初の18000円台

さて先に発表されたPCE(米個人消費支出)が市場の予想通りとなる一方、景況感指数が予想を下回った事でFRBの今月の利下げ観測が一段と強まり金利を生まない金に矛先が向いその価格がまたしても史上最高値を更新している。NYのCOMEXの先物は終値で初めて3,500ドルの大台を超え3週間ぶりに最高値を更新、国内でも小売価格の指標として昨日には初めて節目の1g18,000円の大台を超えて来た。

もう一つ、注目されているのはトランプ大統領によるFRB理事の一人の解任を巡る混乱か。既に法廷闘争に発展しているが、ハト派的な新しい理事の氏名も予想されるなか思惑通りに一連のことが運びこれが通ってしまえば中央銀行の独立性が脅かされることとなり、国債やドルへの信認が低下するという事に繋がりかねずこれまた安全資産への注目度が増すというもの。

ところで金以上に上昇しているのが金鉱株で世界最大手の米ニューモント株やカナダのアグニコ・イーグル・マインズなどは昨年末から金価格の上昇ペースを上回る勢いで高騰してきている。これまでも大手テックの「FANG株」ならぬ金鉱株の頭文字を取った「BAANG株」のベンチマークを上回るパフォーマンスが何度も報じられてきたのを思い出させてくれる。

近年は株式と相関性の低い商品に分散する狙いで金を組み入れた投信も多彩になってきたが、株式の高騰も同時進行の場面が多く上手く“両取り”が回っているのは想像に難くない。予測不能なトランプ氏の言動で今後も先行き不透明感が拭われる事は想像し難く、安全資産への注目継続からこうした金を組み入れた新商品の投入もまだまだ続きそうだ。


割安感で復権?

本日の日経紙グロース市場面では「金より割安、資産性注目」と題し、これまで産業用途としての需要鈍化から相場が低迷していた貴金属のプラチナが金(ゴールド)と比べて割安感が強いことなどを背景に、資産としての側面が注目されるなどで相場水準を切り上げている旨の記事があった。地金など大手の田中貴金属工業店頭では個人への地金販売量が7倍にも膨らんでいるという。

このプラチナとゴールド、その産出量の違いなどからかつてはプラチナの上鞘が常識的であったがその鞘も逆転してはや約10年、もう一昔前といった水準である。それまでは途中途中で金が上鞘に浮上する場面では“珍現象”などと各所で取り上げられ、先物でもリーマンショックなど挟んでこうした場面では「ストラドル取引」などを仕掛ける向きがあったが、鞘滑りで時間切れと軒並み思惑外れとなった光景など既に懐かしい。

今から4年ほど前にもPGM系が挙って上昇し長い眠りから覚めたと話題になったことがあったが、金のほうもまた複合的リスクを囃し環境問題で囃されたPGM系との鞘は劇的に変わることは無かった。今回はどうかというところだが、貴金属といえば先に銀も同じような金に対する割安感から13年ぶりの高値を付けている。これまた産業用需要回復期待がかかっているが、“割安感”で何処までその比価を縮小出来るのか今回も其々注視しておこう。


コモディティ明暗

懸念された中東情勢だが、朝方にトランプ米大統領が「イスラエルとイランが停戦で合意した」とSNSに投稿したことでマーケットも各々反応している。148円台まで軟化していたドル円は一転して144円台まで急伸、日経平均も一時600円を超える上げ幅を演じ39000円台まで指呼の間となる場面もあった。またコモディティは原油が停戦合意に先駆け約14%も下落していたが、金もNYで2週間ぶりの安値を付け国内先物も2%以上の下落を演じた。

ところでこの金といえば3000ドル大台突破後にいち早く3500ドルシナリオを出していたのはマッコーリーであったがドンピシャの予測であった。先週にはシティグループも金価格に関するリポートを出していたが、2025年第3四半期は3100~3500ドルで推移するものの、米中間選挙を控えるタイミングで経済政策強化がなされ米と世界全体の成長見通しから市場はリスクオンに傾き、26年下半期までに2500~2700ドル台まで下落するとしている。

