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増益の裏で

さて、昨日の日経紙には「運用10社、3割増益」と題して、公募株式投信の市場全体の残高がこの1年で21%増えるなど運用環境が良好で資産の時価が膨らみ、この結果として運用会社の手数料収入が増えて主要運用10社の純利益合計が前期比で28%増加した旨の記事があった。

やはり株高効果のこうした部分への影響が顕著に出た事例だが、運用成績自体は昨年末までに設定された日本株を対象とする公募投信580本のうち、今年の運用成績がTOPIXの値動きを上回ったのは170本強に過ぎない実に7割の投信が市場平均を下回るという側面が一方ではある旨が本日の同紙に出ている。

投資の環境が一昔前とは様変わりしてその選択肢自体は増えたものの、一方では従前の手法が通用しなくなってきている部分も既に出ており、特に近年はこの辺が優劣を左右している部分も多い。緩和マネーが今後どういった流れになってゆくのか先行きを見通すに各社思案のしどころである。


29年ぶり高値と上場来高値

さて、ギリシャ債務問題を巡りEUが支援延長拒否した事を受けて週明けの日経平均は596.20円安と約1年5か月ぶりの下げ幅で大幅に3日続落となったが、そんな暴風雨の本日でも連日の続伸で上場来高値まで更新している銘柄に六甲バターがある。

ご存知この辺はTPP関連株の一角だが、妥結の前提となる重要法案が米で相次ぎ可決され長く持ち越しとなっていた締結への期待が一段と高まり、蒸し返しの物色でも前回にも増して一段とホットマネーが流入している格好となっている。

しかしこのバターといえばこれから暑さが増すこの期でさえ店頭は依然として品薄が続いている。業務用バター価格は既に29年ぶりの高値といい、取り急ぎ緊急輸入でも高値在庫の構図なだけに流通価格に反映されるのは想像に難くない。

この狂想曲が落ち着く願いも込めて?のものなのか六甲バターの貸借倍率は既に1倍を割ってきているが、はたしてショートが報われる日が来るのかどうかまだまだ目が離せない。


復調IPO

さて、本日はコンタクトレンズ大手のメニコンが新規上場。今年初めての東証一部直接上場案件で注目であったが、果たして200万株近い買い物からその初値は公開価格1,700円を73.5%上回る2,950円となり、好スタートを切った。

東証一部直接上場銘柄といえばこれまで相対的な低パフォーマンスに警戒感があったものだが、直近のヘリオスやその前4.5倍の大化けとなったテラスカイの初値パフォーマンスが予想を上回るものとなっており、同社の比較的小型という特性も相俟って初値買い意欲が強まった状況か。

IPOといえば当欄で前回取り上げた4月の頃は「IPO錬金?」と題していたように、一部IPO企業の上場直後の業績下方修正や不正発覚等が相次ぎそれまでのIPO各社の株価低迷が続いていたものだったが、上場前審査の厳格化が奏功したのかIPO市場も斯様に薄日が差し始めている。

今月のIPOは上記銘柄含め6月としては07年以来8年ぶりの高水準、そうした事で今月が試金石として重要視されると指摘される裏には、今秋に87年のNTT以来の大型案件といわれる日本郵政の上場が見え隠れする。今日上場のメニコンも誰でも知っているが、日本郵政も抜群の知名度で個人株主誘致が懸かっている事で橋渡し役としてのIPOが嫌でも注目される。


東証マザーズ先物

本日の日経紙投資情報面には「東証マザーズ先物上場」と題して、日本取引所グループ傘下の大阪取引所が来年央に導入する次期売買システムの稼働に合わせて新興企業で構成する株価指数「東証マザーズ指数」の先物取引を2016年半ばに始める旨が載っていた。

この報を受け本日の株式市場では、昨日当欄で種類株導入で取り上げたサイバーダインやペプチドリームが大幅に買われ、そして時価総額トップのミクシィ株はがザラバで430円高の6,670円まで買われ一気に年初来高値を更新するなどやはり個別の御三家の反応は早い。

日本取引所グループといえば、新年度に次期CEOが課題として挙げていたものにデリバティブ分野の強化というのが記憶に新しい。他にもこの新システム導入を機にROEに重点を置いた新指数「JPX400」のオプション取引も始める意向も示しており、国内外のマネーを呼びこむ起爆剤となるのか期待したいところだ。


AA型種類株式

先週末は当欄でも触れたようにトヨタ自動車初の女性役員が逮捕された報が巷を駆け巡ったが、同社の株主総会が終了して本日でちょうど一週間。今回この株主総会で承認された物の中で注目されたのが、「AA型種類株式」という所謂元本保証な上に最高で年2.5%の配当利回りが狙える新型株の発行の話だ。

なんとも手堅く好条件な匂いが漂うが、それと引き換えに購入価格は普通株より2割以上高く5年間は換金出来ないという条項が付くもの。この手の種類株は2006年の会社法施行で国内発行が可能となり、記憶に新しいところでは昨年上場したマザーズのサイバーダインの実績もある。

ともあれ同社としては長期的視点で見てくれる株主を増やし開発等経営に取り組むのが狙いだが、一方でその性格上ホルダー分けが為され株主平等の原則に反するとの意見も一部にある。また当欄で先週月曜に「次の焦点」と題して書いた買収防衛に絡んでこの制度を気にする向きもあるがこの承認で日本企業のファイナンスに一石を投じたのは確かなようだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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