68ページ目   商品先物

お題目に反する空洞化

商品取引所連絡会が纏めたところによると先月中に取引された国内石油先物市場の出来高は、TOCOMと中部大阪の合計で前年同期比59%減となった模様である。

これに呼応?するかのように週末の日経紙商品面にて目に留まったのは、デリバリー常連組であった日本ユニコムが採算の効率化から今秋をメドに石油会社からの受託業務から撤退する旨の記事であった。

この石油ではないが昨年には老舗の三幸食品や三忠が東穀取から受託業務廃止や会員脱退の動きがありこちらも常連組一角の撤退が記憶に新しいが、撤退していない常連組においても岡地のように行政処分から業務停止の憂き目に遭うなど委託先法人の戸惑いも想像に難くない。

取引所やお上が起死回生策として呪文のように実需家の誘致を唱え続けている間にも、当の現場は現場で経営に活路を見出しこうした部分を見切りに入っているという業界の縮図が何とも解り易く出ている構図だが、老舗牽引で軸足を移行させる動きがますます加速してゆく感がある。


22年遅れ?のSPAN

さて、週末土曜日の日経紙で目に留まったのが、商品面にあったJCCHがSAPN証拠金制度の導入等2010年度をメドに証拠金制度を抜本改革する旨の記事であった。

いまだに証拠金は昨年の暴騰時から半値以下にまで崩落している商品がある中においてもボラティリティーリスクの観点とやらで一貫して吊り上った状況を維持しているが、カレンダー始めとして相殺モノはこの分だけ寝かせるカネがそっくり増額してしまっている。

まあ自己においてもおかしな計算と感じる事が多いがそれはこと原商品に限らずオプション等にも言える事で、特にこれは数度にわたる設計変更の度に失敗する予告を当欄で何度も指摘してきた通り、鳴かず飛ばずを嘆く以前にその視点がズレているのに他ならない。

同紙には、新しい証拠金の導入は日本の商品先物改革の最後の切り札などとたいそう大袈裟な書き方をしているが、もう可也前から実際の参加者はスパン証拠金導入をい望んでいたし、またそうした論議が湧いていた事実がありながら当事者は全く耳を貸さなかったのも事実、漸く重い腰を上げたがこれも遅きに失したという事になるや否や。


境界線

本日からシカゴ商品取引所は、大量の投機マネーの流出入が先物価格を乱高下させ実需家に悪影響を与えているとして、年金基金などが農産物先物などに投資する際の持ち高を制限する模様である。

直近ではWTIが対ブレントの鞘や期近の動きを以ってその指標性が物議を醸し出しているが、この辺に関しては先週だったかCFTCの委員の一人がワシントンの講演にて昨年の商品相場の高騰原因には新たに参入した投機筋が大きな役割を果たしたと明言、相場操縦などの取り締まりを強化するにはCFTCが司法省と同様の犯罪起訴権限を持つべきだとの考えを明らかにしている。

さて国内、取引所も主務省もプロ化云々とかまびすしいが一般投機家主戦からファンドやディーラーへとその占有模様が変り相応のリクイディティーを創造したものの、崩壊しその受け皿さえ潰してしまった感ありだが、仮に先行き主軸をそうした大口系に依存してゆく事になった場合はこれら規制も日本が得意な右へ倣えで導入促進という運びになるのだろうか?

事が起きてから対処するパターンが殆どであるが、暴れるだけ暴れて味が無くなったら捨てる構図は未成熟市場に顕著で当事者にはワンチャンスでも旨み在り、先手の打ち方にも手腕が問われよう。


繋がらない各論

今週は週初に日本商品先物振興協会が制度政策委員会にて市場振興策と会員の経営活性化、市場の活性化などを骨子とする09年度の事業計画案をまとめた。

まあ、関係各所で各論ではいろいろと使い古した案が出てはいる模様であるが、例えば活性化策では市場参加者の取引費用低減策が示される一方ではTOCOMなど定率会費の引き上げをチラつかせるなど、依然として各所内での論議羅列の先にその脈絡を見出せないのは構造的ないつものパターン。

取引所といえばこの祭日前にも東穀取が一年間取引が無い生糸先物の上場休止を検討とあったがこの期に及んで「休止」とのたまうあたりも或る意味凄いし、また同日再生鉄も納会を迎えたがキャンペーンも空しく何時も通りの参加者不在納会とこちらも何とも荒涼とした感ありと、最近ではこの衰退論も何が最初にありきという順番もどうとでも取れるような状況となっている。

さて戻って上記の商品先物振興協会にしてもこの辺の核心については既に先週カウボーイが触れている通りであるが、この靄が掛かったようなモラトリアムの中、年明け早々に書いたように業界のみで自由裁量が利く時間もさてどれほど残されているのだろうか。


牛歩

FUTURES PRESSでも既報の通りだが商品取引所連絡会が発表した1月の商品先物出来高は前月比9.1%減の306万731枚と依然として冴えなかったが、今月に入って日本商品先物振興協会は東工・東穀・中部大阪・関西の4商品取引所に対し合併や解散・統合などを促すために「再編に関する提言」を示したと発表している。

そうこうしている中でも本日の時事にてカネツ商事は該当上場商品が人気離散傾向を強める状況にあり、中部大阪商品取引所と関西商品取引所の受託業務を廃止する旨の記事を見掛けたが、まあ最後に一括して纏めるので途中の川下の紆余曲折は黙認されているのかどうか、業界世論も背景に気運がマッチしているのにこれほど時間を費やしているのも珍しい。

結局は最終的な目的がまだ不透明という事の裏返しなのだろうが、証券の方でも中部はセントレックスが上場している五分の一が上場廃止基準に抵触する等こうした部分にも再編のネタあり。

そういえばお隣韓国では、証券や先物を手掛ける企業の合併や再編を加速し総合金融投資会社の育成を狙い、証券・先物など業種間の垣根を取り払う「資本市場統合論」が4日に施行される旨が2日付け日経紙にて載っていた。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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