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新陳代謝格差

さて、昨日はトヨタ自動車が半導体不足を背景に2022年3月期の世界生産台数が計画の900万台を下回る見通しとの発表がなされていたが、もう一つトヨタ自動車といえばその株価はこの日まで5営業日連続で上場来高値を更新、その時価総額が初めて40兆円を上回った旨も市場の大きな話題になっていた。

先週取り上げた日経紙の経営者が占うでも挙って皆が推していたこのトヨタ自動車だが40兆円を超す時価総額といえば抽選方式を経て上場後に沸いたNTTや2000年のNTTドコモなどが思い出されるものの、これでも同じ業界の米テスラと比較するに約3分の1、更にアップルに至っては約8分の1と海外勢とは大きな開きがある。

しかしこのアップルなど数カ月でトヨタ自動車の時価総額分が増殖する急増ぶり、でその比較対象ももはや個別企業で敵う者は居なくなりドイツ証取超えとか東証一部の半分とかいう次元である。さながら東京23区の地価合計額がアメリカ全土の地価合計額と並んだバブル期の懐かしいエピソードさえ彷彿させるが、巨大IT勢に斯様に過剰流動性が集中するさまはかつてのバブルとはまた異質の様相を呈する。


それぞれの決着

さて、先週は最高裁が経営統合を認める司法判断を下した事で関西スーパーマーケットがエイチ・ツー・オー・リテイリング傘下食品スーパーのイズミヤ、阪急オアシスと経営統合し、またSBIホールディングスもTOBの成立に伴い新生銀行を連結子会社にする事となり共に情勢変化の度に株価が乱高下した両者のTOB合戦は幕を閉じた。

はれて当初の予定通りの構図となった新生銀行のTOB劇だが、9月にこれについて触れた時に書いたようにココは公的資金の返済が最大の焦点となってくる。バトンタッチとなった今後が注目されるが、肝心の株価は引けでTOB価格を上回ったのは先週の2日間のみで本日の引けも1800円と心許ないだけに今後の浮揚策に関心が向かうところ。

一方で当初の予定通りにはいかなかったオーケー、今後は保有する関西スーパーマーケットの株を全株売却と報じられているものの会社法に則り買い取り請求権行使という流れになるか。こちらの本日の終値は1034円とTOBを囃した9月の高値からはや半値以下に沈んでいるが、オーケー側の想定としてTOB提示価格が目安になって来る筈だがこちらの業界も再編機運は燻り続けそうだ。


駆け込みIPO?

本日はマザーズに3銘柄が新規上場となったが、JDSCとHYUGA PRIMARY CAREの両社がストップ高で引けた一方でグローバルセキュリティエキスパートはストップ安水準で引けるなど明暗分かれた。これらを始め今週は1週間で24社が上場となる異例の上場ラッシュとなり、特に24日(金)は実に1日で7社が同時上場となるなどそのピークを迎える。

これだけのラッシュとなると資金分散の関係等でその影響がどうしても気になるところだが、既に節目の1000を下回っていたマザーズ指数が本日の続落で2020年5月28日以来およそ1年7か月ぶりの安値に沈む中で、先週上場した3社の株価も上場後はどれも苦戦を強いられており外部環境も各国中銀の緩和姿勢後退などから不安が残る。

斯様な上場ラッシュの背景としては先ず去年のコロナ禍で予定していた向きの上場延期した分が上乗せとなっている事や、来年に控える東証の市場再編が影響しているという指摘も一部にある。また投資しているVC(ベンチャーキャピタル)が早期のイグジットを求める傾向にあることを指摘する向きもある。

これらの事が相俟って斯様な駆け込み?上場ラッシュとなった部分もあり、その影響からどうしても小粒感が拭えないモノも出て来る。先に上場した米リビアン・オートモーティブは上場した途端にその時価総額は10兆円超えと同社1社で東証マザーズ全体の価値にほぼ匹敵する規模という一コマを見ても日米の違いが浮き彫りになるが、以前に旧態依然としている日本企業の目利き力の課題が改めて問われると書いた事がある通り応分の資金の出し手が望まれるところ。


ベンチャー投資活性化期待

先週の日経紙金融経済面に「米未公開株 個人に門戸」と題し、米フィンテック企業が一般の個人投資家でもブロックチェーンを活用したデジタル証券を売買する仕組みを可能にし未公開企業に投資する市場が拡大している旨の記事があったが、日本でも個人投資家が未公開株をオンラインで売買できる初の市場がちょうど先週に開設されている。

株式型クラウドファンディングを手掛ける日本クラウドキャピタルのファンディーノマーケットがそれで、個人投資家が何時でもネット上で売買注文が出来てIPOや買収以外にも投資リターンを得られる機会を作る事が可能となるが、未公開企業取引といえばかつてグリーンシート市場なるものがあったものの企業の利用が低迷し数年前に廃止となった経緯がある。

その後継制度として日本証券業協会が「株式コミュニティ制度」を始めたワケだが今回はこれを利用する形になり、同制度もこれまで取引が活発化していたとは言い難かっただけにこの開設で新たな流れが出来るか否か注目。リスクマネーの供給量が高まればベンチャー企業投資の活性化も促されるというもので、日本のベンチャー企業にとって斯様に様々な資金調達の手段が出て来たのは朗報だろうか。


再編と課題

さて、東京証券取引所による市場区分の再編を前に各社が自らの市場を選択して申請する期限が今月末に迫っているが、日経が実施したアンケートでは現在の一部に上場する約86%がプライム市場を希望という結果になっている模様で、この最上位のプライム市場を目指す向きは各社共にその基準を満たす為に各々いろいろな行動が見てとれる。

例えば現段階東証一部でダントツの配当利回りを誇る明和産業など既存株主に保有株を売却してもらい冒頭の通り2022年3月期の大幅増配を決定、これを受け当然ながらその株価も年初来安値から3倍以上に大化けを果たしその時価総額はプライム上場維持基準の100億円を割り込んでいた当初から同基準をクリヤする水準にまで達した。

他にもギリいけるのでは?という企業が数多プライム市場を選択する意向を示している模様だが、其々に義務付けられているESGへの対応でも情報開示へのノウハウ、マンパワーや予算の確保等々課題は多そうだ。今後強まるであろうこれらに関する情報発信への要請など企業価値に係わって来るだけに各々の舵取りがより重要になってくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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