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高揚感無きバブル越え

本日の日経平均は4日連続で年初来高値を更新し2000年4月14日以来約15年1ヶ月ぶりの高値を付けたが、先週末の日経紙一面を飾っていたのは東証一部の時価総額も591兆3,007億円となり、1989年12月のバブル期経済の水準590兆9,087億円を約25年ぶりに上回りとうとう過去最高となった件であった。

とはいうものの日経平均が15年ぶり高値とはいえ4万円近くまで買ったあの絶頂期の記憶から約半値水準ではピンと来ないものだがそもそも銘柄数自体が違うのでこれも当然、事実単純に銘柄の単価ベースで弾いてみれば今の日経平均水準以下にまでなるので妙に納得である。

当欄では先月末にITバブル時以来の終値での20,000円台を回復した際に「失われた15年奪回」と題し、文中でやはり15年ぶりに史上最高値を更新したナスダック総合株価指数も当時と比べその構成銘柄も主役クラスの新旧交代が著しいと書いたが、東証でも上記の件絡めてバブル後に主役級が相次いで登場している構図に変わりはない。

足元では異次元緩和が実施されバブルなんぞという文言も本当に久し振りに彼方此方で目にするようになったが、高揚感がなかなか沸き辛い昨今の構図だけに今更ながらバブル後期にQレシオなんぞが持て囃されたウォーターフロント相場から狂乱仕手株時代など、今と比べてしまうとそのホットマネーのエネルギーの相違をしみじみと実感する。


安穏とは限らぬ東証一部

本日の日経平均は大幅続伸となったが、そんな市場で寄り前から3,000万株以上の売り物を浴びて一際目を引いていたのは経営再建中のシャープ株か。一部で伝えられている通り先週末に99%以上の大幅な減資により1,200億円以上ある資本金を1億円にまで減らすという財務改善策がサプライズ視されてのこと。

原資で累損を一掃し、資本金の1億円変更で中小企業扱いになる為に各種税制上の優遇措置も受けられるというがなんとも苦肉の策を持ってきたものだ。しかしかつて液晶を凌駕した東証一部電機大手の変貌を見るに現実の厳しさを実感するが、現実の厳しさといえば東証一部からはもう一つ江守グループHDも直近で破綻している。

この江守グループHDで今年に入ってからの上場企業の破綻は2社目となってしまったが、1社目のスカイマークと共に奇しくも負債総額までピタリと同じ額だった。しかし魑魅魍魎の新興株ではなくかつてJPX400に選定されたり優良株のレッテルで大手投信も大量保有していた東証一部株がこんな最後になってしまうとはつくづく現実を実感する。

そうそう、本日は同じ東証一部でシャープと共にストップ安の寄り付きとなったものに東芝もあったが、こちらは不適切会計の影響で前期業績予想を未定にし無配修正となった事に因るもの。寄り付き後に1円のリバウンドも無くすかさず更なる大量の売り物を浴び8,000万株以上の売り物残しで引けているが、東証一部とて昨今はどこからお化けが出るかわからない市場になってきたか。


失われた15年奪回

本日の日経平均は主要企業の決算発表や、30日の日銀金融政策決定会合を控え見送り気分から小幅続落となり再度大台を割れて引けたが、周知の通り先週は週央にはITバブル時の2000年4月14日以来、約15年ぶりに終値で2万円台を回復していた。

ところで15年ぶりといえば、また米国でもハイテクや新興企業が多く含まれるナスダック総合株価指数も先週は15年ぶりに史上最高値を更新してきている。15年前に同指数が最高値を記録した時といえばちょうどWindows95が登場したのが思い出されるが、そういった当時から比べると構成銘柄も主役クラスの新旧交代が著しいと感じる。

特にグーグルやフェイスブック等の新興勢の躍進が目覚ましいが、指標面でもPERなど当時の100倍超えから現況では20倍前後と健康体に落ち着いている。この辺は20,000円大台を回復した日経平均でも言える事で、急ピッチな上昇から過熱感が言われる一方でこちらのPERも20倍を切っている。

本邦の場合失われた15年があまりにも長く、これまでの一人負けから羹に懲りて膾を吹くの如く体組成の劇的な変化にあまり目が行き辛いものだが、新陳代謝を経てのその次のステージを見据えて行きたいものだ。


提灯銘柄

週明けの日経平均は売買交錯に方向感定まらず小甘く引けたが、そんな中で本日の値下がり率ランキングの方の上位に入った物には先週先駆して急伸した銘柄群が目立っていた。ACCESSなどもそんな一つだが、これはタワー投資顧問が保有比率を16.07%から14.79%に引き下げたのが材料視されているもの。

この手の提灯モノでは本日は小動きだったものの先週派手に値を飛ばした物として、8日前場で買い気配を切り上げて寄り付きからほぼストップ高の急騰を演じ全市場値上がりランキング上位に踊り出た黒田電気もある。これは7日付けの関東財務局に提出された大量保有報告書で、あの村上世彰氏が同社株を保有している事が判明したことに因るもの。

斯様に中小型の波の中には必ずこうした提灯モノが混じってくるものだが、こうした裏には今月2日に当欄で「IPO錬金?」と題して書いたところの信憑性に乏しい業績予想続出のIPO新興勢の騒動も背景にある。そういった風潮の中で内情把握の思惑が募る著名機関投資家がロングする銘柄への提灯が湧いてくるのも自然な流れと言え、ある意味昨今の疑心暗鬼が生んだ徒花ともいえるか。


優待伸びしろ

さて日経平均は2万円台の大台を指呼の間に捉えているが、そんな地合いのなか昨日は朝方の堅調から一転して急落の憂き目が目立ったのがキティちゃんことサンリオ。この切っ掛けになったのが株主優待の個人情報漏洩について会見との報だったのだが、ベネッセあたりから情報漏洩に関してナーバスになっていた昨今だけに反応も素早かったか。

ところで情報漏洩はさておき、この株主優待が最近企業の間に広がりを見せている。今週あたまの日経紙夕刊でも「株主優待なぜ広がる?」として最近は企業側が優待に力を入れはじめてきている旨が載っていた。この裏には約一週間に当欄で「持ち合い解消促進」と題して取り上げたところの解消後の受け皿としての個人株主の存在という背景も一部ある。

最近では株主優待生活を全面にアピールした一部投資家がタレント扱いされている事も世間の関心を集めているが、確かに優待込では軽く利回り2桁などというものがあり株価的にも実施企業の廃止発表はネガティブ視され、逆に中小型系などは優待復活という発表だけで軽くストップ高まで急騰する事もありこの辺の効果も高い。

こうした利益還元充実に絡んではこれも何度か当欄で取り上げている「日本版スチュワードシップコード」等のコード導入もあり、6月の総会シーズンを挟んで今後もますますこうした気運が加速してゆくのは想像に難くはないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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