44ページ目   商品先物

コメ先物上場1年

さて、今月でコメの先物が東京穀物商品取引所と関西商品取引所に上場して1年が経過した。72年ぶりの復活上場と鳴り物入りで登場したものの、果たしてメインの市場であった東穀取に至っては何度もその杜撰経営を取り上げてきた通り経営不振から解散の挙句に擁していたコメ市場を来年2月に関西へと引き継ぐことが決まっている。

同所経営陣がまったく場当たり的な経営を続けてきたのは、その他の商品を東工取へ移管決定した後の記者会見にて社長が「〜度重なる勧誘規制の強化が取引減少の理由〜」とその辺の三流マスコミレベルの答弁をしているあたりでも窺えたが、三菱地所のパークハウス基礎工事が粛々と行われている剥き出しの取引所跡地もまた目に入る度に資産食い潰しの酷さを物語っている。

そんな迷走も足を引っ張り上場からこの1年の1日あたりの平均売買高は約370枚で、国内上場商品の売買高ランキングでは14位である。これだけでも東穀取社長の「全限月が揃ってからが本番と考えてくれ」とか「1日5,000枚」というのが如何ほどの大風呂敷かという事になるワケだが、この移管が決まった関西商品でも板寄商いとなるなかで異銘柄共存の相乗効果は未知数と明確な展望があるわけではない。斯様にコメのゆくえも気になるところだが他を引き継ぐ新生「東京商品取引所」もまた然り。

世界の商品先物取引所を見てみると2011年取引高ランキングはNYMEXが3年ぶりに首位に返り咲き、このベストスリーでは2位にインド・マルチ商品取引所、そして3位が上海商品取引所となっている。その後にはCBOTやらLMEが続くが、はたして新生「東京商品取引所」は何位くらいになるのだろうか?おそらく売買高ベースでは首位比較で数%程度と見られるが、先の日経紙には東工取の先月の外国人売買比率が最高の31%になった旨も載っていた。今後彼ら主力含め他をどう誘致してゆくか、先を見れば日本取引所グループの骨子がはっきりしてくるあたりでまた新展開も考えられるが何れにせよまだまだ安穏な道ではない。



関心と矛先

欧州問題が依然として不透明な中を米金融緩和を睨んでかここ直近で金の堅調が目立つ。価格堅調と共に一時期残高が減少した代表的な金ETF「SPDRゴールド・シェア」の運用残高も先週時点で約1,286.5トンと前月比で約4.5トン増加し、4/9以来約4ヵ月半ぶりの高水準となった旨も週末の日経紙に載っていた。

そういえば昨日記のジョージ・ソロス氏のファンドやポールソン&カンパニーも4-6月期にこの手の金ETF保有額を増加させている事も報じられているが、国内でも足元では4-6月の「金需要動向」にて日本の投資用の金需給がおよそ3年半ぶりに買い越しに転じた旨をワールド・ゴールド・カウンシルが発表している。

ところで金といえば先週の日経紙には「東工取、取引に停滞感」として、東工取の売買回転日数が今月20日時点で約9.5日を要し前年同月の3.8日や前年平均の5.4日を大幅に上回っている旨が出ており、先物へはこの辺の波及効果は今ひとつといったところだろうか。その前の同紙には若年層の間で金投資の関心が高まっている旨の記事も見掛けたが、商機かどうかは別としてこちらの啓蒙も業界は工夫したいところだ。


欧州デリバティブ事情

さて、既報の通り週明けには世界最大のデリバティブ取引所を運営するCME(シカゴ・マーカンタイル)グループがロンドンに欧州顧客向けのデリバティブ取引所を新設すべく英規制当局に申請した旨が報じられている。

ロンドンのデリバティブ取引所を巡っては、上記のCMEグループも取得に名乗りを上げていた昨年の香港取引所による非鉄のLME(ロンドン金属取引所)買収もあったが、このレースから離脱を余儀なくされ今回の独自路線に打って出たCMEの行動には、米国の厳しい規制を嫌う欧州金融機関に配慮した決定であることも報じられている。

ところでLMEといえば、先月末には会員の反対票が0.76%にとどまりほぼ満場一致で香港取引所との統合が承認されたが、今後は従前の相対決済や倉庫事業なども絡んでいるだけにワラント操作?等々含めた所謂ムラ社会の商習慣がこのまま踏襲されるのかどうかも一部関係者には目下のところ注目されるところ。


08年再来?

さて、ここ最近紙面を賑わせているものに穀物の高騰問題がある。これに関しては先に仏と米が世界的な天候異変で穀物など食料価格が上昇している問題への対応を協議するためG20による緊急会合招集の準備に入っているが、直近では先週末の日経紙に「穀物高、じわり食卓圧迫」として食用油の値上げが浸透、飲食店向けや店頭価格も上がり始め、小麦も値上がりしそうとの旨も書いてあった。

当然近年金融商品化が著しいコモデティー市場においては先にカゴではトウモロコシも大豆も史上最高値を付けているが、食料とエネルギーという二つの顔を持つトウモロコシなどは争奪戦の様相を呈し本日の日経夕刊でも「食料か 燃料か」と物議を醸し出している。ましてやここへ最近頻繁にチラつかせる機会が多くなってきた金融緩和政策では過剰流動性の波が再度作られており、ファンドも其れなりの商機を狙っているから尚更か。

さて冒頭の件だが、足元ではデフレ化著しいなかで正直何処まで原料コストの上昇分をそのまま製品価格に転嫁出来るかどうかは未知数というところ。本日の日経紙ではレアアースもあの手この手で世界中からかき集めている旨が書いてあったが、斯様に調達先を増やし必要量の安定確保を図るのは企業側の重要課題。この辺に関しては最近穀物に強い丸紅は先に米穀物商社ガビロンの買収を決めているが、従前の総花的経営からの同社の転向は競争激化もさることながらこの辺を睨んでの展開ともいえこの後に続くメジャー群の動向もまた注目されるところ。


投資セグメント

さて、今週は週初に上場している主要な商品取引員の2012年4-6月期の決算が出揃ったが、この期中の売買高が前年同期比で約2割の減少となった事がやはり手数料にも響き、果たして全社が最終赤字となっていた。この中には先に書いた東京商工リサーチの継続企業の前提注記企業もあるが、手数料の落ち込みを自己でカバーした向きもある等この辺は以前から見られる構図でもある。

恒常化している売買高減少によって取引員でもその事業内容の転換を図る向きが近年幾つか出てきているが、上場企業でも今やそのコードナンバーからはおよそ想像もつかないような事業内容に業態変更してしまっているところは幾つも出てきており、この辺は引き続き経営陣の手腕が注目されようか。

本業の落ち込みを自己でカバーしたりもともとのヘッジ事業からの派生がメインになってきた事例は何も取引員に限ったことでなく、一部上場の貴金属リサイクルや不動産事業を営む中外鉱業なども先物投資事業が今や最大の損益変動要因。ちなみに先週発表された同社の2012年4-6月期の連結最終損益は、この投資事業が足を引っ張り赤字転落となっている。

境界線が微妙ながらもヘッジに絡んだ取引で思わぬ利益が出てしまい国税と揉めた石油精製会社もある一方で上記のようなパターンもあるが、斯様に投資事業のセグメントをメインに据える向きはやはりブレも大きく、そのセグメントの巧拙如何で収益が大きく左右されるリスクが孕んでいるのは否めないところだろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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