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ポスト金

本日の日経紙には「原油ETF ここが大切」と題してこの原油を始めとしたETFについての解説が出ていた。この原油ETFだが本日は代表的な「WTI原油価格連動型上場投信」などが暴落し年初来安値を更新しているが、「原油価格が高値圏で推移するなかで、原油価格に連動するETFが注目を集めている」?と冒頭からワケの解らない日経紙の見出しは理解に苦しむ。

それはともかくとして、今やETFで旬なのはやはり「VIX」であろうか?直近まで逃避資金の拠り所として「金」も株式が急落するたびに買われてきたものだが、その金も100ドルを越す暴落でさすがに相当出遅れながらこうした心理系へ最後は矛先が向かってきた感もある。上記の原油ETFが年初来安値更新するのとは対照的にこちらは年初来高値更新、既にここ2ヶ月の間に2倍以上の暴騰と破竹の勢いである。

このVIXのETF、当欄では上場前の昨年11月に書いたことがあったが半信半疑で喰い付きが悪かったのか、つい最近まではオプション市場なんぞと比較するに今ひとつ反応が鈍かったものだが、考えてみればタイムディケイを気にしなが値があってないようなプレミアムを拾うより、枯れている底がほぼ一定且つ期限を気にせずに済むこんな商品の方こそ万人向きと思う。

また先にETNについても触れたが、先週の連休の狭間には「VIX短期先物指数連動」モノも東証に上場の運びとなっている。株式市場でセリングクライマックスを待って買いに出ようとしている向きは少なくないが、その決定的材料もまだ起こらずまた売り規制やら日銀の判で押したような機械的ETF買いに震災時のような直下型暴落はなかなか起きない。そんなモヤモヤ感があるうちは折に触れこの手に活路を見出す動きが続くか。


金融売り再び

週明けは米市場がレイバーデーにて休場となる中、欧州株式は急落となった。これを映して日経平均も2年4ヶ月ぶりの安値に沈んだが、当の欧州ではRBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ)の10%安、バークレイズの5.7%、ドイツ銀行の5.3%安など主力銀行の大幅安が下げを先導した。

日本でもこの波が波及しメガバンクが総崩れ、バスケット取引では100億円規模で金融株中心に欧州ヘッジファンドからの売りが観測されている。ギリシャ支援を巡る先行き不透明感から同国債の保有懸念、また住宅ローン担保証券をめぐり米当局が世界17の銀行を提訴したこともあり、またぞろ金融系に暗雲がたちこめる展開になりつつある。

アップティックやネイキッド等に加重的なルールが延長されている日本でも斯様に再度ショートの攻勢をかけられているが、やはり懸念されるのは先の空売り規制の後遺症だろうか。既にあの米ゴールドマン・サックスは資本不足からCDSを通じ欧州金融機関に弱気のスタンスを取るべきとの姿勢をヘッジファンド等の顧客宛リポートで推奨している。

目先では押さえ込んでも、この「ドラッグ」は流動性低下始めとした様々な副作用が大きいのはいうまでもなく、まだまだこの辺は先行き目が離せない。


グローバル化の波

さて、大証が先週に発表した8月のデリバティブ売買高は前年同期比で11.9%増の2262万枚であったが、これは大震災直後の今年3月の3,047万枚、そしてリーマン・ショック後の2008年10月の2,295万枚に継いで月間では過去3番目の多さだったという。

前回はその前の7月が低水準であったと発表されていたが、目立つのは7/19から翌日の午前3時まで延長された夜間取引の存在か。初月の7月は一日平均で日中取引に対する比率が平均で28.4%であったが、翌8月はこれが4割近くに達し夜間取引の売買高は過去最高を記録している。

この8月にはそれこそトリプルAの格下げやら欧州財政不安やら次から次へとマーケットを揺さぶる材料には事欠かず、まさに夜間延長の稼動時期としては絶妙なタイミングであったとも言えるが、正直ここまで夜間が活性化するとは予想外?という感じもした。しかしながら他の夜間部門も東京金融取引所のくりっく株365が対日中の比率が約5割に膨らんでおり、PTSも夜間が増加傾向と垣根を越え確実に拡大してきているのは事実。

先に書いたETNのように取引形態の多様化と併せ、金融取引のグローバル化はジワジワと個人レベルまで浸透しつつある表れか。ところで夜間取引といえば一足先に昨年からスタートしているTOCOMの夜間取引はどんな状況になっているのだろうか?


ファイナンス銘柄の錬金師

さて、今週はまたぞろファイナンスの動きが活発化してきているのが目立った。先月も新興市場の主力モノではそういった動きがあったが、今週は先ず日本冶金工業が42年ぶりに最大55億円強を調達、これによって新株の追加発行分まで入れると発行済み株式数は25%増える。また翌日には日本カーバイド工業と太平洋セメントが21年ぶりに公募増資を発表、これまた発行済み株式数は前者が最大で22.3%、後者が最大で30%それぞれ増えることとなる。

これら当然の如く株価は即座に反応することになったが、翌日は日本冶金工業は一時東証一部値下がり率トップの急落、日本カーバイド工業は同東証一部値下がり率第4位、太平洋セメントは東証一部値下がり率第2位と何れも大きく値を崩している。震災復旧の用や新規事業の用やらで已む無しの資金需要は理解出来るが、株主は値下がりで大きく損失の弊害を受けることとなる。

この辺に絡んではやはり外資勢中心としたプロ連中と個人の限られた情報力の違いが改めて浮き彫りになる。直近のものでも復配発表やら震災復興需要というテーマを囃して個人が食い付いてきた企業など並行して有力外資勢のショートが異様に急増しておりしかもロングも上手く咬ませているから巷のポジショントークでも材料を良い方へと傾斜させ易い素地まで出来上がってしまう。

ファイナンスに絡んではいろいろ新規制も施行される予定ではあるが、引き受け等の利害関係が常に背景に控える為に、この辺の不公平さは残念だがそう容易には改善しないだろうか。


変化する決済

さて、米株式を映して週明けも堅調持続の日経平均であったが信用残が拗れているものはやはり今ひとつ重い。ところで信用といえば週末の各紙には松井証券が10月からマル信において取引成立の翌日以降でないと同じ担保を使えない現状を改め、1日に何度も株を売買できるようにするサービスを始めると発表している。現物なら兎も角もマル信というところの目新しさが光る。

現行では約定確定しても実際に受け渡しまでのタイムラグがある為に、約定日の翌日以降でないと担保を新たな取引に使えない仕組みになっているが、大証のシステムを活用し約定と決済を同時完了する仕組みを構築したという。どういったカラクリか気になったが、店内発注を立会外のJ-NETの当日取引として取次ぐというものらしい。

同取引での注文は株価に全く影響を及ぼさないということで見せ玉等の相場操縦も利かないメリットもあるとの事だが、マル信は個人の株売買の約6割を占めるというだけに当初対象銘柄は主要50銘柄ながらどの程度の売買増効果があるか注目されるところ。

しかし、一昔前では街金などが挙って即金サービスや担保貸しなどやっていたものだが、こんな仕様も今では当たり前になってきたというのはやはり時代の流れを感じるもの。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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