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活況の裏で

本日の日経紙マーケット面には「ETF3本 新規設定停止」と題して、野村アセットマネジメントが日経レバ型と日経インバース型、そして日経ダブル型の日経平均株価の数倍の値動きを目指すタイプを含むETF(上場投資信託)3本の新規設定を16日から一時停止する発表した旨が書いてあった。

この野村アセットに関しては9月のあたまにも2万円大台を割ったあたりからの純資産急増が影響しETF新規設定一時停止の措置を取ったばかりであったが、この時もそうであったように特にこの中では日経レバレッジ型の存在感が大きく純資産急増時には先物市場に与える影響が大きい事で相場の振れ易さ等が目立っていたという。

確かに直近までレバ型の売買代金は主力のトヨタ自動車を抜き、かれこれ営業日で1ヵ月以上も首位の座を譲っていない。現物の売買が細るなか短期偏重が台頭する構図は以前にも書いたがもともと中長期投資家が用いるETF本来の姿とは特異な存在となり、今のレバ系の活況は海外での日本株ETFからの資金流出傾向と併せ裏では先行き一段の警戒感を台頭させる格好となっている。


沈没

さて、本日の日経紙一面を飾っていたものに第一中央汽船の民事再生法適用申請の報があった。運賃低迷で経営状態が悪化しその負債総額は簿外も含めると2000億円を超える可能性があるというが、曲がりなりにも商船三井傘下の住友系であっただけに降って湧いたこの報はけっこうな驚きがあった。

これで今年の上場企業のパンクは年明けのスカイマーク、その後の江守商に次いで3社目となったワケだが、国内五位とはいうもののバラ積み船はやはり景気連動型と改めてまざまざと見せつけられた破綻劇で、大手にぶら下がった再建とはいえやはりいつまでも安穏というワケにはいかないという事か。

しかしこれまでも低位だけに比較的大商いし易い銘柄だったが、かつてリーマンショック前に仕手化し大化けした頃が懐かしい。低位のパンクといえばかつて殖産住宅等に見られたようにショート筋の思惑は当たったもののそれまで逆日歩でヤラれたとシャレにならない話もあったが、これまた完全合致から祭りが始まるか。


5年目の刷新

さて、連休明けの本日は株式売買システム「アローヘッド」が約5年ぶりに刷新された。今回も初代に続いて富士通が請け負った模様だがポイントとしては注文処理のスペードや件数が現在の2倍に、また呼び値単位の適正化や気配値表示本数の増加、それに発注証券会社のシステム障害時に自動取消機能を設ける等の信頼性の向上といったところか。

5年前に刷新された当初はいくつかの銘柄で僅か数十秒の間にストップ幅近くの急落急騰を演じて早速個人が翻弄される光景が話題になったものだったが、今回の新システムは売買ルールに見直しが入り野村の試算では1分間の株価変動率が平均で上下4%を超えないようになる見通しとか。

これに関してはアローヘッド稼働後に当欄でも「二次的な乱高下に対するセーフティーネットのような物の必要性が問われてくるのは必至か」と書いた事があったがこの辺に対応してのものか。また呼び値も縮小傾向でここまで来たが、今回はさすがに縮小し過ぎた分の見直しがTOPIX100構成の一部で行われる。

しかし5年前のアローヘッド開始時に「はやこんなところまで来たとは時の流れを感じるが、これでも日進月歩だけにまた古くなる日が何時の時代か来るのだろうな。」と当欄では末尾で書いたが5年目で刷新、都度ディーリング等も変遷を強いられてきたがいたちごっこのHFT業者と容易には太刀打ち出来ない個人の共存がまた継続されてゆくこととになる。


変動率に商機

ちょうど1週間前の当欄では「増幅要因」の題でジェットコースターさながらの乱高下の毎日が続いている旨を書いたが、昨日の日経紙マーケット面にも今週過去20日間の変動率が米量的緩和の縮小懸念が始まった2013年6月以来、2年3ヶ月ぶりの高さとなった旨が書いてあった。

文中では長期投資家による買いが入りにくく、実需の売買が縮小するなかで短期投資家による売買が主導する展開が続くとも書いてあったが、今や急増するETF残高も本来であれば長期投資のツールというのが世界標準なのだがとりわけ国内ではレバ型の短期売買等に傾斜しこうした構図も成り立ちにくい。

とはいえこうしたレバ型が売買代金ランキング上位の常連になってきているなど短期系が流行っているだけに、日経平均VIの急上昇やリーマン・ショック直後以来の高水準を記録している恐怖指数であるVIXの50台への上昇などにも商機を見出すETN系も賑わい、大手金融機関も変動率に注目した商品の上場を検討する動きも出ているという。

とはいえこうした眺めは裏を返せば投資家心理の冷え込みを端的に表しており、ボラへ賭ける投機や商品開発の熱は乱高下離脱の先行き長期化を表しているともいえようか。


増幅要因

今週の日経平均は昨日の1,343円高という歴代6位の上げ幅を演じたのも束の間、一転してザラバでは800円以上も急反落するなどジェットコースターさながらの乱高下の毎日で非常にボラタイルな展開が続いている。当欄では近年の日銀によるETF吸い上げの影響もあり一部高寄与度銘柄の板が薄くその辺もボラを増幅させている一因となっている旨を書いたが、先物市場の景色も東日本大震災以来久し振りに見る相場が展開されSPAN証拠金もうなぎ登りとなっている。

先物といえばこれに併せてオプション市場でも先に書いたようにわずか1円のプレミアムがたった4日の間に450倍にも大化けしたり、SQが目前に迫った昨日などほぼ望みの無くなっていた行使価格18750がアットザマネーまでになり、前場は1円だったコールの19250は後場には28円まで暴騰する始末とこれも4年ぶりに見る異常な相場であった。

当然ながらSQ目前にこれだけボラが激しい状況になれば損失回避のリバランスから大挙して売買が傾けばこうした狂乱相場にもなろうが、昨日の日経紙にも「市場揺らす仕組債」と題しデリバティブが誘う特殊な需給要因からのノックイン現象で下げが広がる状況も生まれている旨が載っていた。

仕組債発行の背景には超低金利による運用難があると同紙には書いてあったが、これと同様にセルボラで悠長にプレミアム取りを目論んでいた向きへ東日本大震災の災難が降りかかったように息を吹き返したヘッジファンドの暴力的な売買がこうしたところへも影響を及ぼしている。今月初めに「短期選好」として取り上げたレバ型ETFなど近年の金融商品の多様化も、久し振りにノックインなどの言葉を思い出させてくれたというところだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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