12ページ目   雑記

秋の値上げ彼是

本日から10月入り、帝国データバンクによれば主な食品メーカー195社における飲食品値上げは今月が年内最大の値上げラッシュになるとしている。その数は2911品目を数え、分野別では全体の46.8%を占めた酒類・飲料が全食品分野で最も多い1362品目となったが、“ビーンショック”が引き続き影響し菓子では10月値上げとなる237品目のうち半数超がチョコレート関連商品で占められているのも目立ったところ。

定番人気のきのこの山やたけのこの里も昨年から数度にわたる値上げが続くが、シャトレーゼもチョコレート関連商品の28品目を今月から値上げするという。先月に当欄でも取り上げた業務用チョコレートで世界3位の生産量を誇る不二製油Gも更なる値上げを検討しているが、比較的安価な植物性油脂等を使ったチョコを提供する事で需要を喚起してゆきたいとしている。

定番人気といえば“うまい棒”も今日から値上げとなり、9月の東京23区消費者物価指数ではコシヒカリを除くうるち米が4割以上の上昇をみせ高止まりが続いたこともあり既に外食ではすかいらーくHDがライス関連商品の値上げが実施されているが、亀田製菓も今日からコメを原料としたこれまた人気の“ハッピーターン”等を値上げする。今月は他にも電気料金やガス料金から郵便料金まで暮らしにかかわるものの値上げや制度変更も多いが、引き続き年末に向けての動向が注視される。


没入型増殖

7月からベルサール新宿ではイマーシブミュージアムTOKYO vol.3が開催されているが、3年目となる今年のテーマは印象派と浮世絵で、モネやゴッホなどの印象派、ポスト印象派と西洋絵画に影響を与えた浮世絵がシンクロした世界を先端技術で表現している。さて、印象派といえば今月29日まで日本橋三井ホールではフランス印象派の世界を冒険する没入型展覧会の「モネ&フレンズ・アライブ」が開催されている。

ところでこの没入型形態、どこか既視感を覚えたがそれもそのはず3月に当欄でも取り上げた没入型展覧会の「ゴッホ・アライブ東京展」を手掛けたグランデ・エクスペリエンセズがプロデュースしたもので、クロード・モネやルノワール、エドガー・ドガからポスト印象派のポール・セザンヌ等々教科書に出てくるような著名画家の作品がサウンドや香りなど五感に訴える仕掛け?で印象派の世界に没入できるというもの。

こうした没入型形態に関しては春先にも「イマーシブ・フォート東京」など取り上げたが、上記のようなゴッホはじめ5月まで開催されていたサルバドール・ダリなどアート系もチームラボの登場以降は急速に増加してきた感もある。ちなみにこのチームラボプラネッツTOKYOの昨年の来場者は250万人を超え世界で最も来館者が多い美術館としてギネス世界記録に認定されている。

上記のイマーシブ・フォート東京はUSJや西武遊園地に続く大成功となると他の大型テーマパーク等でも戦略含めいろいろな意味で一つの試金石となりそうだが、アート系は既に“没入型”が一つのトレンドとして定着してきている感もある。イマーシブ関連の市場は年々拡大傾向にあり、その市場規模は2022年度の比較で2027年には1.5倍規模になるとの予測が出ているだけに今後も五感を刺激する新たな企画展の登場に期待したいところ。


世界が求めるコンテンツ

周知のように米テレビ業界で最高の栄誉とされる第76回エミー賞の授賞式が日本時間16日に米ロサンゼルスで開かれ、日本の戦国時代を舞台に徳川家康をモデルにした武将の戦いを描いたドラマ「SHOGUN 将軍」がエミー賞では史上最多の計18冠に輝いた。土壌としてアジアでは韓国ドラマが先行して躍進していた事や、多様なコンテンツを求める流れという背景も後押ししたとみられる。

多彩なコンテンツを求めるといえば、最近では6月に米大手投資ファンドのブラックストーンが東証プライム市場に上場している業界首位級漫画配信サイトの「インフォコム」を買収しているが、買収絡みでは今月に入って別の米投資ファンド米フォートレス・インベストメント・グループが東証スタンダード市場に上場している「常磐興産」を買収することが明らかになるなどエンタメの価値を外資が次々と狙う。

