51ページ目   商品先物

60年の歴史に幕

さて、今週の業界絡みの出来事といえば中部大阪商品取引所が週明けに臨時総会を開き解散したことだろうか。ご存知、1951年に取引を始めた名古屋繊維取引所等が96年に合併してできた中部商品取引所が前身で、2007年には大阪商品取引所と合併するに至ったが、ここもとうとう60年の歴史に幕を下ろすことになった。

いろいろ迷走はあっただろうが、数年前にも書いたように最後の賭けに出た金市場創設にしても、投資家への選択提供というより対処療法的な起死回生を狙った取引所救済色の発想に傾斜したものではなかったのだろうか?他所のパイ奪いと揶揄もされたが類似商品を出そうが他所とMOUを交わそうが、小さいパイの中においてガリバー的な存在がある限りそれで活路を見出すのは並大抵な事ではないのが現実。

何れにせよ既にTOCOMへの移管も終り年末までに取引が終了していることもあって、その報道も申し訳程度にひっそりとしたもので何やら横浜商品取引所の時を思い出したが、これで国内の商品取引所は三カ所となる。

そういえば余談ながら、中部といえば名古屋証券取引所などは東海地域の主要50社の株価指数に連動するETFを近々上場する予定とか。主力取引所の地盤沈下が近年いわれているがこうした地方証券取引所こそその地盤沈下は焦眉の急を告げる事態、個別では生き残りをかけて試行錯誤が続く。


2008年との相違点

さて、今週よく見かけたのは身近な品の原材料高騰の報か。コーヒー最大手のUCCホールディングスが3/10からの値上げを発表したが、既に年末からキーコーヒーやAGFは実質値上げを決めており業界最大手の同社の動向が注目されていた折果たしての値上げ、背景には新興国の需要拡大等でコーヒー豆国際相場は13年ぶりの高値にありコスト圧縮も限界にきているという。

この他にも1/26付け日経紙などは、カカオ豆の有力生産国が禁輸措置を取った為に、ロンドンのカカオ豆先物はおよそ30年ぶりの高値水準近くに達していると報じたほか、上記のコーヒーの件や食用油が軒並み上昇している件、その隣にはNY綿花が最高値更新とも載っていた。

よく値頃など前回の2008年商品バブルと比較されるが、前回の過剰流動性相場一辺倒と違って今回はこれに天候不順や新興国の需要増による逼迫が加わっており、構造的問題になりつつあるのは厄介だ。FAO(国連食糧農業機関)算出の主要食糧価格指数は既に年末に過去最高を更新、そういえば同機関の事務局長が「食料価格高騰が数年にわたり続いたら各国で政情不安を招くことになる」と警鐘を鳴らしているのが1/25付け日経紙一面にも載っていた。

この辺は最近のチュニジア等で既に見られ始めているが、我が国とて目下のところの円高で輸入価格抑制が利くのもあと僅かだろう。デフレの後遺症で製品価格への転嫁は困難を極める一方、各業界での値上げ交渉も難航から進んでいない中で今後も企業や末端の試練は想像に難くない。


商品関連株明暗

本日の日経平均は小幅ながら三日続伸となったが、このところ個人の信用評価損率も大幅な改善を見せ個別の材料株乱舞が止まらない。一方で主力の構成銘柄の方だが、ここ最近はブリヂストンがしばしば日経平均値下がり寄与度のランキングに登場している。

これに関しては本日もTOCOM市場でのゴムの急騰に見られる通り、天然ゴム価格の上昇を受けて今後の営業利益は伸び悩むとして野村がレーティングの引き下げを行ったほか、日興も弱気レポートをリリース等の動きがある。

同様にキューピーも食用油の価格上昇が嫌気されて冴えない動きが続いており、また先週末の1/15付け日経紙マーケット欄の「まちかど」では、バレンタインデーを前にして明治HD・森永・モロゾフ等のチョコレート関連企業の株価が騰落率で日経平均を大きく下回る旨も出ていたが、この背景にあるというのがロンドン市場先物で昨年33年ぶりの高値を付けたココアの高騰に加えて砂糖の高騰も影響しているという。

