ゴールドとデジタルゴールド

トランプ氏の大統領選勝利を受けたビットコインの騰勢止まらず、本日の前場には史上初めて一時9万ドルの大台を突破してきた。なにせ自身が運営に関わる金融プラットフォームまで立ち上げ、米をビットコイン大国にするとまで明言していただけに一連のトランプトレードでもその騰勢ぶりは群を抜いているが、日米が株価大暴落の憂き目に遭った8月には5万ドル台であったからその暴騰ぶりには目を見張るものがある。

ところでビットコインは別名で“デジタルゴールド”ともいわれているが、リアルのゴールド相場のほうはビットコインの暴騰とは逆に売り圧力が強まっており、つい先月末には2800ドル超と史上最高値を更新していたが昨晩は一時2か月ぶりに2600ドルを割るなど急落の憂き目に遭っている。そういったことで米ビットコインETFの資産規模も約840億ドルに達しており、既にゴールドETFの3分の2水準にまで迫ってきている。

この辺の背景にはドル指数が今年の高値水準106ポイント台に上昇、米長期金利の高止まりにドル高が逆風として効いていることがあるが、米10月CPI(消費者物価指数)如何でこのゴールドも弱気トレンドが継続されるのか否かというところ。下馬評ではインフレ鈍化が一服との見方も出ているが、内容如何で12月のFOMCでの利下げ観測にも影響してくるだけに先ずは今晩の米CPIに注目してみたい。


エネルギーとヘッジ需要

昨日の日経紙グローバル市場面では「電力先物取引が急拡大」と題し、地政学リスクの高まりや異常気象などで世界的に電力価格が変動し易くなり、価格変動をヘッジする需要が高まっていることなどを背景に電力先緒の取引が拡大している旨の記事があった。日本でも19年から電力先物取引が開始されているが取引量としては欧米勢には及ばないのが現状。

電力先物の取引高としてはエネルギー関連の不安定な環境を背景にドイツが突出しており、日本の電力先物にも参入しているEEX(欧州エネルギー取引所)での取引高は前年比の伸び率は52%にも上っているが、エネルギーといえば米でも例えばICE(インターコンチネンタル取引所)なども近年は天然ガスや原油などの取引の割合が急増してきているのが現状だ。

上記のドイツなどウクライナ戦争や中東情勢の悪化が天然ガスなど燃料価格の変動を大きくするが、ICEでは特にこの天然ガス先物の引き合いが増加し足元ではその建玉が過去最高を更新していること事もありエネルギー関連の売り上げは32.1%増と大幅な伸びを演じている。エネルギー・トランジション時代も見据え米大統領選でもエネルギー政策は大きなテーマでもあるだけに今後もこのマーケットには注目しておきたい。


ジパングを夢見て

本日の日経紙グローバル面には「NY金先物、最高値更新」と題し、米利下げの継続期待が金先物の投資妙味を高めたことなどを背景に金の国際指標となるNY先物が1トロイオンス2660ドルまで上昇し最高値を更新した旨が出ていた。直近ではイスラエル軍によるレバノンのヒズボラを標的にした大規模空爆も行われており地政学リスクの高まりも意識されている。

これまで複合的な要因で金利が付かないハンデを背負いながらも高値を更新してきただけに実際に利下げ継続となると更に追い風となるのは想像に難くないが、昨今の金高騰を背景にしてか国内でも7月には北海道でかつて栄えた静狩金山周辺で豪州のキンギンエクスポレーションの子会社であるジャペックスが金鉱脈を見つけようと採掘調査計画が持ち上がっている旨が報じられている。

国内の金鉱山といえば今では現役で稼働しているのが菱刈鉱山くらいでジパングの面影も無いが、余談だがかつてジャスダック市場に金鉱山事業を謳ったジパングなる企業が上場していたのを思い出す。外資系証券を渡り歩いた人物が代表を務めていたものの裏口上場の疑義の中で消えていった。それはさておきこの豪州系企業、黄金の国ジパングでめでたく有望な金鉱脈を見つけることが叶うのかどうかその行方を見ておきたい。


バラエティーでも金ネタ

本日のTBS系、マツコの知らない世界では「金ゴールドの世界」としてゴールドが特集されていたが、同番組で取り上げられたのはこれが初めてではなく11年前の2013年にもゴールドを取り上げていた。その当時は過去30年で金価格が今が1番高いとして紹介されていたが当時でg/約5000円、約1年前の昨年8月にg/1万円の大台を突破したあたりで再度ネタにされるとも思っていたが、ここへきて漸くの再登場となった。

番組中で示された金価格推移のグラフでは2000年代前半のg/約1300円が起点で今やそこから10倍化しているワケだが、もっと長いスパンでみれば半世紀では70倍を超えている計算になる。逆にもっと短いスパンということで今年だけを見ても金の年初来パフォーマンスは20%超となっており、主要なアセットとされる世界株や米国株をもアウトパフォームしている。

昨年10月に当欄で金を取り上げた際には国際社会分断を背景に物色の矛先が向うさまが一際不気味だと書いていたが、世界中で台頭する地政学リスクの拡大がますますこの分断を助長しドル離れで各国中銀が挙って金を積み増すさまはやはり不気味だ。こうした事も背景に上記のパフォーマンスに見られる通り米国の金利が上がる中でも上昇してきた金の輝きは一寸これまでとは違っていたが、今後は米利下げが更に追い風となってくる可能性があるだけに引き続き注目が怠れない。


米騒動とコメ指数

今日近所のスーパーに行ったところ、昨今のコメ不足により入荷が間に合わないのか「購入は一人一点でお願いします」とういう旨の張り紙が出ていた。さてこのコメといえば昨日から堂島取引所においてコメの値動きに連動する指数先物「堂島コメ平均」の取引が始まっている。堂島といえばかつてはコメ先物試験上場を10年にわたり実施した経緯があったものの本上場は叶わず、今回はコメの受け渡しをせずに指数に変更している。

注目された初値は中心限月の来年2月限で17200円(一俵)となったが、前回は本上場に至らなかったコメもこの指数で将来のコメ価格の参考値になる役割を担うことが出来るのか、またどの程度幅広い投資家を呼び込められるかがポイントとなってくる。そういった点ではインバウンドの影響で近年は海外でもコメの注目度が急速に高まっているなか、その先に海外マネーを呼び込めるかも焦点だ。

足元では主要銘柄の取引価格は概ね前年比2倍と、記録的な冷夏で90年代に起きたいわゆる「平成のコメ騒動」以来、約30年ぶりの高値となっているが、今回の“コメ騒動”は猛暑が直撃し上記のインバウンドも少なからず影響している。つい最近まで米離れが叫ばれていたのが記憶に新しいだけにヤレヤレという感じで、新米が出回る頃には一旦の需給緩和が見込めるというが今年もこの猛暑だけにさてどうなるか。暑さの落ち着きに歩調を合せ価格も落ち着きをみせるのか否か引き続き注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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