GOING CONCERN 

さて、昨日まで株式市場では主力銘柄が気迷いだっただけにそれぞれ事情がある材料株の乱舞が目立っているが、そんな中に上場廃止が決定したセラーテムテクノロジーもあり今週は日計り勢のオモチャになっていた。同社の絡みでは当欄で一昨年から怪しいと指摘し今年の春先にも触れた事があったが果たしての退場という感じ。

さて、こんな裏上場モノでなくとも昨今の厳しい事情を反映し上場組でも所謂監査人が認めたイエローカード的企業群はまだまだ多い。今月初旬には東京商工リサーチが恒例の継続企業の前提に注記が付いた企業の集計を出していたが、今回は11年9月中間期の42社から2社減少となっており、うち12月12年3月期からの新規組は6社、残りは11年9月中間期からの継続組となった。

新規組の中では今年パンクしたエルピーダ関連が出てくるのは当然なところとして、業界からも上記の継続組に1社、そして今回発表された新規組に1社入っており他にも業界大手が筆頭株主となっている企業も登場したところが興味深い。一昔前と違って近年は再編の嵐で不採算部門への見直しが顕著、上記の通り大手が筆頭株主でもウカウカしている場合ではないということか。


期待先行

さて本日は移動中に東京スカイツリーの前を通ったのだが、ココが開業してからはや1ヵ月一寸経過した。先に書いた東京の新商業施設は何れも順調らしいがこのスカイツリーも先に東武鉄道では、展望台や付設する大型商業施設への来場者数が既に年間目標の2割弱にあたる550万人を超えたと発表している。

本体はもとより付設の東京ソラマチでも売上げが当初予想を上回る店舗が目立ち、サンリオ雑貨店は計画比で2.7倍、サンエー・インターナショナルが手がける婦人衣料品店も1.5倍で推移すると日経紙に出ていたが、当初期待された地元商店街は客が増えるどころか減ってしまったとも彼方此方報道されている。

この辺はロコとそうでないものとでその対象者へのビジネス形態が元から全く異なるところも起因しているのだろうが、肩透かしなのは関連株式も同様、筆頭の東武鉄道は開業後に年初来安値を更新し併設のソラマチ関連の株価低迷もまた然り、まさに本命は取れないといういい事例だが寧ろ商店街をスルーし浅草への流れを買うなら松屋あたりは好需給もあって本日も元気がいい。ちなみに5月の東京の百貨店売上高は前年同期比2.1%増、この松屋浅草店では同月の入店客数が19%増えている模様だが、今後もこの辺の流れには注視しておきたい。


またも英国の老舗が

本日の株式市場は円の高止まりから3日続落と弱い展開であったが、そんな中でもあの加藤氏関連モノで取り上げられたルックが暴騰、そうなると連想ゲームで筆頭株主のレナウンなんぞは低位の値頃もあって当然の人気再燃からこちらも揃って急騰となっていた。

さてこのレナウンといえば先週末の日経紙消費面にはお客様各位として、「日本のアクアスキュータムの大切なお客様が、ブランドの事業展開について、ご心配されていることから、わたくしが皆様にメッセージをお送りすることが必要であると考えました。」と事業展開が順調に進んでいる旨の広告が最高経営責任者名で載せてあった。

ご存知、「アクアキュータム」が経営破綻し法的管理の手続きに入ったと報じられたのはつい最近のことであったが、誰でも知っているトレンチの名門が経営破綻などまさに寝耳に水の話であった。しかし同じ英国系老舗ブランドの破綻では今も記憶に新しい2009年の「ウェッジウッド」もあったなと思い出すし、この2009年にはフランスのクリスチャン・ラクロワの債務不履行もまた記憶に新しいが、こんな事例を見るにつけブランドを襲う販売不振の世界共通の猛威を感じざるを得ない。


株主総会酣

今年も3月期決算企業の株主総会が本格化してきたが、今年の場合上場企業全体の4割超が開催するピークは28日となる。昨年は東日本大震災への対応が焦点となったものが、今年は震災後の成長戦略や電力問題などがテーマになるだろうと思われ、また不祥事企業もその言い訳?が注目されそう。

しかし今年の株主提案もいろいろ面白いものが出てきている。野村HDの便器を和式に変更から始まり阪急阪神HDの選手批判まで中には笑いを誘う?ものが多発し、また商号変更なども上記の野村HDほか東京電力まで変更案が出ていた。

その他M&Aに絡むものでは主要株主の基礎票固めやら、業界再編が絡む企業側との委任状争奪戦というモノもその行方が注目されるが、やはり諸々好調な企業は総会も進行というかプレゼンが上手いとつくづく。先週末に有楽町でやったソフトバンクは一気に8倍の増配という議案を議決したが、株価の高下や今ひとつだった低配当も取り敢えず脇においてしまうような人を惹き付ける話術は健在。一寸考えてみればこの増配で社長自身も80億円以上もの配当増になる計算だが、常識的には誰も文句は無いだろう。

さて配当といえば一方で、野村HDのように業績不振を理由に減配しているにもかかわらず経営陣の平均報酬が8割も増加している企業もあり、上記のような同社への株主提案もいろいろな思いが詰まっているのだろう。一昔前からすれば今では表立った黒い総会活動もすっかりと影を潜めるようになった代わりに個人株主の積極参加が目立つようになってきたが、利権オンリーの柵が無いだけにこうした風景は近年ならではともいえるか。


兜町もまた

本日は所用があって兜町界隈を通っていったのだが、東京証券取引所の脇にあるSMBC日興証券を見た際にそういえばココは本社機能をこの夏から秋にかけて新川へ移転すると直近で報じられていたのを思い出した。

大手系ではいまや微妙な立場に居る野村HDが本社機能を大手町へ移し、大和証券Gも丸の内のグラントウキョウタワーが本拠地。ちなみにこの日興の真ん前にある大和証券Gのビルにはかつて上層フロアに取引員が入っていた時期があったなと思い出す。まあそれは兎も角として斯様に兜町もこうして内部では構図がずいぶんと変わってきた。

ところで日本証券業協会の2011年度末の会員数は廃業や除名、合併で11年度に日証協を脱退した証券会社の数は17社、新規参入は7社ということで10年度末に比べて10社減り、283社となっている。この兜町の顔でもあった老舗の十字屋など中小証券の撤退が相次ぎこれで減少は3年連続である。

昨年末には当欄で「業界の地を想う」と題して、東京穀物商品取引所を始めそれを囲む取引員勢が次々と拠点を移し蛎殻町一帯の風景が急速に変わってしまった旨を書いたことがあったが、そういったところでは鎧橋を境界線にして兜町の証券、そして蛎殻町の商品という区分けもはたして段々となくなってゆく運命にあるのか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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