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自社株買いとROE

先週末の日経紙マーケット面には「自社株買いに選別の目」と題して、5兆円超と過去最高だった前期に続いて今期も同規模になる公算が大きくなる旨が載っていた。昨年のコーポレートガバナンスコードの適用でROEが意識され、自社株買いが急増とその動きがより活発になってきている。

さてこのROEが意識されてという部分であるが、これが重要視されるあまりこれを維持するが為に企業の利益が設備投資やら開発や研究に十分回らないままに自社株買いに振り向けられているケースも最近は多く目にするようになった。

末尾には自社株買いを成功させる要因は何かとし、自社株が大幅な含み益になっているところはROEが安定して2ケタ台の企業が多いとあったが、もともと低ROEのところや上記のケースで自社株買いに勤しむケースでは生産性が低下し低成長の原因になっているのは否めない。効果的な自社株買い機運から市場の篩も一段と選別色が出て来ようか。


売り専第2弾

夏枯れ相場で一進一退の日経平均だが、個別ではなかなか戻りの鈍いモノも散見される。サイバーダインなどもその一つに挙げられるが、先週末の日経紙投資情報面にも取り上げられていた通り、空売り専門の米調査会社シトロン・リサーチが同社株価を割高としたリポートを巡って同社側が分析が非常に浅く、事実誤認を含むとの見解で知的財産の所有状況など疑義について反論している。

この手の件といえば当欄では、グラウカス・リサーチG第一弾と題して今月の4日にそのターゲットとなった伊藤忠商事を取り上げているが、時価総額の大きな東証一部株と違ってこちらは新興のマザーズで時価総額も約九分の一ほどなだけにホルダーも穏やかではないだろうか。

しかしその目標価格も事実上の売り推奨時から85%安であるからなかなかインパクトのある値というか内容である。グラウカス・リサーチのこれ迄の実績も言わずもがなだが、この手の売り専が7月、8月と立て続けに出てきた事で今後も突如としてターゲットにされる企業とその攻防が注目される。


NTトレード

本日の日経平均は夏季休暇入りで市場参加者が少ないなか円高が進んだ事で小反落となったが、ザラバではプラス圏に浮上する場面もあった。この辺はやはり日銀によるETF買い入れ期待が背景となっているワケだが、この件に関して先週末の日経紙には「日銀の買い副作用」と題して株価の歪みにも言及していた。

今月に入ってからはNT倍率の拡大が取り沙汰されるようになっていたものだが、先週末の段階で12.78倍と1999年3月以来の高さとITバブル期以来の高水準にまでなっている。こうした変化に目敏いのは短期筋で、ETF買い入れ倍増決定をテコに日銀トレードともいわれる裁定取引が横行しこれらが更に拡大を助長させているスパイラルに陥っている部分もある。

NT倍率云々より予てより言われてきたものに個々の浮動株に対する日銀の保有比率があるが、大株主にまで発展すればなにより企業統治への影響も無視出来ない。また機械的吸い上げで市場では板が薄くなり当然高寄与度銘柄の一角など高PER現象を創り出す構図となっているが、デフレ脱却の大義名分で何所まで副作用に目を瞑るのか今後もオペが注視されるところ。


グラウカス・リサーチG第一弾

さて、昨日の日経紙投資情報面には「米空売りファンド、会計処理に異議」と題して、空売り専門の投資ファンドである米グラウカス・リサーチ・グループが会計処理に疑問を呈した伊藤忠商事側の反論が書かれていた。

この件に関しては先月11日に当欄で「空売り界の文春?」と題して、この米グラウカス・リサーチ・グループが日本市場に参入する旨を取り上げ、この時数か月前から日本企業株の調査を始め既に時価総額の大きな企業3〜4銘柄を対象に絞ったとしていたが、果たして第一弾として上記の伊藤忠商事に矛先が向けられた模様だ。

ちなみに同社が先月末に公表した調査リポートでは、コロンビア炭鉱に対する出資持分の価値が著しく低下していたにも関わらず不適切な区分変更によって減損損失の認識を意図的に回避し2015年3月期の当期純利益を課題報告したと考え、東芝と同規模の会計スキャンダルを引き起こす可能性があると指摘、投資判断を新規で強い売りとし目標価格を631円としている。

今週は商社ポストも主力どころの決算一巡を経て冴えない株価となっているが、同社はこれが発表された当日の商いが前日の6倍以上にも膨らみ株価は一時10%安の憂き目に遭っていた。冒頭の通り反論声明を出す同社に、日本取引所グループのCEOも取引自体に問題があれば必要に応じて対応を取る考えを示唆する事態となっているが、倫理的な解釈の違いを何所まで主張出来るのかどうかこの行方が気になるところ。


ポケモン狂想曲

さて、もう世界各地でお馴染となっているスマホゲームの「ポケモンGO」の配信が日本でも先週末に始まり、老若男女を問わず道の至る所でスマホを見ながら進んでは立ち止まる人の姿が見られ既に社会現象になり始めている。

株式市場でも12日に当欄で書いたようにこれに先行する格好でポケモノミクスを囃していたが、本命の任天堂は数日で時価総額が約1兆円も変動するボラタイルな展開で、年初来高値を取った19日は売買代金が個別株として初めて7,000億円を超え東証の売買代金の2割以上を占めたというから凄まじい。

また周辺銘柄もこれに負けず劣らずで、関連複合施設運営のサノヤスHDは5日連続ストップ高の離れ業をやってのけ昨日はミツミがストップ高、またポケモンパンを販売している第一パンまで年初来高値を更新し、ちょうど一週間前には日本マクドナルドHDが株価・時価総額共に約15年ぶりの水準にまで回復している。

しかしマックといえば使用期限切れ問題等の不祥事で2015年12月期まで2期連続で連結最終赤字の憂き目に遭っていたが、見栄えは一気に浮上した格好か。当の任天堂もつい先月まで過去の遺物扱いで年初来安値を更新していたものが上記の通りの大化けと、過去の遺物が転じて新たな収益の大きな種になった格好。今回のポケモン相場は過去の遺産を擁しつつ燻っている日本企業への新たな見方を提供するかもしれない可能性を秘めているか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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