これらの動きは総じてインフレ懸念や世界的な天候不順による商品価格の上昇が業績を圧迫するとみられているところに起因するが、こんな背景から一方でストップ高まで買われるなどの急騰を見せているのは穀物商品指数のETF。この件はまた後述するがこんな株価の二極化はなんとも不気味である。


新時代なるか

さて、例年行われている日本漢字能力検定協会が全国から公募した「今年の漢字」であるが、昨年の「新」から本年2010年を表す漢字は「暑」と発表されている。

この「暑」に因って今年は彼方此方でこれによる弊害が出ていたが、今月上旬など日経紙一面には、「物価の優等生」なる鶏卵の店頭価格が2年ぶりの高水準で、卸売り価格は5年7ヶ月ぶりの高値になるなど価格が高騰している旨も載った。物価の優等生でもやはり今年は猛暑による影響が甚大で供給が減った模様。

そんなワケでこの時期、御節料理の需要を控え更なる上昇を懸念する声が聞こえるというが、日常モノといえば野菜もまた然り、これまたこの猛暑の影響で緑黄色野菜中心に軒並み5割前後の上昇となったがこれだけ騒がれても、国内ではやはりというかこうした現象に絡んで身近なヘッジに関しての話題は全く見当たらない。

逆にヘッジといえばこの野菜もかつて世界初を謳い鳴り物入りで先物が登場したものの、参加者不在で東穀取が数年前に上場廃止にしている。上記の鶏卵にしてもかつて中部大阪商品取引所がこの先物を上場していたものだが、生産や流通関係者の参入不振の末にこれもまた今年の3月には立会い休止となっている。笛吹けど原資産にリンクしてこないのは、マーケティングに起因しているのかはたまたデリバティブが風土に根付かないのか?

何れにしてもこの鶏卵先物を上場していた中部大阪商品取引所も来月には解散という道を辿り、野菜先物を上場していた東京穀物商品取引所もまた実質的に解体への足音がヒタヒタと迫っている。こうした取引所淘汰の一方で「総合取引所」構想も重い腰を上げつつあるように見えるものの、監督機関についての調整は年内つかず両論併記となった。さて来年はこの辺がどう決着するのか思いを巡らせつつ今年はこれで失礼したい。

皆様、一年間のご愛読まことにありがとうございました。
どなた様も良いお年をお迎えください。


商品核兵器?

本日の日経紙全面広告の中には、WGC日韓地域代表の豊島氏が金市場の実体について語っている広告があったが、ちょうどこの内容で過日たまたま見たのが、週末土曜日に放映された日経CNBC「金市場に沸く中国〜北京の金需要最前線レポート」という番組であった。

冒頭でWGCのCEOが、ここ一年で金は35回も史上最高値を更新している云々を話していたのが耳に入りそのまま見ていたが、(菜百首飾)という金を一番売っているという貴金属店には平日開店直後にも係らず顧客でごった返している光景が印象的であった。翌日曜日の日経紙にあった「物価高 おびえる中国」なる記事でまた同番組を思い出したのだが、この辺の感覚を肌で感じ取っているのかもしれない。

もう一つ、貨幣戦争の著者である宋氏曰く「金はまさに通貨の基礎、肝心なのは金の値段を決める力を持っているかどうかで、そうした国は基軸通貨の価値を決めることも出来る。大量に保有すれば価格コントロールも可能で通貨の価値に大きな影響力を持つことが出来る。だから金は核兵器と同じなのだ。」なる不気味な解説が昨今の金準備政策とも絡めて印象的であった。

現在、中国の金融政策は過度な引き締めと過度な緩和という二つのリスクを擁しているというが、何れ過度な緩和へのバイアスがかかる可能性も高いという。となるとますます今後も金に絡んだ話題は尽きないだろう。余談だが、豊島氏とキャスターが路上にて話していた背景に見えたのがあの「ZARA」の大店、CBD(中央商務区)街ではベンツやワーゲンなどのミドルクラスがチョコチョコと走り摩天楼も圧巻、以前に訪れた時には何も無かった記憶があるがその様変わりぶりに改めて驚かされた。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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