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投信リスク選好

本日の日経紙経済面には「アフリカ投信 解約停止」として、アフリカの株式や債券で主に運用する国内投資信託で、エジプトの政治混乱の影響からの同国証券取引所休場に伴いこの関連に投資する一部の投資信託の解約受付を停止した旨が書かれていた。

エジプトなどはポストBRICsとして有望視されていた経緯もあり、ここ新規設定が相次いでいたがS&Pが同国国債の長期信用格付けを投機的水準にまで下げ、13日からの取引再開に戦々恐々とする中を各社保有分の売却や比率の大幅引下げの措置に奔走している。

ところで数年前まで人気を誇ったグロソブなどは、その残高ピークが6兆円近くまで膨れ上がっていた08年からほぼ半減しているという。これらから流れ出たものが次々と高い分配金を狙える新興・資源国の投信に移ったわけだが、うちこうしたアフリカ関連投信の合計残高は670億円にのぼり、趨勢は安定より収益狙いという感じか。

投信のカントリーリスク顕在化に関しては、昨年の11月に純資産残高が急増したブラジル関連投信の例で、「新興国モノでは投資家への情報伝達など一部乏しいだけに一般は常にこの辺に注意をはらう必要があろう」と書いた事があったが、依然リスク意識が低くなっている表れともいえるか。


都市鉱山

昨日の日経紙科学技術面には芝浦工大などが鉱山廃液中のレアメタルを、微生物を使って効率よく回収する技術を開発した旨が載っていた。具体的には銅生産時の廃液からセレンの90%を分離することに成功、現在の無駄を無くし使用済みの化学薬品や電子機器のセレンもリサイクルでき、別のレアメタル抽出に最適な微生物の候補も見つかっているという。

さて、このレアメタル回収であるが、株式市場ではこのところ連日続伸していたフルヤ金属が一段高、これは本日、田中貴金属工業と資本業務提携契約を締結するとの発表が好感されたもの。同社はPGM系レアメタルの精製・改鋳で有名だが、田中貴金属工業の安定的な調達力と同社の高度な技術の融合で同事業に関する競争力を確保出来るという。

需給的にはこの第三者割当増資の141万6千株で24%以上の希薄化となるものの、シナジー効果の期待感に今が旬なレアメタル関連だけあって需給悪に勝っての株価上昇といえるか。しかし眺めてみればレアメタルを強化中のアルコニックスは年末から上げ続けて本日もまた新高値を更新、先のレアメタル回収技術開発報道があった日立金属もまた本日は新高値を更新、子会社がレアメタル回収の新技術を開発したDOWAホールディングスもこれまた本日は新高値を更新等々。

斯様にざっと挙げてもゾロゾロ出て来るが、これらはど真ん中銘柄であるものの最近では森下仁丹までがレアメタル回収バイオカプセルの特許で年初来高値を付けるなどしている。しかし上記の微生物といいこの仁丹も同様に微生物絡みだが、都市鉱山関連もあらためて日本の光る技術を見直す機会の一つともいえるか。


勢力図一変

さて先週末にかけて飛び込んできたビッグニュースといえば、やはり鉄鋼国内最大手の新日本製鉄と3位の住友金属工業が合併に向けた検討を始めたという報だろうか。公取委等の独禁当局の審査を経て2012年10月の合併を目指すというが、これが実現すると実にアセロール・ミタルに継ぐ世界2位に浮上する見込みという。

つい先週の火曜日には当欄で、「目指すメジャー」として一昨年の国内石油元売り最大手の新日本石油と新日鉱HDの経営統合等を挙げたばかりであるが、今回はその規模からして株式市場にはさすがにインパクトになった。新日鉄がこの値段帯で買い気配から40円高で寄るなどほんとうに久し振りに見る光景である。

しかしこれを核として買いの手は周辺銘柄にも波及、残る持合先企業から両者の傘下企業、出資の経緯があったところまでこれはもう連想ゲームの世界。こういった時はどの程度その資本関係や傘下企業を把握しているか否かでトレードでは大きな差が出てきてしまうが、この両者だけでTOPIXなど1ポイント近くの寄与度になるなど祭り並みの賑わいであった。

その辺は兎も角、勿論今後は公取委等の独禁当局の判断が焦点になってくるし、巷の各証券のアナリストが高評価するようになるにはその経営スピードがどの程度上位他社に鞘寄せ出来るかに掛かっている。上位他社比でPERなどが上鞘な分それに見合った利益成長の絵をこれから描けるかどうかだが、何れにせよ今回の報が国内企業の合従連衡復調の起爆剤となるや否や今後も大いに注目である。


60年の歴史に幕

さて、今週の業界絡みの出来事といえば中部大阪商品取引所が週明けに臨時総会を開き解散したことだろうか。ご存知、1951年に取引を始めた名古屋繊維取引所等が96年に合併してできた中部商品取引所が前身で、2007年には大阪商品取引所と合併するに至ったが、ここもとうとう60年の歴史に幕を下ろすことになった。

いろいろ迷走はあっただろうが、数年前にも書いたように最後の賭けに出た金市場創設にしても、投資家への選択提供というより対処療法的な起死回生を狙った取引所救済色の発想に傾斜したものではなかったのだろうか?他所のパイ奪いと揶揄もされたが類似商品を出そうが他所とMOUを交わそうが、小さいパイの中においてガリバー的な存在がある限りそれで活路を見出すのは並大抵な事ではないのが現実。

何れにせよ既にTOCOMへの移管も終り年末までに取引が終了していることもあって、その報道も申し訳程度にひっそりとしたもので何やら横浜商品取引所の時を思い出したが、これで国内の商品取引所は三カ所となる。

そういえば余談ながら、中部といえば名古屋証券取引所などは東海地域の主要50社の株価指数に連動するETFを近々上場する予定とか。主力取引所の地盤沈下が近年いわれているがこうした地方証券取引所こそその地盤沈下は焦眉の急を告げる事態、個別では生き残りをかけて試行錯誤が続く。


ポテチ上場

昨日の日経紙夕刊一面には菓子大手のカルビーが3月にも東京証券取引所に上場する見通しとなった件が載っていた。ご存知、「ポテトチップス」を始めとして「かっぱえびせん」など知名度抜群のスナック菓子を擁し、その国内菓子シェアでは4割を握る老舗企業である。

知名度抜群の老舗内需型企業の上場といえば、最近では大きいところで生保の「第一生命保険」、化粧品の「ポーラ・オルビス・HD」、年末の医薬・食品の「大塚HD」等があったが、こうした資金調達をテコに海外などに成長機会を求める動きが続々と出てきている。

上記の生保の株式会社化など、内需縮小で収益の成長が楽観視出来ないことからの戦略転換とも取れるが、創業家の舵取りが続いた同社も内需低迷からの成長踊り場から近年では社外取締役を招聘し海外軸足を睨んで事業拡大に意欲をみせるということか。そうそう同族経営といえば数年前の「出光興産」もこの手の典型企業であった。

近年株式市場でもMBOが増加する反面、こうした有名老舗非上場企業群が続々と上場してくるなどの現象は外部からはどう映るか。背景にある要因はさまざまだが、世相を反映している一例である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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