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効果と弊害

昨日の日経紙総合面には「中小、価格転嫁に遅れ」と題し、帝国データバンクの9月の調査では原材料などコストの上昇分を商品・サービス料金に全く転嫁できていない企業が6月の調査の15.3%から2.8ポイント上昇し18.1%を占め、東京商工会議所が9月に纏めた中小調査でもコスト増を全く転嫁出来ていないが22.9%に及ぶ旨の記事があった。

こうした取引価格の適正化無くして賃上げの原資は生み出せないワケだが、需要減少や競合他社が価格を上げない等々の要因もあり上記の通り遅々として進んでいないのが現状。加えて中小企業は重くのしかかって来るのが新型コロナ関連融資の返済負担で、現在借り入れがある企業は全体の半数にものぼる。

米などを見るに賃上げ競争に付いて行けない低収益企業は淘汰され、そうしたことによって新陳代謝が進んで生産性の高い企業が台頭し賃金も全体として伸びてゆく構図だが、日本の場合は上記の融資等に加え税制や助成金での優遇を受け易くするなど政府の過度な保護政策が低収益企業やゾンビ企業増殖の一因となっているのも否めないところではある。

また日銀も意固地な超緩和策を粘り強く貫いているが、社会が変らぬようにとの痛み止め政策を維持している限り賃金は全体としては上がり難いか。先月の所信表明演説で首相は企業の生産性向上を軸とした構造的な賃上げを目指すとしているが、効果と弊害を天秤にかけた新陳代謝の促進へ中小企業政策の見直しが求められようか。


霜月の実感

本日から霜月入りである。既報の通り帝国データバンク調べでは先月の値上げが月別で最多であったことで峠は過ぎたという事だが、今月も明治や森永乳業など乳業大手が牛乳やヨーグルトなど身近な品目を本日出荷分から3年7ヵ月ぶりに値上げし、8月に書いた通り大塚製薬も今月出荷分からオロナミンCドリンクやファイブミニ等を25年ぶりに値上げする。

今年中に値上げされる累計2万品目超のうち約3分の1は先月値上げされたのに対し、今月の値上げ品目は先月の約9分の1程度と落ち着きを見せるものの、一方で今月は外食チェーンでの値上げが一段と広がる。原材料価格の高騰や円安を背景にフードコート等で人気のリンガーハットや餃子の王将、ミスタードーナツも人気商品を中心に何れも再値上げに踏み切る。

上記の通り値上げ品目数一服とはいえ、購入頻度の高い身近な品目の今月の値上げは物価高をより実感させる。今の足元の値上げは円相場が1ドル130円台だった夏頃に計画されたもので、先に大規模な介入が行われた150円に絡む水準が反映されるのは来年の2月頃になる見通しで一般は引き続き物価上昇圧力を肌で感じる日々が続きそうだ。


ハロウィーン2022

本日はハロウィーンの本番、今年は3年ぶりに自粛要請も無いことから代々木公園で渋谷ハロウィーンフェスや日本最大級という池袋のハロウィーンコスプレフェスが開催され、近所の三越本店では入口のライオン像がハロウィーン衣装を纏って鎮座し、同じエリアの工事現場では夜間の現場照明までカボチャやゴースト仕様になっていた。

ところでハロウィーンといえばもはや代名詞格になっている渋谷は、行動制限が無くなった事もあって先週末の人出はほぼコロナ前の水準まで戻っていたと携帯電話の位置情報等から判明しているが、直近の韓国梨泰院で起きた大事故を受けての一段の警備強化もあって今のところ特に大きな問題は起きていない様子。

いつの間にかバレンタインデーを凌ぐ規模の経済効果を誇るまでになったハロウィーンだが、本格復活となった今年は如何ほどになるか。ちなみに本場の米では全米小売業協会の調査によれば今年のハロウィーンの支出額はこれまでの過去最高だった去年を上回る106億ドル、日本円で1.5兆円にのぼる見通しという。ハロウィーン後は年末商戦が本格化するため、個人消費が再度盛り上がりを見せるのかどうかも注目される。


資本逃避

さて、先週の日経MJ紙では「日本の宝石、円安で富裕層が注目」と題し、先月中旬に開催されたオークションで6.11カラットのピンクダイヤが出品され、それがこれまでの国内オークションの落札最高額だった2017年の2億2500万のブルーダイヤの2倍以上となる5億3000万円で落札された旨の記事があった。
   
急速に進む円安を背景にドル建て取引が多い海外の富裕層からは円建て資産が割安に映り、日本円の価値低下に不安が高まるなか国内では円からのキャピタルフライトも見られるという。この辺は上記の宝石に限らず、これと同様に魅力的に映る現物資産として最近問い合わせが急増しているものに高級不動産物件もあるという。

冒頭の宝石も希少なタマが多く揃う日本だが、不動産もまた日本はクオリティがトップクラスな割に最近の円安も相俟って非常にリーズナブルに映るという。不動産の買い漁りといえば今週初めにも書いたバブル景気に沸いていた頃は米国の魂を買ったと揶揄された三菱地所によるロックフェラーセンター買収などが思い出されるが、時を経て今や日本は買う側から買われる側に成り下がっているあたり栄枯盛衰を感じ得ない。


親会社の上鞘に

さて、今週はじめにF1のターボ技術を量産車に初採用した新型AMG「SL43」を発売した独高級車大手メルセデス・ベンツだが、本日は同社がロシア市場から撤退する方針を明らかにしている。英ロールス・ロイスも先にロシア関連事業を全面停止しているが、ソ連崩壊と共に西側の資本や技術でもって近代化を進めてきたロシア自動車産業もこれで万事休すか。

ところで高級車といえば話変わって独ポルシェが先に独フランクフルト証券取引所に単独で新規上場を果たしている。発行済み株式のうち12.5%分が議決権のない優先株として売却された格好だが、欧州ではIPOがほぼ行われていないなかで公開価格は仮条件の上限に設定され初値はこれをも超えて時価総額は約780億ユーロと10兆円超えの大型上場となった。

ポルシェといえば独自動車大手フォルクスワーゲンの傘下にあるワケだが、子会社にあって親会社の12兆円に迫る時価総額で誕生を果たした同社は今月に入って既にこのフォルクスワーゲンの上鞘に躍り出ている。群雄割拠の自動車業界において開発に資金が幾らでも欲しいVWにとってはニンマリのIPOだっただろうが、EV開発など今後ますます熾烈を極めてゆくことになろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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