16ページ目   雑記

世界10大リスク2025

さて年始恒例のモノは先週も書いてきたが、国際政治学者のイアン・ブレマー氏率いる米調査会社ユーラシア・グループが発表する「世界10大リスク」もまた年始恒例のものである。今年1位に挙がったのが「深まるGゼロ世界の混迷」で、世界的な課題対応を主導し国際秩序を維持する国家は存在しない状態で地政学的な不安定が常態化し、新たな世界大戦が発生するリスクが高まっているというもの。

そして2位に挙げられたのは「トランプの支配」、これまで明らかにされてきた政権人事においては司法省やFBIといった政治的に権力を持つ組織にトランプ氏に忠誠を誓う人物を据えようとしている。行政権力に対する独立したチェック機能が低下し法の支配が弱体化、加えて政治的に近い企業を優遇すれば市場競争ではなく権力への近さが成功を左右するシステムが生まれる可能性があるとしている。

この辺に関してはテスラのイーロンマスク氏はもう言わずもがなだが、株式市場を牽引してきたIT大手トップの“トランプ詣で”が喧しい。メタのザッカーバーグCEOは大統領選後にトランプ氏の自宅に訪問し100万ドルを次期大統領就任基金に寄付しているが、アップルのティムクックCEOも個人で100万ドルを寄付、他にもアマゾンの創業者ベゾス氏、グーグルのピチャイCEOやオープンAIのアルトマンCEOなどなど名だたる大手テック企業のトップ達がトランプ氏の邸宅を訪問し多額の寄付を表明している。

歩み寄りといえば直近ではDEIに否定的なトランプ氏に配慮し、上記企業の一部にもこれらの施策を廃止する動きも出て来た。確かに今回の大統領選でトランプ氏を再選に導いた最大の功労者はテック業界の起業家連中なのは疑いようも無い事実だが、手のひら返しでトランプ次期政権に歩み寄るスピードの速さを見るにユーラシア・グループの懸念も一層現実味を帯びてくるというものだ。

ちなみに冒頭のイアン・ブレマー氏は石破氏に関しては、「安倍元総理のようなトランプ氏と渡り合えるカリスマ性も無く、石破政権は1年も持たなそうだ」としている。


粘着性値上げ継続か

年が明けても物価上昇のニュースが喧しい。月初め恒例の今月の値上げ動向だが帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける飲食品値上げは1380品目、特に原材料の高騰を反映したパンの値上げが目立ち、山崎製パン、フジパン、敷島製パンが主力の食パンや菓子パンの一部商品を値上げし1月としては調査開始の22年以降で最多となった模様。

昨年の食品・飲料の値上げは1万2520品目で年間の平均値上げ率は17%となり、年を通じて値上げが抑制され前年比で6割の減少となったが、今年はここから4月までに飲料など6121品目の値上げが既に決定しており昨年同期比でこちらは6割の増加となっている。総じて現状のぺ-スが続けば昨年を上回る1.5万~2万品目前後が値上げされる見通しとしている。

一部シンクタンクのエコノミストは今後円安の落ち着きや原油価格の下落が見られれば去年よりは値上げペースが鈍化すると予想しているが、この為替も物価上昇率が目標を超えてきているにもかかわらず当の日銀は基調的な物価上昇ではないと悠長に構えた出口戦略を取る姿勢だ。結局この物価目標未満のところで中途半端な利上げを続けていくつもりだろうが、そんな感じであればなかなか円の反転は期待出来そうにもなく粘着質な値上げが続く構図となるか。


不透明な新時代を映す金

師走恒例の日本漢字能力検定協会による今年1年の世相を1字で表す師走恒例の「今年の漢字」は「金」と過日に発表されている。これで5回目の選出で過去最多となるが、パリ五輪での多くの日本人選手の金メダル獲得に、止まらない物価高騰や政治資金の裏金問題など光と影の2つが混在するさまを示した形だがもう一つ、金といえば“ゴールド”もまた特に注目を浴びた。

