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技術も情報も

さて、昨日の日経紙夕刊一面には「社員の発明対価に指針」として、政府が決める「知的財産推進計画2012」でサラリーマンが仕事で発明した対価として企業が支払う額について政府が指針を作ることを含めて検討する旨が載っていた。

この辺に関しては当欄でも今月の8日に「人材草刈り場」と題し末尾に、企業の事情が絡みインセンティブの国際標準を考慮するのも難題としたが、政府として漸く重い腰を上げたというところか。また併せて技術流出にも触れたが同計画では新日鉄の機密情報にあたる鋼板製造ノウハウが韓国鉄鋼大手ポスコに流れた問題を受けて防衛策を来春までに纏める事も盛り込むとしている。

この新日鉄問題はポスコのみならず所謂「二次流出」で中国の宝鋼集団にまで及んでいるが、それこそ株のインサイダー情報よろしくその対応には限界があるのは明白。この手の一件はグローバル競争を展開している日本の全産業界にとって間違いなく脅威で、経産省あたりも早急に防衛策を求める声が高まってこようか。先のエルピーダメモリ破綻後に中国勢の影がチラついた経緯があったが、直近ではこれに続き今度はルネサスエレトロニクスが土俵際に立たされている。


匠の集大成

本日は、今春開業の東京新名所の中では最後発となった「東京スカイツリー」が本日開業した。生憎の雨に見舞われたものの多くの人出で賑わったが、首都圏の地上デジタル放送を一手に担うこのツリー、武蔵にちなんでその高さは634メートルと電波塔としては世界最高という。

そんな世界最高のタワー、建設中から前を通る度に思ったのだが東京タワーの足元からするに此処の足元は心配になるくらい狭い。それで高さが東京タワ−の約2倍というから今更ながら現代の技術力の高さに関心、また本日の日経紙全面広告でも此処のエレベーターが紹介されていたが、「iPhone」よろしく唯一無二の技術を誇る企業群の集大成ともいえようか。この辺は併設のソラマチもまた然りで、此処には大手ゼネコンの人工海水製造技術を使った水族館が入り、その上でも大手複合機メーカーの製品が使われたプラネタリウムも入る。

さて昨日の金環日食では経済効果にも触れたが、このスカイツリー擁する墨田区ではそれを年間880億円と弾いている。いままで下町の観光地といえば浅草が定番であったが墨田区はその浅草のある台東区の小売業売上高の半分くらいであった。既に此処は開業前から新たな人の流れを生み出していたが、上記の経済効果を鑑みその構図が一変してくるかどうかこの辺も注目される。


金環日食

本日は周知の通りで金環日食。当初は首都圏の天候が懸念されたものの、雲は薄く7時前後から近所の東証隣の鎧橋には人が集まり、蛎殻町界隈の取引員の屋上でも三脚をセッテシングしてなんとかこの瞬間を捉えようとする人々が見られた。なにせこれが首都圏で見られるのは173年ぶり、今回のように国内の広範囲で見ることの出来る機会は300年後というからちょっとしたお祭りである。

さて観察には日食グラスということだが、週末は大手家電量販店から書店に至るまで全て売り切れの札。ちなみにこうした関連グッズの売り上げやら観測ツアーやら諸々でその経済効果は合計160億円前後という試算も出ていたが、数分間のショーでこれほどの額が弾き出されるのも凄い。

経済効果といえば市場のアノマリーはどうだろう?過去23回の金環日食や皆既日食があった日の株式市場は前日比プラスが6割、金環日食のあった3回は全てプラスという。ただもっとスパンを広げてみると日食の前後1ヶ月の株価は総じてマイナス、年でいえば87年のブラックマンデーや09年のリーマン・ショック後の暴落という出来事もありその取り方次第といったところ。何れにしても滅多に無い出来事だけに、諸々良い方向に作用するのを祈りたいところだ。


投機かヘッジか

国内の前3月期決算発表もピークを過ぎたが、なにぶん地合いが悪過ぎてそこそこの決算でも多くの個別は売られる始末という相場が今週は続いている。そんな地合を作った一因にJPモルガンがあるが、周知の通り突如としてデリバティブ取引で20億ドルの評価損が出たとの発表に金融系は動揺し東証でも個別で数銘柄は可也の影響が出ていた。

この取引はCDSに絡んだものといわれているが、ロイターではその裏付けとなる現物債市場の発展で同社がヘッジの再構築を迫られスワップの上にスワップを重ねる取引を行ってポジションの構造が複雑化し1つのスワップの利益で別のスワップの損失を穴埋め出来ないリスクが高まっていたというなんともデリバティブらしい話。膨張して動けなくなったところを餌食にされたというが、この辺は株の仕手崩れさながらである。

この一件が何ともタイミングが悪いというか、金融機関による自己勘定取引とその他の投機的な取引を原則的に禁止する所謂「ボルカールール」に絡んだ議論を再燃させている。渦中のモルガンはヘッジだと強調する一方で、米大統領などこの問題について改革が重要な理由がまさに示されたとして米金融規制改革の必要性を改めて強調しているが、当のルール詳細が確定していないことには結論を出すのは困難極める。

しかしこと金融系は立場が違えば言い分も違う。そういえば国内でも大手石油会社が原油に絡んだヘッジ取引で更正処分を出した国税庁とヤリ合っていたことも数年前にあったのを思い出したが、ルール解釈を巡って広義ではこれもその部類だろう。明確なルール未確定のものは得てして最後は政治力がキーになってくる。


復活モノ

さて決算酣といったところだが、前週末に出揃った注目の自動車業界は日産の営業利益がトヨタを上回ったというのが話題になっていた。連結決算の開示開始以来始めての事というがまあ日産の方が海外生産比率が高い点で為替への抵抗力が光ったというところだろうか。

ところでその日産、先の日曜日付け大手紙ではTV東京系番組の広告にてハイブリッドで復活した「シーマ」が取り上げられていた。このシーマに関してはちょうど2年前に「バブル期のノスタルジア」と題してこのシーマが生産終了される旨を書いたことがあったが、当時フラッグシップモデルをチェンジ云々と言っていた割に意外にも早い復活劇である。

そういえばこの時に消え行くバブル期の象徴として一緒に載せていた「ヴェルサーチ」も昨年暮れには有楽町の新生阪急に復活をしている。この世代の娯楽系の復活劇は前からあったが、やはりこの手の消費系を掘り起こしてくる辺り未だ実感はないものの先週書いた高額消費復活の芽はあるのか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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