12ページ目   雑記

田中一村展2024

さて、9月から先の日曜日まで東京都美術館で「田中一村展」が開催されていた。当欄で田中一村に触れたのは今から6年前に同じ東京都美術館で開催されていた「プーシキン美術展」を取り上げた際にアンリ・ルソーのテイストにも似ている旨を書いた時であったが、私も当時そう書いたように田中一村は度々過去の偉大な画家達とよく比較されてきた。

意を決して南国に移った事でよく言われてきたのは同じく南国に題材を求めた仏のポール・ゴーギャンになぞらえ「日本のゴーギャン」、また絢爛たる極彩色と精緻な筆遣いで花鳥風月を描いたことで、江戸時代の画家、伊藤若冲になぞらえ「昭和の若冲」とも評されたこともあった。ただそういった極彩色の作品が多数ある中でも「枇榔樹の森」などの作品にみられるモノトーンの美しさがひと際光る作品が個人的に惹かれる。

もともとこの田中一村を知ることになったのは、個人的にバリのプンゴセカンスタイルの絵画が好きでかつて何度か現地に買いに行ったものだが、20年くらい前からプンゴセカンを得意とする現地の画家が挙って上記の「枇榔樹の森」や「奄美の海に蘇鉄とアダン」など特徴的な炭黒のグラデーションをアクリルでもってかなりの完成度で模写し始めたのを目の当たりにしたのがきっかけである。

それらは大多数の花鳥画とは異なり、まるでその中に入って外を見るかのような構図で逆光を思わせるような美しさに生命を感じる。これは閻魔大王への土産品とした晩年の生涯の集大成ともいえる傑作「クワズイモと蘇鉄」においても、クワズイモの花が咲くところから実になりそれが朽ちるまでの全てが描かれる通常ではあり得ない構図を絵の中に完結させているところにも感じられる。

こうした生命とそれが朽ちるまでを一つの作品に落とし込む技法はエミール・ガレの作品にもよくみられるものでいずれも私のお気に入りだ。しかし伊藤若冲にしても田中一村にしてもひと昔前の美術展は直ぐに入場出来てゆったりと鑑賞を楽しめたものだが、メディアの煽りやSNSの発達でにわかファンが殺到する場と化しつつある現状を見るに以前の空間は贅沢であったなとつくづく。


輝きを増す日本真珠

さて、先週末に国内ファンドのユニゾン・キャピタルとアジア系投資ファンドのファウンテンベスト・パートナーズが宝飾品販売のTASAKIを買収総額1000億円規模で買収したことが報じられていた。かつて東証一部に上場していたTASAKIは2017年にMBOに踏み切った経緯があるが、インバウンド需要に伴う消費回復などの追い風もあって環境は大きく改善しているようだ。

ところでTASAKIといえばかつて「田崎真珠」の社名であったように真珠を使った宝飾品に強みを持っていたわけだが、近年は日本の真珠に対する注目度がにわかに上がっている。中国で人気に火が付いた影響もあり真珠の価格推移は、主要産地である愛媛水産統計の養殖真珠単価の例で2012年には1匁(3.75グラム)あたり1997円であったものが2022年では6644円とここ10年で約3倍になっている。

週明けの当欄ではマグロとタコの逆転劇でゴールドを引き合いに出したが、この日本真珠も過去最高値を更新したゴールドと似たような上昇の軌跡を描いてきている。現在ではほぼ同率の上昇軌道だが、とりわけ上記の2022年までの上昇率に限っていえばこの期間での上昇率は日本真珠がゴールドをも上回っている。

いずれにせよ素地として近年の海水温上昇に伴いアコヤガイ稚貝に大きなダメージが出て生産量が減少していたところに人気も乗った格好になるが、ここでも異常気象の影響が出ている。かつて指輪など貴金属を売却する際にウワモノ扱いの真珠等は高グレードの玉でも算定から外されていたものだが、今やしっかりと値が付く存在になっているだけに家で眠る製品に思い当たる向きは確認してみるのも一考か。


ビットコインとETF

昨日の日経紙一面には「DMMビットコイン廃業」と題し、DMM.comグループで暗号資産(仮想通貨)交換業中堅のDMMビットコインが廃業する方針を高めた旨の記事があった。同社といえば5月末に482億円相当のビットコイン不正流出が当時話題になったものだが、今後顧客口座や預かり資産はSBIグループのSBIVCトレードに移管される予定だ。

