17ページ目   雑記

株価も二極化?

さて今月は米ウォルマート株が上場来高値を更新してきたが、先に発表された同社の5-7期決算も既存店売上高が予想を上回り食品やヘルスケア関連など生活必需品を中心に堅調であった。そういった一方で米では節約志向が鮮明になりつつあり、不要不急の裁量消費の一部は我慢しようという二極化の動きが進んでいる模様だ。

この辺は株価にも色濃く表れており、上記のウォルマートの他にマクドナルドも先月には年初来高値を更新してきている一方で通期の予想を据え置いた高級志向のブルーミングデールズを持つ米老舗百貨店メーシーズや、米化粧品大手のエスティ・ローダーも米で高価格帯の売り上げが低迷し今月発表した2023年4-6月期の最終損益は20年4-6月期以来の赤字へ転落、株価も20年4月以来の安値を付けていた。

とはいえ富裕層に関しては株高による資産効果もあり堅調な消費が予想されるだけに振り切って高級に特化している仏エルメスや伊フェラーリ等の需要は安定的だと思うが、それ以外の層はパンデミックで急増した消費者の過剰貯蓄の取り崩しが進んでおり、加えて免除されていた学生ローン返済再開等も背景に今後の個人消費は不透明感が台頭する展開になるか。


都市部飽和状態の業界

ちょうど一週間前にクスリのアオキHDの株主総会が執り行われた。そこで見られたのは物言う株主のオアシス・マネジメントが創業家の影響が強すぎるとして創業家役員の再任に反対し独自の社外取締役を設けるなどの株主提案であったが、この光景は更にそのちょうど一週間前に執り行われたツルハHDの株主総会とほぼ同じものであった。

結果的にこのクスリのアオキHDの株主提案もツルハHDの株主提案も共に否決されることとなったが、オアシスの真の狙いはこの経営体制の刷新だけではなく業界の再編という見方が専らである。このドラッグストア業界で初の大型再編があったのは2021年2月のマツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合であった。

このドラッグストア業界に絡んでは昨年当欄でもカインズによる東急ハンズ買収を取り上げた際の末尾で「これに限らずドラッグストアなど他の流通業界の再編も今後ますます加速してゆくのは想像に難くないか。」と書いていたことがあるが、ホームセンターよろしくこちらもオーバーストアが常態化している状況にあり常に再編の噂が絶えない。

ただホームセンター以上に各社の地盤や売りのカラーが違うところが厄介で、そういった意味では上記のマツモトキヨシとココカラファインの経営統合などは本当に相性の良いマッチングであったのだろうと思う。ちなみに冒頭のオアシス・マネジメントはこのココカラファイン株も大量保有していた経緯がありちゃっかりと売り抜けにも成功しているが、自らが絡める再編の機会を虎視眈々と狙う動きは今後も続くか。


ガソリン政策

ガソリン価格の高騰が止まらない。直近で発表された先週アタマの価格は前週より1.6円値上がりし、リッターあたり181.9円とこれで13週連続の値上がりとなっている。政府による元売り会社への補助金が段階的に縮小して以降の値上がりがやはり顕著になってきたが、来月末にはこの補助を終了する予定と経産省は発表している。

これまでの史上最高値が2008年のリッター185.1円だったと思うが、既にこの水準を指呼の間に捉えておりこの政府補助金が終了するのと前後してこれを超えてくるかどうかというところ。補助金が無かったらとっくにレギュラーベースで200円超えという試算もあったが、こうも高騰が顕著だと改めてコーティングされた各種の税金が恨めしく感じる。

ところで税金といえば、証券などでは配当において法人税を支払った後の税引き後利益を株主に支払う際に所得課税が行われるという所謂二重課税が問題視されてきたが、このガソリンも構造的には基本税額に加えて揮発油税や石油石炭税など数種の税の合計額に消費税が課せられておりこれまた税に税がかけられる二重課税となっている。

いずれにせよこの補助金終了のタイミングでまたぞろ凍結されて久しい特例税率上乗せ免除なるトリガー条項が再度思い出されるが、そろそろ特例法改正の機運は出てこないのであろうか?補助金が機械的に終了し、円安や物価高で家計購買力が低下するなか凍結解除に今はまさに好機だと思うが。


文化政策

さて今年は4年ぶりに各地の夏祭りが通常開催の運びとなっているが、昨今の物価高を背景に一部では運営資金の一部をクラウドファンディングで調達する動きも広がっている。ところでこのクラウドファンディングといえば直近で一番話題になっていたのがやはり目標額1億円を掲げてこのクラファンを募った「国立科学博物館」か。

コロナ禍の影響で柱の入場料が5分の1程度にまで落ち込んだうえ、物価高からこの2年で光熱費が約2倍にまで跳ね上がったことで500万点以上の保管品の保管環境を維持する事が困難になった事が背景にあるが、驚きだったのは何といってもその達成速度か。開始からわずか9時間そこそこで目標額の1億円を突破し約1日で2億5千万円超え、ちなみにこれを書きながら見た時点では約6億7千万円が集まっていた。

ところでこの手のクラファンでは昨年の「法隆寺」が記憶に新しい。此処もまたわずか半日にして目標額2千万円を達成し、終了時には1億5千万円を超えていた。国立科学博物館は11月上旬まで続ける模様だが、法隆寺は普段は未公開の特別拝観、国立科学博物館も非公開のバックヤードツアーへの参加、更には標本作成の体験や収蔵品に触れる機会も用意されるなど双方共に工夫された返礼品が刺さった面も大きいか。

博物館といえば欧米の場合は財団等の支援で成り立っている部分も大きく文化に対する国の姿勢の違いを感じるが、取り組みを応援してくれる新たな仲間と出会える機会にもなると科学博物館が述べている通りクラファンはファンコミュニティを作る意味でも効果的なプラットフォームともいえる。国立科学博物館や法隆寺のような状況にある施設は全国に多数存在しているのは想像に難くなく、この件が関心を持つきっかけとなりこういった動きが広がって来るかどうか注目してゆきたい。


事実上の撤退?

さてESGを巡る社会的分断についてはこれまで何度か取り上げてきたが、先週の日経紙夕刊では米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングが信用格付けリポートに記載していた企業のESGの定量評価についての公表を取りやめる旨の記事があった。同社は先月に決算を発表しているがESG関連については全体の足を引っ張っていた模様だ。

同社はこのESG分野での収益目標等も取り下げた模様で、今回の定量評価の公表停止は記載方式の変化にすぎないとしているが、昨年に同社は共和党が優勢な州からESGの定量評価を公表することに反対する旨の書簡を送られた経緯がありこの辺も影響していたのは否めないところだろう。

ESGに関しては先に反ESGを掲げる州から運用資金を引き揚げられたブラックロックのCEOもこの用語が攻撃材料として使われる為に自身としてはもう使うつもりはないと公言した経緯があるが、こうした運用会社や今回のこの格付け会社の事実上の撤退ともみられる動きで各企業のESG対応への影響が注目されるところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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