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日本文化を海外に

さて、先週末は渋谷の宮下パークにて日本酒の飲み比べが楽しめる「SAKE PARK」が開催されていた。3回目となる今回は30の酒蔵や醸造所が出店したが、この中には年初に被災した能登の酒も初披露されていた。各地の日本酒はそれぞれの風土が育んだ味であり文化でもあるが、残念なのは販売量がここ50年で約75%も減少しているなど国内消費が振るわないという点か。

一方で昨今の近年の日本料理や日本文化の人気が海外で高まっているのと相まって、日本酒人気も世界各国で高まっている。こうしたブームに伴って日本酒の輸出額は米中を中心に2022年度まで13年連続で過去最高を更新している。上記の通り日本酒の国内消費の伸びが期待出来ないなか、成長を海外に求めてゆく必要にあってはこのタイミングをしっかり活かしたいところだ。

そういったところでは先に開催された食の最新トレンドを一堂に会した「FOODEX JAPAN 2024」でお披露目された世界初という日本酒専用の急速冷凍機などキーとなるか。生酒は冷蔵庫保存でも1日や1週間で味が変化してしまうが、これは日本酒をたった15分で急速冷凍させ解凍するまでその味が保たれるというもの。通常の冷凍方法では水分とアルコール分が分離して品質が悪化してしまうが、この最短技術によって搾りたての味の維持が可能になったという。

こうした技術により海外等にまで美味しい酒が流通出来る道筋が見えて来たわけだが、今後の成長は新たな市場の開拓に懸かっている。日本の場合、も高度経済成長期にワインなどが普及のきっかけとなったが、経済成長によって富裕層のボリュームが増えるところなどは消費量増加を睨んでねらい目か。この日本酒や日本料理など文化を通じた啓蒙が海外とのよい懸け橋となることを期待したいもの。


インフレ負け?

先週は内閣府が1~3月期のGDP速報値を発表しているが、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比で0.5%減、年率換算でマイナス2%と2四半期ぶりのマイナス成長となった他、GDPの半分を占める個人消費もマイナス0.7%と4半期連続での減少となりこれはリーマンショック以来、実に15年ぶりの事となる。

米でも先週は商務省が4月の米小売売上高を発表しているが、市場予想の0.4%を下回る数値が出ており異例の好調を保っていた個人消費の減速傾向が強まっている。これまで小売店を中心に消費者が従来より低価格の商品を購入しようとする「トレードダウン」の動きが一部顕著になってきているが、それでも生活必需品など支出を減らせない必需的支出は増加している。

翻って日本では2人以上世帯の消費支出において、昨年から今年にかけてこの必需的支出の低下傾向がみられるという。つまるところインフレ負けしてきているとも言えなくも無いが、向こう数か月で実質賃金がプラスに浮上してこないと消費の下向きが恒常的になってきてしまう可能性もある。政府としては来月からの定額減税等で消費を下支えするとの目論みだが、円安解消は先が見えず国内景気も正念場を迎えているともいえる。


IPS細胞の可能性

本日の日経平均は日銀の国債購入減で金利が上昇し小反落となったが、先週の個別銘柄の上昇率トップスリーにはストップ高を交えて急騰を演じた化粧品大手のコーセーが入っていた。欧米や日本の拡販により2024年12月期1Q1-3月期連結営業利益は前年同期比35.5%増の79.0億円となり、これまでの売り上げ不振から明確な底打ち感を示した事が好感されたもの。

ところでこのコーセーといえば、この決算発表の日にはIPS細胞の最先端技術を持つ2社と提携、新たに利用者自身のIPS細胞から抽出した成分を配合したパーソナライズした美容商品の開発を始めるとも発表し、安全性が確認されれば2026年度までの事業化を目指すとし真のパーソナライズされた美容ソリューションを目指したいとしている。

斯様に今では個人レベルにまで手が届くようになったノーベル賞にもつながったIPS細胞だが、今やこの応用で神の領域への挑戦が繰り広げられている。既にIPS細胞で作る「腸オルガノイド」の手術など成功例があるが、人口脳である「脳オルガノイド」もまたマウスレベルでは成功の兆しが見えてきており、人への応用が可能なら再生医療に革命をもたらすのは想像に難くない。

