金にも戸籍証明?

昨日の日経紙一面では「流通元不明の金、輸出禁止」と題し、金の密輸に絡む問題で加工後に再輸出する手口の横行を踏まえ、流通経路の不明な金の輸出を差し止める仕組みを2027年度にも導入する旨の記事があった。関税法や関連する政令の改正を検討し税関の権限を拡大する意向で、有識者でつくる財務省の審議会に来月にも素案を示し年内に改正の内容をまとめるという。

こうした法制度改正で流通経路が不明な金の輸出を阻止して組織的な金の密輸をたたく狙いで、金の密輸に関してはこれまで当欄でも何度か取り上げてきた通り輸入量と輸出量の乖離が激しい。同紙では昨年の貿易統計の正規輸入量は10トンだが輸出量の方は228トンと実に20倍以上の開きがある旨が書かれていたが、国庫の損失は想像に難くないか。

そういえば今日は大阪市水道局が昨年匿名の人物から寄付された計21キロの金地金を先週末に売却したとの発表が為されていたが、この売却に関しても今年に入ったあたりから金地金類の買い取りに対して厳しくなってきているというのを聞く。上記の寄付された金地金は写真を見るに国内一流ブランドのものが確認できるが、こちらもまた金密輸等を背景とした事実上のブランド規制というような形になってくるか。

そもそも金の魅力といえば無国籍通貨と言われるくらい万国共通でどこでも換金性に優れていたのが“売り”であったものだが、こうした部分である意味パラダイムシフトしてきているということになるだけに今後の規制の行方にも注視しておきたい。


宝探し再び

本日の日経紙・インサイドアウトの頁では「金高騰、産金国目覚める」と題し、ゴールドを産出する新興国の間で近年の金価格高騰を自国経済の発展につなげようとする動きが活発化している旨の記事があった。またこうして広がり始めたところの金をめぐる資源ナショナリズムは、今後長い目で見れば金価格の新たな上昇要因となる可能性が十分にあるという。

ここでは膨大な埋蔵量を誇るラオス政府による国内貴金属市場インフラの急ピッチな立ち上げや、インドネシアが金輸出に対し最大15%課税し国外流出を抑えようとする姿勢、また中銀の金購入を進める中国やマダガスカルなどの動きが挙げられていたが、日本でも金価格高騰を背景に海外企業や国内企業が新たな金鉱脈を調査したり金属回収の動きを活発化させている。

2年ほど前だったか当欄では、北海道でかつて栄えた静狩金山周辺で豪州のキンギンエクスポレーションの子会社であるジャペックスが金鉱脈を見つけようと採掘調査計画が持ち上がっている旨を書いたことがあるが、同じく北海道の雄武町ではプライム市場上場のJX金属はカナダの鉱物探査会社アービング・リソーシズが金鉱脈の調査を継続している動きがある。

また東京オリンピックの時の「都市鉱山から作るみんなのメダルプロジェクト」で見られた通りこうしたお家芸の技術もさることながら、最近では新日本電工が焼却灰からの回収設備を拡張したりIHIは海水から金を採取する技術の実用化を目指したりしているという。金価格の動向が世界で資源ナショナリズムを刺激し、カンフル剤の一部となってゆくのかどうか今後も注目である。


普及のカギ

本日の日経紙グローバル市場面では金(ゴールド)が裏付けとなる暗号資産「金トークン」が、今年7月に成立した改正金融商品取引法で暗号資産が金商法の規制対象に位置付けられる事になったことで、法律上明確に位置付けられることを契機に売却益にかかる税率がETF(上場投資信託)なみまで下がる公算が大きくなる旨の記事があった。

つまり現在は雑所得として扱われ住民税込みで最大55%の税率が適用されるものが、ETF並みの約20%まで下がるということ。冒頭の金トークンについては今から4年ほど前に当欄でも三井物産のものを取り上げたことがあり、ブロックチェーン技術を用いて金価格に概ね連動する暗号資産の「ジパングコイン」が発行されており、今年6月末の発行残高は25億7400万円となっている。

こうしたことを鑑み暗号資産取引所の中には今年から新たに上記のジパングコインの取り扱いを開始しているところもある。またジパングコインは発行体の破綻に備えた銀行による保証の仕組みがあるが、金融商品としての取引が可能になってくると斯様に様々な事態に備えて投資家保護のために補償や救済の基金制度などの整備が行われ、これら整備の進展で投資のアクセスもまたし易い環境が整ってくればこの手の普及も期待出来るか。


ドクターカッパーの捉え方

本日の日経紙グローバル市場面では「銅、7か月ぶり高値」と題し、銅価格の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物が7日に1トン14533ドルまで上昇し、1月に記録した過去最高値の14527.5ドルの最高値を上回った旨の記事があった。依然として供給懸念が継続しているうえ、米の関税発動に対する警戒感も強いことが背景となっている模様だ。

こうした国際相場の伸びは加工した素材製品である伸銅品の国内価格にも波及し、伸銅品のうち最も生産の多い「銅条」の今月の価格は昨年末時点に比較して31%高の水準となっている旨も先週の日経紙で見かけた。これら伸銅品の価格はJX金属発表の銅建値の動きに連動するというが、その建値も先月に最高値更新し5年で2倍強にまで水準を切り上げている。

この建値が最高値更新したあたりで東証の「WisdomTree ETF」も年初来高値を付けているが、当のJX金属の株価は5月に付けた上場来高値から現在は約3割安の水準で推移している。さて今後どうなる銅価格だが、上昇が続けば広範囲なインフレ誘発の懸念も出てくる。経済動向をいち早く映すとして多用されてきた「ドクターカッパー」の公式も、近年のAI投資の集中等で従前との温度差は否めずその捉え方もまた変わってくるだろうか。


財政懸念で輝き再び?

さて米財務省が償還期間10年以上の国債買い入れ消却“バイバック”を倍増するとの発表でドル指数は下落したが、8月に入ってからV字型回復を見せていた金は3か月ぶりの高値を示現、またプラチナも2か月半ぶりの高値を付けるなど貴金属はこれを機に一段高、また代表的な暗号資産であるビットコインも先週には8万ドルに肉薄するまで戻り週間上昇率は約2年半ぶりの大きさを記録した。

足元では日本も先週には長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが1996年10月以来、約30年ぶりの高水準となる2.945%にまで上昇しているが、財政悪化や先の見えない軍事衝突などを背景に米でも先週は30年債の利回りが約19年ぶりの水準にまで上昇、同様の環境を懸念する声が多くこのバイバックが拡大してゆくのか否か関心が向かう。

ソブリンリスクが意識される局面では無国籍通貨の続面を持つビットコインや金などが選好されるのが定番だが、久し振りに教科書通りのパターンというかマーケットでも貴金属系のETFなど先週末から商いを集めている。いずれにせよこれら今後の金融政策次第となってくるが、そういった意味でも今週末にかけてのジャクソンホール会議やFRB議長の発言には注目しておきたいところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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