足元で金は目先のポジション巻き戻しから一服したとはいえ年初からまだ2割以上高い水準にある点で原油との違いは鮮明だが、この辺はやはりドル離れなどを背景にした各国中銀の旺盛な買いによるところが大きいだろうか。WGCによれば各国中銀は昨年まで3年連続で年間合計1000トンを上回る金を購入しており、今年も歴史的な高値圏で推移した1-3月期でも過去5年間の四半期平均を24%上回る規模の買いがあったという。

とりわけ近年は更に米国とバチバチ?な関係でその依存度を引き下げてきている中国の買いが安定しており先月は約1.9トン購入しているが、これで金の買い越しは7か月連続となっている。外貨準備に占める金の比率は既に3年で2倍にもなってきているが、他の新興国も其々余力はあるとみられこの辺は今後も相場にとってのサポートとなり続けるか。


3000ドルは通過点?

本日の日経紙グローバル市場面では「金高騰、予想引き上げ続々」と題し、金(ゴールド)が今月に初めて3000ドルの大台を突破した後もトランプ米政権や地政学リスク、中央銀行による買いなどを背景に主要金融機関が年内の価格予想の上方修正に動いている旨の記事があった。金ETFは過去4年間にわたり純流出が続いていたが、今年に入り純流入に転じているあたりも投資マネー流入の一端を示すものだ。

同紙では年内の価格予想を引き上げた金融機関とその理由が出ていたが、3000ドル突破後にいち早く3500ドルのシナリオも打ち出したマッコーリーなどは地政学リスクと共に財政赤字を挙げるが、トランプ政権を巡っては大規模な減税策に伴う財政問題も懸念されており財政赤字が拡大しドルの価値が下がるとの見方から価値が目減りしない金への注目度が上がるのもうなずける。

他にゴールドマン・サックスは冒頭のETF流入と並び中銀の買いを挙げていたが、この中央銀行の旺盛な買いも過去10年以上続いていて、22年以降は3年連続で年間1000トンを超えて昨年も上昇を牽引したのは中銀の買いが主因だった。中国の中央銀行など今年2月、4ヵ月連続で金保有を拡大させているが、こうした中銀買いは今年1月には約18トンを買い入れている。

中間選挙に向けて成果を急ぐトランプ大統領の予測不能な政策如何で一部の新興国など今後はいつ自国に経済制裁が下るかと戦々恐々の中にあって、外貨準備をドルから金にシフトさせる動きは自然な流れで斯様な動きが今後も価格に寄与し続けるのは想像に難くないか。


ゴールドとデジタルゴールド

トランプ氏の大統領選勝利を受けたビットコインの騰勢止まらず、本日の前場には史上初めて一時9万ドルの大台を突破してきた。なにせ自身が運営に関わる金融プラットフォームまで立ち上げ、米をビットコイン大国にするとまで明言していただけに一連のトランプトレードでもその騰勢ぶりは群を抜いているが、日米が株価大暴落の憂き目に遭った8月には5万ドル台であったからその暴騰ぶりには目を見張るものがある。

ところでビットコインは別名で“デジタルゴールド”ともいわれているが、リアルのゴールド相場のほうはビットコインの暴騰とは逆に売り圧力が強まっており、つい先月末には2800ドル超と史上最高値を更新していたが昨晩は一時2か月ぶりに2600ドルを割るなど急落の憂き目に遭っている。そういったことで米ビットコインETFの資産規模も約840億ドルに達しており、既にゴールドETFの3分の2水準にまで迫ってきている。

この辺の背景にはドル指数が今年の高値水準106ポイント台に上昇、米長期金利の高止まりにドル高が逆風として効いていることがあるが、米10月CPI(消費者物価指数)如何でこのゴールドも弱気トレンドが継続されるのか否かというところ。下馬評ではインフレ鈍化が一服との見方も出ているが、内容如何で12月のFOMCでの利下げ観測にも影響してくるだけに先ずは今晩の米CPIに注目してみたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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