幅を拡大させた。食料は3.9%上昇し全体を押し上げているが、我々の身近なモノでは夏野菜が高騰するなかこれらの“お供”ともいえるドレッシングも15.2%の上昇を見せており、この辺は帝国データバンクによる9月の価格改定動向でも見て取れる。

同社の調査によれば9月の飲食料品値上げは合計で4531品目となったが、単月で4000品目を超えるのは23年の10月以来のこと。食品分野別ではこのドレッシングはじめソースやマヨネーズなど「調味料」が1892品目で最多となり、それに冷凍食品などの加工食品が1818品目と続くが、これら購入頻度をなかなか落としにくいモノだけで9月全体の約8割を占めている。

先の“ナフサ不足”を受けて食品包装のフィルムやトレーなどの資材が急騰したが、それらの影響で価格変更に迫られた商品値上げのタイミングがちょうどこの期に集中しているというが、今後も食料品、日用品など幅広い品目で値上げの動きが本格化することが見込まれ、冒頭のコアCPIの上昇率は秋口に2%台、今年末にかけて3%台まで高まることが予想されている。

先に政府は食料品の消費税率を2年間の暫定措置で現在の8%から1%に引き下げる方針を閣議決定しているが、年間数兆円にも上る財源の確保には不透明感漂う。こうした懸念を背景とした構造的な円安圧力が続き斯様な暫定措置も“焼け石に水”にならぬかどうか、粛々と進む食品値上げと並行しこれらも注視しておく必要がある。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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