この金も今年は史上最高値を更新してきたが、背景には教科書的な定番材料に加え得も言われぬ靄も複合的に高騰要因として効いた一年でもあった。昨年にも増して地政学リスクが増すなか今年は世界各地で選挙が行われたが、年明けから1月の台湾立法院選、4月の韓国総選挙、6月のEU議会選、そしてインドの総選挙、7月のイギリスでの総選挙、フランスの下院選、などなど総じて与党がことごとく敗北、そして日本も周知の通りである。

選挙といえば11月には世界が注目した米大統領選挙ではトランプ氏が勝利。史上最大の復活劇とも謳われていたが、このトランプ新政権がはたしてどのような政策を行うのか予測不能な4年間が始まることになり早くも来年は世界の枠組みが大きく変わる年になる可能性もあるかもしれない。

毎年の如く年の最後の当欄では「来年こそ明るい世になるよう」と願いを込めるが、ウクライナ侵攻もいまだ継続され中東の地政学リスクも新たな拡大をみせ混迷を極める様相となっている。一段と輝きを増した金にはある意味こうした「影」が反映された部分も大きいが、また今年も来年こそは少しでも明るい世になるよう願いを込めて筆を擱きたい。

本年もご愛読ありがとうございました。どうか来年が皆様にとってよい年でありますように。


ガリバー参入

年末のこの時期はふるさと納税も駆け込みが目立つが、ふるさと納税といえば予てより参入の噂があったアマゾンが先週からふるさと納税仲介サイトをスタートさせている。開始時点で全国約1000の自治体が参加し掲載される返礼品は約30万点にのぼるが、アマゾンのマグカップからアマゾンミュージックのノウハウを生かして人気アーティストを能登町に招いての能登半島地震や豪雨災害の復興支援コンサートを返礼品として提供するなどユニークなオリジナル商品も見られる。

またアマゾンの持つ独自の物流・配送サービス網を自治体が利用し今月中に約1000点の返礼品の翌日配送が可能になるが、配送日の指定まで出来るのは他社には脅威だ。脅威といえば物流網に加え資本力も体力もある同社は自治体への手数料を低く抑えることも可能で、その分返礼品内容の向上が図られて顧客により魅力的に映る返礼品の提供が可能になることも予想される。

またふるさと納税といえば総務省の度重なる規制で来年は返礼品へのポイント付与が禁止の運びとなる。ポイント付与率で顧客を集めて来た大手の楽天は当然これに反対し署名活動まで実施したが、新規制でこれらの差異が無くなるとなれば利用者や自治体にとっても選択肢が広がることになる。既にふるさと納税は大手コンビニまで参入する激戦になっているが、1兆円を超える市場もこのアマゾンの参入で業界勢力図も大きく変わる可能性も出て来ただけにますます目が離せない。


幻の構想再浮上

本日の日経平均は海外投資家のクリスマス休暇もあり積極的な売買が見送られるなか個人などからの持ち高調整の売りが出たこともあって反落となったが、そんな冴えない市場の中でもホンダ株と日産自動車株の大幅続伸が目立った。さてこの両社といえば本日の日経紙一面で報じられていた通り、経営統合に向け協議を始めることで合意している。

今後の絵としては持ち株会社を2026年8月に設立し両社が傘下に入るかっこうになるが、日産が筆頭株主となっている三菱自動車も参画を近々決断するはこびとなる。仮にこの経営統合が実現すれば販売台数で独フォルクスワーゲンに次ぐ世界3位の自動車グループとなるわけだが、かつてまだ日産が仏ルノーに支配されていた頃にも今回の3社連合構想が噂されていた時期があったのを思い出す。

そんな幻の構想が時を経て再び当時とは違う背景で現実味を帯びて来たのも何かの因縁を感じるが、これとてこの歴史的な円安下にある中で深刻な業績不振に陥っている企業だけに今後手放しで明るい未来が待っているとも考え難い。ただ今回のケースのような合従連衡は自動車に限らず他のセクターでも起き得る可能性があるわけだが、そういった形での上場銘柄淘汰が促進されれば世界の投資マネーを呼び込むカタリストともなりそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

9

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30