ところで過日放映されたテレ東のWBSにて自民党総裁選に立候補した全員にどういった成長戦略を描くのかという質問で、候補の一人の林官房長官はシンプルに「コンテンツ」の文字を掲げる一点張りでコンテンツは日本の基幹産業といってもいいと言っていたのが印象的だったが、政府は上記のプライム上場のインフォコムが米投資ファンドに買収された6月に、アニメや漫画といったコンテンツを海外に売り込む「クールジャパン戦略」を5年ぶりに改定している。

今回の快挙で漸くというか“正しい日本の表現”というものが叶った格好ともいえるが、同時に日本の映像業界に与える影響も大きく上記の戦略にも追い風となって来るのは間違いないところ。外資に次々と買収されるのも複雑な感があるものの、家電や自動車に続く日本のお家芸として33年に約4倍の20兆円に引き上げる目標を目指し今後どうセールスしてゆくのか政府共に舵取りが問われる。


基準地価2024

本日の日経紙第二部にみられる通り恒例の国土交通省がまとめた今年7月1日時点の基準地価が発表されている。全国では住宅地がプラス0.9%、商業地がプラス2.4%、全用途がプラス1.4%といずれも昨年に続き3年連続での上昇となり、その上昇幅も拡大していた。そんな中にあってやはりというか下落率が大きかった10地点は住宅地・商業地共に全て能登半島地震の被災地となっている。

対して住宅地の上昇率上位10地点は沖縄と北海道と南北両端で占めることとなり、住宅地1位は沖縄恩納村の29%アップであった。また商業地では台湾の半導体メーカーTSMCの工場進出で昨年トップの熊本県・大津町が今年も1位で33.3%の上昇となりこれを含め上昇率トップ3を今年も熊本勢が占めていた。ちなみに全国最高額地価は不動の19年連続、「明治屋銀座ビル」で1平方メートルあたり4210万、昨年から200万ほど上がった。

そういえば当欄では先週末に「グラングリーン大阪」を取り上げたが、うめきた再開発の一期地区にあるグランフロント大阪南館は大阪圏で1位、全国でも6位になっていた。このグラングリーン大阪の先行開業で更なる活況が期待されるが、先にも書いたようにビジネスの集積地ともなり、関西万博も控えインバウンドの視点から見ても有利になって来るだけに今後も引き続き注目としたい。


経済効果と経済損失

連休明けの今日もまた9月とは思えぬ暑さであったが、週明けの日経紙社会面でも「猛暑いつまで?」と題し今週の気温も平年よりかなり高くなり猛暑日となる地点もある見通しとの旨が出ていた。気象庁によれば今年6~8月までの夏の全国平均気温は平年比で1.76度高く、統計のある1898年以降これまで最高だった去年に並び最も高いタイ記録だったことが報じられている。

猛暑といえば7月末に当欄で猛暑対策展のイベントを取り上げた際に「一部シンクタンクでは夏の平均気温が1度上がる毎に2600億円程度の押し上げ効果があるとし、今月の平均気温は平年より2度ほど高いといわれている事で5000億円近い押し上げ効果で消費の盛り上がりが期待出来るという。」と書いたが、こうした経済効果の逆で経済損失に関しては例えば農作物への影響が今後5年間で5兆ドルの損失という試算や、暑さによるストレスの影響で生産性が落ち2030年度には2兆4000億円の損失という負の予測もある。

気象庁は異常気象分析検討会を開き平年に比べ突出して高温になったのは長期的な地球温暖化の影響や海面水温の上昇など複合的な要因があったとしているが、地球温暖化対策に関する多国間の国際的な枠組みのパリ協定では産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える目標を掲げている。この産業革命以前の基準とされる1850年~1900年の平均気温の推定値と過去1年の平均気温を比較するとおよそ1.64度高かった模様だ。

これに絡んでは企業による取り組みも重要になって来るが、東証プライム市場企業では既に二酸化炭素の排出量開示が企業に実質義務付けられている。気候変動リスク分析には煩雑な事務作業の手間が発生し、CO2の排出削減に寄与する事が企業価値が本当に向上することになるのか否か明確な答えは出ていなく、先に当欄で書いた「再生エネの建前」というような事例もあるものの、投資家にとっては企業選別において一つの重要な判断材料になるだけに現実と向き合いながら各々の取り組みを進めてゆくことが要求されるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

3

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31