規則ですから

今日の日経紙、金融を問うでの「顧客優先は本当か」での一文で目に付いたのは、メガバンクで投信の説明に時間が掛かるから指定の時間までに来てくれとか、金融庁の指示だからと記入欄がズラリと並ぶ用紙に辟易したりの様子が載っていた部分。

これで思い出したのが今週月曜日の同紙「春秋」にも、最近はコンプライアンス(法令順守)対策などで社内規則などが増える一方だ。官僚主義がはびこる恐れがある。〜規則をたくさん作って楽ができるのは上の者です。規則通りやれと言っていれば、考えずに済みますから。と書いてあった件。

これら事例は銀行やJALなどが出ていたが、すっかり元気がなくなってしまった商品業界も委託者保護の掛け声のもと、こうしたコンプラの部門が営業体のある一定の組成された規律の中に必要以上に介入というか幅をきかせてその体質が極端に変化してしまったという点において同じではないかとも思う此の頃である。

「春秋」の末尾にもあったように、上から目線の社内官僚がのさばる。お役所的に会社にしないように経営者もぼんやりしていられない。とあったが個別にはトップからしてもうそんなモチベーションも残っていないというところも増えつつあるのが現状でまあ残念なかぎりである。


付和雷同人気

今月上旬には昨年3月以来一年半ぶりの高値となる1,000ドル台突破を達成し、中旬には終値で史上最高値を更新した金であるが、こんな件を背景にしてか昨日の日経紙家計面での金融商品比べて選ぶでは金が採り上げられていた。

直近のCFTCのディスクロでは、買い越し枚数が一ヶ月で3割増えて重量換算で730トンとこちらの方も過去最高。また、ETF史上でも世界最大のSPDRで保有金残高増加、先月触れた英ETFセキュリティーズでは金のETC現物保有残高が過去最高を更新、今年になって40%増加しているという。

金はモノの存在自体が大物なのでここまで人気付いた背景は如何様にも解釈が付く、バリックのヘッジカバー説から始まって、ドル安、インフレ、中央銀行、中国、また直近では取引規制強化の影響と枚挙に暇がないが、要は発行者の信用リスクに左右されない無国籍通貨がラストリゾートという構図はそうそう変らないようである。

こんな時に先物としても啓蒙のし甲斐があるところであろうが、世間はこういった短期モノでは新興のETFを主体としたものへの傾斜がやはり多い。そういえばこんな折に中部商取ではもうすぐ金が上場の運びとなるが、さてこちらはどうなるであろうか注目である。


リンク業界

さて、企業の信用リスクを取引するCDS市場では歪み補正の目的から一部銘柄の入れ替えを実施、これにより先週の指数は99と昨年6月以来の100割れとなったが、なんといってもその寄与度が高かったのは大手消費者金融である。

格下げから極端に一業種のCDSが高止まりし、正確な信用リスクを反映しにくくなっていたわけだが、株式市場でも「どうする?アイフル」とCMよろしくその動向が注目されていたアイフルなんぞ、事業再生ADRによる私的整理の手続きに着手した事で嫌気売りが殺到している格好だ。

この業界の環境も早くに株式市場から姿を消した中小組から斯様な一部上場の大手までADRをも待ち出すに至ってその厳しさも窺えるというもの。しかし、グレーゾーン金利問題がトリガーになり規制の一段の強化、残高の萎縮と一連の流れを見ていると、これに先駆け一足早く改正商品取引所法施行というのがトリガーになったと一般論としていわれている商品業界もその後の規制強化、取組高の急減などどうしてもこれとリンクして見えてしまう。

オマケにハイエナのように数年前からドル箱になっている過払い金請求の後には、商品先物絡みで悪質な被害者?予備軍が控えているとも聞く。まあ、何れの業界も黄金時代から襟を正していればこんな構図も変っていたのであろうが、適正なパイへの回帰がこうした事で進行しつつあるのはなんとも荒涼としたものを感じる。


人事と相場

さて、連休前に発足した鳩山政権では当初防衛相での入閣といわれていた亀井氏が一転、郵政・金融担当相への起用となるなど両党間の条件闘争の拗れも見え隠れしていたが、この人事で株式相場全般では新内閣発足のご祝儀気分があったものの、個別では前々から売りのターゲットとなっていた消費者金融株やモラトリアム発言もあって銀行や不動産株など冴えない展開も目立つ。

同氏を巡っては今迄の証券優遇税制廃止論から日経225先物廃止論(それにしても大証は全く動じず逆に堅調さが目立つが・・)などその発言も様々であったが、外為市場でも財務相に就任した藤井氏の発言を切っ掛けに円相場が上昇など敏感さを窺わせている。

一方で商品業界はどうだろう。先週の日本商品先物振興協会の市場戦略統合委員会の初会合後の委員長会見では「政権が交代し新政府の商品先物取引への取組や考え方がまだはっきりしない。」としており、TOCOMの社長も先週の定例記者会見では「軽油税制などの先行きには注目しているものの、具体的には全く不明」と述べこちらは不透明感漂う。

まあ、各方面で民社国の連立政権はこれら金融業界にどう影響するのか、まだまだ過去と照らし合わせて株式も為替も商品も個別の部分では様々なセンチメントが交錯しようが、とりあえず最初の関門としてはG20金融サミットというところだろうか。


LALIQUEの透明感

さて、生誕150年を迎えるということで先週まで開催されていた、「ルネ・ラリック、華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」と題した主要コレクションを観に国立新美術館に過日行ってきた。

先月はエミール・ガレやドーム兄弟など観て来たがこのところ目の保養になる機会が多くありがたい限り。さてこのガレやドームと同様にラリックもガラスもので、この時代に高い芸術性を維持しつつも工場生産を両立していたという点では両者同じであるものの、前者の色で魅せる物の対で後者はガラスの透明性を活かした造形で魅せている。

こうした部分では今の花器「バコーントゥ」もいいが、これの絡みでは1927年「バッカスの巫女」の何ともいえぬ硝子感や、1926年電機置時計「昼と夜」などは裏から削った男性の陰刻と裏に盛り付けた陽刻の女性が面白く好きな作品の一つでもある。

またラリックを最もよく理解した顧客ともいわれた、実業家のカルースト・グルベンキアンのコレクションを集めた部屋も途中にあったがこれも圧巻。ところでこれら眺めて想ったのが、昨年のペネロペ・クルス主演の映画「ELEGY」の中での、「絵画を買う人は作品を所有していると考えるが、絵画が彼らを所有する。作品は所有者よりも長く生きる。彼らは一時期の管理者であり、自由に鑑賞し賛美するだけ。」とのセリフであった。

他の個人蔵モノにも素晴らしい物が数多あったが、当欄4/23付け「Lunariaの灯り」の末尾に「昨今の金融危機で出物もいろいろな向きからあるとも聞くが、こうした芸術品も所有者を転々とする中、今迄見てきた世に何を想うのだろうか。」と書いたのもまたフト思い出した。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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