62ページ目   商品先物

バブル創造過程の体質転換?

さて、今週一番気になったニュースといえばFUTURES PRESSでも既報の通り、東証とTOCOMが二酸化炭素の排出量取引市場の設立を目指し、来年春にも共同出資会社を設立する方針を固めたという件か。

民主党のマニフェストも追い風になってこの排出量取引でアジアにおける中心市場の地位を確立したいとの意図だが、当欄でも夏に投信を例に「環境バブル」としたようにこれが政策なら、一連の流れというか順序からはこれは間違いなく避けて通れない道か。

当然バブル醸造の過程として先ず市場創設だが、そこはデリバティブの存在が不可欠なのはいうまでもない。そうした意味合いにおいて一応のリスペクトなのか、TOCOMさんも共同出資でという格好になったのだろうがさて何処まで握れるのか。

しかしこの取引、EUが先行しているが実態の無いものに如何ほど透明度を持って来れるかだが、逆にそれが無いものほどバブルには好都合か。日本ではカーボンオフセットなどというのがようやく聞き慣れてきたものの、こうした点踏まえて内輪で盛り上がっているうちに外から包囲網がしっかり出来上がっていた等というのもあり得ない話ではない。

その辺はともかくTOCOMに話は戻るが、政策的なバブル創造ならたとえお零れでも可也おいしいビジネスになるのは想像に難くないが上手くそれに与れるのか、ひょっとしたら一般商品脱却を視野に入れたトンデモない体質転換を秘めているのかもしれないが現段階ではちょっと飛躍し過ぎな発想か。


中部金の上場

業界ではやっとというか先週で試験上場期限満了となった中部大阪商品取引所の鉄スクラップ先物取引が停止となった一方で、本日からTOCOMではマーケットメーカー制度がスタートする運びになったが、ディスクロが相変わらず曖昧ではたして一般的なM・Mをそのままイメージしてよいものかどうかこの辺はもう少し見てみたい気もする。

さて、その鉄スクラップが消える一方で新しく出て来るモノありで、本日からその中部大阪商品取引所では金の先物取引がスタートの運びとなった。受託会員十数社で初値は3,059円となったが、以前にも取り上げたように上場タイミングとしては面白いもののはたして金市場創設をもう一つ設けるその意味は理解に苦しむところ。

まあ、そうした個人的な意見は兎も角、東穀がいまさら全て板寄に復活させる中この金の板寄も意外に人気が出るのではないかという一部の意見もあるが、板寄全体といっても小さい池なのは明白で、世界的不況から金の投資に注目した投資家や当業者のヘッジ取引含めて新たな参加者として狙うというのは些か無理がある感もある。

それにしてもここ数年首位以下の方向性を見るにつけ投資家への選択肢提供というより、どうも起死回生というか取引所救済へ傾斜しているような印象は否めない。今回の上場も一頃言われた「TOCOMのパイを奪うという単純発想」との意見を覆せるかどうかその推移を見てみたいところである。


嫌われ者と人気者

ついこの間取り上げたばかりの金であるが、昨晩はザラバ1,045ドルまで上昇し引けベースでも1,039.70ドルと史上最高値を更新、円高を撥ね退けTOCOMでも元気印が目立っていた。

切っ掛けとなったのはなんでも英インディペンデント紙がアラブ湾岸諸国が原油取引でのドル利用を停止し、人民元などで構成するバスケット建て取引に移行する案を日本、中国、フランス、ロシアと秘密裏に協議していると報道した事を発端にドルが主軸通貨に対して下落、ドルの信認を問う意味においても一斉に資金が逃げた格好となったか。

昨日は株式の希薄化を書いたが、さしずめこの金は通貨価値の希薄化へ対する不安の裏返しか。もともと各国首脳人が金融緩和の継続や財政拡大の合意で一致を謳ってなってなお上昇の勢いを増す様は、信認そのものに疑問府が付いていると見られても仕方ないだろう。

ところで上記の原油取引の話、けっこうこの手はここ数年度々出来ている件ではあるがはたして今回は実現するのであろうか?ここ下落傾向が定着しているドルは映画においても訳有り?のカネを決済する場面で「ドル以外で」などのセリフも目立ち今や嫌われ者になってしまったが、そうそう二年前だったかジゼル・ブンチェンもP&Gのギャラをドルではなくユーロで要求なんていう話もあったなとこれまた思い出された。


糸モノ絶滅

さて、本日付けで東京穀物商品取引所が生糸先物を休止し次期理事会を経て上場廃止の運びとなった。これでかつて戦後復興期にかけて商品市場の牽引役であった生糸先物はその115年の歴史に幕を下ろし、糸へんが先物市場から全て無くなる事となったわけだ。

しかしこの商品、当欄では二年前に野菜先物が上場廃止論議となった際に、「〜今後は自ずと生糸始め他商品がクローズアップされて来よう」とコメントしていたが、やはりというかダラダラと無駄に数年間放置した挙句に今回の措置となった。取引所側は「産業インフラとしての先物取引の社会的使命は終えた」とのコメントをしているが、いったい何を基準に今年までこんな決断を延ばしてきたのか理解に苦しむところ。

ところでこの東穀取、直近では一度触れた通り関西商取との連携策を探る共同研究会が一昨日開かれ、関取臨時総会では一部に懸念されていた解散動議は提出されなかった模様だが、共同研究会の報告書にあるような上場商品のすみわけやら大証との関係強化などその実現性は如何ほどだろうか?

今年六月の当欄「後ろ向きなEXIT」では「〜横浜商取の道を辿るハメになるか去就が注目される。」と書いたが、はて今回はこんな冷めた見方が覆されるかどうかこれまた今後を注目していたい。


規則ですから

今日の日経紙、金融を問うでの「顧客優先は本当か」での一文で目に付いたのは、メガバンクで投信の説明に時間が掛かるから指定の時間までに来てくれとか、金融庁の指示だからと記入欄がズラリと並ぶ用紙に辟易したりの様子が載っていた部分。

これで思い出したのが今週月曜日の同紙「春秋」にも、最近はコンプライアンス(法令順守)対策などで社内規則などが増える一方だ。官僚主義がはびこる恐れがある。〜規則をたくさん作って楽ができるのは上の者です。規則通りやれと言っていれば、考えずに済みますから。と書いてあった件。

これら事例は銀行やJALなどが出ていたが、すっかり元気がなくなってしまった商品業界も委託者保護の掛け声のもと、こうしたコンプラの部門が営業体のある一定の組成された規律の中に必要以上に介入というか幅をきかせてその体質が極端に変化してしまったという点において同じではないかとも思う此の頃である。

「春秋」の末尾にもあったように、上から目線の社内官僚がのさばる。お役所的に会社にしないように経営者もぼんやりしていられない。とあったが個別にはトップからしてもうそんなモチベーションも残っていないというところも増えつつあるのが現状でまあ残念なかぎりである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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