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デルタ・ワン

連休前に入ってきた報のひとつにUBSロンドン事務所のETFとデルタ1トレーディングディレクターの一人が認められていない取引を行い、現在のところで約23億ドルの損失を出したことが明らかにされている。

この不正取引で顧客のポジションには影響が無いものの、つい先月年間20億スイスフラン(23億ドル)のコスト節減の為に3,500人を削減する計画を発表したばかりでちょうどこの金額が消える計算、これで第3・四半期に損失を計上する可能性があるともしておりなんともキツい。

この人物はもともとミドルに居たスタッフらしいが、それが幸いして?フロントの表舞台に出てからの伝票操作なんぞはお手の物だったのだろう。とはいえポジションの把握が曖昧で不正を見過ごしてしまった体質はやはり問題視せざるを得ない。これとは規模自体が全然違うものの、ポジション把握がナアナアの関係で遣り過ごしてきた結果消えていった小粒の会員を何社も見てきた。

しかし記憶に新しいところでトレーダーによる不正取引としては1995年の英ベアリングスと大和銀行ニューヨークの2件、翌年1996年の住友商事のMr5%事件、そして3年前の仏ソシエテジェネラルの事件等が挙げられるが、上記のようなことから時代が変わっても斯様に同様な事件が必ず出て来るのがデルタ・ワン絡みのセクション。損失もその金額の大小の問題ではなく、信頼そのものが失われるのが一番の痛手ということになるか。


あれから3年

本日であのリーマン・ショックからちょうど3年になる。当時の様子は今でも鮮明に思い出せ、ちょうど連休中でその前から既に外資連中の間では実しやかに噂が飛び交っていたものだったが、なにしろ会社そのものが上位に追い付け追い越せの経営スタイルだっただけにその破綻規模も日本法人一つ取っても戦後2番目という凄さだった。

リーマン・ショックの原因は米住宅バブル崩壊といわれているが、これも日本のバブルのようにゴルフ会員権など生活必需品以外の範囲までも投機対象になっていたワケでなく、生活に根付いた投資が主だっただけに根が深い。昨日も「ジャパナイゼーション」のタイトルで書いたが、ジム・ロジャーズ氏は日本の失われた10年どころか米国はその失われた10年を2度も3度も経験する事になるとしている。

さて当欄でも当時、「盛者必衰」としたタイトルの末尾で「盛者必衰とはよく言ったものだが此処最近見ているとこれは別段企業に限った事ではなく、国家レベルでもまさにこうした事が言えるのではないだろうか。」と書いたが、震源地の米国はかつての債権国から世界最大の債務国へ転落、ここへきてトリプルAに君臨し続けてきたその米国債も史上初の格下げに至った。

ざっと振り返るに夫々の景気刺激策が奏功し緩やかながら一見回復軌道に乗ったようにも見えたが、その間ドルやユーロをはじめとした通貨の信認は揺らぎ、日本は大震災で被災、リーマン・ショック直後に世界経済を支えた国も昨今身動きが取れなくなってきている。最後の拠り所として無国籍通貨の金が代わって異常?な高騰を続けてきた3年はその辺の問題を的確に示唆しているといえるか。


ジャパナイゼーション

今週はあの米同時多発テロから10年。一昨日の日経紙夕刊「あすへの話題」には、商船三井会長がこの米同時多発テロから10年で米国の一極支配構造が崩れ始め、世界で最も信頼できる国の地位が揺らいだことを痛感、米国が失われた十年と言われても仕方ない旨が書かれていた。

先に朝日紙でも「米国はすでに日本化」として、今の米国経済が日本のバブル崩壊後の失われた十年の状況と非常に似通った状況になっているという記事が出ていたようだが、これらで思い出したのは先に「NIKKEI CNBC」で放映された「ジム・ロジャーズが語る世界経済と金」において氏が「米国は既に10年を失い、さらに20年、30年と失うだろう」と言っていた件であった。

米国や欧州市場のジャパナイゼーションが懸念されている旨に触れて同氏が答えたものだが、日本の場合当時は世界最大の債権国であったのに対し米国はコピー化してきた昨今世界最大の債務国になっている点で2度、3度と失われた10年を経験するという。

よく日本のバブル崩壊の過程を十分に反面教師にして研究とかいった説は頻繁に見聞きしたが、実際には商船三井会長が言うようにITバブルを住宅・金融バブルで凌いだだけという構図だったか。


最近の逆転劇あれこれ

週末の日経紙夕刊では「白金、金より安い逆転現象」として8月以降は金価格が白金を上回る機会が多くなって来た旨が載っていた。こんな両者逆転現象は前回では確かあのリーマン・ショック後に逆転しその際には引けベースで一日天下で終った覚えがあるが、今回は恒常化を指摘する声も一部に出ている。

さて、通常の覚えからして珍しい?逆転劇といえばこの商品に限らず株式でも個別銘柄においてこの手の現象が近年見られる。上記の白金に関連するもので例えば自動車業界の雄、トヨタ自動車をホンダが上回る歴史的逆転をしたのは昨年であったが、今年も先月初旬に両者が急接近する場面があった。また歴史的といえば証券株からはガリバー野村HDと大和証券Gが先週から大引でも野村HDが下鞘に沈み始め本日もまたそうなっている。

株式の場合は信用残など需給関係も影響するものの、この大和など投資ファンドが大株主に浮上するなど再編も絡んで今後思惑含み。今迄は上記の白金や金、また自動車株も何れもその後は通常の鞘?に回帰してきたものだが、今回は各々当時とは世界情勢、経済情勢もまた相違してきているだけにこのような単純裁定が今後も通用し続けるかどうかは未知数といえるだろう。


今年のワールドウォッチフェア

周知の通りスイスが対ユーロ目標レートを設定し上限以下に抑える為には無制限に為替介入を実施するという大勝負に出た。この辺は後で触れるとして、さてスイスの産業といえばやはり時計、この時期は毎年恒例で三越の「ワールドウォッチフェア」が開催されるが今年も過日一寸覘いてきた。

今年の場合は例年とは一寸違って時計見たさより一番の目的は「カランダッシュ・1010Diamonds」の特別制作モデルの万年筆。なんだ筆記具かと思うだろうが、値段が一億円で其れなりの期間経過すれば早々にスイスに帰国してしまうシロモノだけにこれを見ない手はない。ということで実物だが、消費税だけで500万円の値段もさることながらスイスでも選りすぐりのジュエラーと彫金師の技術の結晶だけに成る程滅多に見られない芸術品の域を超える芸術品であった。

ところで数年前の同フェアでは時計に充分対抗出来るような数千万円クラスの値札をぶら下げて、ラグジュアリーモバイルフォンの「ヴァーチュ」もブースを出展していたのを思い出したが、最近では銀座の直営店が先にヒッソリと閉店し直近では日本の通信事業から撤退と発表し鳴り物入りで登場したわりに何とも不発のまま消えていった感が強い。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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