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PTSの課題

さて、先週末の日経紙金融経済面には「米CBOE、アジア進出」と題し、米取引所大手CBOE(シカゴ・オプション取引所)を運営するCBOEグローバル・マーケッツが手薄のアジア太平洋地域進出する狙いで、日本のPTS(私設取引システム)であるチャイエックス・ジャパンを米投資ファンドJCフラワーズから買い取り買収する旨が出ていた。

現在日本のPTSは上記のチャイエックス・ジャパンとジャパンネクスト証券だけであるが、日本の株式取引量で見るとPTSはこの2社を合計しても7〜8%程度と米国の約30%からしても見劣り感は否めない。近いところでも先に東証がシステム障害を起こし全銘柄の売買停止に追い込まれた際、渦中のJPXや同システムを請け負った富士通がPTS市場で売り物を浴びていたのを思い出すが如何せんリクイディティーの薄さが指摘されていた経緯がある。

PTSに絡んでは今月にSBIホールディングスと三井住友FGが共同で私設取引所運営会社を設立と先に報じられているが、上記のような不測の事態にこうした代替市場がバックアップになれる為には常日頃から幅広い投資家が参加しそれなりのマーケットシェアが活発に行われていないとこの辺は難しく、やはり取り扱い会員を増やし当欄でも何度か指摘したがマル信の解禁など投資家の裾野を広げリクイディティーを高めてゆくのが喫緊の課題か。


インバウンド下剋上

さて、先週は国土交通省から2021年1月1日時点の公示地価が発表されているが、全用途の全国平均は前年比で0.5%のマイナスと6年ぶりに下落に転じていた。特に都市部の商業地で下落が酷かったのが大阪の所謂ミナミの辺りで道頓堀や難波、心斎橋地区等で5位までは実に20%を超える下落率となっていた。

一方東京圏ではさすがに下落率20%とはいかないまでも、下落率トップであったクラブ街の銀座8丁目は12.8%と10%を超える下落率。これに台東区西浅草2、台東区浅草1、千代田区有楽町1、新宿区歌舞伎町2といずれも10%を超える下落率となっているが、上記のミナミ地区と共に観光地や飲食店などインバウンド需要が消滅してしまった部分が如実に表れた格好。

また同じ関東圏の住宅地もコロナ禍の影響で何所もマイナスとなるなかテレワークの普及で住環境のプライオリティ等から唯一上昇を見せたのが千葉、千葉といえば昨年もネット通販の好調を背景にした物流施設ニーズの高さを映し二桁の値上がりを見せた所もあったのを思い出すが、大手の本社移転や体験型施設等の引き合いもありコロナ禍でこの辺の勢力図も昨年からの塗り替りが継続されている。


成長市場

さて当欄でも何度か取り上げた植物肉だが、今月も大手などからのリリースが目立った。ザッと挙げてもおまめさんで有名なフジッコが「大豆ライス」を開発、いなり寿司やガパオなどに使用してネット通販で販売予定、またプリマハムも大豆を原料とした植物肉を今月から商品化し、ニップンも独自開発した「豆腐ミート」を使った冷凍ボロネーゼパスタを今月から発売している。

変り種ではマルサンアイも今月から豆乳を原料にしたスライスチーズのような「大豆スライス」の販売を開始しているが、これらに先駆け商品化されたモノも当然乍ら多く最近では大手スーパーなどでも本当によくこの手を目にするようになってきた。そのスーパー本体もイオンなど消費者の多様性に応える為に昨年からPBで植物肉市場への取り組みを拡大している。

この手の嗜好は以前でこそ宗教上の理由等が圧倒的であったものの、何れの商品も低糖質・高たんぱくという特性から近年では健康や美容の観点から需要の高まりが顕著だ。また近年のESGの考えが産業界でも広がりを見せ各社共に積極的な取り組みを見せるなか、世界的超低金利による運用難を背景にこうした環境負荷の低い代替食品需要から市場成長性に着目した機関投資家も食指を動かしてきており欧米の後追いが今後加速してくるかどうか注目である。


金融政策株価明暗

さて先週行われた米FOMCと共に注目された日銀金融政策決定会合は、金融緩和長期化を睨みETFの購入を柔軟にしたり長期金利の変動幅を事実上広げたりして緩和の持続力を高める政策修正が行われる事となったが、特に前者のETF買い入れ政策変更は日経平均へのネガティブインパクトが大きく週末と本日の2営業日で1,000円を超える急落をもたらしている。

即ちETFは原則年6兆円としていた縛りを無くしその購入対象は日経平均型を止めTOPIX型に一本化するというものだが、個別では最も高寄与度で吸い上げ顕著とのイメージの強いファーストリテイリングは後場から急変、その株価は97000円台からものの30分程度で90000円スレスレまでの急落を演じ本日も4000円超の大幅続落と2営業日で10000円を超える暴落を演じた。

ネガティブインパクトといえば買い入れ上限据え置きとなったREITの個別もまた軟調展開を強いられたが、一方で許容する長期金利変動幅拡大との決定で貸出事業の収益改善期待から18日は銀行株の急伸が目立ち、翌日の週末は三菱東京UFJFG、三井住友FG、そしてみずほFGのメガバンク群が揃って年初来高値を更新していた。

予てより下げ相場の過程でも日銀によるETFの買い入れがパタリと止まった旨でマーケットはその「布石」にザワついていたものだが、やはり次に進む公表となると改めてその反応も顕著になるもの。出口を見据え保有構造の正常化に向けた応分の副作用もあろうが戦略の試行錯誤はまだまだ続くか。


復帰後の道のり 

本日は東芝の筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネージメントとファラロンらアクティビストによる株主提案を審議する臨時株主総会が都内で開催された。同社は先月に2021年3月期の連結純利益見通しを上方修正し配当も上積みすると発表しているが、当欄でも昨年触れたところの定時総会運営を巡っての事務処理等の不適切処理や議決権行使を巡り一部圧力があったとの疑いに絡んだ株主側要求による異例の臨時総会開催となった。

この件でこれまで東芝側は集計作業その他について調査を実施した事で更なる調査の必要性は無いと反対していた経緯があったが、果たしてエフィッシモの提案が賛成多数で可決された。欧米等では電子的議決権行使が主流となっている現代において旧態依然な郵送形式に加え株主総会が集中する特異な形態という問題も背景にあったものの、やはり最も基本的な株主の権利を損ないかねない部分の是正は喫緊の課題ともいえる。

今後は6月の定時株主総会で結果が報告される予定となっているが、一方で昨年11月公表の新経営方針に関してファラロンから出されていた議案に関しては賛成少数で否決された。先にめでたく?二部から一部へ悲願の復帰を果たした同社も再建途上で株主構成など大きく変わりその影響から緊張関係が続いているが、一部復帰が株主との新たな関係を構築する契機になるか否か引き続き注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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