ドクターカッパーの捉え方

本日の日経紙グローバル市場面では「銅、7か月ぶり高値」と題し、銅価格の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物が7日に1トン14533ドルまで上昇し、1月に記録した過去最高値の14527.5ドルの最高値を上回った旨の記事があった。依然として供給懸念が継続しているうえ、米の関税発動に対する警戒感も強いことが背景となっている模様だ。

こうした国際相場の伸びは加工した素材製品である伸銅品の国内価格にも波及し、伸銅品のうち最も生産の多い「銅条」の今月の価格は昨年末時点に比較して31%高の水準となっている旨も先週の日経紙で見かけた。これら伸銅品の価格はJX金属発表の銅建値の動きに連動するというが、その建値も先月に最高値更新し5年で2倍強にまで水準を切り上げている。

この建値が最高値更新したあたりで東証の「WisdomTree ETF」も年初来高値を付けているが、当のJX金属の株価は5月に付けた上場来高値から現在は約3割安の水準で推移している。さて今後どうなる銅価格だが、上昇が続けば広範囲なインフレ誘発の懸念も出てくる。経済動向をいち早く映すとして多用されてきた「ドクターカッパー」の公式も、近年のAI投資の集中等で従前との温度差は否めずその捉え方もまた変わってくるだろうか。


財政懸念で輝き再び?

さて米財務省が償還期間10年以上の国債買い入れ消却“バイバック”を倍増するとの発表でドル指数は下落したが、8月に入ってからV字型回復を見せていた金は3か月ぶりの高値を示現、またプラチナも2か月半ぶりの高値を付けるなど貴金属はこれを機に一段高、また代表的な暗号資産であるビットコインも先週には8万ドルに肉薄するまで戻り週間上昇率は約2年半ぶりの大きさを記録した。

足元では日本も先週には長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが1996年10月以来、約30年ぶりの高水準となる2.945%にまで上昇しているが、財政悪化や先の見えない軍事衝突などを背景に米でも先週は30年債の利回りが約19年ぶりの水準にまで上昇、同様の環境を懸念する声が多くこのバイバックが拡大してゆくのか否か関心が向かう。

ソブリンリスクが意識される局面では無国籍通貨の続面を持つビットコインや金などが選好されるのが定番だが、久し振りに教科書通りのパターンというかマーケットでも貴金属系のETFなど先週末から商いを集めている。いずれにせよこれら今後の金融政策次第となってくるが、そういった意味でも今週末にかけてのジャクソンホール会議やFRB議長の発言には注目しておきたいところ。


AIインフレで跛行色の非鉄

さて日々情報が交錯するイラン情勢を睨み原油価格の乱高下も常態化してきたが、このコモディティーでは先週末の日経紙グローバル市場面で「銅、最高値迫る」と題し、銅価格の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物が1トン14369ドルまで上昇し、1月に記録した最高値に肉薄した旨の記事もあった。

足元でデータセンターなどAIインフラに向けた需要が伸びるなか、産出国であるコンゴが銅精鉱の輸出を禁止する報が伝わり供給懸念から買いが広がっており同じ非鉄のアルミ等が低迷するなか対照的な動きをしている。そんな背景もありAI投資コストによるインフレが警戒されているが、昨年前半などもこの銅価格が上昇するなかこれらが懸念されAI関連株が軒並み調整したのが記憶に新しい。

日曜日の日経紙NewsForecastで“AIインフレ”にも注目とあったが、上記のデータセンター建設や先端半導体需給逼迫でインフレ圧力も意識されてきている。先月のFOMCでは政策金利の据え置きが決まったが、FRB内ではインフレ圧力を睨んで金融引き締め論も出てきており日銀が陥っているようなビハインド・ザ・カーブを警戒する声が高まっているのは想像に難くない。

そういったところで先ずは今晩に発表される米7月CPI(消費者物価指数)や13日の米PPI(生産者物価指数)に関心が向かう。市場予測からの乖離具合で“タカ”になるのか?はたまた“ハト”で落ち着くのか?利上げ折り込みが加速するとなると、一旦は決算を受けて“コツン”とした感のあるテック関連も再度場味が変わってくるだけに先ずは上記指標の発表に注目しておきたい。


中銀による構造的需給

さて今年3月頃迄は4000ドル大台割れはもうないとさえ一時思われた金だが、米利上げと米ドル高長期化の思惑が強まるなか先月末にこの水準を割っている。この下げを牽引した一因にETFからの資金流出がいわれているが、なるほどWGCによれば先月26日までの1週間では世界の金ETFから裏付けとなる金の金額にして47億ドル、重量ベースでは38トンが流出したといい、1週間でこの重量の流出は22年以来、約4年ぶりの規模という。

上記の通り先のFOMCを受けた米金融政策の思惑を背景に金融大手ゴールドマン・サックスなどは今年年末の金価格の見通しを1トロイオンス4900ドルと従来予想の5400ドルから引き下げており、シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行も年末予想を従来の4800ドルから4300ドルに下方修正している。ここまでの下落局面で記録的上昇をけん引した流入の半分弱を吐き出した計算になるが、一方でこの水準で食指を伸ばす向きもある。

CFTCでは6月末のヘッジファンドなど非商業部門による金の買い越し幅は、1月下旬以来5か月ぶりの高水準に拡大、増加は2週連続で直近で最も買い越し幅が縮んでいた5月下旬から約2割増加している。中国の中央銀行もここ20か月連続の買い越しと最長記録を塗り替えているが、6月末のバランスシートでの金保有量は前月より15トンも増加しその増加幅は23年10月以来の大きさになっている。

まさに“捨てる神あれば拾う神あり”だが、投資家の裾野が広がったこともあり短期目線で手放す投資家の裏で世界の中央銀行は“脱ドル依存”の動きで金を含めた準備資産を分散する動きも顕著になってきている。冒頭のWGCの調査では今後1年で自国の金保有量を増やす予定とした中央銀行は過去最高水準に上った模様。斯様な中銀の構造的需要が今後の価格を占う上での鍵ともなってくるだけにこの辺を引き続き見てゆきたい。


額面超え次々

本日の日経紙商品面には「10円高「時価」10.5円に」と題し、AIインフラを支える素材として銅の需要が世界で拡大したことで10円玉の主原料となる銅相場の高騰と円安が重なり、含有する金属の時価が額面の10円を上回った旨の記事があった。素材価格が額面を上回るのは別にこの10円玉に限ったことではなく、5円玉など昨年末から原材料費が額面を上回っている。

当時は10円玉の原材料費はまだ8.7円であったが、上記の通りAIインフラ投資の進捗で電線需要の急拡大等でさらに高騰したことで5円玉に続いて10円玉も額面超えとなった模様だ。ところでこの5円玉の話題に先駆けて米国でも1セント硬貨の製造・流通コストが3.69セントと額面の4倍近くになったとしてトランプ政権が財務長官に製造を止めるよう指示した経緯がある。

この辺の背景には素材価格の高騰もさることながら電子決済が普及したことで現金決済の重要性が年々低下していたのも影響しているわけだが、キャッシュレス化の波は日本にも押し寄せている。とはいえ日本はまだデジタル・キャッシュレス“難民”にも配慮してここからさらに硬貨の素材価格高騰でも米に倣えで製造中止とはならないだろうが、発行環境などは変わってきておりその辺後の動向には注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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