プアマンズゴールド

今週は連休明けに金の小売価格が初めて22,000円を突破している。金といえば前回「初の20000円大台」と取り上げたのが先月末であったが、そこから2週間そこそこで10%高であるから上昇ピッチの速さがうかがえる。思わぬ高騰の余波か直近では10金製の都議会議員バッジがネットオークションサイトに出品され落札されていたとの報があったが、ちなみに今年6月に当選議員に配られたバッジの単価は47,355円と前回配布時の約3.6倍になっているという。

こんな話題の金の裏で同じく急騰しているのが「銀」か。米が銀にも関税を課すとの警戒感から米向けの輸出が急増しこれがロンドンでの品薄に拍車をかけた格好となり、先週には国際価格の指標となるロンドン現物1トロイオンスが1980年以来、45年ぶりに節目の50ドルを超え連休明けには53ドル超まで値を飛ばしている。銀といえば“ハント兄弟の買い占め”が有名だがそれをも塗り替えたことになるか。

そういえば数年前には米の“イナゴ集団”ロビンフッダー達がこの銀ETFを集中的に買い煽った事もあったが国内ETFも物色の矛先が向かい急騰している。代表格の三菱UFJの純銀上場投信は昨日にザラバ高値25465円まで大幅続伸し上場来の高値を更新、またETFSECのWisdomTree銀上場投信も連休明け日経平均が急落するなか初めて7000円の大台を超え、こちらも本日は3日大幅続伸し上場来高値を更新している。

金と比較し小粒な時価総額の銀はその規模から並行的に物色されるにしてもその上昇率は金を軽く上回る。そういった事で投機買いも少なくないだろうが、国内大手地金商では金同様にインフレヘッジや資産保全を目的とした購入が顕著化し現物の地金を発売すると数日で完売する現象が毎週続いているという。金地金も小サイズのインゴットの生産が追いつかず品薄状態になっているというのを見るに、購入層が末端まで拡大してきたさまがうがかえる。


データセンター銘柄乱舞

本日の日経紙一面には「日立、送配電1.5万人採用」と題し、電力を大量消費するAI(人工知能)向けデータセンター増加により世界的に送配電能力が不足していることで電力インフラの増強を支えAI普及を後押しする旨の記事があった。この報道を受けて本日の日立製作所の株価は3日ぶりに急反発していたが、こうしたマンパワーもさることながらデータセンター向けに需要好調で供給不足が鮮明となっているのが銅か。

銅の国際指標となるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物は先週段階で1トン1万820.5ドルと昨年に付けた史上最高値に迫っている旨も同じく日経紙のグローバル市場面にも出ていたが、これら関連株も暴騰している。三井金属は昨年の関税ショックで付けた安値3255円から昨日は14290円の上場来高値を付けているが実に株価は約4.4倍に大化けしており、住友金属鉱山も同じく昨年4月の安値から昨日の年初来高値まで約2.3倍に化けている。

こうなってくるとまた懸念されるが各所でのあらゆる銅製品の盗難事件か。私の知人も太陽光パネルの発電所で銅線ケーブル盗難の被害に遭い、会社ではエアコンの室外機も狙われた話をついこの間聞いたが、警察庁によれば昨年1~11月の金属盗難件数は暫定値で約2万件にものぼり既に20年以降で年間最高件数を記録しているという。需要急増に加え世界最大級の銅鉱山で事故も起きた事で投機筋も建玉を増加させており最高値更新を視野に各所対策が求められそうだ。


初の20000円大台

さて今月に入ってすぐの当欄では「初の18,000円台」と題し、金の国内小売価格が初めて1g18,000円を超えてきた旨を書いていたが、月が変わらぬうちにこの金の小売価格が昨日初めて1g20,000円の大台を超えてきた。なんとも上げのピッチが加速してきた気がするが、もう少し長いスパンで見ても金価格が初めてg10,000円の大台を超えたのが2023年、それからほぼ2年で価格が2倍になったわけである。

斯様な状況であるからNISAの成長投資枠でも使えるETF等も然るべしで、本日の三菱UFJの現物国内保管型の純金上場信託は19,000円の大台に乗せて高値引けし年初来高値を更新、老舗?のSPDRゴールド・シェアも年初来高値を更新し、iシェアーズゴールドETFや野村の金価格連動型上場投信、同じく野村の金先物ダブル・ブルETNなど揃ってどれも商いを伴って年初来高値を更新してきている。

