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新興アノマリー?

さて、先週末の日経紙マーケット面には「格言通り?新興株急落」と題して、春先から急騰した東証マザーズ指数の先導役であった創薬ベンチャ−のそーせいグループ株が25%下げ、連れて指数も急落した旨が載っていた。特にマザーズ市場の5月は成績が悪く「セルインメイ」によく当て嵌まる事で今年も格言が使われ易いか。

ところでマザーズの代名詞ともいわれるそーせい株だが、JASDAQ-TOP20のETFでいえばかつてのガンホー株のような存在になりつつあるといったところで、それもそのはずその時価総額はマザーズ指数の約2割に達するなど銘柄別で最大な事に他ならない。ガンホーは実に5割(ETF)に達したが、これも新高値を更新如何では当然占有率も変化してくる。

日本取引所グループは傘下の大証が来る次期売買システムの稼働に合わせマザース先物を上場する予定で、同社株にもこれに先駆けて先回り買い等も入っていたとの指摘も一部あるが、これに続くミクシィやサイバーダイン等々時価総額上位10社で全体の半分近くを占めることになる。225と違って個別の規模が異なるだけに、一方で裁定のオペなどどうやっていくのか今後も興味深いところである。


新興サイダー

週明けの日経平均はザラバで200円以上高い場面があったが、そんな中で終日ストップ安気配から比例配分でひときわ目立っていたのがマザーズ市場のALBERT株か。これは周知の通り同社の元会長が同社株を保有する親族らに業績予想下方修正を公表前に伝え損失回避させていた疑いがある事でこのインサイダー容疑が嫌気されてのもの。

明らかな下落を確信しての取引でインサイダーでは空売りをかけるのと同ケースとなろうが、過去には破綻準備中に周辺から漏れた情報で個別貸借銘柄の空売りが横行し、比較的最近ではファイナンス実施のヒアリングから漏れた情報で対象銘柄の空売りが大規模に行われた件が問題になって情報伝達者も行政処分や刑事罰対象となった経緯がある。

金融商品取引法違反といえば直近ではもう一つ、インサイダー取引ではないものの東京地検特捜部がジャスダック市場の夢の街創造委員会の創業者を2年前に同社株を相場操縦した疑いで任意事情聴取している事も報じられている。双方共に新興市場だが、昨年日本取引所は上場時審査厳格化等を打ち出している。果たして上場後のセカンダリーにおいても新興モノもこうした問題は起こり得るが、当事者意識に委ねる次第であり完全な防止策は無いか。


情報格差

さて2016年1〜3月期決算の発表が今週から本格的にスタートするが、この決算情報を巡って先週は証券取引等監視委員会が外資系大手のクレディ・スイス証券を、上場会社が公表する前の決算情報を自社の営業員らに伝えて顧客を勧誘するなど重要情報の管理体制に不備があったとして、行政処分するように金融庁に勧告する方針を固めていた。

クレディ・スイスで同じようなインサイダーの一件として思い出すのは、かつて香港のトレーダーが住友軽金属のCB発行時に事前に同社株をショートしたとかで摘発された事があったのを記憶しているが、最近ではドイツ証券も今回と同様な件で昨年12月には業務改善命令を出されていたなと。

これが主因なのかどうか、クレディ・スイス証券は毎年2回アナリストらが行ってきた機関投資向けの企業の業績プレビュー活動を中止する意向を示している。野村など国内大手でもアナリストが業績動向について企業から詳細を直接取材し決算プレビューに反映することを自粛する動きが広がっているが、改めて一般との情報格差が感じられる一件でもあるか。


ストックオプション拡大

さて本日の日経平均は3日ぶりに急反発し昨日からきれいに往って来いの形となった。株価を睨んで経営陣も一喜一憂だろうが、株価といえば先週末の日経紙投資情報面にはストックオプションの利用が広がっている旨が載っていた。この制度が加速している背景にはIPOの活況やコーポレートガバナンス・コードの適用の影響も大きいようだ。

このストックオプションといえばちょうど2年前の今頃にも当欄では同制度を新たに導入する企業が増えている旨を書いた事があったが、2015年度に利用した上場企業は654社と以前に振れた2年前当時の2014年の583社から1割増えて実に10年ぶりに過去最高を更新した模様。

同紙にも財務に余裕のない企業でも活用し易いと書いてある通り、もともとこの辺が同制度が生まれた背景になるワケだが人材獲得からマーケットでの受け皿も投資家側になるなど何かと効率が良い一方で、株価第一主義に偏重し易くなる為に不祥事隠蔽の芽が時として出てくる素地が無いワケでもない。IPOの新興勢などこうした部分含め周りが見守ってゆきたいところ。


必要悪?

本日の日経平均は原油高に加えて円安進行から大幅続伸となったが、先週末の日経紙には「株の高速取引実態監視」と題して、同取引が急激な相場変動に繋がっているとの指摘を踏まえて、金融庁が実態把握に乗り出し新たな規制導入を視野に年内にも方向性を打ち出す旨も載っていた。

HFTに対する規制議論に関してはといえばもうかれこれ6年前くらいから当欄では取り上げているが、IPO延期騒動があった末に昨年上場にこぎ着けた米バーチュ・フィナンシャルなど、2009年から2013年までに同社が出した損失が1238日中わずかに1日だけだったと開示資料で驚愕の内容を出していたが、こんな無敗実例はもはや投資や投機の枠でないだろう。

市場でフラッシュクラッシュなど起こる度に同取引が犯人扱いされて久しく、これらの増加に比例し通常の数十倍もの取引データが流れ込んで起きつつあるシステム障害等もまた然り。今やHFT業者はレイヤリングやクォートスタッフィングなど駆使して成長し、時折監視委員会から「見せ玉」などと判断されて摘発される連中が本当に哀れに思えてくる。

とはいえ市場が大きなショックに見舞われる中でも、こうした向きが受け皿となってリクイディティを提供している部分は否めず過度な規制は時代に逆行するとの意見もある。日進月歩でシステム刷新が進もうが、上記の如く一般投資家に恩恵がおりてこない機会不平等問題と対峙する中で均衡を見出すのは非常に難しい問題だろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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