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中小型人気

本日の日経平均は米株式が大幅続伸となっていたものの、円安一服を受けた利益確定売りが優勢となり4営業日ぶりに小反落となった。とはいえ値上がりランキングを見てみるとトップ10のうちジャスダックが6銘柄、マザーズが2銘柄、東証一部とETFが1銘柄ずつと中小型株の物色は旺盛である。

この中小型株といえば投信の世界では先月まで10カ月連続で中小型株投信に資金が流入、合計の純資産残高が先月末時点で約1兆円と1年前からほぼ倍増となるなど人気の高さから相次いで新規の申し込みを停止している旨の記事を先週の日経紙で見掛けた。その規模は東証マザーズとジャスダックの合計時価総額の1割弱に匹敵するだけに運用効率を考慮すれば致し方無いだろう。

ところで中小型モノ投信の新規募集停止で思い出すといえばやはり数年前にJPモルガンアセットが売り出した「ザ・ジャパン」か。新規売り出しで早々に信託金上限に到達したことで、その上限を倍にして新規募集を再開したものの僅か1週間で再度の募集停止となるほど人気があった。

組み入れ銘柄がディスクロされていた為に設定後はアクティビストが買い込んだ銘柄よろしく更にチョウチンも付いてそちらでも話題になったものだが、こうした中小型偏重は裏返せば大型系の成長力の乏しさを表しているともいえ過熱の反動とも併せ何所までこうした傾向が続くのか注視しておきたい。


リスク・パリティ

さて、4月小売売上高が前月から増加した事で米国債利回りが2011年以来の高水準に到達、企業収益や景気への悪影響が懸念され昨晩は9営業日ぶりに反落した米株式であったが、それまで昨年9月以来となる8日連続上昇でVIX指数も週末から週明けは12ポイント台まで低下していた。

この水準といえば世界的株価暴落が始まる前の今年1月下旬以来の低水準ということになるが、特にこの3〜4月にかけて警戒水準で高止まりしていたのと比較するに様変わりともいえる。テクニカルな観点でも緩やかな上向きを示していた200日移動平均線を同指数が約4ヵ月ぶりに下回った事も話題になっていたようだ。

近年では今年2月の当欄でも書いたようにリスク・パリティ運用等からVIXという尻尾が胴体を振り回す格好が増え、一晩で9割以上の価値が消滅した金融商品が続出した最中には同指数の不正操作疑惑まで出たほど。2月からの暴落で篩い落とし一巡感があるものの今なお同指数の影響力と市場構造を考えるにその動向に注目は怠れないか。


IPO史上初

さて、今週の株式市場で話題となったのは、やはり今年これまでで最大の注目IPOとされた人工知能開発のHEROZの初値形成だったか。上場したのは先週末であったがそれから2日間気配値のみで値が付かず、上場3日目の後場にして漸く寄ったが驚きだったのはその初値倍率で、実に公開価格の10.9倍とIPO史上初の出来事となった。

同社が開発した将棋ソフトAIの(ポナンザ)が昨年電王戦で対局、それが世界で初めて名人に勝利した事から個人の注目度合も抜群に高かった事で、これまでの初値倍率で最高だったちょうどバブル期だった99年の10月に上場したエムティーアイの9.09倍という最高記録を19年ぶりに更新する事になった。

こんな幻の初値形成のあとは実に200倍を超えるPBR や、PERに至っては700倍超えと見た事も無いような過熱感や、ロックアップ解除も意識され2日連続のストップ安から本日もストップ寸前まで暴落となり、初値形成からわずか3日であわや半値という水準まで沈んだもののそれでもなお公開価格の6倍以上であるから凄まじい。

AIに対する未曾有の期待感がかつてのドットコムバブルを超えるパフォーマンスを演出したとも言えるが、ここまでの派手さは例外としても今年は新年度を挟んで初値が公開価格の2倍以上になるIPOが連続しておりその投資家層にも変化の兆しがいわれている。投資家層の広がりで初値天井傾向等も含めこの辺も変化がみられるのかどうか今後のIPOと併せ注目してゆきたい。


発掘作業

さて、先週末の日経紙投資情報面には年末の経営統合で上場廃止となるアルパインが香港の投資ファンド、オアシス・マネジメント・カンパニーから2018年3月期の期末配当として1株325円を支払う事や社外取締役2人の選任を求める事などの株主提案を受け取った旨が載っていた。

同社がもともと期末配当として予定している金額は1株15円だが、予定額を20倍以上も超える配当要求が最終的に通るか否かは別としてこの手の予定額の10倍以上にものぼる大幅な配当金引き上げに追い込まれた?パターンとしてやはり記憶にあるのは、2003年にスティール・パートナーズからTOBをかけられた当時2部であったソトーとユシロ化学か。

ソトーはそれまでの年間13円の配当を15倍以上の200円に、またユシロ化学もそれまでの年間14円の配当を14倍以上の200円に其々引き上げている。思えば当時は極端な話解散してもなお時価を大幅に上回る分配が出来たような不当な低評価で放置されていたケースがごろごろ発掘出来たものだが、当時からアクティビストの質がガラリと変わり掘り尽くしたかのように見える市場で今なお冒頭のケースのように飽くなき対象の発掘は続いている。


地合いの好機

さて、昨日まで続伸で200日移動平均線まで戻した日経平均だが、本日は3月期末の配当落ち分の影響もあり急反落、昨日はこの配当権利付き最終売買日で配当関連の需要も多く買わなければならなかった上昇だったが其の需要が剥げたここからが正念場か。

ところでこの配当と共に企業が稼いだ利益を株主に還元する手段として自社株買いがあるが、先月に始まった世界的株価下落で買いの好機と見た企業が自社株買いの枠を設定する動きが顕著化し、日本は2017年度に2年ぶりの高水準となり米国も減税策を背景に18年の実施額が前年比2割増程度になる見通しと先週末の日経紙に出ていた。

今月上旬にはコーポレートガバナンス・コードを促す政府の思惑とも一致し海外からのアクティビストが一層関心を向ける事が予測される旨を書いたが、狙われやすい低ROEの企業など自社株買いや増配などで不要資本を如何に減らすかが課題となっており地合いも臨機応変に利用する好機と捉える傾向になって来たか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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