52ページ目   商品先物

MBOという選択

さて、今週は月曜日にMBOの実施を発表した幻冬舎の株式を巡る思惑について触れたが、このMBOといえば昨日は業界からあの日本ユニコムを擁するユニコムグループホールディングスが、MBOの一環としてJFKを公開買い付け者としたTOBを実施すると発表している。

この件を失念し今朝の日経紙に大証金が同社株の貸借取引で申し込み停止措置と出ていたのをとうとう株券調達困難になったかと一瞬勘違いしそうになったが、それはともかく突如のこの報に朝方から買い物が殺到し辛うじて比例配分でストップ高引け、800万株以上の買い物を残している。買い付け期間は来年2/3迄でTOB価格に鞘寄せが続くだろうが、概ね08年の価格水準でディスクロされているPBRからはやはり安めな感も。

さて先に取り上げた幻冬舎といえば、今回のMBOの理由が所謂ディスカウントキャッシュフローの懸念か。今年の6月末でもディスクロでは30万円以上の純資産を有するが、TOB価格への鞘寄せやらファンド介入やらでここ急騰したといっても本日現在でまだ10万円前後も下鞘の状況、一方、前々から当欄で取引員各社は万年低PBRだと指摘してきたが、こちらの業界は更に三分の一くらいのディスカウント状態に放置されている。

過剰流動性がコモディティー市場に流れ込みかつて無いほど活況な海外市場とは裏腹に、国内は不振を極めている様にリンクするかのように各社株価も上記の通り不振を極めている。経営と資本の一体化を考察するに、今の現況でエクイティ・ファイナンスによる資金調達の有用性、また上場維持コスト等勘案するにこうした選択も自然な流れとも思える。

思えば一頃の取引員各社といえば上場による信用獲得が一つの悲願であったものだが、はれて上場当時によもや自ら退場する流れも出ると誰が予測しただろうか。出版業界なども撤退組が相次ぎ苦境だがその中でも上記幻冬舎など勝ち組の部類でもこうした選択、今後も各社の出方がまた注目される。


進展するか?総合取引所構想

さて、今週始めの日経紙社説には「もっと国際化を進めたい東京金融市場」として、株式や債券、商品などを一体的に取引できる「総合取引所」構想を政府が新成長戦略の一つとして進めている旨が触れてあった。

文中には「縦割り行政が解消されれば、例えば値動きが商品相場に連動する投資信託を東証に上場し易くなるなど、運用の選択肢の幅が広がる。」等も出ていたが、この辺は既に個別で進んでいる感じ。そういった意味では証券系の昨今の動きなどバブル期のそれとはまた違った感触も受ける。

漸く重い腰が上がり始めたかのようにも見えることで、東証ホールディングス説や日本アジアホールディングス説など様々な絵が彼方此方で喧伝されているが、持ち株会社方式を語る前にやはりネックになってくるのが省庁間のしがみつきだろうか。ぶら下がる各取引所にしても、ちょうど今のTOCOMと東穀取の関係に見られるように不採算の臭いがする向きとは一緒になりたくないという思惑もある。

そんな向きが混在しドロップアウト組も出始めた国内の各取引所は目下のところ地盤沈下が進行しつつあるが、周りでは10月に当欄でも書いたようにシンガポール取引所がオーストラリア証券取引所の買収に向けた動きを見せるなど粛々と事は進行中。そういえばこの一件でも大株主の東証には何の相談も無かったそうで、こんなところでも蚊帳の外?


脇役の脚光・2

昨晩のNY市場では金がまた最高値を更新していたが、メタル系では5日付け日経紙一面にも同市場で先週末の銀の国際価格が約30年ぶりの高値水準にまでなっている旨が載っており、週明けもまた続騰である。これもまた今迄述べて来たように米国の追加金融緩和で投機資金が流れ込んでいる影響が多分にあり、実物資産が次々とターゲットになっている。

さて、銀といえば先の10月にも取り上げた通り、先行する金を引き合いに金銀比価論や史上最高値までへの伸びしろなども取り沙汰されていたが果たしてこうした割安?感が奏功し消去法的な買いもそれを押し上げている。ファンダメンタルズとスペキュレートの両面でコモディティーはその値を形成しているが、工業メタルなどはファンダメンタルズが褪せると逃げ足も速い。ただ今回は金とのリンクがいわれている中、そうしたサポートもあって下値は堅いとの見方もある。

ところでこれに限らずサブ的なコモディティーの逃げ足が速いという部分には、かつて破綻したファンドや投機筋などが買占めを謀った例にも見られるように当然その市場規模という問題も背景にある。昨日は出来高を伴い住友鉱など物色されていたが、これとて銅絡みではLME在庫の半分以上を一部トレーダーが押さえているとかで警戒論も一部にある。

またここ数年ETFが増殖しているが、当初はこの市場規模云々で警戒論が其処彼処で飛び交ったものだ。事実水面下では上記の銅など地金不足で対応不可なケースも出てきているものの、それでも現在ではラインナップが続々と続く。結局その手当て買いも広義では上記の筋に近いものがあろうが、産業界では依然として警戒論が強いのも当然といえば当然か。


脇役の脚光

月替りから世間ではクリスマスのイルミネーションが其処彼処で目を楽しませてくれるが、ジュエリー関係も売り込みに余念がない。GINNZA TANAKAなども明日からフェア開催とか案内が来ていたが、今年はノーベル化学賞の受賞対象研究の触媒に使われたとかでパラジウムがにわかに浸透してきているらしい。

PGM系は日本では工業用と並んで特にジュエリー需要も強い国だが、本流のプラチナとは違い値も半額なら重さも6割程度と手軽なのが人気らしい。そんなこともあってTANAKAと同じ銀座の和光では、パラジウムジュエリーコレクションとして専門コーナーも設けた模様。

さてジュエリーも斯様に人気化し始めてきたようだが、当の相場も600ドルの大台に乗せてからはや700ドルの大台へコマを進めるなど急上昇しており、このところは特にETFなど上場当時からするとなかなか活況になってきている。

ETFSモノや、三菱UFJ信託モノなど当欄では先に取り上げた通りだが、金の影に隠れて?ここ数ヶ月は可也の上昇ぶりを見せ三菱UFJ信託モノなどは夏場の上場からはや約5割も上昇している。これで商いが安定してくるようであればしめたものだが、コモディティーも証券モノだと定着が早いなとつくづく。


国際通貨としての戦略

昨晩の海外商品は、まんべんなく全面安の商状。中国の金融引き締め観測がある上に、ドルが対ユーロで買われているのも嫌気され先駆していた金などは30ドル超安となり、連れて本日のTOCOMも全面安となっていた。

さてこの中国に金といえば、月曜日に少し触れた米資産運用会社ヴァン・エック・グローバルの最高投資責任者は今月、中国がインドに続き金準備を増やす国になる可能性があると述べている。

新興国の金準備については8月に一度触れた事があったが、中国の金準備は先に書いたように1,054トン、上記の米投資会社だけでなく中国商務省の機関紙「国債商報」上でも中国は金準備を大幅に拡大し、いずれ米国と同水準まで引き上げるべきとの見方を示している。

コストが1オンス約1,300ドルとして実行した場合、中国は2兆6,500億ドルに上る外貨準備の10%を費やすだけで現在の米国と同水準の金準備を構築できるというが、中国はこの金準備を引き上げる事でドル下落による衝撃を抑え、人民元の国際通貨たる地位を固める狙いもあるとの指摘も一部ある。国内のインフレが懸念される中、ますます同国の動向がキーとなってこようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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