白紙小切手?
さて、前回当欄でSPAC(特別買収目的会社)について取り上げたのは4月半ばのことでその際の末尾にて日本では未だ解禁されていないと書いていたが、先月末の日経紙総合面では「日本版SPAC解禁検討」と題し政府が米国で広がったこのSPACの解禁を検討、今月に閣議決定する成長戦略に明記する旨が出ていた。
これが先行している米では今年1月から3月で既に調達額は750億ドルに達し、IPO全体の実に70%以上をSPACが占めるなどラッシュの様相を呈している。直近でもSPACを通じた上場で過去最大といわれるシンガポールの配車大手グラブが今年中に米ナスダックに上場する見込みだが、アジアでもそのシンガポールが上場ルール案を公表、香港も年内には解禁との一部報道がある。
とはいえ先行した米でも最近は会計慣行にメスが入りトーンダウンしている模様で斯様にSPACも賛否両論喧しい。雑な言い方になるがいってみれば福袋のようなモノで、○○円相当の中身とのフレコで並んではいるものの開けて見るまで、つまり買収決定まで当局の財務諸表チェックが出来ないだけに事前にミスリードがあった場合など袋を開けた時のリスクは考慮しなければならない。
日本ではかつて解禁を検討したもののユニコーン級のタマの少なさなどから結局は見送りになった経緯があるが、今回は政府内で産業の新陳代謝が活発になるとの期待があり2022年以降の解禁を模索としている。賛否両論あるものの、この件が解禁となった暁には長らくスタートアップ企業の調達の課題であった選択肢の多様化が一歩前進するという事になるのは確かなだけに注目しておきたい。