つまり人の身体で臨床実験を行うことがまだ難しい薬でも、上記の脳オルガノイド等を用いればその効果を試すことが可能になるというわけだ。近年では世界のIT長者が挙ってこうした分野へ関心を持ち巨額の投資をしているのが顕著になってきたが、新薬開発や病気の解明など医療が飛躍的に進む可能性を秘めているだけに大いに期待したものだ。


ラグジュアリーとサステナブル

この連休中の日経紙ビジネス面では「食品ロス、未利用食材で防ぐ」と題し、牛丼の吉野家など大手外食各社などがこれまで使わずに捨てていた未利用食材の活用で食品ロスの削減に動いている旨の特集があった。農水省によれば21年度の食品ロスは食品事業者からの排出量が増加した事で、前年度比0.2%増の約523万トンで6年ぶりに前年度を上回った模様だ。

未利用食材といえば、毎年優待でお世話になっている某宴会大手のバイキングではこれらを生かしたメニューが大幅に増えてきている。昨年はザッと挙げても披露宴やパーティーのコース料理でどうしても出てしまう半端量のケネルや成型する際に出てしまう魚介類の端材や所謂未利用魚の類などを使った「海の幸のテリーヌ」、「野菜のババロア仕立て」、「車海老のタルタル」や「白身魚のエスカベッシュ」等のメニューが並んでいたが、どれを食しても本当に美味な一皿であった。

またラグジュアリーホテルでもこうしたサステナブルな取り組みが近年目立つのがパレスホテルか。昨年は同ホテル内のフレンチレストラン「エステール」で廃棄食材をソースに使い、魚は骨まで野菜も皮まで全て使う究極に食材の無駄をなくした「200%ノーフード・ウェイスト・ディナー」が開催されていたが、此処は今月末まで「サステナブルステイ」なる宿泊プランを設けている。

このホテルは以前よりペストリーショップで規格外野菜を使った「ケークサクレ」などを販売していたが、同プランでは規格外果実をアップサイクルして作ったシャンプーが備わり、部屋ではペストリーショップで作ったショートケーキの両端を使ったロールケーキ作りも体験出来てホテルレストランから出た廃油を活用したソープなども販売している。

ラグジュアリーが売りの高級ホテルにおいてラグジュアリーとサステナブルという両立しないモノが共存するのが面白く思えるが、国ごとに異なる環境や文化のなかでもサステナブルな部分は或る意味共通言語ともいえるか。ラグジュアリーホテルに限らず料理や商品を通して発信される持続可能な食とは何かを各所が再考するのも良いのではないかと思う。


鋭角化する上げ幅

さて5月入り、恒例の今月の値上げだが帝国データバンクによれば今月の飲食料値上げは417品目と、前年同月比で420品目、50.2%減と5か月連続で前年同月を下回ることとなった。前月比では約7分のほどに減少したものの、再び着目すべきは値上げの幅で平均31%と2022年以降、初めて30%台となっている。

個別で群を抜いて改定幅が大きいのはやはりオリーブオイル、日清オイリオGやJオイルミルズなど大手が家庭用を最大66%の引き上げ、業務用では80%の上昇幅のモノも。当欄で「アメリカンブレックファーストの憂鬱」と題しオリーブオイルの価格が前年比で2倍近くに急騰し史上最高値を付けた旨が日経夕刊の一面を飾っていたのを書いたのがちょうど1年前であったが、状況の深刻化は1年経てなお改善されるどころか酷くなっている。

とにかく生産、供給に消費の需給バランスが最悪の状態で、オリーブオイルが栽培されるのは地中海性気候の土地に限られているものの、この主要生産地の熱波や干ばつで不作が続き世界的な在庫不足が継続、輸出制限の国も出てきている一方で世界的な健康志向の高まりで消費の方は増加の一途を辿っているから、まさに無いもの強請りの争奪戦になっている。

似たような構図ではカカオ豆の急騰でチョコレート価格の動向も今後は懸念されるところだがそれに加えてこの円安、何処まで小手先介入で耐えられるか分からぬがこの水準の円安が続いた場合は数か月のタイムラグを経て秋口頃には輸入食品やガソリンまでさまざまなモノの価格に跳ね返ってくる可能性が高く、昨年後半にかけて沈静化していた「原材料高」値上げが再燃する可能性に身構える動きも出て来そうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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