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ガレ&ドーム展2023

さて、先月末まで三越本店では北澤美術館の開館40周年記念特別展として「エミール・ガレとドーム兄弟」展が開催されていた。東証プライム市場に上場するキッツの創業者が収集を始めるきっかけになったのが40年ほど前に三越本店で開催されたアール・ヌーヴォー展であったというから何とも縁深い展だが、ガレ好きな私は一度では足りず開催期間中何度も足を運んでしまった。

この手のモノでは今から5年ほど前だっただろうか、岡田美術館が秘蔵するエミール・ガレやドーム兄弟を展示した「ガレとドームの世界展」を観たのを思い出すが、此処同様になかなか気軽に足を運べない諏訪湖の美術館の秘蔵コレクション90余点あまりの逸品を観る機会が得られたのが嬉しい。

前回の「ガレとドームの世界展」ではガレの大型作品「藤文ランプ」や金彩やエナメルの美しさが際立つ「花独活文花器」が印象的であったが、今回の展もガレの名作「脚付杯・フランスの薔薇」やドームの名作「花瓶・蜘蛛に刺草」などのレアな逸品が全方向から鑑賞可能で、更には写真撮影も自由ということもありゆったりと贅沢な時間が過ごすことが出来た。

また併設の展示即売会も美術館級の希少品が販売されており当然ながら値札も1億円を超えるものだったが、こちらも超希少な逸品を全方向から自由に観ることが出来るのが素晴らしい。このコロナ禍でお気に入りの展もここ数年は規模の縮小やオンラインへのシフトなどでなかなか満足のゆくものが少なくなっていたが、漸くコロナ禍前の規模に戻るものが出てきたのはなにより喜ばしい限りだ。


ミモザの日

本日は国際女性デーである。世界中の女性の権利を守り女性の活躍を支援する為の行動を呼びかけるべく1977年に国連によって制定された日で、今日の新聞でもこれに因んだ特集や広告が多く目についたが、昨年のジェンダーギャップ指数は146か国中で日本は116位と下位に甘んじ前回同様にG7の中では最下位となんとも恥ずかしい順位となっているのが現状だ。

特に経済では女性管理職の少なさや収入格差が足を引っ張り、121位と下から26番目となり足を引っ張っている。直近では厚労省の「女性の活躍推進企業データベース」で男女の賃金差を公表している企業約1129社について毎日紙が分析した結果では、正社員のうち女性の賃金が男性より高い国内企業はわずか2%にとどまっている現状が明らかになっている。

また女性管理職の絡みでは、昨年EUは域内の上場企業を対象に全取締役の3分の1以上など一定比率の女性を登用するよう求める法案で大筋合意している。ナスダックも上場企業に1人以上の女性と別に1人以上の人種・性的少数派の取締役を選任するよう義務付けるなど、斯様にESGマネーを呼び込もうと欧米が女性登用基準導入で先行するのに対し日本の出遅れは鮮明だ。

以前にも書いたが組織の成長には多様性が欠かせないのは今やコンセンサスとなっており、投資家の目も女性登用の遅れに対しては厳しさを増してきている。世界基準に日本が近づくのは何時の日になるかだが、日本は多様性の確保は盛り込まれたものの数値目標導入も見送られるなど欧米との隔たりは大きく、ジェンダーギャップG7最下位の汚名返上は難しそうだが項目別に改善がみられているか否か先ずはこの辺に注目してみたい。


政策の限界

先週末の国内債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが上昇し、一時0.505%と日銀が現在の金融政策で上限としている0.5%を上回った。前回この上限を超えた先月22日以来のことで次期総裁候補が所信聴取で発言してから初めての事である。海外金利の上昇圧力が波及したほか、総務省発表の東京都区部の2月消費者物価指数の総合指数が市場予想を上回った事などが背景。

