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鉱山株彼是

先週の日経紙・グローバル市場では金鉱株の米ニューモントやカナダの金鉱大手バリック・ゴールド、また新興国でもパラジウムで4割のシェアを持つロシアのノリリスク・ニッケルや南アフリカのプラチナ大手アングロ・アメリカン・プラチナ株などいずれも5月まで上昇基調であった世界の鉱山株が軒並み調整している旨が出ていた。

鉱山株といえば著名投信の組入れ対象としても定評があり、例えば南ア・オーストラリア等の金鉱企業株式を主要投資対象としたブラックロック・ゴールド・メタルなどその上昇率から投信ランキングで度々取り上げられてきたものだが、昨日の住友金属鉱山の年初来安値更新にも見られる通り商品の一服と共に調整色を強めている。

ところで鉱山業界といえば南アのインパラ・プラチナムがカナダのノース・アメリカン・パラジウムを買収したり、中国の紫金鉱業もカナダの金鉱会社コンチネンタル・ゴールドを買収したりとM&Aが粛々と進行しているが、直近で銅相場高騰の牽制を露わにした中国もかつて資源安を好機に積極化してきた経緯がありその先の展望が気になるところでもある。


ETFの存在感

さて、本日の日経平均は米早期利上げの可能性が台頭した事などを背景にザラバではその下げ幅が1000円を超える大幅続落となったが、そんな中で米のVIX指数が警戒ラインといわれる20を約1か月ぶりに上回って来た事を背景に本日の値上がり率10傑には2位のVIX短期先物指数や9位の日経平均VI先物指数がランクインしていた。

また下落幅も上記の通り2月26日以来の大きさとなった事で、日経平均やTOPIXにJPX400系などのダブルインバース型やベア2倍型なども商いを集めていた。これらは言わずもがなETFのラインナップだが、先週末の日経紙・グローバル市場では「ETF残高世界で1000兆円」と題し5月末時点で世界のETF残高が4月末比2.8%増加し初めて9兆ドルを超えた旨が出ていた。

国内でも5月末時点で公募株式投信の残高が過去最高を更新しておりうち4割はETFが占めるなどその存在感が増している様子だが、一時1000円を超えた大幅安ですっかり鳴りを潜めていた日銀も本日は4月以来約2か月ぶりにETFを701億円購入しているなどこの辺も規模膨張に大きく影響しているのは間違いのないところ。

いずれにしても売買の機動性が高いうえ冒頭のようなVIXやVIなど一昔前には叶わなかったモノへ投資出来る枝葉が広がって来たのは感慨深く、金融緩和で膨張するホットマネーの受け皿として今後も対象資産の値上がりと共に資金流入も応分の伸びが継続されるのは想像に難くないか。


改定で見直し機運

本日の日経紙マーケット面には「物言う株主、親子上場標的」と題し、今月に改定されたコーポレート・ガバナンス・コードが上場子会社に高い統治体制を求めており、保有する小会社に比べ市場での評価が低い親会社はアクティビストの標的になり易いなど株式市場で親子上場銘柄への関心が高まっている旨の記事が載っていた。

ここでは冒頭で小会社の協和キリンが親会社のキリンHDの時価総額を抜いた件が挙げられていたほか同社を含め小会社が医薬メーカーの例が幾つか挙げられていたが、当欄でも先月にこの件を取り上げておりこれら以外でも特に時価総額が親会社パソナグループの5倍超にもなるベネフィットワンなどを挙げていた。

他にも時価総額が親会社ノーリツ鋼機の3倍超にもなるJMDCなど日経紙の一覧に載っていた以外でも挙げれば幾つも出て来るが、確かに親会社の営業利益に占める割合が3割を超えるなど子会社を完全子会社にするメリットが大きいという観点などからはこの一覧に載っていた大日本住友製薬など候補に上がってこようか。

前回は現実味に乏しいものの極端にいえば親会社の株を保有している株主は会社解散で小会社の株式を現金化すれば利益が出る勘定と成り得るとも書いたが、既にアクティビストによる保有が粛々と進行している企業もありこの度のコーポレート・ガバナンス・コード改定は下鞘に甘んじている企業に改めて説明が求められる契機にもなろうか。


完全オンライン化へ

さて、この時期彼方此方の企業から定時株主総会の招集通知が届くが、今年は殆どが緊急事態宣言下にあった事で当然乍ら昨年に続いて招集通知にもかかわらず今年もまた「新型コロナウイルス感染拡大防止及び皆様の安全・安心の観点から株主総会当日のご来場をお控えいただくようお願い申し上げます。」等の一文が封筒に記されて企業が殆どであった。

斯様な事情から株主総会のオンライン化が課題となっていたが、これまで総会は会場を設置する事を条件にオンラインで行われるのが認められてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ改正産業競争力強化法が参議院本会議で可決・成立した。これによって国の事前確認を受ければ完全オンラインの形式で株主総会が開催出来るようになる。

こうした事で今年の総会ではこれに絡んで定款変更議案を諮る企業も少なくないが、感染症対策はもとよりこれまで何度となく言われてきた僻地開催企業への参加のハードルが無くなるなどメリットも多い一方、セキュリティ含めた通信インフラやなりすましの問題も課題になってくるが、何れにしろこれも以前より議論されていたものの踏み切れなかった件がコロナ禍で背中を押された事例と言えこうしたチャンスは生かしてゆきたいもの。


訳あり銘柄明暗

本日の日経紙・経済政策面には「経産省が頼る首相の一文」と題し、政府が18日に閣議決定する予定の成長戦略の原案にSPAC(特別買収目的会社)の解禁方針が盛り込まれた旨が書いてあったが、これに絡んでは当欄でも今月のアタマに「白紙小切手?」と題し取り上げていた通りでここから解禁に向けて侃々諤々といったところか。

この項の中ではSPACが先行する米国では本来なら上場基準を満たさないような企業が上場するリスクがあるとの一文があったが、昨晩のNY市場ではSPACを通じナスダックに上場した新興電気自動車メーカーのローズタウン・モーターズが今月に入ってから突然製品を生産開始する資金不足に陥り事業継承に疑義が生じているとSECに届けを出した事で約19%安と急落、まさにこれを象徴するような一件が市場をザワつかせていた。

一方でテスラのマスク氏によるビットコイン決済再開表明などから4万ドル回復となった相場を背景に多額のビットコインを保有するマイクロストラテジーは約16%高と大幅高し、ミーム銘柄のAMCエンターテインメントもイナゴ勢の呼びかけで再度浮上し約15%高と市場でも明暗が分かれた格好だが、S&P500種などが史上最高値を更新する裏で何れも問題銘柄の乱高下が実に不気味に映る。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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