思えばウクライナ侵攻が始まった頃に当欄では「金の過去最高値をチャンスとばかりに手持ちの金製品を買い取りショップで換金して帰る顧客の満面の笑顔と、戦闘の極限状態にある現地の恐怖に歪む人々の生々しい顔の対比が実に残酷に映る」と書いたものだったが、そうした地政学リスクも恒常的なものとなり、最近では値上がりにつれて当時と比較し新規購入の向きも大きく伸びているという。

気付けば世界の外貨準備に占める米ドルの比率も99年には7割を超えていたものだが、米ドルに対する信認低下も相俟って昨年はこれが6割を切る水準になっている。いまだトランプ政権とFRBのゴタゴタが続いているが、そういった事も背景に各国中央銀行は粛々と金を積み増しておりこうした“浮動玉”の吸い上げが近年のトレンドに寄与している面も否めないか。


初の18000円台

さて先に発表されたPCE(米個人消費支出)が市場の予想通りとなる一方、景況感指数が予想を下回った事でFRBの今月の利下げ観測が一段と強まり金利を生まない金に矛先が向いその価格がまたしても史上最高値を更新している。NYのCOMEXの先物は終値で初めて3,500ドルの大台を超え3週間ぶりに最高値を更新、国内でも小売価格の指標として昨日には初めて節目の1g18,000円の大台を超えて来た。

もう一つ、注目されているのはトランプ大統領によるFRB理事の一人の解任を巡る混乱か。既に法廷闘争に発展しているが、ハト派的な新しい理事の氏名も予想されるなか思惑通りに一連のことが運びこれが通ってしまえば中央銀行の独立性が脅かされることとなり、国債やドルへの信認が低下するという事に繋がりかねずこれまた安全資産への注目度が増すというもの。

ところで金以上に上昇しているのが金鉱株で世界最大手の米ニューモント株やカナダのアグニコ・イーグル・マインズなどは昨年末から金価格の上昇ペースを上回る勢いで高騰してきている。これまでも大手テックの「FANG株」ならぬ金鉱株の頭文字を取った「BAANG株」のベンチマークを上回るパフォーマンスが何度も報じられてきたのを思い出させてくれる。

近年は株式と相関性の低い商品に分散する狙いで金を組み入れた投信も多彩になってきたが、株式の高騰も同時進行の場面が多く上手く“両取り”が回っているのは想像に難くない。予測不能なトランプ氏の言動で今後も先行き不透明感が拭われる事は想像し難く、安全資産への注目継続からこうした金を組み入れた新商品の投入もまだまだ続きそうだ。


割安感で復権?

本日の日経紙グロース市場面では「金より割安、資産性注目」と題し、これまで産業用途としての需要鈍化から相場が低迷していた貴金属のプラチナが金(ゴールド)と比べて割安感が強いことなどを背景に、資産としての側面が注目されるなどで相場水準を切り上げている旨の記事があった。地金など大手の田中貴金属工業店頭では個人への地金販売量が7倍にも膨らんでいるという。

このプラチナとゴールド、その産出量の違いなどからかつてはプラチナの上鞘が常識的であったがその鞘も逆転してはや約10年、もう一昔前といった水準である。それまでは途中途中で金が上鞘に浮上する場面では“珍現象”などと各所で取り上げられ、先物でもリーマンショックなど挟んでこうした場面では「ストラドル取引」などを仕掛ける向きがあったが、鞘滑りで時間切れと軒並み思惑外れとなった光景など既に懐かしい。

今から4年ほど前にもPGM系が挙って上昇し長い眠りから覚めたと話題になったことがあったが、金のほうもまた複合的リスクを囃し環境問題で囃されたPGM系との鞘は劇的に変わることは無かった。今回はどうかというところだが、貴金属といえば先に銀も同じような金に対する割安感から13年ぶりの高値を付けている。これまた産業用需要回復期待がかかっているが、“割安感”で何処までその比価を縮小出来るのか今回も其々注視しておこう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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