斯様に依然として物価上昇を抑制するために日銀が緩和修正に踏み切るとの思惑が根強く金利上昇の圧力は衰えないが、残存8~9年の利回りが指標の10年債利回りを上回るという歪みが続く市場では今の経済実態に照らすと長期金利上限は1%くらいが適切ではないかとの試算もあり0.5%では低すぎるという思惑先行から更なる歪みが生じてしまっている構図。

斯様な歪みから国債を基準に金利が決まる社債市場などいろいろなところに悪影響が及んでおり、新総裁が先ず着手するのは変動幅拡大含めたYCCの改革ではとの思惑が喧しいが、国債を買い占めたり共担オペにより本来は市場が決めるべき金利を人為的な需給調整で封じ込めている不自然な政策自体がもう限界にきておりその大義が失われてきているのは間違いのないところだろう。


トレンド反転の解は

さて、厚生労働省が先週に発表した去年1年間の出生率速報値は前年比で約4万3000人減少の79万9728人と7年連続で減少し、この統計開始以来初めて80万人を切ることとなった。ちなみに国立社会保障・人口問題研究所の推計では出生数が79万人台になるのは2033年と予測されており、実際は想定よりも11年早く少子化が進んだということになる。

これらを受け首相は少子化のトレンドを反転させるため金銭的な支援に重点を置いて今の社会に求められる政策を進めてゆくことが重要と発言していたが、先月BIGLOBEが行った子育てに対するZ世代の意識調査では結婚もしたくないし子供も欲しくないが36.1%、結婚はしたいが子供は欲しくないが9.6%と実に45.7%が子供は欲しくないと回答しておりその理由は金銭面以外が42.1%と半数近くに及んでいる。

その内訳として多かったのが育てる自信がない・子どもが好きではない・子どもが苦手・自分の時間を制約されたくない等などなかなかショッキングな内容だ。金銭的な問題が最大の理由ではなくなってきているというのを、金銭的支援に重点を置いて進めている政府・与党はこの政策に対し世論が付いてきているワケではないのを今一度認識すべきか。

以前には内閣府が公表した男女共同参画白書などで結婚や恋愛に対する新たな価値観やら若年層の消極化云々を背景に少子化が進んでいるような話があったが、厚生省が1980年代に行った調査でも20代のおよそ7割が配偶者や恋人がいないという結果だったという。そこから何が見えるのかといえばこの数十年間やってきた少子化対策がほとんど効果が無かったということだろう。はたしてこの難問の解が見つかる日は来るのか?喫緊の課題だ。


PBRにもメス

さて、最近は日本のバリュー株のパフォーマンスが欧米を引き離すなど一人気を吐いている旨が話題になっている。バリュー株といえば当欄では今から4年ほど前にバリュー株は受難の時代でPBR格差は過去15年で最大を記録した旨を書いた事があったが、昨年末段階でも東証プライム上場企業1837社のうち実に50%にあたる922社のPBRが1倍を割っている状況であった。

この辺に目を付けられ近年では東証がアクティビストの格好の獲物?になってきたワケだが、ここ数年行われてきたTOBやMBOの中にはその価格がPBR1倍を切っているというモノも少なくなかっただけにさもありなんという感じだ。上記の通りPBR1倍割れが半分を占めているワケだが、このうち更にこの半分0.5倍未満が15%もあるというから東証も危機感からこれに改善要請のメスを入れるというのも頷ける。

万年低PBRからの離脱の鍵の一つとなるのはROEを上げてゆくことにほかならないが、このROEもアベノミクス時代に欧米と比較するに著しくその低さがいわれ改善努力が叫ばれた時期があったのを思い出すが、これを上げるべく流行った自社株買いも当時はリキャップCBなどを使った見せかけの実績も目立ったものだ。

そういえばプライム市場基準を満たさない「経過措置企業」の中でも上場維持基準適合に向けた計画書の内容を着実に実行している企業の株価上昇が顕著になった時期があったが、斯様にこの手の改善要請の類が出る度にそれらは期待感から物色の矛先が向けられるもので、今の低PBR物色もそれとダブって見えなくもないが小手先の改善策でなく本質的なものに踏み込む施策が望まれるところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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