257ページ目   雑記

性善説

さて、昨日の日経紙一面を飾ったのは、職員の端末がサイバー攻撃を受けた事に因って約125万件の年金情報が外部に流出したと発表した日本年金機構のニュースであった。うち一部は生年月日や住所も流出したといい、国内の公的機関としてはもちろん過去最大規模の情報流出である。

日本年金機構といえば前身が杜撰な年金記録管理の失態を晒した社会保険庁だけにヤレヤレという感も強いが、日経紙では「日本の対策、危うい性善説」とも題してあった。確かにこの手の件が出る度に性善説が前提になっているところがまさに特異点ともいえ、各所では攻撃対応力の世界最高水準を自負する記事を目にするものの、ほぼ一年前に起きたベネッセ事件は内部の人間の犯行であったのは記憶に新しい。

現代の社会でIT分野は世の中を支える重要な基盤となっているのは誰もが認めるところ。性善説ありきの背景には世界から絶賛される日本人の美徳があり、それは解らなくもないが折しもマイナンバーの導入を控え、企業然りこの年金機構といった公的機関然りあらゆる組織が情報管理の在り方の再考が要求される時ではないか。


そういう時代

本日の日経平均は序盤モタついたものの、終盤には日銀のETF買い入れ期待からプラス圏に浮上し小幅ながら12日の続伸となり、9日連続で年初来高値更新となった。時価総額もちょうど一週間前に1989年12月のバブル期水準の590兆9,087億円を約25年ぶりに上回っていたが、本日はそれも終値ベースで初の600兆円台乗せ達成となっている。

ところで先週の日経紙投資情報面には、2万円時代の投資家群像と題し連日シリーズが組まれていたが、第一回目のタイトルは「バブル組の期待と記憶」、以降さまざまな投資家が紙面に登場していたがコンサバと肉食系では当時の身の振り方もまた違った。であるから記憶を辿って懐かしいなと一口に言っても思い浮かぶ銘柄自体が全く違うのである。

対面で板を読んでもらう時代から今やこんな光景は化石で、ネット大手は新たな証券の時代を創った。仕手等が好き放題謳歌していたバブル期から打って変わってネット等で金融知識を豊富に蓄え長期目線でこつこつと投資してゆくという草食系も台頭、マーケットも妙な棲み分けが構築されている。

当欄では4月末に「失われた15年奪回」としたものの、一週間前には「高揚感無きバブル超え」と題している。NISAやスチュワードシップ・コードなど漸く「日本版」が始動され、本日からはコーポレートガバナンス・コード導入のはこびだが、かつての肉食系としてはやはり上記の通り高揚感無きというのが正直なところ。とはいえやはりそういう時代になったということなのだろう。


8%の次

今週月曜日の日経紙一面は「ROE10%超 3社に1社」と題し、円安で企業の利益が過去最高を更新する一方で自社株買いや増配で不要な資本を減らす企業が増えた結果として、昨年は3社に1社がこのROEが10%を超え日本企業の資本効率が高まっている件が載っていた。

前にも書いたように日本企業は欧米企業に比べてかねてから資本効率が低いと指摘されてきたが、2008年の平均0.6%をボトムに昨年は8%台にまで回復している。この8%という数字、昨年の夏頃に当欄でも「8%の分岐点」と題し機関投資家注目の投資判断基準に企業のROEがこれから8%を超えるかどうかという点が注目されているとしたが、この水準まで来たという事になる。

しかし個別でROEが大きく改善した銘柄を見てみると、何れも上位に顔を出しているものはもともとが8%を超えていた物が大半であり、予め伸び易い素地を持っていたというのが顕著に表れており、果たしてこれ以下の部分がどれだけ嵩上げ出来るかというところが課題だろうか。

ともあれこれに呼応するかのようにROE等を基準に構成銘柄を選ぶ「JPX日経インデックス400」も週明けに2014年1月6日の算出以来、初めて15,000の大台を超える事となった。上記の通り8%達成となった今、来月からはコーポレートガバナンス・コードが導入のはこびとなり更に次は平均10%の大台に乗って来るのかどうかこの辺が大いに注目されるところ。


マル信熱

さて、本日の上海総合指数は後場一段高となり2008年1月以来の4,900ポイント台となったが、上海市場といえば先週に心理的なフシ目の4,500台を回復した後もその伸びは目を見張るものがある。斯様に急上昇し、かれこれ倍化してきた原動力になってきたものに信用取引の存在が大きいといわれている。

同紙によればこれを裏付けるように信用残高は先週時点で昨年同時期の約5倍水準にもなる約40兆円近くにまで膨れ上がり、日本のそれの約13倍水準になるという。また残高が時価総額に占める割合を見ると日本の0.5%を大きく上回る3.5%とこれまた同取引が株高を牽引する構図が鮮明である。

マル信は市場にリクイディティーを提供する等重要な役割を持つが、同時にボラの増幅など副産物もある。先週は中国ソーラー発電企業をはじめとし、中国の資産か率いる金融企業グループ等が香港市場で5割〜6割も暴落する異常事態が発生しているが、企業素性や市場整備含め常にこうしたリスクを想定しておかなければならない。


時代背景

さて、今週の日経夕刊の「なるほど投資講座」は入門・コーポレートガバナンスと題して連日企業統治について連載が行われているが、この企業統治や利益還元を声高に訴えていたファンドとして先の日曜日の同紙「企業転換 戦後70年」の項では村上ファンドが取り上げられていた。

この村上ファンドに関しては当欄でも最近では2月、3月と取り上げた事があったが、ガバナンス論を武器に日本人による日本企業への敵対的TOBとして初の試みが話題になったものの、初回の昭栄やその後のプロキシーファイトでも日本初となり注目を集めた東京スタイルにおいても志半ばで不発に終わる結果となった。

時代が今ならファンド側も企業側もまた違ったタッチになり、村上ファンド以外でもスティール・パートナーズなど外資勢の展開や企業の政策もまた変わっていたかもしれないのは否めないところだが、時は流れ上記の昭栄は後にヒューリックと経営統合しその社名は消滅、そして東京スタイルも後にサンエーと持株会社方式で経営統合しTISホールディングスと名前を変えている。

2月に「消えゆくトラウマ」と題し、対話型への変遷から以前のようにファンドをアクティビスト扱いする風潮も無くなってきた旨を書いたが、これも国際標準へ向かう過程の経験図という事になろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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