太陽光バブルの行方

さて今週はいまひとつ気迷いが続いている株式市場であるが、そんな中で一際強さが目立っているのが太陽光関連株だろうか?これは週初に日経一面でも伝えている通り7月に始まる再生可能エネルギーの全量買い取り制度で、経産省の調達価格等算定委員会がこの太陽光発電の買い取り価格を1キロワットあたり税込み42円とする方向で調整に入ったと報じられたものが好感されてのもの。

専門家の間ではもっと安価で適正との声もあったようだが、再生可能エネルギーの普及促進の為にほぼ発電事業者の要望をそのまま呑んだ格好となっている。買い取り価格が高いほどこうした事業者の利益が大きくなる計算で関係者は一先ずニヤリといったところだが、長期にわたる安定買取で企業努力が疎かにならないだろうか?尤もこんなバブルの匂いに魅せられ強力なコスト競争力を持つ中国勢から、魑魅魍魎な向きまでの参入もあり其れなりに対峙もあろうか。

ところで日本に先行し買い取り制度を始めた欧州や米国では、それぞれ立て続けに大手太陽電池メーカーの破綻が相次いだのが最近の話。それだけに最近の太陽光発電関連株の中にはこの時のショートが原動力になり今週急騰した銘柄もあるが、上記の通り中国勢の侵食や制度の見直しで補助金が減るような事になるとこの辺の構図もまた一変してくる。

先行したところを見てもこれは起こり得る話であり、そう考えると助成も長期にわたる安定買取も絶対なのだろうかと疑問も出てくる。この補助金もどうせ我々の税金が原資になっているわけであり、この辺のバランスを上手く図ってゆかないとバブルだったと後になってわかる戦後処理も財政悪化含めいろいろ厄介になるのは想像に難くないか。


潜在的市場

昨日の日経紙国際面には「ミャンマー 陰る強調」との見出しで、EUが週初に対ミャンマー制裁の一時停止を決め同国の民主化改革を後押しする等の姿勢を横目に水面下での駆け引きもまた一方で進行している旨が載っていた。

ところでこのミャンマーといえば、昨年の国際フォーラムでの講演であのジム・ロジャーズ氏がスリランカと共に将来有望と話していたのが記憶に新しいが、まさに今民主化改革を機に消費ブーム到来の兆しがいわれておりその先導役はコーヒーという。

やはりというかこの手の国では先ず嗜好品というのが相場だが、このコーヒーでは日本勢としてUCCが早速同市場参入の計画とか。同社といえば直近でM&Aとしては過去最大規模となる欧ユナイテッドコーヒーを買収し海外事業強化を発表したばかりだが、巨大な商機が埋もれる市場を狙って各企業が虎視眈々と参入する様はまた別のところで二次的商機も創造する事になり今後も目が離せない。


下限あり

本日の日経紙には、日銀が月末の金融政策決定会合で追加金融緩和の検討に入ったことを受けた長期金利の低水準になっている様が書かれていた。目下のところまた欧州の雲行きが怪しくなってきているが、この金融政策決定会合が控えているために本邦市場はなかなか鋭角的に売ってゆく動きになっておらず消化難にも見える。

さて同じ紙面には「緩和は当然 日銀の苦悩」とも出ていたが、もともとゼロ金利とはいっても補完準備預金制度がある以上市場金利の下限は0.1%。即ち日銀がいくら資金を供給したところで当座に預ければ0.1%は確実に取れることから、金融機関が挙ってこれを行っているようでは金融緩和効果の実効性が疑わしいとの指摘は前からあった。

そんなわけではてこれが日銀は本当に苦悩なのか、つれない素振りが期待を煽る単なる演出に過ぎないのかというところだが常識的にはまだ可也の緩和余地があるというのは否めない。各所で催促相場もいわれているが、何を考えているか解らない決定に出れば単に失望に変わるのは明白であり何れにせよ月末の決定会合に注目である。


業界慣行に牽制効果の薄さ

さて、先週末にはSMBC日興証券に金融庁が業務改善命令を出すに至っているが、これは周知の通り企業の増資情報を公表前に漏洩し顧客に勧誘活動を行っていたのが金融商品取引法に違反するとの判断によるもの。主幹事の情報漏洩といえば、先月には野村の件を書いたことがあったが矢継ぎ早に二件目である。

証券取引等監視委員会ではこの対象銘柄の公表はしていないが、主幹事実績から察するに三井住友FGと、もう一つは相鉄HDと思われる。何れも国際帝石の説き同様に事前から不自然な株価の動きが予ねて指摘されていたが、当の委員会は検査対象はSMBC日興証券のみとして対象株を売買した投資家のインサイダー取引の有無については言及を避けており中途半端な感は否めない。

まあ、仕切りや大量推奨販売が公然と行われていた一昔であればこんなのはごくごく普通の光景であったと思われるが、情報を扱う証券会社への監視の目も強化され時代は変わったものだなとしみじみ。それでもこのケースでは情報伝達者はインサイダー取引規制そのものには抵触するワケでもなく、先の国際帝石でも課徴金は5万円足らずとけん制効果など出ようはずもない。業界の慣行の一つを切り崩すのもまだまだ時間が掛かりそうだ。


どうなる日本ブランド

本日の日経平均はほぼ終日軟調に推移し小反落となったが、日経平均が上がろうが下がろうがそれらに関係なく主力勢の中で連日の続落歩調が続いているのがソニーだろうか?

もちろんスペイン等に絡んで欧州債務問題再燃から対ユーロの円高進行でこれらの売上高比率が高い同社に売り物が集まったというのもあるが、昨日など同じ欧州関連グループの富士フィルム、リコー、NTN、日産自、マキタ、キャノン等々一斉高していたにも拘らずこのソニーはひとりマイナス圏に沈んでいたのはやはり目立つ。

そんなワケで新経営方針説明会が行われようが、有機ELテレビ量産へ台湾企業と提携交渉が明らかになろうが、まったく材料視されずむしろ売りの材料になるほど。特に新CEO就任で注目された新経営方針説明会では、優等生的な文章構成ながら実のところ具体的なものは何一つ提示されず素直な感で「絵に書いた餅」そのもの。わざわざこんなプレゼンなどやらなかった方が株もまだ値持ちがよかっただろうと察する。

しかし同社を含めシャープやらパナソニックやらのテレビ事業の不振は、これら主力の3社で2兆円近くへこむわけだからなんとも酷い。丁度一週間前の日経紙にはパナソニックは白物家電中心に環境事業に経営資源を集中、シャープは台湾企業からの資本提携をテコに収益改善を図るなど戦略を示しているとしているが、このシャープとて出資を仰ぐ企業はこれで完成度が増し将来的には同社と競合することになるのは必至で、そうなればその時に主導権を握るのは至難の業。先の見えぬなか今後サプライズが出て来るか否か、各社の舵取りからはまだまだ目が離せそうもない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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