ところでビットコインといえば、トランプトレードの波に乗り今や節目の大台10万ドルを指呼の間に捉えているが、ETFも米に上場する12本のビットコインETFの純資産総額合計は1000億ドル(約15兆円)にも達し、これを保有する国家はじめ銀行や年金基金からヘッジファンドまで機関投資家の裾野もまた大きな広がりを見せている。

このETFを巡っては1月に米が承認の先鞭をつけて以降、アジア圏では4月に香港が、そして6月にはオーストラリアが承認に踏み切っている。当欄では5月に「ビットコインETFの国内承認は叶わないのだろうか?」と書いていたが、日本では今だそういった機運も高まっておらずETF承認云々の議論さえ始まっていないのが現状だ。

冒頭のような交換所の不正流出が度々世間を騒がせてきたイメージに加え、そもそも暗号資産自体が投資信託の運用対象である特定資産に入っておらずそれら以外で税制面でもまたETFと現物取引での税率の違いなど課題は山積みとなっている。とはいえ既にこれだけ広く浸透している様を見るに、完全に日本が周回遅れなのは否めないだけにガラガラポンでリセットするには今が好機とも思えるが重い腰が上がるのを期待したい。


インバウン丼も新高値へ?

いよいよ師走入りだが、月初め恒例の今月の値上げ動向は帝国データバンクによる主な食品メーカー195社における飲食品値上げはコメ高騰の影響を受けたパックご飯など加工食品の91品目はじめ109品目となる。2024年通年では駅1万2520品目の値上げとなり、昨年の3万台から61%減と過去3年間で最も少ない水準となる模様だ。

ところで食品値上げといえば例年今頃が旬の所謂“冬の食材”も高さが目立つ。先ずここから多用されるであろうイクラだが、豊洲市場の北海道産イクラ卸値は不漁の影響で先月中旬時点では1キロ当たり前年同期比8割も高くバブル景気の頃の水準になっている。ホタテも海水温が高かった影響で振るわず東京都中央卸売市場ではむきホタテの平均価格が前年比1.5倍と上げが加速、ここ10年でも2.64倍の上昇上だ。

海産物ではタコも主要産地の明石市では漁獲量がここ約10年で約5分の1までに激減するなどなかなか深刻な状況だ。それに伴い東京都区部の今年10月のタコの小売価格は100グラム当たり513円、ちなみにマグロは同492円であるからタコがマグロより上鞘になったことになる。2000年には両者の価格差は2倍ほどあったワケだからまるでかつての「プラチナ」と「金」の価格逆転劇を見ているようだ。

イクラやホタテも上記のような状況から今年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされた「インバウン丼」も日本人が呆れる値段に更なる拍車がかかりそうだが、これとは対極のタコ焼きを過日近所で買ったところ中身は既にイカになった「イカ焼き」になっていた。国際的に食習慣など時代の流れと共に変貌を遂げているなか、日本は円安の影響もあって各所で馴染みの食材も“買い負け”が目立つ場面が多くなって来たとつくづく。


米年末商戦2024

米では感謝祭が明け今週ブラックフライデーがスタートするが年末商戦の前哨戦となるこのセール、日本でもこれを倣って早くから先鞭をつけたイオンほか各社が先週から日本版ブラックフライデーをスタートさせアマゾンも今週からこれがスタートする。米に倣えの日本だがこちらも年末商戦のスタートとして国内消費の盛り上がりにつながるかどうか期待のかかるところ。

さてその本場のアメリカだが、NRF(全米小売業協会)によれば、今年の年末商戦の売上高予想はトランプ関税を見越した駆け込み需要が増加する見込みもあり前年比で最大3.5%増となるものの、2021年以降から鈍化傾向にあるその伸び率自体は6年ぶりの低水準になるとの予測を発表している。ただ、そういった中で昨年10%を超える伸びを見せたオンラインの勢いは今年も期待されそう。

先に第3・四半期決算を発表したアマゾンはネット通販事業の改善が寄与し利益と売上高が市場予想を上回り、また先週に決算発表を行ったウォルマートも既存店売上高が予想を上回り1株利益、売上高とも予想を上回っていたが、うちeコマースの売上高は前年比で27%増を記録するなどここでもオンライン分野の成長が目立つ。

今年の年末商戦は例年より期間が短くEC業界は中国の新興勢が勢いを増してきているという中でも、上記のNRFは今年もオンライン販売の売上高は前年比で最大で9%増の2979億ドルになると予想している。そういったことで今後もオンライン販売における戦略等で企業間でも明暗の分かれる場面も出て来ようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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