56ページ目   商品先物

もう一つの世界指標

さて、6月の中国の貿易収支は輸出が予想以上の伸びを示した為に、5月と市場予想を共に上回る黒字となりその黒字額は200億ドル、エコノミスト予想に反して9ヶ月ぶりの高水準となった模様である。

ところで中国がこの輸出に高い関税を掛けている物の一つにコークスがあるが、先週木曜の日経紙一面には中国の大連商品取引所がこのコークスの先物取引を中国証券監督管理委員会に申請しており、承認を得られ次第年内にも上場する方針と載っていた。

中国の商品取引所は海外からの資金流入制限から自由に取引出来ない側面があり、例えば非鉄市場などにおいてLMEなどのような「世界指標」にはなり得ないと言われているものの、非鉄を上場している上海先物取引所などは09年の売買高が世界一となり、既に本家のLMEにも影響を与え始めた旨も報道されている。

日本も原材料の大部分を輸入に依存する体質だがこれらの価格契約のやり方も変遷、資源大手など価格改定のタームが短くなってきているが、今後市場連動型への移行が趨勢となってゆく中、価格ヘッジの場を先物市場などで整備する必要性は大きいのだがそもそも足元が振るわない。大連商品取引所はさしずめ日本の東穀取?にあたるが両者の明暗は一目瞭然、なんとも複雑な思いである。


地盤沈下の足音

本日の日経紙には韓国政府が市場整備による商品取引の活性化を通じ資産運用など国内の金融ビジネスを発展させることを意識して、15年の商品専門の取引所設立を視野に、対象商品を段階的に広げてゆく旨の記事を見掛けた。

この構想としては、先ず12年1月に韓国取引所(KRX)傘下に金の現物市場を開設、取引実績を積み上げながら市場認知度を高め14年をメドに農産物や原油、石油などへと対象を拡大してゆくという。

ところでアジアでは先週にシンガポールも開設準備中の同国マーカンタイル取引所(SMX)が原油相場の国際指標WTIなど3品目の取引を8月から開始する旨も出ていたが、WTIと北海ブレントがアジアの取引所に上場されるのは初めてのことである。また、4月中旬には既存のSICOMにてロブスタコーヒーの先物が上場されているが、ロブスタといえば東穀で上場されているそれはほとんどM・Mで既にその意味を為していない。

斯様にアジア圏近隣では着々と新規モノの構想が進行しているが、対照的に勢いをすっかり失っている国内商品取引所がいやでも懸念される。足元では原燃料の大部分を輸入に依存するその体質から価格ヘッジの場を整備するのが急務といわれてはいるが、逆に地盤沈下の足音がヒタヒタと迫っているのが実情である。


縦割り行政崩壊期待

さて、今週一番気になった件といえば15付けの日経紙一面にも載っていた「総合取引所、13年までに」という政府の創設方針が固まった旨の記事だろうか。ホールディングス形式にし経営統合する案などを軸に検討する模様で、今年度中に具体的制度設計に着手するという。

再三論議されてきた商品取引所再編も焦眉の急で、折しも直近では中部大阪がTOCOMに市場移管の方向となっている。本命?より先にココがきたかという感じであるが、残る向きも結論を出すのは時間の問題だろう。

しかし、日経紙などでも先月だったか「正念場に立つ商品取引所」として厳しい環境の旨載っていたが、TOCOMと並んで載っていた東穀取などはやはり比較するにつけトップの感覚が違う。この総合取引所構想にしてもTOCOM社長は他との一体化を含む形態に拘らず議論に前向きな姿勢を見せる一方で、東穀取社長は「巨大な取引所になるのはいかがなものか、複数の取引所が競い合うほうがいい。」とコメントしている。

他にも一貫して売買高減少の原因を不招請勧誘禁止等規制強化に尽きるとするなど、一頃の一部取引員経営者と思想が重なる。数年前に「どうも農水系というのは取引所含めた諸々までいろいろな温床になっている感」と書いた記憶があるが、ココも中部大阪以上の迷走で悪しき官僚意識が足枷になって体質転換の遅れは否めない。

何れにせよ今後政務三役で議論が進められようが、漸く縦割り行政の悪しき構造が解消する時期が近づくと共に、様々な懸案解消に期待がかかる。


新値決め

本日のTOCOMでは各上場銘柄が一様に高く石油製品などもこの範疇であったが、これに関しては期近が他限月比で上げ幅を縮小していた。対スポットで裁定が利いていたもののクラックの拡大から割安感も薄れてきたことでリバランスなどあった模様か。

さて、このスポットといえば今月からJXグループなど新しい値決め方式がスタートしている。以前に当欄では同社傘下の新日本石油など製品の卸価格をスポットと共に先物へと連動させる市場連動制を導入の旨をコメントしたことがあったが、今月から先物は外されこのスポット価格に一本化されている。

結局のところベーシスの度重なる乖離やそうなった場合の鞘寄せが想像していたよりも緩慢であった部分が大きかったのか、市況が乱高下するなかマージン確保に苦労した経緯のある数社は、思うように転嫁出来なかった部分を踏まえ最低水準を高く設定してきている。余談だが本日も全面高の株式市場にあっても、これらJXやコスモ石などはマイナス圏の引けである。

ところでこうした元売りの一部要請もあって、再び先月には軽油の先物が復活した経緯があったワケだが、既にその翌月には大手筋が市場連動制でも先物からスポット一本化など先物は梯子を外された格好。もっともその軽油も本日の日中取引での出来高はわずかに期近で2枚にとどまり体をなしていないのが現状、先ずこの辺のリクイディティーを確保しないことには進展のしようもないだろう。


比価論

さて、今週は金がまたも史上最高値を塗りかえた。南欧危機がハンガリーに波及するとの懸念が広がった事がトリガーになって、ここへきてまた同コモディティーに資金が集まった動きという感じか。

一方で最高値更新したこの日のNY DOWは前場続落であったが、ここ急落した反動もあって123.49ドル高で終えた。さて、NY DOWといえばこれを金で除した「ダウ・金倍率」なる指標について先月半ばに日経紙が取り上げていたことがあった。この倍率は30〜40年の波で動くのが特徴で、資本の脆弱化を示し現状からの倍率反転は容易でないという。

ところで業界では昔から、この金とPGM系の比価や銀などメタル系同士の比価を以ってして割安やら割高やらと測ったりする光景があったものだが、一コモディティーから金融商品の色彩が急激に濃くなってきた近年では、こうして株式や通貨などとのレシオの方が彼方此方で多用されるようになってきた。

コモディティーというカテゴリーで金はよく一括りにされ、外貨準備として買われる事のないPGMほか、原油などとも同じステージで比較されるが、国籍が無い通貨の顔も持っており、寧ろ今後はその性質がますます金融色を帯びるのは自然な成り行きだろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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