282ページ目   雑記

青天井期

さて、先週日曜の日経紙(日曜に考える)で取り上げてあったのは1980年代後半から90年代にかけて株式市場を席巻した光進事件であった。蛇の目を所謂「箱」にしたトンビこと飛島建設のシナリオに加担して一部政界までをも巻き込んだ一件であったが、関連銘柄は連日賑わい街の投資顧問会社の煽りにも一層拍車がかかったものであった。

携帯端末で株価照会など想像も出来なかった当時は、証券会社の店頭に置いてある小さなクイックが頼りでこの手の銘柄が出ると投資家は奪い合うようにこの端末にかじりついていた光景が懐かしい。同紙に出ていたこの蛇の目や藤田観光もそうだが、今の株価からすると想像も出来ないような青天井を形成した銘柄も多く、一つ一つを思い出す毎に背後に絡んだストーリーもまた同時に浮かんでくる。

そうして市場を席巻した仕手絡みでは、その後遺症で今や市場からまさかの撤退を余儀なくされた企業群も多いが、敗戦処理を経て上場を維持した銘柄でも仕手戦当時の乱高下から30年近くを経てもなお仕手戦前の健全体質には程遠くなってしまったものは少なくなく食い散らかしの代償は大きい。

しかし思えば昔ながらのカラを誘いつつ全員参加型の息の長い相場形成が特徴だった所謂本来の仕手の歴史は、現在と違ってはるかにユルかった規制や証取法を背景にあまりにも有名な誠備グループを中心として活動していたこの頃がピークだったなとつくづく感慨深い。


嗜好の賞味期限

さて、先週に気なった決算の一つに日本マクドナルドHDがあったが、2014年12月期決算は11年ぶりの最終赤字に転落となり、営業赤字は実に上場以来初の出来事となっていた。最近では昨年の期限切れ鶏肉問題やそれが冷めやらぬうちに今度は異物混入問題が追い打ちをかけまさに泣きっ面に蜂状態であった事からこの辺も致し方ないところか。

ところが本家の米も近年は顧客である若年層達の健康志向の強まりを背景として、個々の注文に応じる競合店等にシェアを奪われる苦戦が続いている模様。先月末にはCEOの引責辞任発表と併せての社長交代で、この客離れが進む米国再建の報道もなされている。

この健康志向といえば先週の日経紙夕刊でも「健康志向の打算」と題して、米コカ・コーラ社が取り上げてあったが、マックCEO引責辞任の2日後にはこの競合店の新興勢の一つであるシェイク・シャックがニューヨーク証券取引所に上場、公開価格の2倍以上の値を付ける人気を集めたが、この背景には具材のこだわりを強調しフライポテト一つ取ってもトランス脂肪酸不使用などを明記し上記の健康志向にもマッチしているという点がある。

以前に当欄ではアパレルも世界同一基準を謳いつつも現地の嗜好性を取り入れたラインナップを展開するのが普通になってきたと書いたことがあるが、昨今のファストフード業界もまた然りか。全世界に同一商品を投入するというマック創業以来のビジネスモデルが、消費嗜好変化に対応出来なくなったというのはある意味時代の自然な流れなのだろう。


政治格付け

本日の日経紙国際面には「米S&P、1,760億円で和解」と題して、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズが2008年の金融危機の一因になった住宅ローン担保証券の格付けを巡る訴訟で、総額15億ドルを米司法省はじめとし19州政府や米最大の公的年金のカルパース等に支払うことで昨日和解した件が載っていた。

さて米の格付け機関といえば双璧のムーディーズがあるが、このムーディーズも2008年の金融危機発生前に自社業績を優先させ証券化商品により本来より高い格付けを付与した疑いがあるとして、米司法省が調査している旨を今月はじめのウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えている。

こうなってくると自国の最高格付にはじまり、本邦国債も既に中国や韓国を下回る水準に置かれるなど随分と不遇な扱いを受けているのも改めて何だかなという思いもあるが、今回の訴訟では同社の行為に違法性を認めることなく和解に至っている。この辺に意図的な政治背景を感じられなくもないが、そう考えるとモノは全く違えど何故か証券会社のレーティングからはてはミシュランまでがふと頭に浮かんでくるものだ。


壁の厚さ

本日付けでヴァージンアトランティック航空が日本から撤退しその25年9ヶ月の歴史に幕を下ろしたが、エアライン関係と言えばもう一つ入ってきたビッグニュースには先週29日に各紙面を飾った国内航空3位のスカイマークが民事再生法の適用を申請した件がある。

つい最近当欄では昨年の上場企業の破たんゼロと書いたばかりであったが、これで早くも今年の第一号が出てしまった。これは2013年8月にパンクしたジャスダックにあった物流会社ワールド・ロジ以来となるが、パンクまでドタバタが続いていたロジ社同様にこのスカイマークもここ最近はJALやANAとの提携交渉話が二転三転するドタバタ劇が続いていた。

もともとあのエアバスの件で昨年から経営不振が続いていたものだったが、此処までに至ったのにはJALの時同様今回も国土交通省絡めた政治によって翻弄された背景がある。破綻回避へ期待を持たせる話が出る度に乱高下を繰り返した株価を見ていると、まさにJAL破綻の時を彷彿させる。

しかし、今でこそ規制緩和を背景に新興勢が第三勢力を目指しての参入であったが、日経春秋にも出ていたようにかつてあの東急も大手2社と対抗すべく東亜国内航空(懐かしい!)を作ったものの志半ばでJALに吸収されてしまった経緯があり、やはりこの壁は時代を経ても破れない厚さなのか。


ブランド育成の違い

今週は所用で丸の内方面に出向いたのだが、そろそろ冬のセール関係も終盤となる中でもバーバリーの賑わいが一際目立っていた。このブランドといえば三陽商会だが先に発表のあった通りライセンス契約期限切れの影響で同社製の冬物が買えるラストチャンスという事もあるのだろうか?

同社は契約終了後にこのブランドの売り場を新ブランドに切り替え、売上で2割強を占めていたこの穴を埋めてゆくという戦略だがこれら両者を前に大手百貨店がどういった立ち位置を取るかなども今後気になる。対して当のバーバリーも今後3年で店舗数を現在の2〜3倍にする戦略とか。

そういえば直近では先週末にも中堅アパレルのルックが、米ブランド(トリーバーチ)の独占販売契約を今年7月末で終了する旨の発表をしていたが、以前にも書いたようにこんなアパレルから果てはチョコレートまでライセンス契約見直しが近年は彼方此方で目立つようになっている。

ブランド本体もオプションのロングよろしく損失限定・利益無限大?の立場を盾に本邦側と持ちつ持たれつの関係であったが、近年のこうした動きに大衆的なプレミアムブランドからラグジュアリーブランドへ啓蒙を急ぐ焦りがやはり見え隠れする。今更ながら多数のラグジュアリーブランドを確立してきた欧米勢のスタイルを感じるが、この辺こそ一番日本に欠けている不得手部分なのではとあらためて感じる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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