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証券業界もまた

先週末は商品やFXなど業界系の決算に絡んだ株価模様など少し触れたが、同じ金融系では証券株もこのところ低迷が続いている。先週に大手では大和が既にあの震災ショック時の安値を下回り、みずほ証券、ネット系では松井やマネックスG、そしてひまわりHDなど軒並み年初来安値を更新、岩井コスモHDに至っては上場来安値を更新してしまっている。

この背景には本日の今年最低水準の出来高にみられる通りの市場低調が窺え、5/25付け日経紙「まちかど」でも10,000円コール(6月物)のプレミアムが東日本大震災以降で最安値を付け1万円大台回復期待が萎んでいる旨も書いてあった。しかし、タイムディケイのあるオプションはともかくもそうした性質を持たない株式において、震災ショックで急落してからのV字型急反発した値幅をダラダラとした下げで帳消しにしてしまった最も顕著なポストは証券だろうか。

証券ポストといえば取引所も然り、大証もまた先週に震災ショック時の安値をズルズルと割り込み年初来安値を更新している。震災直後に市場を閉鎖しなかったのを賞賛している向きもいるが果たしてそうなのだろうか?この辺はオプション絡みでネット証券共々まだまだ禍根を残すだろう。

それは兎も角、先週末は上記の年初来安値更新組からつい最近あのトレードステーション社を買収したマネックスグループが、発行済み株式数の6.25%に当たる20万株の自社株買いを昼休みに発表し後場から急伸していたが、この業界もまた東証上場やM&Aなどに絡んで今後はさまざまな思惑がジワジワと台頭してこようか。


.COMバブル?

さて、先週はスイスの商品取引大手「グレンコア」がロンドン市場に上場したが、もう一つかねてからの話題株「リンクトイン」もはれてニューヨーク証券取引所に上場となった。このリンクトイン、上場初日に今ひとつ肩透かしであったグレンコアと違って公開価格45ドルに対して終値はその公開価格の2倍以上の94.25ドルと大化けしたが、ザラバの高値では実に120ドル超まで急騰する場面もあった。

一体、売上高の何倍まで時価総額を買うのだろうという点で、グーグルのそれが約6倍なに対して早くもここは数十倍水準。こうなるとかつての国内ネットバブル当時を彷彿させるが、それこそあの当時は経営側も時価総額こそ全てとの思いで株価に一喜一憂していたのを思い出す。

そんなわけでここが口火を切ってはたしてまたネットバブルの再来となるのだろうか? このIPO熱に関して米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は資産バブルの懸念を招くものではないとの認識を示していたが、この後にはリンクトインの6倍のメンバーを抱えるあのフェイスブックやグルーポンなどの有力どころが軒並み予備軍として控えている。

既にこうした大手の前にIPOを急ごうとする中小も見られるというが、こうした予備軍の関連株群は早くも「KDDI」など日本企業にまで先回りの物色が広がっている。QE2終了で警戒感が漂っている市場だけに、この辺が絡んで今後の市場にどう影響してくるのかその動向が注目されるところ。


ヨウ素と株価の半減期

さて今週の日経平均は膠着感の強い展開であったが、そんな中でもボラタイルな動きだったのがやはり東電。一服していた株式の方は賠償スキームやら今更ながらに出て来た福島原発の炉心溶解を巡ってまたにわかに動意付いており、今やディフェンシブ的な優等生からすっかり投機株に変貌してしまったなと。

レーティングの世界でも、みずほ証券のように「アウトパフォーム」据え置きで目標価格を900円!に設定するという特異なところ以外は何処も揃ってそのレーティング対象から外してしまっている。こうしてバリュエーション評価が不可能となった一方で今のところ一応は株式上場を維持し社債も保護ということになり、JALのように紙屑にならない妙な安心感?からこの高いリクイディティーを背景に商いが集まり易いか。

今のところは株主責任は免れたとはいえ今後株価は市場が然るべき値段に誘導するだろが、社債など先に一度書いた事があるが新規で引き合いなどあるのだろうか?この賠償スキームで通常であれば格下げ圧力が緩和されるはずだが、現状そうした動きとなっていなのはやはりその信憑性の問題だろうか。

ところで株価といえば事故当初は約一週間で株価が半値水準に暴落し、株価の半減期も放射性ヨウ素とほぼ同じなどと揶揄されたものだったが半減といえばもう一つ、原発事故の責任を踏まえ役員報酬も半減努力とか議論されているが、それでも3,600万円とか。こちらは相場じゃないが半値八掛二割引にしてもまだまだ高いだろう。


既存概念の脆さ

株式市場では本日も東電株が大幅続落、その性格上金融機関の保有も多く事実上の筆頭株主であった第一生命などは株価下落に因る評価損が甚大となった。また此処に限らず既報の通りで他の金融機関も今回の急落で巨額の減損処理を余儀なくされている。

ところでこんな公益株だけに投信系も挙って組み入れていたワケだが、判明しているだけでとっとと全株外したところは「住信日本株SRIファンド」、「住信アセット(グッドカンパニー)」、「住信アセット(すみしんDCグッドカンパニー)」、「STAM SRI・ジャパン・オープン」、「生物多様性企業応援ファンド(生きものがたり)」、「ニッセイ日本勝ち組ファンド」等々。

ブラックロックや日興AMもかなりヤラれた模様だが、その性格からやはりアクティブ系は見切り、一方でパッシブ系などはトラッキングエラーの観点からもなかなか外しきれないかと。しかしこうして並べて見ると「SRI」、「生物多様性企業」、「勝ち組」とか其処へ東電があると恥ずかしくなるようなネーミングばかりだが、逆にそこから震災前の優等生ぶりが窺えたというもの。

名門ブランドの優等生も既にJALを堺に投資対象足りうるのかという観点ではますます常識が通用しなくなってきている。


時間を買う選択

さて、週初の日経紙にはクーリエ・ジャポンの全面広告でマネックス証券社長の企業トップインタビューが出ていたが、このマネックス証券といえば既に既報の通り先週にはマネックスグループが米ナスダック市場上場のオンライン証券「トレードステーション社」を約340億円でTOBと発表されている。

トレステといえば以前のオメガ時代から一寸ハマった向きならディーラーから一般まで誰でも一度は手にしたことがあるツールだと思うが、直近でも小粒のM&Aをしてきたマネックスも今回は比較的大きな買い物をしたなという印象。これにより今後どういった環境提供が展開されるのかが焦点となるか。

しかし、こうした証券に限らず昨今金融界では規制の嵐。当欄では大発会のコメントで「今年もまたM&AやMBO等で商機ありかという流れが個別で続くか。」としたが規制の影にも商機有りといわれる昨今、マネックスのように時間をカネで買うM&A機運が盛り上がってきてもなんらおかしくはない。

例えば業界には株主還元策の一環で自社株買いを発表している向きも少なくはないが、其の先のアクションの一つとして厳しい業界環境からの再編過程で出て来る企業間のWIN-WINの絵図がマッチした場合、これを使う場面が今後出てくるのもまた自然な成り行きともいえるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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